Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

造作家具の組み立て@港区R邸

港区R邸

先行組み立ての家具(大理石や設備との取り合いで、他の家具より先に取り付けておく必要がある家具)も含めるとすでに造作家具の組み立てに入ってから2週間ほどになりますが、改めて港区R邸の造作家具の組み立ての様子をご紹介いたします。

飾り棚と鋼製建具

先回のブログで組み立てが始まっていた廊下からリビングダイニングへと入る鋼製建具の左右の飾り棚が取り付きました。ブルーの養生シートが間に挟まって見難いですが、建具の割り付けと飾り棚の割り付けを合わせてデザイン致しましたが、うまく取り付けができたようです。鏡面仕上げの飾り棚ですが、組み立てた後現場でバフを掛けて、更に磨き込んでゆくとのことでした。

キッチンの後付けフレーム

飾り棚の裏側のキッチンもアムスタイルのキッチン組み立ては無事完了していました。ただ、ビルトインオーブンの入ったトール収納とIHヒーターが入るカウンターの隙間を埋める2方フレームだけは別の造作工事でお願いしており、その取付をニシザキ工芸さんが頑張ってくれていました。

キッチンの後付けフレームの施工

トール収納とその右側に続く吊戸棚の横と上に端部をテーパー処理した鏡面塗装の役物を差し込んでもらうというものです。

後付けフレームの付いたキッチン

出来上がりの様子ですが、あまりにきれいにフレームが入って一体化して、どこをどう加工したのかブログでは判りにくくなってしまいました…。

キッチンの後付2方枠

こちらが2方フレームの端部のディテールです。

後付け御影石2段カウンターが付いたペニンシュラ型キッチンカウンター

キッチンと造作家具の組み合わせのもう一つが、こちらのペニンシュラ型(半島型)カウンターです。手前の艶消しの黒いカウンターセットはオーダーキッチンでお願いして、奥の一段上がった御影石のカウンターは造作家具屋に下の箱を組んで貰い、その上は石屋さんにカウンター石材を据え付けて貰いました。こちらも複数の職人さんの手が入っていますが、うまく一体化させることができたようです。

タイルをカットしてフラットに収めたキッチンのコンセント

こちらはマイナーなディテールですが、タイル壁にコンセントをフラットに埋め込むことができるか現場に確認していたのですが、多少タイルの余裕があるので、チャレンジしてみますとのことでしたが、このようにきれいにタイルをカットしてコンセントプレートを埋め込んでくれました!周りの隙間をコーキングでシールすれば相当きれいに見えるハズです。

TV収納壁のデザイン

リビングの一つの見せ場である、テレビ壁部分はポルトロの造作とその裏から伸びている木製ルーバーが合体し、間接照明もきれいに入っていることを確認させて貰いました。

AV&ホームオートメーション機器収納の内部

テレビ壁の右奥にあるAV収納の内部です。照明器具のトランス、照明調光のルートロンやホームオートメーションのクレストロンに関係した制御装置などがほぼ隙間なく置かれていました。排熱のための給気と排気処理だけしたうえで、ここはお客さまが触る箇所ではないので、点検口で閉じてしまう予定です。

ダイニング天井の点検口を兼ねたカラーガラスパネル

ダイニング天井のカラーガラス張りの点検口を兼ねたパネルもうまく収まっていました。

オニキス用の背面LED収納ボックス

先日のブログで箱だけが作られていたオニキス(光を透過する大理石)用の背面照明ボックスにはLEDのライン照明が11本入っていました。オニキスとLED照明の隙間の寸法と、LEDの間隔については、何度も実験を重ねて導き出した寸法通りに設置されています。

玄関ホールのサルバトーリ

玄関ホールの壁も仕上がってきました。黒く塗装した木製フレーム内の加工大理石サルバトーリもコーティング材が塗布され、フレームと一体化してシックに仕上がってきました。

マットなカラーガラスが入った玄関正面壁

玄関入って正面のマテラック(マット仕様のカラーガラス)と真鍮の目地材で作った壁と扉も不思議な存在感となっています。ちょうど中央部の扉を開けるとシューズインクローゼット(SIC)があるのですが、パッと見にはその存在をうまく隠すことができました。

