Author Archives: Kenji Kagami
2024.10.17
現場施工のオーダーユニットバス
[文京区S邸]
文京区S邸の浴室とシャワーブースは、東京バススタイルのオーダーユニットバスを使っていますが、いくつか特殊な作り方をして貰っています。

主寝室から使うシャワーブースは、ブースという割には大きめのサイズで、1414サイズのシャワーブースです。小型のユニットバスだと1014といったサイズもあるようなので、ユニットバスよりも大きいシャワーブースとなります。

最初に防水パン(床タイルも張られたパンです)を設置し、入り口の枠と四周の壁を立てます。ここまでは普通の作りですが、壁のタイルが張られていないことに気が付いたでしょうか?通常のオーダーユニットバスでは、タイルを張った壁パネルを立ててゆくのですが、ここでは真っ白なボードだけとなっています。

そして、壁にはこのようなニッチが作られていますが、これも仕上がっていません。今回はほぼ目地なしで貼る特殊なタイル、モロッコ産のゼリージェタイルを内部に張るので、パネル壁を立てた後に、現場側でタイルを張るという特殊な作りとなったのです。本来はプレファブリケーション(いわゆるプレハブ、現場での施工を最小限にするために、工場などで部材を加工・組立てしておく工法)の考えに従って、現場作業を最小限にしてスピーディーに組み立てるのがユニットバスの特徴なのに、そのメリットを捨てて、ほぼ防水パンの漏水に対する安全性だけを使って他は現場施工としているのです。

そして、こちらが家族用の浴室です。2320サイズの大型浴室です。防水パンが特殊な仕様となっています。大きい浴室になると防水パンは2分割となることが多いのですが、今回は4分割となっています。また、防水パンのサイズが大きくなると、浴室の周りから脚の高さを調整することが難しくなるので、防水パンに穴をあけて、そこから脚を差し込んで調整するという特殊な作りとなっています。

防水パンの脚とは、この写真の赤丸で囲んだものです。下にはゴム付きのプレートを敷き、脚はナットを回転することで高さ調整をして、防水パンのレベル(水平性)を確保することができます。

防水パンの上に置かれている四角いプレートが時にゴワゴワしているコンクリートスラブ面に平滑面を作るためのプレートです。

そしてスチール製の脚がこちらとなります。

防水パンの穴の使い方ですが、このように穴から手を差し込んで手前右にあるレンチ(スパナ)で占めてレベルを調整してゆくのです。そして…、

脚を設置した後はこの樹脂板を使って穴を塞ぐのです。

防水パンの穴の淵に接着剤を充填して、

このようにフタをしてゆくのです。フタのサイズはそれぞれ似ているので、事前に暗号のような印をつけておいて、セッティングを間違わないように工夫しているそうです。
最初のご紹介したシャワーブースでは、防水パンにすでに床用のタイルが敷かれていましたが、こちらは大型サイズで、かつ段差もある特殊な作りなので、この上から床タイルを現場施工で貼ってゆくのです。これも普通はスピード重視と現場作業をなるべく少なするために工夫しているオーダーユニットバスでは特殊な作り方と言えるでしょう。

床に段差があると書きましたが、実はこの家族用浴室には置き型の浴槽を設置するのです。これまでの在来工法の浴室では置き型浴槽を設置したことがありますが、オーダーユニットバスでの置き型浴槽は初めての経験で、東京バススタイルさんともかなりの事前打ち合わせを致しました。因みに浴槽はSTR18585-VS(バステック社)のものです。

写真ではコンパクトに見える浴槽ですが、幅が1850ミリ、奥行きが850ミリ、深さが420ミリで、重さが88キロもあるかなりの大型サイズの浴槽で、浴室の入り口のスチールサッシを取り付けてしまうと、内部に運び入れらなくなってしまうので、床を仕上げた後、ベニヤ板で作った養生で囲った浴槽を入れて、この状態で浴槽を動かしながらタイルを現場で貼ってゆくことになっているのです。

こちらはお子さまの寝室側から見た家族用浴室の様子です。通常は、後日手すり等を取り付ける可能性がある場所だけベニヤ板を張る仕様なのですが、今回は重量のあるタイルを現場張りするので、ベニヤ下地を一面全部に入れてくれています。

こちらは内部から見た浴室の天井です。梁が下がっており、その下がり梁を避けながら最大限の天井を張るために、ギリギリの寸法まで攻めてくれています。

洗面側のスチール枠が入った家族用浴室がこちらです。まだ浴槽は養生されたままですから、壁タイルは貼られていませんね。そしてこのスチール枠もちょっと特殊な仕様となっているのです。

