Author Archives: Kenji Kagami
2023.05.13
ミラノサローネ2023_ポリフォーム・ラボ-2
[ミラノサローネ2023]
盛りだくさん過ぎて1回のブログではご紹介しきれないポリフォーム・ラボ(巨大ショールーム)の第2弾です。
まずはポリフォームの最も得意とする壁面クローゼット家具をご紹介いたします。今ではイタリア製ハイ・ブランド家具システムでは標準仕様ともなっている、クローゼットにガラス扉を取り付けたり、間接照明を入れて中の服を魅力的に見せることは、このポリフォルムが世界で初めて先駆けて手がけたとのことです。
また、こちらの事例のようにワードローブクロゼットで部屋を仕切るアイデアもポリフォルムが世界初の販売したとのこと、とにかくこの壁面クローゼットシステムのデザイン開発が、ポリフォルムの発展の基盤となっているとのことでした。
クローゼットシステムを大きく分類すると、箱を作るシステムと、ポールを立てるシステムと背面壁から持ち出すシステムの3通りが用意されています。
ポールを立てるシステムは、クローゼット空間に一定間隔で床と天井の間に突っ張り棒を立て、その間に棚板や引き出しボックスを挟みこんでゆくシステムです。建築をいじらずに後施工でできるので、比較的安価となります。安価ながら部材は豊富で、ポールに電気を通して間接照明をつけることも可能です。
こちらの右側濃紺の部分はは壁から棚板やハンガーを持ち出すシステムです。パネルの間にスリットがあり、そこに特殊な金物を差し込むことで可動式の部材を取り付けられるようになっています。こちらも比較的簡易なシステムではありますが、間接照明も可能となります。
こちらの写真の右側半分が箱型を組んだクローゼットです。前者2つは扉を取り付けることができないのに対して、箱型のみ扉を取り付けることが可能です。扉も塗装仕上げやガラス扉のバリエーションがあるので、3つのタイプを組み合わせると魅せる収納や隠す収納、特別感を出す部分などを自由自在に演出することが可能となるのです。
クローゼットのガラス扉の創始者(笑)だけあって、扉や取っ手のディテールには工夫があふれています。こちらは扉のフレームをシャープに見せるテーパー加工…、
こちらの扉はガラス面を大きくして、フレームをガラス背面に隠しつつ、使いやすい取っ手となっています。
クローゼット内部の引き出しや棚板、間接照明の収まりもとても研究されておりきれいです。こちらがガラスの小口から照明を入れてガラス棚そのものを照らすディテールです。
棚板の奥に黒い帯が見えていますが、こちらは新たに開発した除湿システム(PSE認証の関係で、日本での発売予定は未定)だそうです。扉付きのクローゼットだと湿気が溜まることを嫌がるお客さまもいらっしゃるので、もしコンパクトな除湿システムが組み込めれば、欲しいという方は多くなるだろうと思っています。
2000年に始めたという置き家具も毎年確実にコレクションを増やしているようです。
こちらはアクタスの新宿ショールームにも置いてある(あった?)モンドリアン・シリーズのソファとテーブル類です。
ソファの間に挟まっている木製テーブルの下が引き出しになっている優れものデザインです。すぐ見当たらなくなってしまう、テレビやDVDのリモコン類の収納に最適ですね。
ベッドやサイドテーブル類のバリエーションも増えてきています。こちらの寝室レイアウトではベッドを部屋の中央に置き、ベッド背面にスクリーン(こちらもポリフォルムの製品、ヒマ)を置き、その後背部の空間にセットアップカウンターとラウンジコーナーを設置しています。
ヒマ・スクリーンはロープ張りで光も風も適度に通しつつ、視線をうまく遮ってくれるので、こちら側に回り込むとベッドのある寝室らしさが薄れます。
こちらのベッドでは、壁いっぱいにまで伸ばしたレザー張りのヘッドボードが印象的です。レザーについては、ハイ・ブランド家具では牛皮から人工レザー(テクノレザー)への転換が進んできていますが、こちらはまだ牛皮の様でした。
