Author Archives: Kenji Kagami
2016.11.04
一番町A邸リノベーション完成 ビフォー&アフター
[一番町A邸]
ここまでリノベーション工事が進んできた千代田区一番町A邸の工事が完了いたしました。デザインアドバイスとしてお手伝いしたプロジェクトでしたので、設計検査ではなく施主検査への同行という形で、検査に立ち会って参りました。
検査には、お客さまのAさまが来てくださり、工事をお願いしたリフォームキューの森井さん(設計&営業)と富田さん(施工管理)が主体で進めてくれました。
とはいえ、細かいチェックは、事前に僕らデザイン側で一通り見ていたので、それらのポイントを説明する程度で終わり、あとは家具をどのようにレイアウトするか等のお話に始終してしまいました。
玄関扉を開けてすぐに見える玄関ホールです。光を取り込む工夫をしているので、以前に比べて明るく開放的になったことをAさまが褒めてくださいました。
浴室と洗面脱衣の位置交換をして作った、少し変形の浴室です。オーダーユニットバスの東京バススタイルにお願いした浴室の解放感にもとても満足して頂くことができました。
この後は、その後家具を入れて頂いた状態で、ほぼ同じアングルの写真を比較したビフォー&アフターをご紹介いたします。
赤っぽいフローリングと壁面が目立っていたリビングはフローリングをライトグレーのものに交換し、タイルやカラーガラスを使って、凹凸感を強調したデザインとしています。折角の天井高さが活かされていなかったので、照明を仕込んだボックスを折り上げ部分に浮かせることで、天井の高さを強調してみました。
一番変わったのはこのアングルだと思っています。扉で閉じられていたクローズドキッチンの壁を撤去することで、冷蔵庫を家電置き場だけは隠されていますが、それ以外が解放さたオープンキッチンになっています。
壁面のガスレンジとシンクがついたキッチンカウンターは、位置をズラしていますが、基本的には同じユニットを再利用しています。ステンレスの天板は磨き直して、扉は全て取り外して塗装し直して、取っ手も少しモダンなものへと変更してみました。以前は冷蔵庫の奥に洗濯機がありましたが、これは洗面に移動しています。
柱型が目立っていたリビングのコナーですが、その柱型と窓を絡め取るような木製フレームを廻して、カラーガラス張りのテレビ置き場を新たに作ってみました。下部にはAV機器を収納するボックスも埋め込んでいます。柱型そのものにもカラーガラスとミラーを貼って、存在感を弱めています。
玄関からLDは入ってすぐのエリアです。中途半端なサイズのニッチがありましたが、背面の靴収納を作り直すことで、半透明の飾り棚を作りっています。ダイニングテーブルを置く位置に合わせて照明計画も考え直しています。
玄関側から見ると、このような違いになっています。何より、閉じるとホールに光が差し込まない構成でしたが、扉を天井いっぱいのスチールサッシとガラスで作ることで、開放感が演出されています。扉が隠されてしまっているので判りにくいのですが、スチールサッシの左横にこじんまりとはしていますが、コート掛けも作っています。
キッチン部分に次いで大きく変わったのが、この浴室と洗面でしょう。浴室と洗面脱衣の位置を取り換えることで、浴室は少し小型になりましたが、かつてはシングルボウルだった洗面にダブルボウル+洗濯機置き場を作ることができました。上の写真は、ほぼ同じアングルで撮影された写真であることが判るでしょうか?
こちらも同じアングルからの写真で、廊下からの扉の位置は全く変えていません。マンションで、洗面と浴室、両方に窓があって外光が入ってくるのも珍しい構成でしたので、それは継続して活かしています。
最後はトイレ空間です。といっても、こちらはそれほど変わっていませんね。手洗いボウルが小型で、手首までは洗えないものだったので、カウンター幅を10センチ増やして、大き目のボウルに変えています。また、キッチン背面の壁は、汚れも取りやすく、インテリア性も高いキッチンパネルを貼っています。
2016.11.01
大理石&大理石調タイルの使い分けについて
[青山P邸]
青山P邸の工事現場では、大理石と大理石調タイルを張る作業が始まっています。
玄関ホールとダイニングの間にある壁には、グリジオ・ビリエミという大理石が貼られています。右手側に縦に一本スリットが入っているのが見えますが、そこはステンレスのコの字型の金物が入っており、後日ガラスが取り付けられる予定です。
こちら廊下突き当りの壁は大理石調のタイルです。アドヴァンのイマルミ・グリジオという600角のタイルです。
玄関からの廊下がここで突き当たって、右へと曲がるとプライベート廊下へと変わってゆきますが、その結節点に当たる部分にこのタイルが貼られています。
洗面所と浴室には、やはりミネラルDリビング(アドヴァン)という大理石調タイルを使っています。
タイル張り作業を接近してみた写真です。タイルの目地幅が均一になるように、このような十字型の黒いスペーサーを挟んで張ってゆくのです。本物の大理石を壁に貼る場合は、「眠り目地」といって目地幅をゼロにすることが可能ですが、硬くてその分脆いタイルでは、最低でも2ミリほどの目地が必要になってくるのです。因みに、床の場合は特にマンションでは二重床となると、人の荷重で揺れるので、大理石でも眠り目地はできません。
キッチンのガスレンジ正面に当たる壁は大理石調タイル張りで、
キッチン床は本物の大理石張りです。
玄関床の本物の大判大理石張りで、
そことフラットに繋がった通り抜け型シューズインクロゼットのタタキ部分にも大理石を貼って貰っています。
