Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

駒沢X邸プロジェクトが始まります

駒沢X邸

世田谷区駒沢にある築30年、165平米(50坪)のヴィンテージマンションのスケルトンリノベーションプロジェクトが始まることになりました。

お客さまのXさまは、以前こちらのマンションにずっとお住まいだったのですが、しばらく事情があって別の所に暮らすことになり、その間賃貸に出していたそうです。この度、賃借人が出ることになったタイミングと、ご家族の状況変化があって、こちらに戻ってくることになったそうです。

ヴィンテージ感のあるこのキッチンも大好きだったそうで、本当はこのまま残したい気持ちもあるそうですが、使い勝手や動線、収納量のことなどを考えると、やはり作り直すべきだとのご判断に至ったそうです。

古いマンションらしく、玄関入った所からは、リビングなどの空間が全く見えないように、わざと廊下を曲げて作っている構成ですが、照明を点灯しないと暗い玄関や廊下は、もっと明るくしたいとのご希望でした。

建具や枠は、無垢の木材をふんだんに使った贅沢な作りで、特にこの廊下からリビングダイニングに入る扉の枠は立派な作りで、是非残して活用したいとのお話でした。

水回りの洗面台も天然大理石が使われた、きちんとした作りですが、収納量が足りないことは何とかしたいとのことでした。

何よりも冬寒かったお風呂は、絶対に交換したいという優先順位の高い部位でした。

空調設備は旧式なもので、ちょうど少し前にリビングのエアコンが効かなくなってしまったとのことでした。

初回の現地でのお打ち合わせでは、このお部屋の何が好きだったのかと、どこを交換したいのかをじっくりお話させて頂きました。結果的に、ヴィンテージな雰囲気は残したいとのことでしたが、全体的にこれからの暮らしには機能的にも設備的にも適していないので、使える部材(例えば建具等)はなるべく残すが、後はスケルトン(体でいうと皮膚や肉を全てそぎ落とした骨組)まで解体してのリノベーションをなさりたいとのことになりました。

プロジェクトの難易度(特に設備の取り合い関係)や、お客さまとの相性などから考えて、株式会社青の片岡さんにお願いするのが良いのではと考えて、次回は僕らと青で現調させて頂くことになりました。

その1週間後に青の片岡さんと現場担当の石坂さん、設備屋さんに電気屋さんにも声を掛けて貰い、現地調査をさせて頂きました。Xさまがお手持ちだった、竣工図面集から特に必要な給排水衛生設備図、空調換気ダクト図、そして床伏図を眺めながら、各設備屋さんと現地を確認してゆきました。

キッチンのレイアウトを変えるためには、排水経路を調べる必要があり、納戸の中の床を剥がして、ルート確認と共に、排水管の横取り出し口の位置を調べて貰いました。

収納などの背部にある点検口は、全て空けて、中を確認してゆきました。

主寝室横の浴室とトイレから排水が流れ込む排水管を確認することができました。

水回りの位置を移設するには、床下のスペースがどれだけあるかも重要ですが、この写真のようにマンション共用の竪管の横繋ぎ込み口(チーズ)のレベル(高さ)がどこにあるかもとても重要な条件となります。レーザーを使って、排水芯の高さを測って貰い、暫定的に考えていた位置までキッチンのシンクを移設することができるかを一緒に計算させて貰いました。

天井裏の点検口から覗いた、キッチンの天井裏です。5本ほどのダクトが縦横無尽に走っており、図面なしでは何がどこに繋がって、何の役目をしているのかが判らない状態でした。

平面詳細図では躯体壁(コンクリート壁)として表現されていた壁が、他の図面ではコンクリートブロック造のように描かれていたので、壊せるのか壊せない壁なのかを確認するために壁のボードを剥がしてもらいました。ダウンライトの穴をあけるカッターで開けて貰いましたが、裏にはコンクリートの躯体壁が隠されていました。
また、各図面で整合性が取れていない個所も多かったので、現地を実測もして、図面化してゆくことになっています。因みに、部分解体することについては、全てお客さまの了承を得ており、5万円程度の部分解体調査費の実費も負担して頂いたうえで調査をしております。

 

 

 

 

