Author Archives: Kenji Kagami
2024.04.18
CGを活用してのインテリア素材決め
[渋谷区N邸]
一般的に考えると、マンションリノベーションのインテリア素材決めの打ち合わせの際に、高品質のCG(コンピューターグラフィックス)があれば、空間と素材がどのように呼応してくるのかの想像がしやすく、よりスムースに決定ができそうですね。
デザイン設計が進行中の渋谷区N邸では、打ち合わせ室にうちの事務所のCGマスター(笑)の前田君のパソコンとモニターを運び入れて、CGで壁素材や扉仕上げを変えながら、どの素材とデザインがしっくりくるかを打ち合わせさせて頂きました。
これら4つのCGはすべて玄関ホールの壁と左手リビングダイニングへの扉のバリエーションです。左上のA案は正面壁はビニールクロスのパネル壁と木製の濃い色の建具案、B案はスクラッチ模様の入った濃い灰色のタイル壁と木製の濃い色の建具案、C案はサルバトーリの加工大理石(ビアンコカラーラ)のトラッティ仕上げとレザー張り建具案、D案はスクラッチ入り白色タイル壁とライトグレーの木製建具案となります。最初に、前田君といくつかの部品を作っておいて、それを切ったり貼ったりしながら色々なバリエーションを見ながら確認していただきました。
お客さまの判断には、デザインだけでなく、素材の単価によって変わってくる価格のことも大きく影響してくるので、工事をお願いするリフォームキューの森井さんに同席してもらい、どのくらいの費用感になってくるのを同じタイミングで概算してもらいながらのご説明となりました。
デザインと金額のバランスから、D案のスクラッチタイルと塗装建具で進めることが決まりました!
玄関とリビングダイニングとキッチンで使う素材をひと纏めにしてみた素材写真がこちらです。お客様からは「図面だけでは想像できないことがCGでは確認することができるので、本当にスムーズに素材決定をすることができました」と喜んで頂きました!
こうやって見ると、空間と素材のテクスチャーと色味、照明などの具合を確認しながら打ち合わせができるCGは、万能のように感じられますね。しかし、本当はそれほど万能ではないのです…。
例えば、上の写真では、ダイニングテーブルに使う大判セラミックタイルの大理石柄を確認していただいている様子ですが、CGでは、本物の大理石とセラミックタイルの大理石柄の違いを表現することができません。極端に言えば、本物の大理石でも大理石柄のメラミンでもCGの表現は同じになってしまうのです。同じように無垢の木材と天然木の突板、メラミンの木目調も同じに表現されてしまいます。
こちらは後日、トイレや洗面のCGと素材感を確認した際の打ち合わせの様子です。CGでは、使う素材を撮影したり、似た素材写真を探して、色の深みやツヤ、ザラザラ感などを似せて画像を作っていきますが、本物とはどうしても違いが出てしまいます。この打ち合わせのようにCGの床素材は、実際はこのサンプル素材ですと指さし確認(笑)をしないと、「出来上がった空間とCGが違って見える」という残念なことになってしまうのです。CGはあくまでもコンピューターの画像上の想像図でしかなく、実際の空間はもっと豊かで、思いもしない深みがあることをご説明するようにしています。
先回の打ち合わせで玄関の素材が決まりましたが、扉を開けてリビングダイニングに入ろうとした瞬間に見えてくるキッチンの扉の色ですが、当初はキッチン側から見て決めていた色だったので、今回のCG打ち合わせで、スクラッチタイルに似せた色味として、壁と引き込み扉が一体に見えるように調整しました。
CGでは細かいディテールの表現が難しいことも事実です。異素材がぶつかり合った箇所は、何かで見切るのか、ぶつけるのか、目地を取って逃げるのかといったディテール手法がありますが、そういった細かいディテールをCGは適当にゴマかすことができてしまうのです。
これは最終的に決まった渋谷区N邸の素材サンプルをボックスに入れたものです。
CGの良い点と問題点をここまで書き連ねてきましたが、実はCGは写真レベルまではもう少しなのだと思っています。写真もフォトショップというソフトでかなり自由に加工することができるようになっていますが、それでも現実の空間を撮影した写真で、現実の空間を表現することができるかといえば、まだ不満があります。しかし、CGの技術は日進月歩ですから、もう少しで写真のレベルまで追いつきそうです。僕らが使っているD5レンダラーというソフトでは、レイトレーシングという「光が壁材やガラス、家具などの表面などで起こる光の屈折や反射などをコンピューターで計算して、より現実に近い映像を作り出す」技術を使いだして、抜群にリアルに見えるようになってきました。建築素材や高級家具などのカタログやサンプル写真は、よほどのプロでないと、リアルな写真なのかCGなのかが見分けられないようになっているのが現実なのです。
ただ、そういったリアルかどうかといった技術的な問題とは別に、CGを使ってインテリアの打ち合わせをすると、お客さまも僕ら設計も発想力が乏しくなってゆく気がしています。小説を読むのと、その小説を映像化したドラマを見ることの違いような感じです。ドラマの方があまり深く考えずに気楽に楽しめますが、小説の方が発想が飛躍してそれが記憶に定着してゆくのだと思います。