来客用トイレの床と壁も大理石張りとしています。
本物の大理石が手前に張られていて、奥に大理石調タイルが貼られている様子です。
やはり色味や柄などに由来する迫力は、真正の大理石の方が迫力があります。ただ、石の厚みや貼る職人さんの手間、費用などを考えると、どこもかしこも大理石という訳にはいかないのです。その時に、奥の方に見える壁や水が掛かるような壁(本物の大理石は水が染みこむので、洗面やキッチンに使う場合は十分は撥水加工が必要になるのです)には注意が必要なので、そんな部分に大理石調タイルを使うことで、上手くメリハリを出すようにしています。
また、部屋に入ってすぐの部分などで、目につきやすい個所や間近でテクスチャーが見えるような場所にはなるべく本物の大理石を使い、ちょっと離れた場所や頻繁に水拭きするような個所には大理石調タイルと使い分けるようにしています。
3日後には、大理石壁にガラスの袖壁が取り付けられていました。職人さんが間違って突っ込まないように、養生テープがバッテン状に張られています。職人さんがちょうどガラスを固定するためのコーキングを打っている最中でした。やはり本物の大理石は光が当たると特にきれいに見えます。
ガラスコーキング作業を反対側のダイニング側から見返した様子です。
先ほどタイルが先行して貼られていた洗面脱衣室には、ダブルボウルのシングが乗る洗面カウンターが設置されていました。その上部にタイルが貼られていないのは…
こちらで調整中のメディスンキャビネットが取り付けられるからです。両側には鏡付きの扉の収納キャビネットで、中央にはチーク突板の飾り棚が付いたちょっとおしゃれな構成としています。
来客用トイレにはウォールナット突板張りの手洗いカウンターが設置され、
SICには大容量の靴収納棚が設置されました。
2016.10.28
レザー張り建具のディテール研究&工場訪問
[元麻布I邸]
元麻布I邸の玄関ホールからリビングへの建具を人工レザー張りにしたいと考えています。これまでも、幾度か家具の天板や建具などに人工レザーを張って貰った経験がありますが、スティッチを入れた際の糸の細さや、その間隔といったディテールのことや、どのようなことができて、何ができないのかを研究したいと以前より思っていました。
今回の建具製作をお願いしている現代製作所の藤田さんから、レザー加工を依頼している工場を紹介して貰い、スタッフの前田君と一日掛けて栃木県の工場まで打ち合わせ兼見学に行って参りました。
先方では、東京からわざわざ設計者が来るというので、何を知りたがっているかすら判っていないようでしたが、欧州のハイブランドで使われているレザー張りの建具や、レザーを使った取っ手ディテールなどの写真を見て貰いながら話をさせて貰ったところ、食いつくように写真を見ながら、これは出来るが、あれはどうやって作っているか判らない等、工場の人たちが集まって話をしてくれました。
事前に、現代製作所経由で制作を依頼していたサンプルを見せて貰いながら、スティッチの線が曲がってしまう理由やコーナーでスティッチの間隔を合わせることが如何に難しいかの説明も聞かせて貰いました。
スティッチの線が曲がってしまう理由は、下地として使っているベニヤ板の繊維にあるとのことでした。先ほどのサンプルの背面を見たところですが、ベニヤの繊維の方向に沿って縫っていると、微妙な力具合で繊維に負けてしまうそうです。
それでは、下地をベニヤ板代わりに繊維質がないMDFやアクリル板で作ったらどうかと聞いてみたところ、試してみる価値はありそうだと言ってくれましたが、硬い下地だと針が折れてしまう可能性もあるとのことでした。
実際に作業をしているところを見せて貰いたいとお願いして、2階の作業所に連れて行って貰いました。
ミシンは家庭用ミシンを大きくしたようなものでした。貼る下地に合わせて作った大きなT定規(T字型のガイド)のようなものを使って、手で支えながらゆっくり5センチずつを縫ってゆく地味な作業でした。
こちらが縫製用のミシンです。かなり使い込まれた年季物でした。
厚手の下地だと、縫ってゆくうちに針が熱を帯びてしまい、そのことが原因で糸が切れてしまうことがあるそうで、職人さんが独自に工夫して、ミシンの上にオイルポットを取り付けて、糸をオイルに潜らせて熱を帯びることを防いでいるそうです。
濃い木のガイドも職人さんが作ったもので、それに沿って大きなレザーパネルを動かしてゆきます。表面が濡れているように見えているのがオイルの跡で、縫製後にきれいに拭えるそうです。
こちらは二つの針と裏地テープで、二枚のレザーを継ぎ張りできるミシンです。
一枚のレザーにこちらのミシンを使うと、8ミリ間隔でスティッチを入れることができます。
こちらは職人さんが今まで作業しながら作った型紙です。企業秘密だから、写真は撮らないでと最初はいわれましたが、この写真を見せても、誰も何だかすら判りませんよと言ったところ、笑って許してくれました。
工場には、沢山の人工レザーや厚手の布のロール生地がストックされていました。
レザーを縫い合わせる糸もあらゆる色のストックが置かれていました。
こちらが工場の1階の様子です。昔は技術を活かして、色々な細工をした家具やパネルなどを制作していたそうですが、残念ながら今のレザー家具の主流はファミレスのベンチ型シートがほとんどで、作り甲斐のあるものが少なくなってきたと嘆いていました。それだけに、欧州のレザー家具や金物などの細工は刺激になったようで、僕らが依頼したレザー建具も良いものに仕上げたいと力強く言ってくれました。