Author Archives: Kenji Kagami
2023.05.30
ミラノサローネ2023番外編_インテリア素材屋-2
[ミラノサローネ2023]
ミラノの市内で見掛けた、インテリア素材&ディテールの専門ショールームの紹介です。こちらのショップはCesare Ferrari(チェザーレ・フェラーリ)です。

旧市街でインテリアショールームが多数ある場所から少し離れた街角に、このようなショーウィンドウがあり、この石材の美しさに惹かれてお店に入ってしまいました。

こちらの石材を薄切りにしたものを壁材として使っているとのことでした。石の名前はセレナイトというそうです。ネットで調べた所、セレナイトは透石膏(トウセッコウ)とも呼ばれる、シルキーな輝きを放つ半透明の石で、石膏の一種とのことでした。

ライトアップしなくても、このような半透明の美しい肌理の素材でした。

こちらのお店は、インテリア素材とそれを組み合わせた特注家具や建築ディテールに強いとのこと、色々な事例を見せて貰いました。

特殊な石材、レザー、木、加工した金属等で見たことも無いような加工品を続々と見せて貰いました。

中央左の棒状のものはレザーにチェーンを巻いた手摺り材のサンプルとのことでした。

木材と金属目地の家具の取り合いのモックアップなども見せて貰い、このような所で特注家具を作ったら、どんなに素晴らしいもの(そしてどんなに高価なもの)ができるのだろうと、想像を巡らせてしまいました。

このようなお店/ショールームは日本にはほぼありませんから(素材という点では、エルクリエーションが代理店をしているアレクサンダー・ラモント位でしょうか…)、イタリアのインテリア・家具業界の奥深さに感心するばかりでした。
2023.05.29
ミラノサローネ2023番外編_インテリア素材屋-1
[ミラノサローネ2023]
先月後半に見学してきたミラノの国際家具見本市(通称ミラノサローネ)で、市内のインテリアショールームを見て回った際に、面白いインテリア素材屋さんを見たので、ご紹介いたします。AREAEというインテリアブランドです。

ショップ自体はとてもコンパクトで、空間の中央にテーブルがありその周りをぐるっと一回りするだけのスペースですが、日本では見たことのないインテリア素材のサンプルが沢山展示されていました。

例えばこちらの大理石サンプル。大理石に模様を付けて、魅力的に見せるテクニックはサルバトーリやリトス等で見てきました。サルバトーリでは石材そのものの柄や色だけでは魅力が足りない素材に刻み目やパターンを付けて陰影を加える手法ですが…、

こちらの石材は、大理石そのものだけでも十分に魅力のある素材に、パターンを刻み込むことでさらにその魅力を倍増させるというオキテ破りの発想法でした!

木のパネルにも同様の手法を加えて魅力を引き出していますね。これも木目がある程度ある材に対して加工を加えているのが特徴です。

こちらのサンプルも、日本でも見たことがある素材で似ていますが、無垢感が強く素敵です。

こちらのお店では、こういった魅力的な素材をさらに色味やテクスチャーで並べて見せてくれるのです。黄色と緑が同時に入ったインテリアはかなり上級者向けだと思っていますが、左上のヘリンボーンタイルが入ると全体が纏まりますね。

ボルドーやバーガンディといった朱色掛かった赤も、怖くてなかなか手が出せませんが、大理石のロッソレバントとウォールナットやタイルと合わせるアイデアがカッコよいです。

組み合わせセットで一番気に入ったのがこちらです。白とグレーと黒に少し赤味が掛かった木を合わせるマテリアルサンプルセットです。
日本だとどうしても木材は木質系で、大理石は石屋で、タイルはタイル屋でと別々の所で探さないといけないのですが、こういったインテリア素材に特化したショールームがあれば、どんなにインスピレーションが湧きやすいのかと、羨ましくなりました。
2023.05.22
ウォールナット無垢一枚板テーブルの改造
[関西I邸]
先日無事お引渡しを終えた関西I邸では、元々お客さまがお手持ちだったウォールナット材のテーブルが小さめだったので、余っていた同じウォールナットの半端材と黒御影石を付けくわえて改造致しました。

上が元々のテーブルで、下が改造したテーブルです。

こちらのウォールナット無垢一枚板のテーブルです。長さ1800ミリ、幅は約900ミリの耳付きの堂々とした天板で、Iさまもお母さまがIさまご夫妻が結婚した時にプレゼントして下さった思い出のテーブルでした。因みに、耳付きとは丸太の一番外側の表皮に最も近い部分までを含んだ無垢一枚板ならではの特徴です。

リノベーション後の新居でも、何とか思い入れのあるこのテーブルを使いたいとのご相談を頂いておりましたが、このままではサイズ的に不十分なので、何か工夫をして大きくすることができないかと考えて作ったのがこちらのプレゼンテーションシートです。
- 木材(同じウォールナット材)を継ぎ足す
- 金属や石材などを使って増幅する
- スムーズに繋げるのではなく、わざと継ぎ接ぎだらけにする
といったアイデアを考えてみました。

