Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

窓際キッチンのガスレンジとレンジフードの工夫について

二番町I邸

二番町I邸で、オーダーキッチン屋のエクレアにお願いしているキッチンの組み立てが始まったとのことで、現場を見て参りました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

オーダーキッチンの組み立てに入ってから3日目とのことで、カウンターや箱組は終わって、設備の取り付け工事中で、その後棚板と扉を取り付ければ終わりのところまで出来ていました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回の構成は二の字型といわれているもので、片面にシンクとコンロがあり、背面側に冷蔵庫置き場と食器や調理機器置き場を設置するオーソドックスな作りとなっています。ただ、背面側にはアイレベル(目線の高さ)に組み込んだオーブンと引き出し式のパントリーが入る部分がちょっと特殊な作りとなっています。

窓際のガスレンジカウンター設置

今回のキッチンで一番難しかったのが、窓際に設置するガスレンジとレンジフードと窓サッシとの取り合い部分でした。こちらはまだ、ガスレンジが付いていない状態のカウンターですが、ちょうどカウンターの高さに既存サッシの横框があったので、そこにカウンタ甲板を押し当てて、正面壁から回ってきている立ち上がりも廻し込んだ様子です。油煙がサッシの奥の方に回り込まないように南側からの日差しの遮熱も兼ねた二重サッシを設けています。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

レンジフードの横は、窓サッシにフードをピタリと寄せると、どうしても掃除しにくい場所ができてしまうので、こちらは却って隙間を10センチほど開けて、手を差し込んでの掃除がしやすい収まりとしました。

窓際のガスレンジとレンジフードの納め方

こちらは最終的に組み上がった際のガスレンジとレンジ―フードと窓サッシの取り合いです。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

シンク上の吊り戸には折れ戸のフラップアップ扉を採用していますが、扉設置前でその金物がちょうど見えていたので、撮影したものです。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

これだけ組み上がったように見えても、まだリビングダイニングエリアには、組み立てまえの部材が並んでいました。資材搬入の際には、この広いLDいっぱいにキッチン資材が広がっていたのというので、キッチンの密度が高いのが改めて分かりました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回はクローズドキッチン(オープンではなく隠れたキッチン)とのことで、予算のことなども踏まえてメラミン製の扉を採用していますが、エクレアさんが丁寧に作ってくれたので、とても良い出来となっていました。

エクレアのオーダーキッチン組み立て

今回のキッチンのもう一つの特徴は、シンク側から正面に小扉を付けて、そこの開閉でリビング側の様子を見ることができるように考えています。薄型タイルの割り付けと合わせた開口がきれいに空いており、リビング側からキッチンの様子が見えるアングルの写真です。

二番町の高級マンションリフォームI邸工事現場

まだ、造作家具や特注の建具が収まっておりませんが、その他の工事も順次進んできています。

神谷のクロス張り建具詳細

こちらはリビングダイニングから直接出入りするお子さまの寝室の扉のディテールです。壁の仕上げと同じビニールクロスを張ることができる、神谷コーポレーションのF/Sという建具の小口です。ちょうどへこんだ箇所に建具のヒンジが入ります。

柱型のカラーガラスとミラーの見切り金物

LDに出っ張った形の柱型には、その存在感を打ち消すために、カラーガラスと鏡を張る予定ですが、それらの取り合いのコーナー部分にステンレス鏡面磨きの見切りを取り付けて貰っています。

建具用特注取っ手金物

廊下からLDへ入る建具は、特注のウォールナット突板張りとしていますが、金物は僕らが良くデザインしている特注金物を少し変形させたもので考えています。金物屋から焼き付け塗装された特注取っ手がすでに現場に届いていました。
キッチンの残りを完成させた後は、造作家具と建具の吊り込み、そして照明やエアコンなどの機器取付でお客さまの検査へと進む予定です。

ニシザキ工芸の塗装工場にて家具塗装の勉強

港区R邸

港区R邸の家具と建具全般をお願いしている造作家具会社ニシザキ工芸の塗装工場を見学させて貰いました。

以前より、造作家具の腕の確かさ以上に、塗装部を自社に持ち、鏡面塗装の仕上がりの良さに定評があったニシザキ工芸という会社には、ずっと興味を持っていました。

こちらにも普段お願いしている優秀な造作家具屋がいたので、これまでお願いすることができておりませんでしたが、港区R邸では、工事全般をお願いしたリフォームキューの営業&設計の坂本さんが、鏡面塗装仕上げの量が多く、非常に難しい工事になりそうなので、イチオシの造作家具屋にお願いしたいとのことで、初めてニシザキ工芸さんとのお付き合いが始まりました。
こちらは、本社から歩いて3分ほどのところにある、塗装工場です。道路上から入り口が数段あがっており、左側の大きな扉の前がプラットフォーム状になっていますが、これはトラックでの家具搬入のために、このような形態になっているようでした。

3階建ての建物で、1階と2階が塗装工場になっています。訪問した当日午前中は、塗装部のスタッフ全員で工場内を清掃する日だとのことで、塗装そのものは工場長が一人で細々とやっている程度で、他のスタッフはずっと片付けと清掃をしていました。鏡面塗装のようなデリケートな作業では、ホコリが一番の大敵とのことで、徹底的な掃除で感心致しました。

