Author Archives: Kenji Kagami
2023.10.25
新規プロジェクト_元麻布J邸がスタートしました
[元麻布J邸]
以前から弊社にいつかはリフォームを依頼したいと考えていらしたお客さまのJさまから、元麻布の築25年、120平米のお部屋をご購入なさったとのこと、リフォームのご相談を頂きました。メールかお電話でご相談を頂くと、まずは3~4回ほどメールのやりとりをして、マンション名や広さなどの情報と間取り図を送ってもらうようお願い致したうえで、初回の無料相談の日程を決めさせて頂きます。
通常のリフォーム会社であれば、まずはお目に掛かった際にリフォームのご要望と費用とスケジュール感を伺っていくことになるようですが、弊社の場合はあまり細かいご要望は伺わない段階で、どんなことが出来そうかをプラン上だけでシミュレーションしてリフォームの仮案を考えておくようにしています。
こちらの図面は送って貰っていたマンション竣工時の図面に、コンクリートで撤去できない躯体壁と柱を青で、基本的には移動できないPSを緑に塗ってみたものです。
メールで伺っていたJ家のリフォームの簡単なご要望としては、
- 2LDKを3LDになさりたいこと、
- キッチンをオープンになさりたいこと、
- 廊下が広いので、その空間を有効活用して欲しいこと、
- SIC(シューズインクローゼット)が欲しいこと
の4点でした。
こちらが初回打合せの前日までに考えて置いた仮のリフォーム案のA案です。前提として、現地調査をする前で、設備や構造の図面を見る前のプランなので、実現率は80%程度の確率のものであることをご説明の上でお見せ致しました。特徴としては、
- 2LDK+DEN(或いはお子さまの遊び部屋)にした間取り、
- キッチンは対面のペニンシュラカウンターに
- 小部屋をリビングの横に設け、
- 得意の洗面廊下を設け、
- 玄関横にSICと通り抜け型のパントリーを設ける
という素案でした。まずはJさまのご要望を伺いながら、実はこのような案を考えていましたとお見せしたところ、「この案であれば大きな要望をほぼ取り込むことができる」と、とても喜んで下さりました!
当日の打ち合わせの内容を、担当の新人スタッフの松藤さんがメモ書きしておいてくれたものがこちらです。
現地調査(お部屋内の調査とマンション管理組合保管の図面確認)については20万円、それをもとに仮プランをより現実的で実行可能なプランを作成することについて、また20万円というご提案でOKとのことでしたので、早速に松藤さんと弊社副所長の前田君と3人で現調に伺って参りました。まだ、お部屋はお引渡し前でしたが、仲介の不動産屋さんと現オーナーの了承を得ての調査となりました。
築25年で間取りや水回りは一度もリフォームをされた形跡がないとのお話しでしたが、確かに設備類はかなり老朽化している印象を持ちました。
キッチン奥のユーティリティーにはライニングに点検口があったので開けてみたところ…、
給水と給湯のヘッダーが出てきました。ただ、この本数だと少なすぎるなと思っていたところ、
廊下の収納奥に点検口があったので、こちらの内部を見てみたところ…、
沢山のヘッダーがしまわれていました。ヘッダーを2カ所に分ける理由は良く分かりませんでしたが、この床下から、トイレの排水管の位置を確認することもできました。
洗面カウンターの下の床下点検口からも今の仕上げ床高さとコンクリートスラブの高さ関係を抑えることができました。
こちらは浴室の天井点検口を開けてのぞき込んだ天井裏です。ダウンスラブ(水回りの床のコンクリートが排水処理のために一段下げられている個所のこと)の範囲を確認したかったのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。
こちらはキッチンの天井点検口から覗いたキッチンレンジフードの給気と排気の同時給排のダクトです。
空間としては、梁型が大きく、ダクトを通すためか装飾の為か、天井に何段かの段が組まれていること、(またこれは事前にJさまからも伺っていましたが)床はフローリング禁止でカーペットかコルクタイルとなっていることなどを確認致しました。
電気が通っていない中での現調で、暗くて確認しにくい場所もありましたが、ほぼ全容を写真撮影することもできました。
