Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ジュリアン・チチェスターの装飾鏡

代々木上原I邸

代々木上原I邸の装飾鏡にトラブルが発生しました。最終的には関係者のご尽力で解決しておりますが、まずはその顛末をブログに書いておきます。

マントルピースと装飾鏡とパネリングウォール

チェズニー(Chesney)のマントルピース上の装飾鏡はインテリアのセレクトショップのオーセンテリア経由でお願いした、イギリスのジュリアン・チチェスターのものです。因みにチェズニーのマントルピースもオーセンテリアさんにお世話になりました。

julian Ch

カタログ掲載の正規品のサイズは1070×1070ですが、それだと上図の右下サイズで明らかに大きすぎるので、オーセンテリアけーゆで900×900にビスポーク(特注)でお願いしました。

こちらは900角に拡大コピーしたものを台紙に張ったモックアップを現地に持って行った際の写真です。このようにして慎重にオーダーして届いた装飾鏡は当然無傷でとてもきれいで、Iさまも喜んで下さっていたのですが…。

納品後半年ほど経ったところでIさまからご連絡があり、鏡に割れがあるとのことでした。

装飾鏡の割れ

鏡部分に何カ所かの割れがあるとのことでした。すぐに弊社担当スタッフの神崎さんがIさまのお宅に伺ったところ、大小4つほどの割れのラインが入っているとのことでした。オーセンテリアの石黒社長にも現地に来て見て貰い、イギリス本国にも確認をしてみたところ、木背フレームと鏡の間に余裕がすくなく、湿度が高い日本の気候で木製フレームが伸び縮みしたことで鏡に負荷が掛かってヒビが入ったのではとのこと、交換して貰うことになりました。

ただ、単純に交換すると言っても、同じ作り方では同じようなトラブルが発生してしまうので、作り直して貰うに際して、オーセンテリア石黒さんと弊社の神崎さんで打ち合わせをした内容メモがこちらです(お客さまのIさまにもご説明するためのメモでもあります)。

Julian Chichesterの装飾ミラー

大変ながらくIさまには待って頂きましたが、ようやくイギリスから代替品が届きました。

ジュリアン・チチェスターのミラーの交換

右に置かれているものが割れた鏡で、左側が新しく届いた装飾鏡です。当たり前ながらそっくりですね!

本国との調整で、全ての目地部分をカットするとラインがガタガタになってグレード感が乏しくなってしまうとのこと、一番膨張リスクのある個所の鏡に最低限のカットを入れることで収めることとなりました。ここまでご迷惑をお掛けしましたが、このようにきれいで、エレガントな鏡が戻ってきたことで、Iさまも喜んで下さっています。石黒さまも粘り強く対応して下さったこと、本当に感謝しております。

星型リベット付きの装飾鏡

乃木坂U邸

乃木坂U邸のリビングダイニングのマントルピース上に、星型のリベットを取り付けた装飾鏡を取り付けました。

装飾鏡のスタッズ

洋書のインテリア本や雑誌では、このような鏡に取り付ける装飾は珍しくありませんが、日本では鏡の専門会社に聞いても、探しても見つけることができず、仕方がなくオーダーで作ることになりました。

装飾鏡のスタッズ

こちらが洋書から見つけた鏡の装飾イメージです。鏡自体も少し錆びていて、独特の雰囲気がありますね。

装飾鏡のスタッズ

鏡の専門会社へのヒアリングやインターネットで色々と調べた結果、このための特別な建築部材は無いようで、ジーンズや洋服に取り付ける、リベットやスタッズで良いものを探せば良さそうなことが分かってきました。因みに、この写真の部材は共に星型ですが、左側が8ポイントスター(8点星)、右側が12ポイントスター(12点星)と呼ばれる形だそうです。

装飾鏡用リベット

こちらがネットで実際に購入してみたリベットたちです。お客さまのUさまに見てい頂いて、指さしている小柄で可愛い8点星を使ってみることになりました。

装飾鏡の下地

フレームは鏡に取り付けるのではなく、みはしのモールディング部材を四角い枠状に組み白く塗装し、その中に割り付けた鏡を取り付けて貰いました。

装飾鏡のスタッズ

洋書のイメージ写真のように、鏡同士の間を1ミリ隙間を開けて、その奥を黒く塗装しておいて貰い…、

装飾鏡のスタッズ

事前にリベットに取付け用の棒をハンダ付けして貰ったものを接着剤を付けて交点に差し込んで貰いました。

装飾鏡のスタッズ

本大理石製のマントルピースの存在感と比べると、星が小さすぎたのかも知れませんが、お客さまのUさまご夫妻はとても気に入ってくださいました。

装飾鏡のリベット

ちょっとした工夫と努力で、素敵な装飾鏡ができたこと、僕ら設計側もちょっと嬉しくなりました。

加工大理石のサルバトーリ張り

関西I邸

関西I邸では、ソファが対面しテレビを置く予定の大きな壁をアクセント壁とするために、大理石を加工したサルバトーリ(イタリア)の素材を張ることとなっています。その材料が届き、いよいよ張り始めるとのことで現場に竹田さんと行って参りました。

