Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

四方向通り抜けキッチンの横浜伊勢山Y邸プロジェクトがスタート

[横浜伊勢山Y邸]

新しいプロジェクトが横浜市西区伊勢山で始まります。築年数5年未満の築浅マンションで、広さは165平米のお部屋です。

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こちらは、始めにご相談があった際に、プレゼンテーションで使ったリフォーム後のイメージスケッチ提案図です。その後の打ち合せで、少しずつディテールや色味が変ってきましたが、概ねこの方向でデザインが纏まってきています。

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こちらが現状写真です。大きなLDKは、広さは十分にありますが、大きな2枚の引き戸でリビングとダイニングが仕切れるようになっていることで、却って狭く感じてしまうことや、

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こちらの写真に写っているオープンスタイルのキッチンの動線が不便で、買い物をして帰ってきた際には、このLDを通るか、大きくプライベート廊下を回り込まないとキッチンに辿り付けない構成をなっていました。

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こちらで考えたリフォーム案では、LDは仕切りをなくして一体の大きな空間として、動線上の問題があったキッチンは、図のように4方向から抜けられるデザインで考えています。当然、既製品キッチンは使えないので、オーダーキッチンで組み上げる予定です。

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お客さまは、以前からこの規模のマンションを中古でご購入して、僕らにリノベーションデザインを一括して任せてくださり、グレードアップ工事完成後に再販売なさるというビジネスを展開しているYさまで、不動産購入や販売のお手伝いもしてくださっている不動産会社のNさんもご一緒に打ち合わせをさせて頂いております。

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床に並べられた素材類が、今回のプロジェクトで使いたいと考えて現地に持ち込んで仕上げ材サンプルです。

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使いにくかったキッチンカウンターで、プランをどのようにリフォームすればよくなりそうかを、Yさまにご説明している様子です。

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以前、こちらのマンションの近くでリノベーションのお手伝いをした横浜市O邸のインテリアイメージがお好きだとのことでしたので、そちらの竣工写真を見て頂きながら打ち合わせをさせて頂きました。

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不整形な玄関ホールは、天井の高さも変えて、玄関&玄関ホールとして作り直す予定です。

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こちらの来客用トイレも、面積に余裕がある割に、手洗いカウンターが小さく、コンパクトに纏まり過ぎているので、長いカウンターに大き目の手洗いボウルを設置できるレイアウトにリノベーションする予定です。

 

複雑に絡み合った造作家具と建具と壁

[一番町A邸]

一番町A邸で、担当スタッフの前田君が一番デザイン検討で頑張ってくれたリビングダイニングの造作家具の設置が終盤を迎えています。

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リビング正面に見える壁は、左からクロスパネル張りの壁、スチール製の特注建具、柱型をカバーする羽目板、背面の玄関ホールとを区切る半透明な飾り棚、そして右端へと延びてゆくキッチンカウンターという構成になっています。

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それらの中を、何本かの目地が段違いになりながら通り抜けるようなデザインになっているのです。
キッチンカウンターの下端の線が、飾り棚の甲板と揃って、その下端の線が、柱をカバーする羽目板を通り抜けて、スチールサッシやクロスパネル張りと揃ってゆくというデザインです。

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反対側の玄関ホールから見ると、単純に親子のスチール扉としか見えませんが…dsc_3567_pt

反対側に回り込むと、スチールサッシの枠センターラインとクロスパネル張りのラインが揃ってきます。

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凹んだニッチの個所のディテールは、以前のブログで紹介したもので、そこにLDK関係の照明スイッチが並んでいます。

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そこから細かく段差を付けながら、こちら手前のキッチンカウンターまで目地が繋がっているので、施工する側も相当に大変なようです。

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途中の飾り棚の個所は、四周枠を付けないで、棚板だけが浮いているような意匠としているので、取付け方法も工夫してくれています。

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縦桟、横桟共に、このような溝を事前に突いておいて、左側に固定されているような雇い実(ヤトイザネ)のような定規に差し込んで固定するという方法です。

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右奥から縦桟を差し込んでいる様子です。木工用ボンドと見えない個所へ打ち込む隠し釘で固定してゆきます。

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こちらは、20センチほど飛び出ているキッチンカウンター甲板の延長部分の支えを、下から見上げた写真です。その下端のラインが、左側の違い棚の甲板の上端と合っているのが判るでしょうか…。

