Author Archives: Kenji Kagami
2023.05.22
ウォールナット無垢一枚板テーブルの改造
[関西I邸]
先日無事お引渡しを終えた関西I邸では、元々お客さまがお手持ちだったウォールナット材のテーブルが小さめだったので、余っていた同じウォールナットの半端材と黒御影石を付けくわえて改造致しました。
上が元々のテーブルで、下が改造したテーブルです。
こちらのウォールナット無垢一枚板のテーブルです。長さ1800ミリ、幅は約900ミリの耳付きの堂々とした天板で、Iさまもお母さまがIさまご夫妻が結婚した時にプレゼントして下さった思い出のテーブルでした。因みに、耳付きとは丸太の一番外側の表皮に最も近い部分までを含んだ無垢一枚板ならではの特徴です。
リノベーション後の新居でも、何とか思い入れのあるこのテーブルを使いたいとのご相談を頂いておりましたが、このままではサイズ的に不十分なので、何か工夫をして大きくすることができないかと考えて作ったのがこちらのプレゼンテーションシートです。
- 木材(同じウォールナット材)を継ぎ足す
- 金属や石材などを使って増幅する
- スムーズに繋げるのではなく、わざと継ぎ接ぎだらけにする
といったアイデアを考えてみました。
Iさまご夫妻からは、プレゼンシートを見ても、どのくらいの費用でどのようになるのか分からないので、概算費用だけでも出して貰えないかのご依頼があったので、ザックリしたイメージ図を作って工務店に概算をお願いしました。一つ重要なポイントは、2800ミリ程度の長さにしたいと考えておりましたが、そこまで大きくなるとマンションのエレベーターでも階段でも搬入ができなくなるので、現場でノックダウン(組立て)ができるようにしなければいけないという点がありました。このスケッチからは、脚の作り方がここまで複雑だと150万円位まで膨らむのではとのこと、もっとシンプルにして貰えれば100万円位まで落とすことができるのではとの話となりました。
ここまで大型サイズのテーブルは、新規購入の場合は搬入ができないので、エクステンションテーブルしか選択肢が無いこと、また愛着もあるこの天板はやはり使いたいとのことで、出来上がりはまだ想像できないが、カガミのデザインで良いものに仕上げて欲しいとのご依頼を正式に頂きました。
この時点で、実はこのウォールナット一枚板は当初の部屋には大き過ぎたのでカットした余りの部材があることをIさまに教えて頂きました。長さ90センチで幅は30センチものが2枚あるとのことでした。
耳があると接合ができないので、耳はカットすることを考えていましたが、それだと長さに対してテーブルの幅が狭くなってしまうことを心配していましたが、この半端材も活用すれば長さ2800ミリ、幅100ミリのテーブルができることが分かったので、先ほどのスケッチより足を簡略化したデザインの図面を起こしてみたのがこちらです。
継ぎ足す石材は、工務店に探して貰った御影石サンプルの中から、少し光沢感のあるエメラルドパールという石材を選びました。
僕らの設計図から工務店が起こしてくれた施工図がこちらです。何度か図面の赤チェックのやり取りをして、デザインが纏まったので、正式見積りをお願いしたところ、搬入設置まで含めてちょうど100万円(消費税前)で作って貰えることになりました。
ここからは工務店の工場でどのような作業をしたかの説明となります。天板は大きく起って(むくって・反るの反対で凸状に曲がっていること)いたので、上下を逆さまにして、反っていた側にを50~60ミリ間隔でノコギリで刻みを入れて貰いました。その溝に接着剤を詰めて平板の上にのせて重しとクランプで歪みを補正して貰ったのがこちらです。既に手前側に半端物のウォールナット材を接着で継ぎ足してくれています。
もとは裏側だった側をサンダーとやすりで磨き、金属製の契り(チギリ)を入れるための溝を掘って貰いました。
二分割で現場に運び込まれた鉄製の脚と天板の下地となる鉄板をビス留めして貰っている様子です。
まずは鉄板のテーブルが出来上がりました。丸い穴が8カ所空いていますが、これが後の組立ての時に役立つのです。