手すり棒取り付け工事@白金台K邸

白金台K邸

今から16年前、2002年にマンションリフォームをお手伝いした白金台K邸のお客さまから連絡があり、ご夫妻とも高齢になってきたとのことで、玄関や廊下に手すりを考えて欲しいとのご依頼がありました。

手すり取り付け指示図

浴室やトイレ等の水回りについては、すでに区の補助で手すりを付けているとのことで、まだ手すりがついていないプライベート部分の廊下と玄関の相談をさせて頂きました。
この図面に書いたようにプライベート部分については、費用と機能性を考慮していわゆるバリアフリー製品として売り出されている既製品の手すりをつけることになりました。ただ、お客さまも使う玄関については、デザイン的に邪魔にならないような手すり棒をとお願いされました。

玄関手すり棒図面

現場に工事をお願いすることになったリフォーム会社に来てもらい、(お客さまが普段手を付くことで)壁が汚れている箇所を調べて、手すり棒の高さを決め、更に取り付け方とデザインを考えて、上記のような手すりを考えました。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

お見積りを取って、お客さまのご了承を得たうえで取り付け工事に入りました。玄関扉横の壁は塗装仕上げですが、石膏ボード下地で、ボードには手すり棒を固定するビスを取り付けることができないので、まず初日の工事は壁一部の解体から始まりました。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

ボードの裏は予想通り、コンクリートの躯体にGL工法で石膏ボードを張った状態でした。そこで大工さんに用意しておいて貰ったベニヤ板の下地を差し込んで、その上からプラスターボードを張って貰いました。これだけ年数が経っていると、同じ色で張り直した部分だけを塗装することは出来ないので、補修部分周りはパテ処理をしたうえで、玄関扉のある壁全体を塗り直してもらいました。
塗装している間に、プライベート部分の廊下手すり棒は取り付けて貰いました。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

事前にスケッチを元に手すり棒の準備をしておいてくれた造作家具屋のライフウッドの大迫さんと谷山さんが、翌日現場に来てくれました。壁に当てているのは、ベニヤ板で作った型板だそうです。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

手すり本体は、このように棒と台形の固定部分に分かれています。台形の固定部分には、黒い金物が見えていますが、これは緊結金物のクリップ5063(スガツネ)の製品で、棒についている銀色のビスとメスオスの関係になっており、台形金物を壁に固定した後、棒を差し込んでグッと引っ張ると固定される仕組みを作ってくれました。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

まずは下の台形部材を接着剤とビスで固定して、

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

改めてガイドの板を当てて、上の固定部材の位置を正確に出します。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

金物の位置関係はピッタリ出来ていないと棒をきちんと固定することができないので、この位置出しが最もシビアな作業だそうです。

玄関手すり棒取り付け工事@白金台K邸

こちらが最終的に仕上がった様子です。体重ウン十キロの各務がぶら下がってもグラつかないほどしっかりとした手すり棒の取付が完了しました。手すり棒の奥に照明のスイッチがあるのですが、ちょうど棒と壁間に手が差し込めて、オンオフをすることもできました。最後にお客さまに使い勝手と頑丈さをご説明して、ご納得して頂きました。

 

 

 

 

 

造作家具の組立-2 4つの家具屋さんの使い分け

白金台E邸

先回のブログから造作家具の組み立てが始まっている白金台E邸ですが、実はこちらのお宅には4つの家具屋さんが入って工事を行っています(オーダーキッチンを別にすれば3つですが…)。

書斎造作家具設置

LDと玄関、廊下部分のデザイン性が特に高く、施工精度も必要とされる部分はグレードの高い(ただし費用も高い…)造作家具屋さんにお願いし、奥のプライベートゾーンについては、リーズナブルな造作家具屋さんとシステム収納家具屋さんに入って貰っています。
こちらの書斎は、こちらの下部扉収納付きの本棚、そして背面にくるウォールナット仕様の机とトール収納をリーズナブルな家具屋さんにお願いしています。

