Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

レザー張り扉&パネルの作り方

六本木N邸

これまで使ったことのない素材、レザーを使った扉とパネルを六本木N邸の廊下に採用することになりました。最近の僕らがお手伝いするプロジェクトでは、木質系素材(突板、フローリング材、羽目板)と石系素材(大理石、御影石)とガラス系素材(鏡、カラーガラス、透明ガラス)に塗装仕上げを混ぜた4つの素材で空間を構成してきましたが、もう一つ新しい素材を使ってみたいと思っていて候補に挙がってきたのが、このレザー素材です。

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廊下に来客用トイレがあるのですが、その扉を如何に目立たせないか、周囲の壁と馴染ませるかを考えている過程で、横の壁と扉を合わせてレザーバリのパネルで作るアイデアが生まれました。扉を隠せるだけでなく、これまでにない新しい質感を空間に加えることができると思っています。展開図の中央に灰色で塗られた箇所が、レザーパネルとレザー扉です。

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平面的にみるとこのようなディテールとなっています。隣のパネルの目地と扉の隙間の寸法を合わせたいことと、扉のヒンジを隠したいことを両立させるために、扉の下地にアルミパネルを組み込むことになりました。

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実はここまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。レザー張り家具を得意とするトリシュナ・ジバーナの三浦さん、施工をお願いしているリフォームキューの岩波さんと坂本さんに事務所に来てもらって、幾度か打ち合わせをさせて貰いました。

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その時のディテールスケッチがこれです。扉部分の隠し丁番と戸当たりとさらに、トイレなので鍵も必要になっており、それを如何にパネルと目地を合わせて作るかは、なかなか難しく、皆で頭を悩ませながら、あーでもないこーでもないと検討を重ねてきました。

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ようやくできてきたレザー張りをする前の下地状態のパネルのディテールです。左は戸当たりと目隠しを兼ねたアルミのツバが付いた扉の端部詳細、右側はレザーをパイピングで留める扉小口部分と、特注の取っ手をはめ込むための欠き込み部分です。ここまで作った下地パネルを一度現場で仮に設置してみて、寸法的な調整をしたうえで、レザーを張ってもらう工場に持ってゆきます。

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こちらは特注の取っ手です。焼き付け塗装できれいに仕上げてもらっています。
いよいよこれからレザーを張ってゆくのですが、レザー張りの工場は色々と企業秘密(?)があるらしく、見学はさせて貰いましたが、写真を撮る許可は得ることができませんでした…。
どのように仕上がってくるかはしばしお待ちください。

 

インテリアに合わせた特注置き家具のデザイン方法

六本木N邸

六本木N邸プロジェクトでは、造り付けの造作(ぞうさく)家具だけでなく、置き家具もデザインさせて頂くことになりました。ソファーは、座り心地を左右するクッションの性能があまりに専門的なことで、またやダイニングチェアは軽さと強度と耐久性に関係する構造などの問題で、簡単にはデザインできませんので、今回はリビングボードとチェスト、さらには半分造作ともいえる寝室のヘッドボードをデザインさせて頂くことになりました。

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デザインの手順としては、まず平面プランと展開図を見ながらが、家具の大まかなサイズを決めてゆきます。その後家具のボリュームに引き出しや棚板、見せる収納などを落とし込んでゆきます。

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このスケッチをベースにして、家具屋さんに素案(タタキ台)となるラフ図面を描いてもます。しばらくは、メールでスケッチを通して、使い勝手や細かい収まりなどの点を中心にやり取りしてゆきます。

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ある程度に詰まってきたところで、家具屋さんの担当者に事務所に来てもらい、打ち合わせを行います。今回はこれまでも幾つかの置き家具を作ってもらった横浜のYPOの広瀬さんにお願いしています。

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先方は家具作りのプロですから、2~3度のメール打ち合わせで、ここまできれいな図面を作ってくれています。とはいえ、この段階ではまだ家具のプロポーション、機能性、さらには作り方の整合性も取れていないので、その部分を打ち合わせで詰めてゆきます。