先ほどの合成された天板を鉄板の上に乗せます。
ウォールナットの天板はウレタン塗装を施して、とてもきれいに仕上がっています。
先ほどの鉄板の孔の位置に何やら金物のようなものが見えます。
こちらが寄せ付ける金物なのです。異素材の木材と石材をお互いに引き寄せる金物で、ちょうどビスで寄せ付け具合を調整できるように、その際的な位置に鉄板の孔が空けられているという訳です。
それにしても天板の起くり(ムクリ)を補正するためのノコギリの溝が深く掘られていることに驚きますね…。
これが鉄板の裏側から見た丸穴です。因みに鉄板も上面は仕上げていませんが、裏面と脚は焼き付け塗装できちんと仕上げられています。
ここに1000ミリ×500ミリの御影石を載せます。
以前もアップした写真ですが、エメラルドパールの背面にも金物用の孔が空けられており、
それをこのように下に潜り込んだ職人さんが引き寄せてゆくのです。
片側を指で動かないように固定しながら、反対側のボルトを締めて寄せ付けています。
こちらの金属の蝶々のような部材が契り(チギリ)です。本来はこの部材が置くまで差し込まれることで、二つの素材を引き寄せて、離さないようにしていたのですが、今回は金物を使って、契りは装飾としています。
契りの厚みに合わせて、事前に彫り込まれた個所に載せて、接着剤で固定します。
異素材(木材と石材)にこの契りが入ったことで、がっちり組み合わさったように仕上がりました!
契りの部分の接着剤のふき取りの際に使ったラッカーで、塗装のウレタンが一部剥げてしまったので、その部分は補修して貰うことになりましたが…、
実に堂々とした仕上がりです。
苦心した脚の部分のデザインもきれいに収まっています。
金属の接合部分も違和感がありませんね。先ほどからの作業プロセスでも分かりますが、実はこの脚の部分と天板の木と石は接着されていません。木も石も十分に重たいので、その重量だけで動かないのです。イザとなれば、職人さん4人は必要になりますが、解体して運び出すことができるようになっているのです。
天井が高く、大きなダイニング空間に決して負けない重量感のあるダイニングテーブルが無事組み上がりました!お引渡し当日にこのテーブルを初めて見て下さったIさま夫妻もとても喜んでくださいました。
2023.05.18
大理石調大判タイルの巨大ショールーム見学@MIC/東亜企業
[ザ・ライブラリー]
TAGKENとの協同リノベーションブランド「ザ・ライブラリー」の勉強会で、横浜にある大判タイルの巨大ショールームを見学してきました。
横浜の倉庫&工場が立ち並ぶ湾岸の古い建物の中に、このような巨大なショールームがあるのです。会社としては石材を扱うMICとタイルの東亜企業の共同ショールームという形式となっています。
このショールームの何がすごいかというと、まずタイルのブランドが多様にあり、それらを一カ所で見比べながら見ることができることなのです。ブランドとしては欧州最大のタイルメーカーであるマラッツィ、白系の大理石調タイルで有名なイリス・グループのアリオステア、濃い色味や派手な柄の大理石タイルで定評のあるイモラ、他にも中堅どころのタイルブランドがブースごとに並んでいるのです。
更には本物の大理石や…、
特殊加工の大理石なども揃えており、予算を頭に置きながら候補を大理石とタイルを比較しながら見てゆくことができるのです。実はこちらは大理石のMIC(ミック)と輸入タイルの東亜企業が一緒に展開しているショールームなのです。
有楽町にもショールームがあるマラッツィ・ジャパンは、ザ・ライブラリーのメンバーが揃うとのことで、マラッティ・ジャパンの玉岡社長が来て下さり、更に偶然ではありますが、マラッツィ・グループのアジア担当セールス・マネジャーのアンドレア・シモニーニ氏も同席して説明してくれました。
以下、続きはザ・ライブラリーのブログでご覧ください。
2023.05.16
上階からの水漏れ対応の顛末-2
[成城Z邸]
ある日突然マンション上階のリフォーム工事が原因で、ご自宅のクローゼットや寝室の天井から水漏れが起こった成城Z邸の補修対応顛末のその2です。最初の水漏れ発生時の様子はこちらのブログをご覧ください。