靴収納内部のロイヤルの背面金物付き収納棚

因みにこちらが、そのSICの内部です。左手前が傘収納で、その他は靴用の棚で、全ての棚が可動となっています。

廊下に並ぶ造作収納棚

廊下の壁面収納も箱の据え付けが終わっていました。建具と収納家具の扉を同じ面材を使って仕上げてゆく予定で、出来上がると壁一面フラットに仕上がってくることになります。

ポルトロの残りを使って主寝室の書斎コーナー

主寝室の書斎コーナーの机と鉄で作って貰った特注の飾り棚も取り付けが終わっています。机の正面には、リビングのテレビボード壁に使った高級大理石のポルトロの残り部分を活用しています。

主寝室のテレビ用ニッチとサイドの金属ルーバーパネル

ベッドの反対側の壁のテレビボード壁も出来上がりつつあります。中央の黒い部分にテレビを収め、左右には真鍮の金属パネルを入れています。

リマデシオのガラス建具が入った主寝室のウォークインクローゼット

ウォークインクローゼットのリマデシオのガラス建具も無事収まりました。まだ設計が煮詰まっていない段階で、スケジュールの関係上先行発注したものでしたが、寸法のズレもなくきちんと収まっていました。

リマデシオのガラス建具が入った主寝室のウォークインクローゼット

金属メッシュ入りのガラスを使っているので、外側(ベッドがある側)から見ると、WIC内部照明を点灯しないとちょっと見えにくい状態ですが、クローゼット内部に入ると、外からの光が差し込んで明るい空間になっています。

息子さんの部屋の造作勉強机と棚

これまでほとんど紹介していなかった息子さんの部屋ですが、勉強コーナーの造作家具が入ってきました。ウォールナット材とカラーガラスを使って、コンパクトながら収納量と使い勝手を両立したデザインをと考えた部分です。

洗面カウンターの造作家具

洗面所のダブルボウルのカウンターもピッタリサイズで収まっていました。メディスンキャビネットなしで引き出し収納だけでなるべく効率的にドライヤーや洗顔材などを収めたいとのことで、引き出しの中も工夫をしております。

来客用トイレの内装

来客用トイレもレザーパネルと背面からの間接照明を仕込む鏡以外、ほぼ仕上がって参りました。ジャクソンのブラウン色のトイレ便器がマッチするリッチなインテリアになってきました。

マットなカラーガラスと真鍮目地のディテール

写真では目地棒の色がわかりにくいのですが、玄関ホールでは真鍮の目地棒とマテラック(マット仕上げのカラーガラス)を組み合わせており、こちらのトイレではステンレス鏡面の目地棒とマテラックを組み合わせてみました。どちらも不思議な奥行と色合いが生まれて、とてもきれいです。

オニキス取り付けの事前打ち合わせ@現場

こちらは最後の写真となりますが、光を透過するオニキス材の取付が迫ってきたので、その施工業者が現場に打ち合わせに来てくれました。現場監督の織田さんと営業&設計の坂本さんと綿密な段取り打合せをしてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

システム収納家具のギャラリー収納ショールーム見学

白金台E邸

ヴィンテージマンションリフォームの白金台E邸では、パブリックゾーンのLDKや玄関回りは、ディテールまでこだわった造作家具で作る予定ですが、デザイン性よりも使い勝手やコストパーフォーマンス重視のプライベートゾーンの寝室の収納や子ども部屋の机などはいわゆるシステム収納家具を使って、コストダウンとスピードアップを図る考えで計画を進めています。

そこで、お客さまのEさまご夫妻と東銀座にあるギャラリー収納のショールームを訪問して参りました。こちらは数あるシステム収納家具屋さんの中でも、一番ショールームが充実しており、扉の面材などの候補も数多くあるので、以前から使ってみたいと思っておりました。

Eさまのご主人はお仕事の合間に抜けてショールームに来て頂いたので、時間があまりないとのことで、まずはご主人さまのクローゼット収納の展示を拝見いたしました。この写真のように、扉を開けた中の引き出しシステムやカゴ状になった引き出し等が充実しています。

