Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

東洋大学秋山研究室来訪

高輪I邸

マンションリフォームで良く問題になる専有部と共用部の取り合い問題についてインタビューしたいとのことで、以前お世話になった東洋大学の秋山哲一先生、元助手の宇治康直さん、そして秋山研究室の学生四人が事務所に来てくれました。

宇治さんの正式な研究名称は「マンション専有部の大規模改修工事に関する調査-専有部分と共用部分の関係性-」とのことで、取り合い部分でどのような問題があったかを聞きたいとのことでした。

このブログでも紹介した高輪I邸でのコンクリート壁のスリーブ開けの事例や、これまでの経験で難しかったり、判断に悩んだケースを色々とお話ししました。20年前であれば、マンションで隣戸を購入して、本来は共用部の境界壁を切って、二つの部屋を一つに纏めてしまうことは普通でしたし、10年前でもエアコン用のスリーブ孔は管理組合に申請しないで自由に開けていたのが実態です。

その他、マンション共用部の養生や躯体に割れやヒビがあった際の対応、全面解体してスケルトンにしてから工事をすることと、部分解体で既存を残した工事をすることの違い等、今回工事をお願いしている工務店青の片岡社長にも立ち会ってもらい、説明いたしました。

宇治さんの学会用研究、そして学生さんたちの卒論・修論、どうぞ頑張ってください!

枠材取付け&二重床のレベル出し

高輪I邸

高輪I邸の現場は、LGS下地への枠取付けとボード張りへと進んでいます。

リビングから寝室方向を覗いたアングルです。窓がない寝室に採光を確保するため、腰高さの障子を入れる開口です。

リビング側の枠は45度のテーパーを取り、開口部を柔らかいイメージにするデザインとしています。塗り込んでしまうのが勿体ない、きれいな枠に仕上がっていました。

二枚の障子がポケットに引き込まれ、天井にはロールスクリーン用のボックスを設けています。ボックスの脇にはWICへの引き戸レールが絡む面倒な枠ですが、きれいに納まっていました。

特にロールスクリーンが収まるボックスは、建築家の横内敏人さんとブラインドメーカーのメタコ社が考案した、スクリーンの隙間が隠れるディテールを採用することになったので、事前にメタコ社の資料を元に、青の片岡さんと十分に詰めておいた部分です。

こちらはウォークイン・クローゼットへの明り取り用の窓枠です。ガラスはシール材のみで押さえ、押し縁を使わないことでスッキリ見せる予定です。

寝室部分は、床下に排水管が通るのでリビングより170ミリ床が嵩上げされています。淡路技研の防振アジャヤスターを使った二重床システムとしています。

上に張られたパーティクルボードに隙間があるところが、この二重床システムのミソです。隙間の真下にアジャヤスターがあり、一度パーチを張った後、レーザーと金尺を使ってレベルを出し、隙間にドライバーを差し込んで微調整して合せてゆくことができるのです。

LGS(軽量鉄骨)下地のメリット・デメリット

高輪I邸

高輪I邸リフォーム現場では、LGSの下地が立ち始めました。LGSとはLight Gauge Steel(ライト・スティール・ゲージ=軽量鉄骨造の意)の事で、マンションリフォーム現場で良く使われる壁や天井の下地材です。

一般的な木製の下地材とLGS(エル・ジー・エス)との大きな違いは以下の通りです。

メリット

  • 木には反りや曲がり、湿気の変動による割れがあるが、LGSは変動が少ない安定した材料である
  • スタッドとランナーの組み合わせシステムで、木に比べ施工性が良く、工事も早い
  • 木に比べ重量が軽く、搬入が容易である
  • マンションリフォームでは関係ないが、白ありの被害を受けない
  • キッチン周りなどで耐火が必要な場合に適している
  • 壁内に電気配線や設備配管を通しやすい

デメリット

  • 木のように薄い材料を重ねたり、部分的に削ったりがしにくいので、細かい現場調整がしにくい
  • LGSを丸ノコでカットする際に火花が飛び散り、火の気の管理が難しい
  • 大工以外にLGS専門の職人さんが必要になる(工種が増える)
  • 下地が正確なコンクリートとの相性は良いが、古い木造で下地がガタガタしている場合は、施工精度が下がる

キッチン裏のLGS下地壁の様子です。水色の給水管やピンクの給湯管、その他電気配線などがLGSの間にきちんと収まっています。壁のボードを張った際にはすべての配線や配管が壁の内側にきれいに隠れてしまいます。

LGSのメリットとデメリット

今回は、先回の記事の通り、細かい寸法調整があったので天井は木下地、壁はスピードを優先してLGSという、ハイブリッドな造りとなっています。

全体に、吊り金物を使った引き込み扉を多用するデザインとなっているので、壁下地を作る前に、吊り金物用のレールを事前に取り付けて貰っています。

LGSについては、以下の記事もご覧ください。

LGSと木製の複合下地組みについて

LGS下地状態でのリフォーム現場確認事項

壁は木製軸組、天井はLGSの複合下地工事について

マンションリフォームの壁下地&天井下地