こちらは、現調前にマンション管理会社に撮影させて貰った給排水衛生設備図です。なるべく現調前にマンション竣工時の図面、特に設備図をチェックさせて貰うのですが、ほとんどの管理事務所ではコピーはさせて貰えないので写真撮影となってしまい、現地調査しながら図面を確認することが難しいのです(いや、ブログ書きながら考えましたが、撮影したデータをタブレットに移してみれば良かっただけかも知れませんね)。図面を事務所に戻って確認しながら現調時のことを思い返すと、確かに給水と給湯のヘッダーが2カ所にあることが図面でも確認することができました。
こちらは天井裏の給気と排気のダクト、そして空調設備(エアコン)が図示されている空調換気設備図です。梁型をどのように避けながらダクトが走っているかをチェックすることができました。
現調したところ、頂いていた平面図と幾つか違うカ所が見つかったので、簡単に整理した現調速報を作ってJさまにメールでお送りしました。
現調の内容と既存図のチェックをして、リフォーム案作りを始めようとしたところで、正式にデザインアドバイスでリフォームを進めたいとのご意向と、具体的にどのようなことをしたいかを纏めた要望リストをお送り頂きました。実はJさまご一家は以前にもご購入なさった中古のマンションを大々的にリフォームをなさった経験があり、このようなことに慣れていらっしゃるのです。今のお住まいで気にっている個所は、似たような寸法にして貰いたいことや、気にっていなかったカ所はどうしたいか、また全体予算との兼ね合いもありますが、どのような設備を入れたいか等のご要望を頂きました。
改めてリフォームプランを作ると共に、デザインアドバイスですので、パートナーとなるリフォーム会社の選定に入ることをお伝えいたしました。ここからの家づくり、デザインアドバイザーとして頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します!
2023.10.19
中央区S邸竣工|メゾネットマンションリノベ
[ザ・ライブラリー]
ザ・ライブラリープロジェクト、高層メゾネットマンションリノベーションの中央区S邸が完成し、家具入りの写真を撮影させて頂きました。質感や個性の強い素材をふんだんに取り入れたいとの希望から、複数の種類の素材を組み合わせながら提案をする必要があり、The Libraryの得意とするVRCGを最大限に活用しながら設計を進めました。
2層にわたる大空間で設計をしながら素材や家具、照明、アートなどを調整してゆくスタイルとなったので、設計で半年、リノベーション工事も上下階の2段階に分けて半年。1年に渡るプロジェクトが先日竣工しました。
有機的な木の質感溢れるヴィンテージグレードの床材。壁面には奥行のあるディテールを感じる天然の大理石や大判タイル。無機質なカラーガラスや、風船状のクロームの照明を対比させています。
秩序立てた設計の中に、それぞれの素材の持つ硬さや柔らかさ、輝きや粗さ、新しさや古さが複雑に入り混じり、小宇宙を感じる空間に仕上がりました。以下、他の竣工写真は、ザ・ライブラリーのブログをご覧ください。
2023.10.15
白黒CGを使ってのリフォーム案の空間説明
[渋谷区N邸]
カガミ建築計画とザ・ライブラリーのダブルネームで設計を進めている新築リフォームの渋谷区N邸のリフォーム案を白黒CGを使ってお客さまにご説明させて頂きました。
ここまでメールでのやり取りを通じて、2つの案をブラッシュアップしてきましたが、それぞれの案に使い勝手上のメリットとデメリットがあり、それだけではどちらが良いかを判断しにくいので、ちょっと早い段階ではありましたが、ザ・ライブラリーで培ったCG(コンピューターグラフィック)力を使って、空間的な魅力を含めて比較検討して貰うことに致しました。
改めてリフォームの2つの案を説明しておきます。居室のレイアウトは大きく変えず、キッチンの向きを変えてリビングダイニング向きにして、現在お住まいの代官山のお宅と似たレイアウトで大きなアイランドカウンターをキッチンに据えた案です。当初はこのCシリーズ(当初のB案、C案から派生した案なので、そのあとに改訂番号をつけてシリーズとしています)の案では、洋室2のレイアウトを変えないことでコストメリットがあるとご説明しておりましたが、リビングダイニングをより広く、その分洋室2を狭く、そして大きなダイニングテーブルを置いてもリビングへの動線がスムーズになるように洋室2のコーナーを丸くしていくうちに、LDK+洋室2はすべてやり直しとなってきた案です。