造作書斎家具組み立て工事

その後、扉がついて、テーブルも設置された様子です。
因みに、窓際に立てかけてあるのは、組み立て前の洗面カウンター(クオーツストーン)です。

主寝室横のダブルボウルカウンター組み立て中

先ほどのクオーツストーン製のダブルボウルカウンターを載せるのが、こちらの主寝室横の洗面手洗い家具になります。

浴室の手摺り兼用水撥ね防止ガラス

造作家具とは直接関連しませんが、浴槽の水撥ね防止兼手すりとなるガラス製の袖壁のステンレス枠が浴槽脇に設置されています。

手すり兼用水撥ね防止ガラス壁のディテール

押し縁でガラスを固定する予定ですが、そのディテールがこのようになっています。

WICの棚、引き出し、ハンガーバー設置

書斎のちょうど裏側に当たる奥さまのウォークイン・クローゼット内の棚もこちらの家具屋さんにお願いしています。

WICの棚板設置

以前のブログ記事でのご紹介しているIKEAの超リーズナブルなガラスフェイスの引き出しを組み込んだ横の壁持ち出し金物までは大工工事ですが、その棚板や枕棚は、造作家具屋さんにお願いしています。

洗面カウンター&メディスンキャビネット設置

家族用の洗面所の洗面カウンターとメディスンキャビネットも取り付けて貰っています(奥の寝室では、もうシャワー水栓の取付も始まっていますね)。

主寝室の照明器具付きヘッドボード設置

寝室のヘッドボードもこちらの家具屋さんです。ヘッドボードにわざと厚みを持たせて、上端に照明器具とそのスイッチ、そして携帯充電用のコンセントを付けて貰っています。
このベッドボードの反対側の壁には…、

ギャラリー収納_大谷産業の壁面クローゼット家具

ギャラリー収納の大谷産業に作って貰ったTVカウンターとクローゼット家具が取り付きました。

ギャラリー収納_大谷産業の壁面クローゼット家具

大きな壁面一面分と更にそこから折れ曲がった壁の奥にもクローゼット収納が続いています。ギャラリー収納のショールームでのお客さまとのお打合せの様子はこちらのブログ記事をご覧ください。

子ども部屋の収納ギャラリー家具

お子さまたちの部屋のクローゼットや勉強コーナーの家具も大谷産業さんにお願いしています。
今回キッチン含めて4つの造作家具屋さんを使い分けてお願い致しましたが、基本的には以下のように考えて使い分けています。

A:キッチンについては、特殊な引き出し金物やパントリー収納金物、細かい使い勝手をショールームで確認しながらの打ち合わせがが必要になるので、オーダーキッチンのモービリティーポにお願いしました。

B:リビングダイニングと玄関と廊下の家具、更にはこの空間に絡む建具は、Aのオーダーキッチンとほぼ同レベルの仕上げができて、細かい取り合いの打ち合わせや施工が可能なアルノさんでお願いしています。

C:書斎やWIC、洗面の造作家具は、SISLのお付き合いのあるよりリーズナブルな家具屋さんでお願いしています。当初はアルノさんでこちらの家具も見ていましたが、下請け施工業者さんを変更することで、30%程度費用を落とすことができました。ただ、施工レベルや仕上げのクオリティーは多少下がるので、難しいディテールや取り合いが発生しないように、設計側で家具デザインを調整し、更に、このことについてお客さまにはご説明をしております。

D:主寝室の壁面収納やお子さまたちの部屋の造作家具はいわゆるシステム収納屋さんの大谷産業にお願いしました。これは、引き出しのサイズや洋服収納の種類組み合わせなどは、設計の早い段階からショールームでお客さまに実物を見て貰い確認することができるので、設計のスピードアップが図れることが目的でした。費用的にはCの造作家具屋さんと同じですが、基本的な寸法が決まっているので、細かい変更をすると却って費用が高くなってしまうので、間取りを大きく変更しない部屋や壁面で採用しています。

造作家具以外でも、

パッケージエアコン扉設置@白金台E邸

玄関正面のパッケージエア本体を隠す、ルーバー付き建具(ルーバーは既存を取り外して再利用しています)の吊り込みや、

ダイノックシート張り替えの玄関扉

玄関建具のダイノックシート張り直しのためのパテ作業や、

便器据え付け中

便器の取付、

コンセント器具取付

コンセントプレートの取り付けなども同時多発的に進んでいます。