この写真の左側のように、扉と同面に収まる引き出し収納もデザイン的なアクセントになりそうです。

これまでは主寝室の中だけでご夫妻の洋服収納を全て納めていましたが、今回は寝室の横に奥さま専用のウォークインクローゼットを作る予定なので、主寝室内にはご主人さまの洋服を中心に収納する予定です。ベッド正面壁にはテレビを置くカウンターも設けたいので、その参考になりそうな収納も拝見させて貰いました。

ご主人さまが仕事に戻ってしまう前に、取り急ぎここまで考えてきた各部屋の仕上げ素材の候補を、ショールームの打ち合わせテーブルの上に広げさせて貰い、仕上がりのイメージを確認して頂きました。まだ細かくは決定できませんが、色使いや素材は概ね問題ないだろうとのことでしたので、このイメージの延長で、クローゼット家具などの色味をこちらでご提案してゆくことになりました。

こちらが、GALLERY収納の扉面材のサンプル棚です。この中から、仕上がりイメージと費用を考えながら幾つかのミニサンプルを貰って、デザイン検討してゆくことになります。

ご主人さまが戻られた後は、奥さまと一緒にその他の収納展示を拝見させて貰いました。こちらはパントリー/ユーティリティーをイメージした扉無しのオープン収納です。

その手前のオープン棚は、クローゼットのカバンや小物などの収納に良いかもしれないとの話になりました。

お子さまたちの部屋にも効率的な収納を設けたいとのことで、勉強机と本棚とクローゼットを組み合わせた収納セットをご提案することになりました。

こちらに広げた面材が、主寝室のクローゼット収納や書斎家具の候補になりそうな候補たちです。

 

ショールーム訪問2週間後に、第一弾の提案図面と見積りが提出されたので、細かい部分をチェックしてやり取りしながら内容と費用を固めてゆくことになります。

 

 

吹き抜け上部の壁石材はく離の問題と対処について

西麻布N邸

昨年末にリノベーションを済ませお引渡しをした西麻布N邸のお客さまから、玄関上部にある吹き抜けの壁に貼ってあった石材が剥がれて落ちてきたとの緊急連絡を頂きました。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸

生まれたばかりの赤ちゃんと小さなお子さまがいらっしゃるNさまご一家ですが、幸いにだれもいないときに剥落したようで、ケガや物が壊れたことはなかったようです。ただ、奥さまからは、タイミングが悪ければお子さまに深刻なケガあった可能性もあるので、まずは急ぎでの対応策をしたうえで、きちんとした原因究明と対処策を施して欲しいとのご要望を頂きました。
こちらは判りにくい写真ですが、玄関ホールから吹き抜け上部を見上げた写真です。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸

こちらがはく離して落ちてきた石材のピースです。5ミリ厚のシルバフォックスという大理石の背部から強化エポキシ1ミリで補強した材料を特注で作って貰ったものです。写真を見ただけでも反っているが分かりました。

西麻布N邸の玄関吹き抜け

こちらは工事途中の玄関ホールの様子ですが、右上の箇所の石材が剥がれ落ちてきた部分です。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸

ご連絡を頂いた当日のうちに施工会社に西麻布N邸に行って、状況確認をすると同時に他の石材がはく離しないようテープにて救急措置をして貰いました。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸

こちらの写真はテープを張る前に、まずは外れた石材ピースを、外れた箇所にはめ込んで仮にテープで止めて貰った様子ですが、やはり相当反っており、この反りが原因で背面の接着剤がはく離したであろうことが判りました。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸

改めて翌日に施工会社が職人さんと一緒に現地に伺って、打診をして少しでも危険度があると感じた石材は剥がして貰いました。昨日は曇りの状態でしたが、この日は快晴でしたが、上部が嵌め殺しのガラスで熱が逃げる場所がないこの吹き抜け上部は相当に温度が上がっている状態だったとの報告も受けております。

まずは当座の問題はある程度解消できたので、改めてNさまとの日程を調整して、まずは危険な状態を引き起こしてしまったことに対しての謝罪をするとともに、問題が発生した原因と対処方法について、こちらと施工会社で話をした見解をご説明させて頂きました。