ミラノサローネの会場展示のブログでも書きましたが、壁面パネルシステムもポリフォルムでは進化させているので、床と天井と照明計画だけをきちんとしておけば、このようなスタイリッシュな寝室を置き家具と壁面システムだけで組み上げることができるようになっているのです。
こちらのセットアップカウンターは、右側の天然石天板部分は置き家具で、左側のテーブルカウンター部分は壁面システムから持たせている形になります。
それらを部屋の隅で直行させると、このような空間作りができるというわけです。
こちらのソファーセットは、ベルポートのレザー張りに、センターテーブルのクリーク、木製コーヒーテーブル/チェアのウベを合わせ、得意の大型壁面収納で纏めたコーナーです。
ソファーの横には超希少な天然大理石のラピス・ラズリ(青色大理石)のサイドテーブルが置いてありました。アクタスの大岩さんに聞いたところ、特注の製品で、一般では販売していないとのことでした。
地下展示室だけでも300坪、
グランドフロアと合わせると3000坪の広さがあるので、一つ一つのコーナーをじっくり研究するというより、早歩きで回りながら気になった部分を撮影してゆくような流れでの見学になってしまいました。
最後のおまけはこちらの建具です。今回のツアーは皆さん、建築畑の方々なので、ディテールのチェックには余念がありませんでした。
こちらの建具は製品としては販売していない、ラボだけの特製品とのことでしたが、取っ手は家具の取っ手は表裏に貼り合わせたスタイルで、
内側からはボタンで開閉ができ、外側からタッチキーで制御できるシステムになっていました。
フロアヒンジで吊った扉でしたが、戸先も戸尻も特別な加工で気密性がとれるようになっていました。
程よく疲れた(というかかなり疲れましたが…)あとは、ラボの奥にあるレストランに招待され、
美味しいランチを頂きました!この日の午後は、さらにポリフォルムのキッチン工場を見学させてもらいます。
2023.05.12
ミラノサローネ2023_ポリフォーム・ラボ-1
[ミラノサローネ2023]
イタリア・高級家具ブランドのポリフォームの本拠地は、北部イタリアのブリアンツァ地方のインヴェリーゴという町です。この町に大小5つの工場とラボ(研究所)という名前の施設があり、そのラボを見学させて貰いました。
今回のミラノサローネは、家具会社アクタス社主宰のツアーで、日本からはアクタスのお二方(大岩さんと阿部さん)そして、日本の不動産会社やゼネコン、大手設計事務所や僕らのような小アトリエの設計者まぜこぜで11名の総勢13人のグループツアーでした。アクタスが日本でのポリフォームの独占販売権を持っている関係から、今回のラボ見学が可能となりました。
ラボの正面玄関入って正面に、立派な作りのクローゼット家具が置いてあります。1987年に限定30点でポリフォルムが作った折り畳み式の「イオ(イタリア語で私)」という名前のクローゼットシステムです。
多様な引き出しや開き扉、特殊な金物や素材が使われた相当に凝った作りのクローゼットでした。ポリフォルムが初めて作ったシステマティックな収納ということで、初志貫徹という意味で入り口に置かれているとのことでした。
とにかく広い施設で、延床で3000坪(地下だけでも300坪)の面積があるそうです。まずは会議室にて、ポリフォルムの歴史(1942年に2つの家族(のちに3つの家族)から始めたファミリービジネスで、1970年にポリフォルムの名称に…)と、会社独自の考え方やシステム、そしてインヴェリーゴの町に散らばる工場の内訳等を説明して貰いました。
ラボで合流したアクタスの他のメンバー(野口さん、海野さん、神山さん、花登さん、谷口さん)も一緒に、まずは幾つかのポリフォルムキッチンの説明を聞きました。
2.5メートル高さの折れ戸を垂直に収納できる扉金物をボルトルッツィという金物メーカーと共同開発したとのことで、実演して見せて貰いました。これを使えばゴタゴタしがちなキッチン家電や食器収納を隠したい時には全面を扉で隠し、使いたいときにはこの写真のようにフルオープンで使えるとのことでした。
こちらのキッチンは厚みを持たせたカウンターキッチンとダイニングテーブルを長手方向に継いだスタイルです。