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こちらは同時にデザインすることになった、主寝室のベッドの枕側にセットする、後付けのヘッドボードの初期イメージスケッチです。折角にデザインする機会を作っていただいたので、枕が接するボード部分はレザーの緞子張り(どんすばり)にしてサイドテーブルやコンセント、照明なども組み込むことを目論んでいます。

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スケッチだけでは説明が不十分なので、一度こちらに広瀬さんに来てもらって、こちらの考えをお話させてもらいました。すでにこの時点で、ディテールや素材の取り合いなどについてのディテールスケッチも始まっています。

 

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広瀬さんが図面化したものを幾度かメールで質疑のやり取りをした後に描いてくれた製作図です。この段階で、すでに家具として作れる状態になっていますが、まだ、ディテールの詰めが甘かったり、素材の選択が終わっていないので、それらを最後の打ち合わせで詰めてゆきました。

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ある程度のサイズの家具となると、図面だけの検討ではサイズ感や使い勝手が見えてこないので、現場で簡易的なモックアップを作ることもあります。こちらはダイニングテーブルの横に置くサイドチェストです。現場の段ボール紙を使って、即興的に作ったものですが、お客さまにはできたときの使い方が想像できて、とても判りやすくて楽しかったとご好評でした。
素材を決定して、塗装の色番号&ツヤの指定、取っ手金物をデザインしたうえで見積りを作ってもらいました。お施主さまに見積りの承認を頂けたので、現在家具を作ってもらっている最中です。N邸には、ミノッティのソファーやフレックスフォルムのダイニングテーブル、エ・インテリアーズのピエロ・リッソーニデザインのダイニングチェアなどの超ハイグレード家具が揃うので、その中でどのように見えてくるのか、出来上がりが楽しみです!

 

「仕事にできるかマンションリフォーム」セミナー@東京建築士会

リフォーム

東京建築士会の住宅問題委員会からのお声掛けで、ビジネスとしてのマンションリフォームについてのせセミナー、その名も「仕事にできるかマンションリフォーム」というお題でお話をさせて頂きました。

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定員一杯とはならなかったようですが、70名以上の方々が参加してくださり、熱心に聴講してくださいました。ほぼ全ての方々が建築士の有資格者というプロ中のプロの中で、どこまでビジネスとしてのマンションリフォームについてお話してよいのか、随分迷いましたが、今の僕らが判っていること、知っていること、ほぼ全てを公開することといたしました。

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元々、マンションリフォームにターゲットを絞って設計事務所を始めた訳でなないので、どのような経緯でマンションリフォームに特化したのかから説明を始めました。チャートにある白金台W邸と鵠沼W別荘は、ちょうど同じ時期に同じお施主さまのご依頼で、白金台にあるマンションのリフォームと神奈川県藤沢市に戸建ての新築別荘を設計監理した際の経験を纏めた比較シートとなっています。

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その他にも

  • 具体的なマンションリフォームの設計手法
  • 建築士がどのようにマンションリフォームに参入すべきか
  • 建築士ならではのマンションリフォームとは
  • マンションリフォームのお施主さまのイメージ像

等についてご説明させて頂きました。

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始めに、僕の方で70分のお話をした後、建築設計工房パッソ・ア・パッソの鈴木さんがマンションリフォームの実務やお施主さまとのコミュニケーション方法を、生き生きとした失敗談なども交えてお話をしてくださいました。写真は、鈴木さんのお話の後に質問をお受けしている様子です。
ここでは、より実務に際した具体的な質問が多く、

  • 施主プレゼンのどの段階で設計料や設計契約の話をするのか
  • 施工業者を選定する際に注意している点について
  • ウェブで集客する際にどのようなキーワード設定をしているのか

など、こちらとしてもここまでお話してよいのかという際どい回答になりました…。

まだ、アンケートの集計待ちではありますが、概ね好評だったとのことを事務局側から伺っており、まずはホッとしております。お声掛けくださった住宅問題委員会の皆さま、事務局としてサポートしてくださった東京建築士会の皆さま、そしてご興味を持ってセミナー聴講に来てくださった皆さま、どうもありがとうございました!