Author Archives: Kenji Kagami
2024.10.07
インテリア完成写真とCGの違いについて
[ザ・ライブラリー]
ザ・ライブラリーの紹介ブログです。
ザ・ライブライーでは高性能CGソフトを使って、かなり実物に近いコンピューター・グラフィック(いわゆるCG)を作って、お客さまとのデザイン検討や素材打ち合わせに活用しています。打ち合わせ中に作ったCGも、打ち合わせの流れの中で素材が変わったり、家具を変更した場合、それも最新版にアップデートしながらお客さまに3Dで確認して頂けるように準備をしています。そんな施工前に作られたCGと、リノベーション工事が完成した後に撮影した実物写真の違いを、ブログで比較考察してみましょう。
こちらはCGです。これだけを見るとかなり素材感があり、正面壁の大理石調タイルの質感や、床に敷いたラグの凹凸感まで表現されていますね。今回の千代田区O邸の打ち合わせは、まだ建物が完成する前からスタートしていましたので、実物としては何もない段階で、ここまで具体的なCGで打ち合わせをできたことは、お客さまのOさまご夫妻もとても喜んでくださいました。
そしてこちらは完成後の実物写真です。当然ながら造作家具の木目やソファのクッションファブリックの質感がより高く、さらに細かく見てゆくとダイニングテーブル上の照明の煌めきや、植栽の影の表現なども奥行き感がありますね。
因みに、同じようなリアルな空間の写真でも、こちらは人工照明を全て消して、窓からの自然光だけで撮影してみた写真です。素材の色味や質感は一番良く表現できますが、光が届きにくい部屋の奥の空間は色彩が乏しく、少し寂しい雰囲気の写真になってしまいます。つまり、リアルな写真といっても撮り方によっては全く違った雰囲気にもなるのです。
同じ空間をリビング側からダイニング側を見返したアングルのCGです。一度リアルな写真を見た後だと、リビングのラウンジチェアのファブリックの張地が固くて偽物っぽく見えてきますね。手前左側のテーブル上の雑誌や、左側壁面のワインセラーやカウンター上の小物があることでリアル間を補強してくれていますが、やはりちょっと何かが足りない感じがしますね…。
ほぼ同じアングルの実物写真です。写真も実はRAWデータで撮影したものを、歪みの補正や色味をなるべく肉眼で見たものに近づけるためにフォトショップのライトルームソフトでかなり補正しています。CGと見比べると、壁や天井の色味が複雑で、ラウンジチェアのファブリックのニュアンスや、影が重なった部分や折り下げ天井の鏡張り箇所などのディテール感もリアル写真の方が数段リアルですね。
因みに、こちらの写真は、NIKONの一眼レフカメラD7500に超広角ズームレンズのAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRをつけて撮影した「加工なしの生写真」です。そういった意味でもホームページやブログにのせている実例写真もリアルと言いつつも、歪みや明るさ、色味などを調整しているので、かなりの加工臭がしますね(笑)。
以下、さらにリビングダイニングだけでなく、洗面所や玄関や子ども部屋といった特徴のあるお部屋のインテリアCGとリアル写真の比較について、こちらのブログで書いています。
2024.09.30
クチーナのセミオーダーキッチン据え付け@渋谷区N邸
[渋谷区N邸]
新築マンションリフォームの渋谷区N邸の現場で、セミオーダーキッチンの据え付けが始まりました。
とは言いつつ、キッチンの部材搬入時から3日目なので、かなりキッチンも組みあがってきていますね。先回のブログでご紹介した窓際の三方枠と柱型のタイル張り、枠上の装飾などもかなり出来上がってきています。
写真左側のペニンシュラ型(半島型)カウンターはかなり組みあがっていますが、右側のカップボードも兼ねた壁面型キッチンは箱は組まれていますが、細かい部分はまだまだですね。
キッチンを組み立てる際に、最も重視されることが水平(レベル)と垂直(カネ)の設定です。レベルとカネをしっかり出して箱を組み上げれば、後は比較的簡単な作業となるのです。ペニンシュラ型カウンターのL字型に組まれたクオーツストーンカウンターもピッタリ組みあがっていますね。
背面収納も、ミーレのビルトンのオーブンが組み込まれたり、間接照明やコンセントもあるので、電気配線をうまく通りながらの組み立て作業となっています。
アイレベル(目線の高さに設定された)ビルトインオーブンの右側の縦の隙間は、僕らが良くご提案する引き出し式パントリー収納となります。
部屋の中央に置かれているこのフレーム型の金物を組み込むと、こちらのような引き出し式パントリーとなるのです。背面収納の奥行きが60センチもあるとカウンターは使い勝手が良いのですが、トール収納(上から下まである収納)は奥行きがあり過ぎて却って使いにくくなることもあるので、水や幹部鶴井、瓶や缶類を保管できるこのような収納を組み込むことが多いのです。