こちらは浴室内部から見たスチールサッシとガラス窓とガラス扉です。

通常はステンレス鏡面仕上げか、ステンレスヘアライン、凝った時にはステンレスバイブレーション仕上げまではしたことがありましたが、今回はカラーステンレスで色を付けているのです。

このバイブレーション仕上げにシックゴールドという色味をつけて貰っているのです。因みに、このカラーサンプルは日本遠東ケーピーケーのものです。

ステンレスヘアラインだと可能なスチール枠の加工が、カラーステンレスだとできないこともあるので、枠加工もかなり工夫をして貰いました。

実はこのスチール枠、浴室の内側の枠はオーダーユニットバスと一体で、東京バススタイルに作ってもらういましたが、洗面側の外枠はリフォーム工事をお願いしている施工会社の青さん経由で施工してもらうのです。写真は内枠だけの段階のものです。

ただ、カラーステンレスの色味が違うと悲しいことになってしまうので、青の現場監督の織田さんが加工図を作って、枠の材料の手配は東京バススタイル、そして枠製作と取り付けは青お願いしました。

このようにして苦労して作ってもらった外枠が付いた状況がこちらです。とは言いつつ、まだ白い養生テープが張られた状態なので、良く分かりませんね…。

養生テープが外れていた窓枠を下から見上げた写真です。養生テープを一気に剥がして全貌を見たくて溜まりませんが、工事途中で傷がついてしまったら大変なことになるので、しばらくの我慢です。
まだ、シャワーブースも浴室も内部のゼリージェタイル張りもあるので、しばらくは水回りには大注目です。
2024.10.11
石膏ボード張り_端部の処理方法
[新宿区T邸]
コンセントとスイッチ、照明の位置のお客さま確認が終わった新宿区T邸の現場では石膏ボード張りの段階となっています。

天井の高い大きなLDKはすでに石膏ボード張りが終わっているように見えますが、これはまだ一枚目の石膏ボードです。今回は個室以外は塗装仕上げとなっており、石膏ボードは2枚張りなので、これから2枚目を張ってゆくところとなっています。

こちらはキッチンダイニング周りの石膏ボード張り状況ですが、出隅(二つの壁面が出会う角のうち、出っ張った角のこと。因みに凹んだ角のことは「入隅」と言います)のコーナー部分や巾木上に施工会社青のこだわりが見えます。通常の出隅はフクビの樹脂製のコーナー見切り材を使っていますね。

壁面をモールディングのように凹ませるデザインの壁については、ボード一枚張りの上からエースライト(けい酸カルシウムの結晶であるゾノライトに合成樹脂、ガラス繊維などを混ぜ込んだ無機質ベースの基材を成型した材料・太平洋マテリアル)を大工さんが張ってくれています。

少し後の様子ですが、このように框部分は全てエースライトです。石膏ボードは切断した端部が弱く、それを補強するとためにコーナー見切り材を使うのですが、その見切り材の分だけ出っ張ってしまうので、今回はエースライトを使ってくれたとのことです。

中央のパネル部分は一枚物のベニヤ板を貼っています。ベニヤ板は湿気と乾燥で収縮してしまうので、コーナーなどをジョイントするような張り方にしてしまうと、後々隙間が空いてしまうのです。

それに対してエースライトは無機質基材で作られたものなので、湿気や温度の変化で収縮することが無いので、このような使い方が可能なのです。

今回はかなりエースライト材を多用してくれています。これはフラットで透かし目地を入れる巾木の納まり部分にエースライトを大工さんが張ってくれている様子です。

ディテールスケッチの左側がこれまでの施工方法ですが、今回青の現場監督の樋口さんは、右のように木製巾木の上にエースライトを入れて、ボードとのジョイント部分を上に持ってゆくことで、巾木周りをスッキリ見せることにトライしてくれています。

造作家具や建具と巾木がかなり入り組んだ玄関周り部分にも細かくエースライトを張ってくれています。

こちらはキッチン裏のユーティリティーコーナーですが、壁の中央をデザインクロス張りでしあげることになったので、その見切り替わりとしてエースライトの枠を作ってくれていました。