・素材について
当初この壁は他の壁や床部分でも使ったハニカムで裏打ちされたもので検討しておりましたが、ちょうど現場監督の石山さんの背面に見えるキッチンへの勝手口の金物の収まりのディテールとの絡みで、薄く仕上げることが可能な強化エポキシでの裏打ち材に変更となりました。と同時に強化エポキシで裏打ちしたものでは大判サイズができないので、200×800程度の小型の割に変更していました。裏打ち材の強度はハニカムの方が強く、強化エポキシの方が弱いことが判っていました。

・接着方法について
施工をお願いした下請けの石材会社からは接着方法としてはベタに接着剤を塗って張る方法では不陸(フリク(壁の凹凸))を拾ってしまい、平滑に張ることができなので、今回は接着剤の点付け工法を採用したとのことでした。第三者の意見も聞きたかったので、付き合いのある他の石屋に確認したところ、接着剤の点付け工法が、強度的に弱いことはないが、写真をみると石を張る下地がパテ処理をした状態になっており、それは弱点の一つになっていたかも知れないとの意見を貰いました。

・吹き抜けの温度上昇について
これが今回、僕ら設計側がきちんと検討していなかったことでした。空気の逃げがない嵌め殺し窓付きの吹き抜けで、窓を閉めた車の中と同じように夏の温度はおそらく50度を超える状態になるようでした。夜になると他の室温と同程度の25度程度まで下がるので、これだけ温度の上下動があると裏打ち材と表面材の温度の違いで、特に強度が弱い強化エポキシだけで裏打ちした石材が反ってしまい、そのことによって接着部分が剥がれて石材がはく離落下したのだろうと考えられました。

・責任について
設計としては、材料選定の際に支給してもらった石材屋からは大きなアパレルなどの吹き抜け上部でも張った実績があることを確認していましたが、温度の急激な上下のことは十分に理解していませんでした。また、残念ながらこの石材屋の担当者(一人社長の会社でした)が、今回の工事中に病気で亡くなられてしまい、最終的な素材選定の問題点を確認することができませんでした。ただ、素材を当初のハニカム裏打ちからエポキシ裏打ちに変更する際の打ち合わせ時にも施工会社は同席しており、パテ処理下地の上にこの材料を張っていたことも問題点だったことについては同意してくれているので、石材を撤去して何らかの別の素材で仕上げることの費用についいては、設計事務所と施工会社で折半にすることになりました。

以上をNさまご夫妻にご説明したところ、謝罪を受け入れてくださった上で、原因と責任についてもご理解頂きました。

吹き抜け上部の石材はく離に対してのデザイン的対処案

吹き抜け上部まで石張りの壁が伸びていたこれまでの玄関内装デザインを、ご主人さまが特に気に入ってくださっていたので、何とか別の材料や方法を使って、以前と同じデザインに仕上げることができないかとのお話を頂きました。ただ、強度の高いより厚みのある石材を使うと、収納や勝手口の扉とフラットに仕上げることができないこと、また現れてしまう小口の処理もうまくできないこと、そしてやはり温度の上下が激しい箇所に石材を使う危険性があることをお話して、塗装仕上げにして貰うことでご了承頂きました。
上のCG図は、設計当初に作って貰っていたものですが、吹き抜け上部も右側の壁上部だけ塗装に変更したイメージ図です。現場でご説明した際には右側の建具と同じベージュブラウン色が良いのではとお伝えしておりましたが、このイメージ図を作ってみたところ、白の方が違和感がないので、こちらをお勧めいたしました。

吹き抜け上部の石材はく離@西麻布N邸に対しての緊急処置

そして後日吹き抜け上部の石材を全て剥がして、白い塗装で仕上げ直してもらった最終形の状態がこちらです。お二人からは、当初の石張りの方が高級感はあったが、これもほとんど違和感がないので大丈夫だとのご連絡を頂きました。お客さまと施工会社の全面的な協力もあって、迅速にご対応できたこと、ありがたく思っております。

西麻布N邸は、僕らにとっては初めてのメゾネットマンション住宅で、玄関のトップライト付き吹き抜けも初めての設計でした。初めてのことに対しては、なるべく慎重にというスタンスで設計デザインをしてきたツモリでしたが、今回のこの問題については検討が足りていなかったこと大いに反省しております。