ちょっとアルクリネアのキッチンに似ていなくもないですが(笑)、端部を立ち上げて、水がカウンター上からこぼれないような水返しのディテール等はとてもきれいでした。
大岩さんが説明してくれているこちらのキッチンは、一枚の天板が3種類の素材で構成されているという珍しい作りでした。
メインのシンクとコンロは中央の天然大理石部分に纏め、左右に広いステンレス・ヘアラインのカウンターをウイングのように広げ、正面に木製のイートインカウンターを設けています。大理石カウンターはステンレス板に対して四角く飛び出ていますが、木製カウンターは斜めにテーパーを切っているところなどは憎い納まりです。
こちらのキッチンは、カウンターは大理石柄のセラミック(陶板)の薄いカウンターとなっています。
コンロがIHとガス両方を備えていますが、ガスコンロ部分はセラミックカウンターに直接穴をあけて取り付けています。熱い油などがこぼれても傷まない、強度と耐久性を兼ね備えたセラミックならではの作りとなっていました(日本ではガスコンロの規制が厳しいのでこれはできませんが)。
こちらでは、白いセラミックのメインカウンターの上に、角を丸めた黒い木製のスナックカウンターを取り付けたデザインでした。載せただけのように軽く見えるカウンターですが、手で体重を乗せてもびくともしない頑丈さでした。こういった軽食用カウンター付きのキッチンを開発している分、ハイスツールが多様で、それぞれ秀逸なデザインでした。
とにかく広いスペースにキッチンだけで10カ所以上の展示があり、それぞれが最新の趣向を凝らした実験的なキッチンとなっています。こちらL字型カウンターの端部に丸いスナックカウンターを取り付けていますね。
先ほどのキッチンは木板張りの扉でしたが、こちらは石目柄の扉材です。実際は薄いセラミック板を張り付けた扉となっていました。
木仕上げのイートインカウンターの突板加工も見事です。
キッチンの背面収納もバラエティーに富んでいます。
収納の取っ手が取り付く部分はこのようにテーパーをとって無垢材を削り出したかのように見える金物ディテールとなっています(実際は突板をうまく加工しているだと思いますが…)。
キッチンについては、1996年にヴァレンナという高級キッチンブランドを買収して、しばらくはヴァレンナbyポリフォルムという形で並走していましたが、2018年に完全統合して、これまでの壁面家具等で培ってきた素材とディテールをキッチンにも注ぎ込んで、一気に花開いたかのようです!
次のブログで、置き家具や壁面収納見学の様子をご紹介します。
2023.05.10
ミラノサローネ2023_バロヴィエール&トーゾ市内SR
[ミラノサローネ2023]
モダンなガラス製シャンデリアブランドのバロビエール&トーゾの市内ショールームを見学してきました。
B&Bイタリアや、アルクリネアがある通りの並びにひっそりと佇むショールームでした。地味な佇まいですが、ブランドは1295年から約800年の伝統がある会社とのことです!
展示は路面のグランドフロアと1階(イタリアでは地上階がグランドフロアで、日本の2階が1階となります)での展開で、グランドフロアは高い天井から幾つかのシャンデリア器具が吊られています。
モダンデザインのシャンデリアは、細かい部品がほとんどなく、ガラスの膨らませ方や曲げ加工、またガラスの色味や、ガラス素材の美しさを表現していることが特徴なのだろうと考えさせられました。
こちらもかなり華やかに見えますが、中央に吊り下がっている見える部分も一体化されていることが分かりました。
上階は打ち合わせ室や執務室の中に照明器具が吊るされており、それを見て回る形式となっていました。
以前、弊社プロジェクトの白金N邸のダイニングに採用したシャンデリアと似ていますが、ガラスの張り出し方は新しい物の方が大きく張り出しており、星型の部品も華麗になっていますね。
こういった器具となると、シャンデリアというよりペンダント照明なのでしょうが、内部に使われているガラスのきれいなカーブはベネチア近郊のムラノガラスの系譜を継ぐ会社であることを意識させられます。
ちょっと和風に見えますが、壁付けのブラケット型照明も展開しているようです。
裏側をのぞき込むと、このような仕組みになっていました。