因みに箱側の下部には、このようなレールが…、
そして上部にはこのような振れ止めのピンがついており、ここに嵌め込む形で組み立てます。
組立職人さんが吊り戸棚の下に、間接照明付きのパネルを固定しようとしていますね。
吊戸棚の下には、このようなZ型の金物がついており…、
取り付けるパネルの裏側には、同じようなZ型の金物がついており、これをかみ合わせることで固定するのです。こちらのパネルを良く見ると、基材はMDFで作られており、表裏はメラミン仕上げで、間接照明用のスリットと端部の金物がついていますね。
取り付けるとこのようにピタリと吊戸棚の箱の下にパネルが密着される仕組みになっているのです。
あとは、部屋の片隅に並べられているこれらの引き出しや扉、パネル類を取り付け、最後に建築工事側で給水給湯と排水、ガスやレンジフードのダクトを接続するとキッチンの完成となります。
因みに今回の渋谷区N邸のキッチンは、Nさまの以前のお住まいだった代官山N邸のリフォームの時にも採用したのがお近くで打ち合わせも便利だった代官山のクチーナだったので、今回もクチーナさんにお願いしたという経緯があります。
セミオーダーキッチンが得意なクチーナですが、最初のレイアウトプランや使い勝手に直結する収納計画については、僕らが主導で上記のスケッチを使ってリードしてきました。
建築工事と絡む部分もあるので、そのディテールはスタッフの前田君がスケッチを描いて指示してくれています。
カウンター材や扉材などの色味も前田君が作ってくれたCGで決めたプロセスがあります。
キッチン以外の工事も同時多発的に進んでいます。
造作家具でお願いしている来客用トイレ手前の手洗いカウンターや、
玄関入って正面のタイル張りの壁も仕上がってきました。
タイル張りの壁がリビング台に具側に続いた途中に開口部があり、そこからキッチンに入る動線となっています。ここまでくると、次はお客さまと一緒の施主検査となります。
2024.09.26
大理石をスラブ材からでなくブロック材から選ぶ方法
[文京区S邸]
新宿区T邸のキッチンは、アイランドカウンターも壁面カウンターも当初から白い大理石のビアンコカラーラをお客さまがご希望なさっていました。なんといっても、無垢の大理石から削り出したシンクを据えるのですから、やはり無垢の大理石カウンターが良いだろうとの話になっていました。オープンキッチンで家の中心ともなるアイランドカウンターの石材は、写真で判断するのではなく、岐阜県&三重県エリアにある石材屋を巡ってお客さま好みのビアンコカラーラを選びに行く予定でした。
しかし、打ち合わせが盛り上がってゆく中で、アイランドカウンターはより存在感を強めたいとのことで、厚みを持たせたいとのことで5センチ(50ミリ!)の厚みで検討することとなりました。
色々な経緯があって、岐阜県の関ケ原石材のブロック材のビアンコから切り出すこととなりましたが、そのプロセスを以下にご紹介します。
こちらは当初案での大理石スラブ探しのために用意したスケッチ図です。
見積もり上はキッチンとパントリーの大理石カウンターはオーダーキッチンのリネアタラーラに、その他の洗面はランドリールームのカウンターは造作家具屋にお願いする予定でしたが、どうせオーダーするなら一緒の大理石にしようとのことで、全てをリネアタラーラ経由で入れることとなりました。
厚みを増すことが決まった際にリネアタラーラが作ってくれたキッチンのカウンター図です。アイランドカウンターのサイズは、カガミ建築計画では史上最大サイズの4100×1300サイズ(!)なので分割にしないとエレベータに入りません。
さて、これだけの大きさでかつ厚み50ミリのカウンター材をどこから手に入れるかを検討してみたところ、①アジアの大理石集積所である中国・福建省水头市には何枚か50ミリのスラブがあること、②日本の石材屋には厚み30ミリ以上のスラブ材は無いので、ブロックから切り出してもらう、の2通りが考えられることが判りました(費用をあまり掛けない方法としては、通常の25ミリ厚のスラブ材を購入して、コーナーを止め加工にして厚みある大理石に見せる方法もありますが、お客さまからメインのアイランドカウンターは無垢で行きたいとの強いご要望がありました)。
①の場合、費用は安くできるが、アイランドカウンターとL字型の壁面カウンターの石材が違うものになってしまう(色違いが生じる可能性が大きい)ことをお客さまにご説明したところ、多少費用が掛かっても是非ブロックから選んで、キッチン&パントリーだけでなく洗面も同じブロックから切り出した材でオーダーしようと決まりました。
お客さまに2名分の交通費をお願いして来たのはこちら、岐阜県関ケ原市にある関ケ原石材本社です。いつもは横目に見ながら通り過ぎてしまう屋外のブロック材置き場に向かいます。
