Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

リノベーション研修@ニューヨーク-3

見学記

ニューヨークでは、以前働いたCicoganani Kalla Architects事務所をはじめ、幾つかの超高級リノベーションを手掛ける設計事務所を訪問してき参りました。

以前は53丁目のMOMAのすぐ近くにありましたが、46丁目に移転していました。昔の懐かしいオフィスは残念ながらなくなり、今は写真のようなとてもきれいな事務所に変わっていました。

こちらは打合せ室です。左手の壁には、マンハッタンのアパートメント・リノベーションプロジェクトのプレゼンパースが飾ってありました。ガラス扉の向こうに見える螺旋階段を上ると、かつてのボスのピエトロ・チッコニャーニの机があります。

こちらは同じプロジェクトの展開図です。すべての部屋の内部をパネル割やモールディング、建具デザインまで含めて、インテリア・デコレーターと共同でこのレベルまで設計していました。昔は、鉛筆で手書きでしたが、今ではほとんどコンピューター化されてしまったそうです。

右がかつてのボスのピエトロ、左がかつての同僚で、今は事務所重役になっているニコラス・スタノス君です。

こちらは、かつてCKAで後輩だったアニークが独立して作った設計事務所、Anik Pearson Architectsです。左の女性がアニークです。

ニューヨークの設計事務所は、3年前のリーマンショックで皆相当のダメージを受けたようで、幾つかの中止になってしまったプロジェクトの模型が中央の机の上に並べられていました。

昔は色々と教えてあげていた後輩が、立派な事務所を構えているのは、不思議な感じがしました。
CKAでは、5億から20億円(!)くらいまでの大型住宅プロジェクト(新築とリノベーション)を複数設計していました。アニークの事務所では、当初8億円位の予算でスタートしたプロジェクトが、不景気のせいで段々とスケールダウンしてしまい、2億円位まで下がってしまったと嘆いていました。他にも事務所訪問をしていますが、それはまだ後日こちらのブログで紹介いたします。

リノベーション研修@ニューヨーク-2

見学記

昨晩、ニューヨークでの10日間の旅より戻りました。先回紹介した事例以降も、幾つかの超高級リノ ベーション事例を見学してきたので、それらを紹介いたします。

一つ目はミッドタウンにあるマンションのペントハウスです。三層に渡る、延べ面積300平米のマンションを、ご夫婦の仕事でもあり、趣味でもある現代アートを飾れるようにリノベーションしています。

リビングの一角には、現代作家のSol LeWitt(ソル・ルィット)氏に現場で描いてもらったアートがありました。

廊下は、名だたる現代アートの巨匠たちのペインティングやオリジナルスケッチが隙間なく並べられた、アートギャラリーになっていました。

二つ目はダウン タウンのタウンハウスの内部をほぼ全面改修した豪邸です。コレクションのアフリカンアートで満ちており、ちょっとした美術館以上の迫力がありました。

こちらは、吹き抜け上部で、鉄製螺旋階段を上った上にあるご夫妻の書斎スペースです。

リビングの奥にあるキッチンもアフリカンアートで飾られています。見せるキッチンと、右奥にある下準備する隠れたキッチンで構成されていました。

上階には、こじんまりとしたファミリー用リビングもあります。それぞれの部屋の仕上げも、その空間のサイズや採光、使い勝手に合わせて、雰囲気が替えてありました。

建物の奥には、アーティストの奥さま用の吹き抜けのある大きなアトリエがありました。約1000平米のタウンハウスを、5年掛けて思った通りにリノベーションしたそうです。

3つ目もやはりタウンハウスのリノベーション事例です。こちらは、半壊状態の住宅を建築家が購入して、住みながら増築して、ほぼ完成状態に持って行ったお宅です。

奥に行くに従って、細まってゆきますが、歴史的建造物に増築する際には、元の住宅のサイズを空間的に記録するために、袖壁を作って元の空間の規模が判るようにしておく必要があるそうです。

通り側のリビング直上の部屋は、幸いそれほど傷んでいなかったそうで、古い床材や建具を活かして、ヴィンテージ感のあるファミリーリビングに改装してありました。

寝室の水廻りは、スレートの床材にガラス間仕切りのシャワーブースと、モダンな仕様へと変わっていました。
今回、これ以外にも数件のお宅を拝見させてもらいましたが、そのたびに感心したのが、建物のオーナーが住宅に対して持っている愛着の深さでした。皆さん、すべての部屋を案内してくれましたが、その空間の使用目的だけでなく、なぜそのような仕上げになって、どのような家具を使い、飾っているアートも、いつどのようなタイミングで手に入れたか等、由緒から解き明かしてくださいました。昔からの富裕層の方も、比較的新しくお金持ちになった方も、皆変わらず、自分の住環境に対して誇りを持っていることは、素晴らしいことだと強く感じました。

 

リノベーション研修@ニューヨークー1

見学記

先週末より、研修を兼ねてニューヨークに来ています。昔働いた設計事務所Cicognani Kalla Architectsのツテや、知り合いの紹介をたどって、ニューヨークのリノベーション事例を訪問中です。そのうちのいくつかをご紹介します。

一つ目は、約17年前にリノベーション設計をお手伝いしたS邸です。

これまでの写真は、きれいに片づけて頂いてから撮影した写真でしたが、片づけない普段使いの状態で撮影させていただきました(それでも、やはりきれいです…)。

こちらは、国連近くの超高級マンションリノベーションです。二層あり、33階の1層目はパブリックスペースで34階の二層目はプライベートエリアとすみ分けられていました。

マンションをご購入した20年前に一度スケルトンで真っ白なモダンリノベーションを行い、子どもたちが独立した3年前には、今度はちょっとクラシカルな要素も入れたデザインで全面リノベーションしたとのお話でした。

リビングの隣のダイニングです。向かって左手の壁には、大型のHelen Frankenthaler(ヘレン・フランケンソーラー)、正面の壁には小型のSol LeWitt(ソル・ルィット)のアートが飾ってありました。

右手が玄関ホールで、正面が二階への階段、左手が廊下になっています。微妙に壁の色を変えて、雰囲気を少しずつ変えているのが面白いところです。

上階の主寝室は、薄いグリーンで壁が塗られていました。景色の方向に合わせて、ベッド背面の壁を傾けてありました。開口部奥が、奥さまの書斎です。

チェリー材と緑掛かった御影石で作られた大型キッチンです。背面には冷蔵庫とシンクがあるキャビネットがあります。

そして最後は宿泊したホテル、The Surreyです。1年前に全面リノベーションを施したとのことで、アールデコの要素をモダンなインテリアにうまく取り込んだデザインとなっています。インテリアのカラーリングも灰色をベースに、シックにまとまっていました。

こちらがロビーの様子です。床のタイルモザイクや、天井の照明が、ゼセッション(ウィーン分離派)的なデカダンス(退廃的)な美しさを感じさせます。

ペントハウス(屋上)の庭園も名物の一つで、ウッドデッキに緑を適宜配したレイアウトに、アウトドアファーニチャーが上手くマッチし、快晴の日は余ったイスがないほどにぎわっていました。