リビングの柱型には、モールディングの装飾をつけています。

材料は先ほどと同じエースライト材のモールディング材です。やはりこれも木製だとコーナーのジョイント部に収縮で隙間が空くことを防ぐための工夫です。

ディテールをアップで見るとこのようになっています。石膏ボードもモールディングも後日、白く塗装するので、一体感のある仕上がりになってくるハズです。

こちらは石膏ボードとは関係gがありませんが、主寝室のベッドのヘッドボード側の造作です。アクセントとなるクロスを目地底にまで張り込むことで、パネルを貼ったかのように見せる仕上げのための下地です。

こちらは事前に青の樋口さんがクロス屋さんを現場に呼んで、設計担当の岸本さんと目地幅の寸法を幾つにすれば、うまく目地底までクロスを張ることができるかを打合せしていた時の様子です。ビニールクロスの性質によっても変わってくるそうですが、今回選んだクロスの場合は、6ミリの隙間をあけて貰えれば、きれいに張れるだろうとのことになりました。

ベニヤ板同士の隙間だけでなく、天井や入隅の壁、巾木との間も全て6ミリ透かしてベニヤ板を張ってもらいました。

もう一つ現場の樋口さんが考えてくれた工夫がこちらの天井点検口です。これまではアルミの細い枠の点検口を使っていましたが、細いといっても金属質の枠が見えてしまっていましたが…、

今回樋口さんが探してくれたのは、完全フレームレスで、フレーム部分と開口部分まで全て塗装で仕上げることができるカイザー社のフレームレス点検口です。完全に仕上がった時にどのように見えるかはまだ分かりませんが、仕上がりが楽しみです。
2024.10.07
インテリア完成写真とCGの違いについて
[ザ・ライブラリー]
ザ・ライブラリーの紹介ブログです。
ザ・ライブライーでは高性能CGソフトを使って、かなり実物に近いコンピューター・グラフィック(いわゆるCG)を作って、お客さまとのデザイン検討や素材打ち合わせに活用しています。打ち合わせ中に作ったCGも、打ち合わせの流れの中で素材が変わったり、家具を変更した場合、それも最新版にアップデートしながらお客さまに3Dで確認して頂けるように準備をしています。そんな施工前に作られたCGと、リノベーション工事が完成した後に撮影した実物写真の違いを、ブログで比較考察してみましょう。

こちらはCGです。これだけを見るとかなり素材感があり、正面壁の大理石調タイルの質感や、床に敷いたラグの凹凸感まで表現されていますね。今回の千代田区O邸の打ち合わせは、まだ建物が完成する前からスタートしていましたので、実物としては何もない段階で、ここまで具体的なCGで打ち合わせをできたことは、お客さまのOさまご夫妻もとても喜んでくださいました。

そしてこちらは完成後の実物写真です。当然ながら造作家具の木目やソファのクッションファブリックの質感がより高く、さらに細かく見てゆくとダイニングテーブル上の照明の煌めきや、植栽の影の表現なども奥行き感がありますね。

因みに、同じようなリアルな空間の写真でも、こちらは人工照明を全て消して、窓からの自然光だけで撮影してみた写真です。素材の色味や質感は一番良く表現できますが、光が届きにくい部屋の奥の空間は色彩が乏しく、少し寂しい雰囲気の写真になってしまいます。つまり、リアルな写真といっても撮り方によっては全く違った雰囲気にもなるのです。

同じ空間をリビング側からダイニング側を見返したアングルのCGです。一度リアルな写真を見た後だと、リビングのラウンジチェアのファブリックの張地が固くて偽物っぽく見えてきますね。手前左側のテーブル上の雑誌や、左側壁面のワインセラーやカウンター上の小物があることでリアル間を補強してくれていますが、やはりちょっと何かが足りない感じがしますね…。

ほぼ同じアングルの実物写真です。写真も実はRAWデータで撮影したものを、歪みの補正や色味をなるべく肉眼で見たものに近づけるためにフォトショップのライトルームソフトでかなり補正しています。CGと見比べると、壁や天井の色味が複雑で、ラウンジチェアのファブリックのニュアンスや、影が重なった部分や折り下げ天井の鏡張り箇所などのディテール感もリアル写真の方が数段リアルですね。

因みに、こちらの写真は、NIKONの一眼レフカメラD7500に超広角ズームレンズのAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRをつけて撮影した「加工なしの生写真」です。そういった意味でもホームページやブログにのせている実例写真もリアルと言いつつも、歪みや明るさ、色味などを調整しているので、かなりの加工臭がしますね(笑)。
以下、さらにリビングダイニングだけでなく、洗面所や玄関や子ども部屋といった特徴のあるお部屋のインテリアCGとリアル写真の比較について、こちらのブログで書いています。