御影石のような雨風に強い石材が外に置かれているのは判りますが、染みや汚れが付きやすいビアンコ系の石材もブロック材はやはり外に置かれているのです。
候補になりそうなビアンコカラーラのブロック材を関ケ原石材の担当の齋藤さんたちが選んで並べておいてくれたものがこちらです。一つのブロック材のサイズは高さ1200~1500、横幅1200~1500で、奥行き2000程度のサイズで、一つのブロックで15~20トンの重みがあるとのこと、かなりの迫力ですね。
外に保管されている石材は汚れているので、一度軽く清掃を掛けてくださったそうですが、乾燥していると石目が良くわからないので、一つ一つのブロック材の上からバケツで水を掛けて石目を浮き立たせてくれています。
僕、各務はこのように石材の上に偉そうに立って、一つ一つに石目を確認していきました。ブロックサイズによっては、歩留まりが悪い(必要なものを使った後の残りのサイズが悪いこと)と無駄が多くなってしまうので、大型サイズのものから良さそうなものを選んでいきます。
まずは12個あったブロックから2個にまで候補を絞り、水をたっぷりかけて貰った表面を間近から舐めるように(笑)チェックさせて貰いました。
そして中で一番良いと思われた石材を青い巨大クレーンで吊り上げて貰い、このように下面もチェックさせて貰いました。
ブロック材を選んだ際に四周を見て回ったところ傷があることが判りました。その傷は内部にも入り込んでいる可能性があるとのこと、そこを避けてスラブを切り出すような特殊なオーダーはできないので、下面から切り出した方が良いスラブが取れるのではと期待してのお願いでした。残念ながらお客さまの好みではない、濃い目の線が入っていたので、やはり最初に気に入った上面から切り出してもらうことになりそうです。
カガミ建築計画からは僕、各務と担当スタッフの竹田さん、関ケ原石材の齋藤さんをはじめ、この日の検査に協力してくださった方々と一緒の記念写真です。
横に振られている番号で、全てのブロック材が管理されているそうです。ここからどの厚みで切り出して行くかの打ち合わせに入ります。
厚み50ミリのアイランドカウンター材は、搬入を頑張ってもらい2分割で行くことに決めました。50ミリのスラブ材はどうしても2枚必要になります。その他のゲストトイレのカウンター材は、端部に装飾加工をすることになりました。
来客用トイレのカウンター大理石の端部の装飾のイメージはこの写真をお見せししました。こちらはお仕事もご一緒したことがある神奈川県茅ヶ崎市のKONARAHOUSEさんの実例写真をお借りしました(小形社長、勝手に申し訳ありませんでした…)。
こちらは、関ケ原石材が上のイメージ写真から厚さ20ミリのサンプルと、厚さ30ミリで作ってくれたサンプルです。こうして比べてみると、30ミリの厚みがないとプロポーションがおかしいので、この部分は30ミリの厚みのスラブを切り出してもらうこととなりました。一枚のスラブのサイズが約3000×1500ミリほどあるので、この手洗いカウンターを切り出した残りをどこに使うかも相談させて貰いました。
既に切り出されているスラブ材を購入するのと、新しくブロックからスラブ材を好みの厚みで切り出して使う場合の差額ですが、今回は70~80万円程度の差額になりました。といっても、当初は20ミリの厚みの材だったものを50ミリにしているので、当然使用する大理石の重量も増しますので、単純比較はできませんが、凡その目安としては、ブロック材からスラブ材を切り出す手間賃は約10万円と考えると良いそうです。因みに、墓石などに使い御影石は固い石なので、ブロックから切り出す時間は昼夜通して3日間ほどですが、大理石は柔らかいので丸一日でカットできるので、その分費用も安いそうです。
写真は以前撮影したものですが、このような巨大な丸鋸のような機械でカットしてゆくのです。水を吹き付けながら丸鋸が高速回転してカットしてゆくのですが、昼夜を通しての丸一の作業で、どれだけの電気と水量を使うのか気になってしまいます…。
因みに、一つのブロックから同じ厚みで何枚もカットする際はこのような機械を使うそうです。
そして、後日カットされたスラブの写真が届いたので、ここからは写真判断でどこからどの部分をカットするかを指示して、リネアタラーラに施工用の資料を作ってもらいました。
そして後日現場に運ばれてきた5センチ厚の大理石天板がこちらです!この天板はお客さまの強い意向で、撥水処理剤を塗布していないので、職人さんが直接手を触れたり、汗が天板に落ちたりすると、それがシミになってしまう可能性があるので、相当に神経を使う作業だったそうです。
イギリスのdeVOL社の無垢大理石から削り出したシンクとの色味、斑の入り方もとても似ており、とても良い感じに仕上がりそうです。