Iさまご夫妻からは、プレゼンシートを見ても、どのくらいの費用でどのようになるのか分からないので、概算費用だけでも出して貰えないかのご依頼があったので、ザックリしたイメージ図を作って工務店に概算をお願いしました。一つ重要なポイントは、2800ミリ程度の長さにしたいと考えておりましたが、そこまで大きくなるとマンションのエレベーターでも階段でも搬入ができなくなるので、現場でノックダウン(組立て)ができるようにしなければいけないという点がありました。このスケッチからは、脚の作り方がここまで複雑だと150万円位まで膨らむのではとのこと、もっとシンプルにして貰えれば100万円位まで落とすことができるのではとの話となりました。
ここまで大型サイズのテーブルは、新規購入の場合は搬入ができないので、エクステンションテーブルしか選択肢が無いこと、また愛着もあるこの天板はやはり使いたいとのことで、出来上がりはまだ想像できないが、カガミのデザインで良いものに仕上げて欲しいとのご依頼を正式に頂きました。

この時点で、実はこのウォールナット一枚板は当初の部屋には大き過ぎたのでカットした余りの部材があることをIさまに教えて頂きました。長さ90センチで幅は30センチものが2枚あるとのことでした。

耳があると接合ができないので、耳はカットすることを考えていましたが、それだと長さに対してテーブルの幅が狭くなってしまうことを心配していましたが、この半端材も活用すれば長さ2800ミリ、幅100ミリのテーブルができることが分かったので、先ほどのスケッチより足を簡略化したデザインの図面を起こしてみたのがこちらです。
継ぎ足す石材は、工務店に探して貰った御影石サンプルの中から、少し光沢感のあるエメラルドパールという石材を選びました。

僕らの設計図から工務店が起こしてくれた施工図がこちらです。何度か図面の赤チェックのやり取りをして、デザインが纏まったので、正式見積りをお願いしたところ、搬入設置まで含めてちょうど100万円(消費税前)で作って貰えることになりました。

ここからは工務店の工場でどのような作業をしたかの説明となります。天板は大きく起って(むくって・反るの反対で凸状に曲がっていること)いたので、上下を逆さまにして、反っていた側にを50~60ミリ間隔でノコギリで刻みを入れて貰いました。その溝に接着剤を詰めて平板の上にのせて重しとクランプで歪みを補正して貰ったのがこちらです。既に手前側に半端物のウォールナット材を接着で継ぎ足してくれています。

もとは裏側だった側をサンダーとやすりで磨き、金属製の契り(チギリ)を入れるための溝を掘って貰いました。

二分割で現場に運び込まれた鉄製の脚と天板の下地となる鉄板をビス留めして貰っている様子です。

まずは鉄板のテーブルが出来上がりました。丸い穴が8カ所空いていますが、これが後の組立ての時に役立つのです。

先ほどの合成された天板を鉄板の上に乗せます。

ウォールナットの天板はウレタン塗装を施して、とてもきれいに仕上がっています。

先ほどの鉄板の孔の位置に何やら金物のようなものが見えます。

こちらが寄せ付ける金物なのです。異素材の木材と石材をお互いに引き寄せる金物で、ちょうどビスで寄せ付け具合を調整できるように、その際的な位置に鉄板の孔が空けられているという訳です。
それにしても天板の起くり(ムクリ)を補正するためのノコギリの溝が深く掘られていることに驚きますね…。

これが鉄板の裏側から見た丸穴です。因みに鉄板も上面は仕上げていませんが、裏面と脚は焼き付け塗装できちんと仕上げられています。

ここに1000ミリ×500ミリの御影石を載せます。

以前もアップした写真ですが、エメラルドパールの背面にも金物用の孔が空けられており、

それをこのように下に潜り込んだ職人さんが引き寄せてゆくのです。

片側を指で動かないように固定しながら、反対側のボルトを締めて寄せ付けています。

こちらの金属の蝶々のような部材が契り(チギリ)です。本来はこの部材が置くまで差し込まれることで、二つの素材を引き寄せて、離さないようにしていたのですが、今回は金物を使って、契りは装飾としています。

契りの厚みに合わせて、事前に彫り込まれた個所に載せて、接着剤で固定します。

異素材(木材と石材)にこの契りが入ったことで、がっちり組み合わさったように仕上がりました!

契りの部分の接着剤のふき取りの際に使ったラッカーで、塗装のウレタンが一部剥げてしまったので、その部分は補修して貰うことになりましたが…、

実に堂々とした仕上がりです。

苦心した脚の部分のデザインもきれいに収まっています。

金属の接合部分も違和感がありませんね。先ほどからの作業プロセスでも分かりますが、実はこの脚の部分と天板の木と石は接着されていません。木も石も十分に重たいので、その重量だけで動かないのです。イザとなれば、職人さん4人は必要になりますが、解体して運び出すことができるようになっているのです。

天井が高く、大きなダイニング空間に決して負けない重量感のあるダイニングテーブルが無事組み上がりました!お引渡し当日にこのテーブルを初めて見て下さったIさま夫妻もとても喜んでくださいました。