吹き抜けのあるメゾネットリノベーション

ちょうどベニヤ板張りのまま残っている、こちら正面の壁がサルバトーリ張りの壁となります。

加工大理石張りの壁

そして、こちらが現場で開梱されたサルバトーリの材料一式です。

関西I邸_壁加工大理石張り

前回他の現場で同じ素材を張った際には、付属の金物が思っていたイメージと違い、イタリアとやり取りをして特別に交換して貰ったことがあったので、今回は問題ないことをまずは確認させて貰いました。

加工大理石張りの壁

サルバトーリには色々なバリエーションがありますが、今回採用したのはTratti(トラッティ)というタイプで、短冊状の大理石と金属目地が交互に入ってくるデザインの素材です。大理石は表面に細かいスクラッチ傷をわざと入れたような風合いです。

加工大理石張りの壁

束になっているこちらが金属の目地棒です。

加工大理石張りの壁

張り方のマニュアルのようなものは一切ないので、普通に張ると大理石を張って、目地を差し込んで、また大理石をという順番になってゆくのですが、そうなると大理石の厚みと目地材の寸法の違いで、目地棒が大理石から出っ張ってきてしまうのです。今回は大理石の表面と目地棒をフラットに納めたいので、以前の現場で職人さんたちと工夫した時の知恵を思い出して、事前に大理石裏に両面テープで目地棒を借り固定してから、セットで一緒に張ってゆくようにお願いしました。

加工大理石張りの壁

厚めの両面テープを使うことで表面から見るとほぼフラットになるという算段です。

加工大理石張りの壁図面

僕ら設計側が描いた大理石張りの壁面展開図に対して…、

加工大理石張りの壁

現場側が施工図として描いてくれた図面がこちらです。

加工大理石張りの壁

まずは現場に高さを揃えるための水糸を張って、図面通りに張っていきます。

加工大理石張りの壁

こちらが壁端部の張り始めの位置です。ピンク色の水糸が良く見えますね。コーナーは左側の白いアングル金物の位置まで折り曲げて張って貰う予定です。

加工大理石張りの壁

接着剤は二液型のBD石貼りエースです。

加工大理石張りの壁

端部のディテールです。目地棒と大理石をセットにしていることで、フラットに仕上がっていることが良く分かりますね。

加工大理石張りの玄関ホール

実は、今回の石屋さんは事前に玄関ホールで違うタイプのサルバトーリの加工大理石を張って貰っているのです。横張のベニヤ板の上下に張って貰ったのが、Lithoverde(リートヴェルデ)というタイプの加工大理石です。

玄関ホール典型図

こちらがその玄関の展開図です。コンパクトなスペースですが、色々な素材が入り混じった複雑な納まりとなっています。
サルバトーリの加工大理石は、これまで幾度か採用したことがありますが、それらの事例を纏めたブログもありますので、どうぞご覧ください。

玄関からパントリー越しにキッチンまで通じる裏動線

玄関からパントリー側の展開立面です。色々なタイプの見切りで素材を見切ってゆくスタイルです。

大理石調タイル腰壁のトレイ

石屋さんとタイル屋さんは職種が違って、石屋さんはタイルはあまり扱わないそうですが、今回の石屋さんはタイル張りも上手だとのこと、こちらのトイレのタイルも張って貰ったそうです。

引き込み戸と特殊金物のディテール

タイルの出隅の納まり、そして引き込み扉の隙間との納まりも細かく設計した通りに収めてくれています。扉はまだ塗装前の状態ですが、仮吊り込みをして貰っています。カガミ建築計画お得意の特注引き込み扉用の金物も上手く作ってくれていますね。

引き戸と超特殊引き手金物

キッチンからパントリーへの引き込み戸の取っ手は、ダブルで引手がある変形スタイルです。

引き戸と超特殊引き手金物

この状態だとなぜこのようなデザインになったのかが、イマイチ分からないと思いますが、写真左側の隙間に冷蔵庫が入るのですが、冷蔵庫の扉の開き具合の関係から、冷蔵庫が壁から扉の厚みの分の7~8センチほど出っ張ってくるので、その分取っ手を差し込み口を逃げておくためにこのような変形デザインとなっているのです。

超特殊引き手金物図面

裏側のパントリー側からは普通に使えるような特注引手の施工図です。竹田さんが細かくチェックして考えてくれたディテールです。