Author Archives: Kenji Kagami
2023.05.10
ミラノサローネ2023_イリス(フィアンドレ)市内SR
[ミラノサローネ2023]
ここからは、私共カガミ建築計画が日本のプロジェクトで良く使っている建築材料や照明器具ブランドの市内ショールームを見学した様子をお伝え致します。
大理石柄大判タイルのフィアンドレ、サピエンストーン、アリオステア等を傘下にもつグループ会社のイリス・セラミカ・グループのショールームです。
美しい表情・柄の大理石が世界中の富裕層に引っ張りだこで、資源が枯渇しつつある中、きれいな大理石柄を転写したタイルの需要が増えています。地中海沿岸(イタリア、スペイン、トルコ等)で大判セラミック生産が盛んですが、その中でも白系の大理石柄セラミックで一番美しいのがこちらイリスグループのフィアンドレだと考えています。
セラミックは光沢感もきれいで含水率が低く(つまり汚れにくい)、キッチンや水回りのカウンター材として優れた点が多くあるのですが、表面にしか柄が転写されていないことが大きな問題の一つでした。
以前はコーナーをトメ加工(各部材を45度にカットしたうえで接着する)でも2ミリ程の隙間が出来ていましたが、近年はほぼゼロに加工できるようになってきたとのこと、その問題も大きな要因ではなくなってきたのかなと思っていたところ…、
いつもフィアンドレとサピエンストーンの仕入れと加工をお願いしているアークテック社からタイルをどの面で切っても小口に模様が繋がる新しいタイプのセラミックの開発に成功したらしいとの話を聞いていました。それがこの製品なのです!
元々フルボディーと言って、表面のベースになる色味とセラミックの基材の材料の色を揃えてはくれていましたが、ここまで小口に染料を含浸させる技術ができたとは…。まだ、石種、色味によってはそこまできれいに出来ていないものもあるようですが、
切る個所をうまく指定すれば、こちらなどはかなり本物の大理石に近く見せることができるのではないでしょうか。
上階のこちらのテーブル天板も大判セラミックです。パッと見ても小口まで柄が続いていますが、
アップで見てもこのようになっています。ここまで繋がってくると、もう十分なのではないでしょうか。これがどこでカットしても実現するというのが本当に凄いことなのです。現在は厚み2センチのものでしか実現できていないそうですが、追々他の厚みでもできるようになりそうですね。
石種のタイプも着実に増えているようです。こちらは世界中で大人気のパタゴニア柄の水磨きです。本磨きになると、透明な部分はどうやっても印刷では表現できないので、水磨きにしているようです。
こちらもアップで見て、触ってみると、凹凸もかなり正確に演出出来ていることが分かります。
技術革新はどんどんと進んでいますが、現場での加工を考えると、小口を如何に隠すかはやはり大判タイルの大きなデザイン的な課題となってきます。こちらの造作家具では、サハラ・ノワール柄を使っていますが、
小口をほぼゼロに見せるディテールとしていました。
トメ加工の技術もかなり進化し、このような薄いパネル材でも三方トメがきれいに出来ていました。
こちらの上階の打ち合わせ室では、タイルの小口に金属の金物を廻して隠していました。
コーナーのカーブした箇所では、セラミックを細く割いて張り合わせるという高等技術を使っています。
とはいえ、出隅が現れてこない奥まった壁、こちらの折り上げ天井の上面のような箇所の方が、まだまだ安心しますが。
2023.05.10
ミラノサローネ2023_エンジ(Henge)市内SR
[ミラノサローネ2023]
今回のミラノ訪問で一番衝撃を受けた家具展示が、こちらエンジ(Henge)の市内ショールームでした。
このブランドについては、以前から聞いておりましたが、金属細工で本棚やライン照明を作る家具屋程度の知識しか持っていませんでしたが、そこから大幅にヴァージョンアップして、凄いブランドに育っていました。
キッチンはほとんど無垢の大理石の塊のようで、
コーナーの納まりもこのような凝った作りとなっています。
一応(笑)IHヒーターやシンクもきちんと組み込まれています。
壁面収納は光を透過するオニキス(アラバスター)を背面として、手前にシャープな鉄板と鉄棒とガラスの収納を作っています。
この壁面収納はさらに横へと続き、少し歪んだ金属の塊の中に冷蔵庫等を収納する流れとなっています。
実際的な収納ではありませんが、溶接すれば歪んでしまう薄さの鉄板にどのように接合しているのでしょうか…。
ショールームに入って最初に迎えてくれるのは、この印象的な照明と大きな楕円のテーブルです。
鉄板と木を使った棚は以前より大幅にバリエーションが増えています。
上階にあるこちらのキッチンも、また無垢感満載のキッチンです。
この端部のディテール、キッチンであることを完全に忘れさせてくれる存在感です!