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他にも、厚み6ミリほどのキッチンパネルを突き付けのように出隅で納めるために、ステンレスの見切りを入れて貰ったり、

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鏡張りの壁のラインと、下がり天井のラインを揃えて、その出隅で2色のクロスを貼り分けて貰ったりと細かく施工して貰っています。

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キッチンカウンターの右奥の方では、窓と絡んだテレビ置き場を作って貰っています。

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まだ組立て途中で判りにくい構成ですが、PSを囲むように木製フレームが回り込んで、その一部が20センチほど出っ張って、そこがテレビ置き場になる算段です。PSの隙間を使ったAV機器収納がその下部に差し込まれる予定です。

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トイレには、天然大理石を使った手洗いカウンターが設置されました。トイレ背面壁は、キッチンパネルをステンレス目地で張り分けています。

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水避けで甲板を立ち上げた上には、木製枠の鏡が入ります。

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ダブルボウルのセンメンカウンターと、背部の洗濯機収納も設置されていました。

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マンションで、窓付きの洗面脱衣室は珍しいと思いますが、ちょうど窓部分をセンターに、左右に手洗いボウルを振り分けています。

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窓の左右に振り分けたメディスンキャビネットの上部には、トランス付きのLED間接照明を入れています。

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リビングの大きな折り上げ天井には、ブリッジ状の照明ボックスも取りつきました。

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一番奥の主寝室では、床カーペット張りのためのグリッパー取付けも始まっていました。
ここからは造作家具だけでなく、壁や床仕上げ材も一気に張り上げて、施主検査そして竣工へと進んでゆきます。

 

 

 

 

 

塗装下地のパテ処理の重要性について 

[青山P邸]

青山P邸の現場では、壁と天井が塗装仕上げなので、その下地作りでパテ処理が行われています。

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こちらはダイニングの天井のパテ処理状況ですが、中央に黒くスリットが入っているのが照明ボックスです。木製のボックスを天井とフラットになるように埋め込んで、周囲の石膏ボードとの継ぎ目をパテ処理してゆきます。

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170平米と広いマンションなので、奥の部屋から順序立ててパテ処理をしているので、こちらリビングダイニングはまだ一度目のパテ処理最中です。最初は、石膏ボードを固定しているビスの頭部分をパテで埋め、ボードの継ぎ目(ジョイント)は寒冷紗を貼ったあとでつぶしてゆきます。

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こちらはパテ処理が先行して行われている奥のプライベート廊下と個室部分です。ビスとジョイントを埋めた後、二度目のパテでより幅広く処理範囲を広げている様子が判りますね。

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廊下に面した個室の建具周りは、さらにパテ処理が進んで、ほぼ総パテ(全面パテ塗り)状態まで行っています。総パテまでする職人さんは少なくなってきていますが、ここまで進むと、すでに塗装されたような状態に見えてきます。

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これはリビングの一角に作っている書庫コーナーの天井ディテールです。目地の個所で、塗装色を塗り分けるので、プラスチック製の目地を入れて貰っています。塗装用パテ処理では、このボードとプラスチックの継ぎ目もパテで一体化させてゆくのです。

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これがリビング側からみた書庫コーナーです。ニッチ状に凹んだ箇所に本棚が組み込まれきます。塗装で仕上げるメリットは、天井や壁が一体感を持つことだと思っています。両者がシームレスに繋がることで、空間性を強く感じることができるのですが、その際にどれだけ丁寧にパテ処理したかで、後々ヒビが入ってくる度合いが違ってくるのです。

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こちらはまだボード張り後何もされていない玄関ホールです。壁と天井に細いスリットが入っていますが、ガラスの袖壁を嵌め込むC型チャンネルが埋め込まれた状態です。

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玄関框と姿見の鏡が貼られる凹みと木製幅木の取り合いディテールです。こういった異種素材が出会った箇所は良い丁寧に考えてゆくことで、空間の一体感が強まると思っています。

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こちらは浴室のステンレス枠とタイル張りの枠の取り合いです。白いシールで保護された部分は鏡面仕上げのステンレスで、そこに突きつける形でタイルが貼られる予定です。
塗装下地のパテ処理や、細かいディテールの組立てと目立たない工程が続きますが、この過程をどれだけ丁寧に進めるかで全体の仕上がり感のグレードが決まってくるので、本当に大切なプロセスだと思っています。