この「CGを使ってのインテリア打合せ」には、それ以外にも色々と深い問題を内蔵している気がしていますので、また別の機会に考えてみたいと思います。
2024.04.15
スケルトン解体現場の確認@元麻布J邸
[元麻布J邸]
解体工事が順調に進んで、必要な解体部分の作業が終わり、先行して給水給湯と排水管の敷設も始まっているとの連絡を受けて、元麻布J邸の現場に視察に行って参りました。
基本的にはスケルトン(骨組みがすべて見える)段階までの解体なのですが、費用的に下地を再利用することが決まっている寝室等の一部の床下地と壁・天井下地は残っておりますが、他はきれいに解体されております。
床に蛇のようにうねっているカラフルな管が給水・給湯管と排水管です。リフォームキューの営業・設計の坂本さんと大久保さん、弊社の松藤さんが頭を寄せ合って、確認事項をチェックしてくれています。
水色の管が給水、赤い管が給湯、緑色の管が床暖房や浴室の追い炊き等に使われるペアチューブで、写真左上、柱型にペタッとついているの灰色の太い管が排水管です。床スラブに貼られた黄色いテープは現場側が用意してくれた間取り線です。この写真は、洗面廊下のエリアに当たります。
トイレの便器からの排水管(灰色の管)が変な箇所に取り付いていますが、それはこのお部屋の床下の水回り箇所がダウンスラブ(水回り部分の床下に配管スペース分の段差を設けた部分)から外れたことと、トイレの箇所を変えたことで排水経路が変わり、トイレの床を上げない(フラットに仕上げる)ために後ろ抜き排水タイプの特殊な便器を採用することになったからなのです。
この写真で銀色で網で巻かれた縦の管が、共用の排水竪管となります。そこから枝分かれした緑色の管が耐火排水管となり、そこに先ほどの便器からの排水管が繋がれています。竪管(タテカン)の左側に黄色いテープが二本並んでいますが、ここはリビングダイニングと洗面廊下を仕切る引き込み扉のポケットとなります。実際には床仕上げが上がってくるのですが、ギリギリの寸法で設備工事と建築工事が取り合っていることが分かります。
こちらはかつて浴室があった個所です。四角くへこんでいる箇所が浴室エリアのダウンスラブとなります。壁際は凹んでいませんが、この個所は外壁側なので、梁型が出ているのです。
こちらは玄関ホールとキッチンを間仕切る壁の確認です。インターフォンや照明スイッチ、床暖房コントローラーなどの設備が集中する壁なので、壁厚や配線ルートも事前調整が必要なのです。
こちらは主寝室のウォークスルークロゼット内を通るエアコンの冷媒管とドレイン管です。梁型部分は確かに出っ張ってしまいますが、壁部分では管が壁に寄っているので、実際にはそれなりのスペースがありました。次回お客さまとの打ち合わせ時に、この部分をPSとして壁で閉じてしまうか、追加の費用が掛かってしまいますが、カバン等を置ける収納棚を追加するかをご相談することにいたしました。
今回は設計監理契約のフルサービスコースではなく、現場監理は基本的に行わないデザインアドバイスコースでのお手伝いですが、やはり現場に寄ると色々な気づきがありました。
2024.04.10
家具搬入後のお客さま検査
[ザ・ライブラリー]
ザ・ライブラリープロジェクトの紹介ブログです。
新築マンションリノベーションの恵比寿A邸に、新しく購入頂いた家具類が入ってきました。
最初に入ったのはダイニングテーブルとダイニングチェアとソファが入り、この写真のポリフォームのセンターテーブルのコイシと続きます。
こちらが、アルフレックスのダイニングテーブルのコラムとモルテーニのダイニングチェアのアウトラインです。ダイニング上から吊り下げられているペンダント照明はヴィストージのパペットリング(ルミナベッラ)です。
ソファがアルフレックスのエラです。テレビがまだですが、家具が揃ってくると、空間のスケール感覚が見えてきますね。
建具のレザーパネルとカラーガラスも入り、ペンダント照明と相まって夜の空間もグッと締まってきました。
そして、お客さまご手配の壁掛けタイプの4K有機EL77インチのテレビが入りました。設計寸法を攻めすぎたので(笑)一応事前に電気屋さんに現地確認してもらってから発注の流れで、うまく収めてくれました。
ユーロカーブのビルトインワインセラーも入って万全の状態でお客様の検査を迎えることができました。通常のリノベーション工事では、お客さまの検査時には家具は何も入っていない状態でお迎えするのが一般的です。ただ、家具がない状態での検査となると、空間を楽しむことなく、検査のための検査となってしまい味気なくなってしまうこと、そして家具がある状態で実際に座った時に見える壁や天井といった、暮らしているときに気になってくるか所を特に注意してチェックしてもらうことができるというメリットがあるので、ザ・ライブラリーでは(そしてカガミ建築計画でも)なるべく家具が入った状態での検査をお勧めしているのです。
以下、お客さまがいらしての検査の様子については、ザ・ライブラリーブログをご覧ください。