ここまでの調査で水漏れが原因で使えなくなったウォークインクローゼットと書斎と寝室空間の補修と、床下や天井裏の水漏れチェックために開けた点検口の補修工事、そして水漏れをキッカケに色々とこれまでに気になっていたカ所をデザイン的にもっと良くしたいというZさまのご要望を盛り込んだグレードアップ工事の2種類の工事を見積もるための図面を作って貰いました。
図面だけでは補修やグレードアップ工事の内容を表現できない個所が沢山あるので、リフォームキューの工事監督の高木さんに現地に来てもらい、森井さんと一緒に改めて細かい部分をチェックして貰いました。こちらは家具の透明ガラス入り扉をカラーガラスに変える工事ですが、ガラスの厚みが違うので、どう処理するかを見て貰っています。
書斎の壁の色を気分をリフレッシュするために変えたいとのご要望で、良さそうなブルーの色サンプルを作って、
お客さまと一緒に選ばせて頂きました。
こちらも気分転換的な要素が多いのですが、リビングの黒いレザーのソファにあまり座ることが無かったそうで、それはリラックス感に乏しいからだとのこと、同じミノッティのソファのコネリーで、この写真の丸い部分一つだけを入れたらどうだろうかとのご相談も承っています。
靴を脱いで座面に乗って貰い座り心地を体験して頂きました。
サイズも柔らかさも座り心地(寝心地?)も良いとのことで、どのようなファブリックとレザーを張ればよいかもアドバイスさせて頂きました。
因みに、こちらの以前から使っていたソファーは、ミノッティに下取りに出すと、廃棄の費用が掛からないだけとのことが分かっていたので、数社の中古家具販売会社に資料と写真を送って見積もって貰ったところ、最大で30万円程度で売ることが出来そうだとのことが分かりました。
そうこうするうちに見積り額が出て、水漏れ原因の大手リフォームN社の担当者からのOKも出たので、仮住まいに引っ越して頂いて、工事が着工となりました。
床と壁は厳重に養生して、水漏れ箇所については天井を全て解体して更なる水漏れが無いか、
電気配線やその他の設備が傷んでいないかのチェックを行いました。
この写真は天井スラブを見上げたものですが、斜めに黄色いテープを張ってある箇所に長いクラック(ヒビ)がありますが、このクラックの真下の被害が酷かったの、ここから水漏れがあったのだろうと推察することができました。
記録写真として、全ての部屋の天井裏のスラブを見上げた写真を撮影しておきました。
N社の担当者にも来てもらい、水漏れ箇所を確認して貰いました。ここから先は新しい天井を作ってゆくことになりますが、クラック内部の水、そしてその水分によっての鉄筋の錆の可能性についても話をさせて貰いました。
N社としては、上階の工事もこれから進めるが、水漏れが起こってから既に3か月ほど経っており、その間に新しい水漏れは発生していないので、遊び水はもう残っていないと考えているとのことでした。また、下側からクラックを塞いでしまうより、上階の工事をする際にクラックのラインに沿ってU字型に溝を掘って可とう性エポキシ樹脂を入れて処理した方が良いと考えているとのことだったので、それには賛成だったので、そのことをN社からお客さまに伝えて貰うよう依頼致しました。
念のため、パッとは見えない造作家具の上面をのぞき込んでいる様子です。
天井のクラックはここまで伸びていましたが、石膏ボードには水染みはありませんでした。
こちらの材は、解体時に水漏れが酷かった箇所の石膏ボードを保管しておいて貰ったものですが、左側の丸穴周辺はボロボロになっていました。
他の造作家具の上面や、
壁周りから床下に水が落ちた痕跡が無いかもN社の担当者と一緒にチェックして回りました。
水漏れ箇所はもちろんですが、その他の空間も職人さんの出入りや物の運び出しで壁や床に傷がつかないようにしっかり養生がされていました。
廊下などはアーティストのクリストの作品のようになっていました!
解体された様子をお客さまにも確認に来て頂きましたが、水漏れでここまで解体しないといけないということを改めて見て、驚かれていらっしゃいました。
ここから先はようやく復旧工事とグレードアップ工事という段取りになります。