こちらは洋室2とキッチンの位置を入れ替えたBシリーズのB3案です。巨大なダイニングテーブル(マンションのお部屋への搬入を考えると、2つに分割しないと無理ですが…)を中央に据えた、より大胆なリフォーム案となっています。このままだと洋室2が無窓居室(ムソウキョシツ)になってしまうので、LDと大きな引き戸で仕切ることで、建築基準法上は二室一室の考え方を使った採光基準をクリアする考えで、実は今のお住まいの代官山でも同じようなお部屋を使っていただいています。Cシリーズの案のコストメリットが無くなってきたことを考えると、空間がドラマチックに変わるB案をベースに考えるのが良いのではと、僕ら設計側が推している考え方です。
弊社副所長で担当スタッフの前田君が、二つの案の空間を比較できるようにそれぞれ同じアングルから見た白黒CGを並べてくれました。リビング中央に立って南側(平面図の上側)を見た第一のアングルです。C案では正面にキッチンが、B案では左手にキッチンがあることの違い、そしてリビングの壁(CG右手の壁)にC案ではピアノが、B案ではテレビが掛かっているという違いがあります(Nさまご夫妻のご要望ではピアノは洋室2に入れたいのですが、C案では部屋のレイアウト上ピアノ設置が難しいのです)。
こちらはリビング中央から東側を見たアングル比較CGです。キッチンが見えるCGは、その部分の設計密度が高まってみえるので、自然とカッコよく見えてきます。最初の方の説明で、LDの入り口からダイニングテーブルの横を抜けてリビングに通る動線が狭く、部屋の角を丸くした理由が上のCGを見て貰えればよく分かると思います。3人以上のお子さまがいらっしゃるお家では、どうしてもキッチンと繋がるダイニングに誰かしらかがいることが多くなりがちです。C案ではそこが動線上のボトルネック(動線の一部が狭くなったか所のことで、動線全体の流れが悪くなってしまう)になることを心配しております。
最後にお見せする比較CGが北側を見たアングルです。実はこのアングルの比較CGが一番大きな違いが出るので、実際にNさまご夫妻にお見せしたのも最後でした。150平米(45坪)という広さの大型マンションなのに、部屋割りなどのせいで空間の大きさが実感しにくいと僕らも感じていましたが、このB案シリーズが一番大きく感じられるようになるので、それを早めの段階でCGで確認して頂こうと前田君と相談して、この白黒CGシリーズを作った次第です。こちらが考えていた以上にBシリーズの案の空間にNさまご夫妻が反応して、僕らがご説明してきた意図も理解してくださり、このBシリーズの案をさらにブラッシュアップしていきたいとのご意向になりました。
改めて、左から新築お引き渡し時(何もリフォームしない場合)、C案、そしてB案と並べてみると、C案にするのであれば、そこまでお金を掛けないで、もっと単純なリフォームで終わらせる方が良いことが想像されます。B案は本当に空間の広がりが大きく変わって、ご家族一体での暮らしが実現できそうなことが分かりますね。
Nさまご夫妻から、B案シリーズでどうしても気になるのが以下の点なので、それを何とか解決してもらえれば、文句なくB案で進めたいとのご意見を頂きました。
- 一番上のお子さまのお部屋が洋室2になるので、何とかして窓を付けてもらいたい
- 来客も使うであろうトイレ1への入り口の関係で、玄関ホールが広くなってしまったが、少しでもLDK側にスペースを持ってきたい
以上の2点を検討して貰いたいとのことで、設計契約も結んでここからはより具体的に進めることが決まりました(ここまでの作業は、現地調査(実際には現地はまだ工事途中で見れませんので、デベロッパーの事務所での図面調査)の20万円と初期リフォーム案の作成費20万円の40万円での作業でした)。
N様ご夫妻との打ち合わせの様子です。Nさまご夫妻は、以前お手伝いした代官山のお宅のリフォームの際には、不動産仲介会社から紹介されたリフォーム会社と、インターネットで探した僕らとで提案を比較検討したうえで、僕らを選んでくださった経緯がありましたが、今回のお宅は費用もそれなりに掛ける覚悟もあるので、絶対に僕ら、カガミ建築計画に依頼したいとのお気持ちで、最初からご相談に来てくださっていました。
因みに、立体的なCG作成は、確かに平面的なプラン作成よりもかなりの時間を要しますが、設計&調整に時間がかかる仕上げ素材や家具、照明器具などがない白黒CGであれば、かなり楽に(あくまでもカラーCGとの比較ですが…)できるのです。それでいて空間性を比較する上ではお客さまにも有効なので、うまく使っていきたいものです。