キッチンとしても使える構成にはなっていますが、恐らく実際に料理をするより、料理もできる石造のオブジェといった方が良いのかも知れませんね。
木製のダイニングテーブルのデザインも常識では測れない特殊なものです。
厚突きのウォールナット突板を不思議な曲線に合わせて象嵌しているのです(異種素材をはめ込んでフラットに仕上げるのが象嵌なので、こちらは同じ素材なので、厳密には象嵌ではありませんが…)。
脚との取り合いや、分割位置の真鍮目地などのディテールもたまりませんね。
この写真の左側の壁面、何だと思いますか?
スラブの石材をこのような形で彫り込み加工した、扉材なのです!
高さ3メートル以上の扉付き造作収納なのです。さりげなく吊るされていますが、このガラス製シャンデリア照明も凄い迫力です。
手前のダイニングテーブルも2センチほどの厚みのある金属鉄板のテーブルですが、脚はグレートラバーチンを削り出したような独特のデザインとなっています。
こちら正面は巨大なテレビキャビネットです。
金属のテーパーを切った枠にガラスが嵌った大型扉がスライドするのです。
内部も虹色掛かった金属の棚や、バーズアイウォールナットの扉付き収納となっています。
ここまで来るとソファは普通に見えてきますが、その前に置かれたセンターテーブルも独特の造形ですね。金属と大理石を折り紙のように曲げたように見えるデザインとなっています。
当然ながら大理石板を折り曲げることはできませんので、間近で見たディテールはこのようになっています。
地階にあったこちらのキッチンも(良い意味で)変態的です。
無垢の石材カウンターと金属の取り合いも妥協がありません。
キッチン収納の引き出しの中も、無垢材から削り出したかのようなディテールとなっています。超高級家具ブランド・チェコッティのデザイナーであるマッシモ・カスターニャや、ジュエリーデザインで有名なウーゴ・カッチャトーリ、麻布台ヒルズのアマン・レジデンスのインテリアデザイナーでもあるヤブ・プッシェルバーグなどをデザイナーとして採用し、超攻撃的(?)な家具デザインにチャレンジしているそうです。
最後の写真は、ちょうど偶然にエンジのショールームでご一緒になったバケラッタの森山さん、アールテクニックの井手さん、その日に初めてご挨拶させて頂いたIKAWAYA建築設計の井川さんとの記念撮影写真です。
エンジについては建材ブランドのアドヴァンが日本の代理店になるかもしれないとのことですが、ここまで大規模なショールームを日本に持ってくるのは現実的ではないかも知れませんね…。
2023.05.09
ミラノサローネ2023_ポリフォーム屋外家具・市内展示
[ミラノサローネ2023]
今回のツアーに協力してくれているイタリア家具ハイブランドのポリフォームの屋外家具展示がユニークで面白いとのことで、市内の古い修道院の中庭を使っているという展示を見に行ってきました。
如何にも古い修道院と隣接する建物の間に黒壁があり…、
壁の小さな入り口へと人が吸い込まれていきます。
修道院の中にはには、黒い溶岩石の砂利が敷き詰められ、おどろおどろしい音楽が鳴り響く中、
独特のにおいがするロウソクが炊かれています。
あちこちにパラパラと黒とグレー色の屋外家具が置かれています。
なぜか皆がカメラを構えている黒くヌメ―ッとした鏡面のテーブルは、地獄の底が覗けるような(笑)イメージでした。
とにかく印象に残る展示ではありましたが、正直、なぜ屋外家具展示をここまで黒く纏めるのか、全く理解できませんでした。
実は、その奥に特別に招待された客しか入れないもう一つ中庭があるとのこと、アテンドしてくれたアクタスの海野さんに交渉して貰ったところ、入れて貰うことができました!
こちらは静かで、あの匂いも、黒い砂利もなく、とにかく落ち着く静謐な空間でした。
人も少なく、ドリンクも提供してくれて、こちらの空間で小一時間のんびりさせて貰いました。
最初の空間がオドロオドロしい分、こちらが気持ちよく感じられたのですが、それがポリフォルムの戦略だとしたら、あまりに高等な戦術だと同行の皆と話をしておりました(笑)。良い意味でも悪い意味でも印象に残る展示だったことは確かです。