こちらは3階の倉庫に置いてあったサンプルです。仕上げレベルによって変わってくるのですが、塗装のプロセスは20~40工程を経て完成させるとのことで、流れ作業で効率的に仕上げてゆくとのことでした。因みに塗装の費用は、工程の数と一般的でない技法を使うかどうかによって変わってくるそうですが、ツヤだけで考えると、ツヤなしから7分ツヤありまでは同額で、全ツヤや鏡面磨きはその約2倍の費用になり、工期も倍ほど掛かるとのことでした。

家具も組み立てる前に塗装するものから、仮組してからするもの、最終的に組み上げてから仕上げ塗装するものと、そこも複雑に分かれてくるので、工程管理が一番大変だとのことでした。塗ってゆく順番に家具や材料を並べて、次の順番が来るまでに乾燥させるシステムを組むとのことでした。

こちらは工場の片隅に置かれていた塗料と調色用の塗料です。色も素地である木材に色を付ける場合と、上に重ねてゆくウレタン層に色を付ける方法があるそうで、透明度やツヤの度合い、色の奥深さなどを検討しながら設計者に提案してゆくそうです。

こちらが、それぞれの塗料やウレタンなどを吹くためのスプレーガンです。

最初の写真で、工場長が吹いていたのがこちらです。家具扉の下地となるMDF(中密度繊維板)はそのままでは塗料を吸い過ぎてしまうので、目止めとしてサンディングシーラー材(プライマー材を吹き付けるそうです。同じサイズの材料を塗装してゆくのであれば、工場でも簡単に作業ができるそうですが、サイズや形もマチマチで、工程も微妙に違っている特殊な塗装をすることが多いので、やはり人力が一番とのことでした。

こちらがそのサンディング材です。MDF材専用のサンディング材があることも知りませんでした…。

塗装でもう一つ重要なポイントは養生とのことでした。必要な箇所は仕上げてゆきますが、不要な箇所は塗る必要がありません。仕上げるには塗る作業だけではなく、塗り重ねた塗料を削る作業もあるので、塗装が載るべき箇所以外をきちんと養生してゆくことも大変な作業だとのことでした。

こちらは建具の枠材に使う幅4センチほどの細い材料ですが、組み立てると他の大きな面積の材と並んで見えるので、きちんと養生しながら必要か所を仕上げてきたそうです。因みにこちらは、突板大手の北三の人工黒檀材のワンダーコクタンを突いて貰ったものです。

ワンダーコクタンの塗装前の段階では、このような柄と色味になっていますが、小さな部材では分かりにくいですが、仕上げてゆくことでグンと高級感が出てくることを再認識することができました。
因みに、黒く仕上げる扉材に使う家具用のスライド丁番は、この写真のような黒い丁番を使ってくれるそうです。

こちらは、R邸の主寝室で使う天然ものの黒檀突板を鏡面塗装に仕上げる途中の様子です。こちらの材料は僕らが特殊な突板をお願いする際の定番の山一商店さんから入れて貰ったものです。やはり大きな柄と歪んだところなどが天然モノならではの迫力でした。

こちらは主寝室の書斎コーナーに作って貰っている、鉄製の本棚のディテールです。

溶接跡が見えてしまうと鉄のシャープさが鈍ってしまうので、扉付きの収納が入る部分や、壁の後ろに隠れてしまう箇所で溶接してもらい、ある程度組み上げた状態から塗装で仕上げてゆくとのことでした。

今回の塗装工場の見学は、港区R邸のうちの担当スタッフの前田君も一緒で、案内してくれたニシザキ工芸の野田さんと上野さんは、港区R邸を見てくれているので、見学最中にも細かい箇所の取り合いなどの打ち合わせになっていました。

最後の幾枚かの写真は、塗装工場の設備で見たことがないものをご紹介します。東京都江東区三好に工場があるのですが、今このエリアはブルーボトルコーヒーを始め、オシャレショップが沢山集まってきており、塗装で発生する臭い対策が重要とのことでした。塗装中に埃が舞わないことも併せて、この一枚のパネルの背部に大容量の排気用フードが隠されているとのことでした。

黒い箱の奥に金属製のクロスが見えているのは、荷物専用の昇降機です。1階と2階の塗装工場と3階の倉庫の間を、家具はこれを使って行き来するそうです。因みに、この写真の手前に積まれている材料も、皆港区R邸の素材でした。ウォールナットのルーバー状のものは、ご家族用トイレの手洗いカウンター下の扉材です。

忙しい中、丁寧に分からないところまで説明しながら案内して下さった、野田さん(中央)と上野さんとの記念写真です。

最後のこちらは、オマケです。ニシザキ工芸本社の打ち合わせ室横にあるショールームのキッチンです。和のテイストも加えた、ユニークな作りで、造作家具屋ならではの細かく工夫も沢山あり、とても興味深い造りとなっていました。

マンション床の大理石張り@港区R邸

港区R邸

港区R邸の現場に大量の大理石が搬入され、大作業の床大理石張りが始まっていました。

リビングダイニング床の大理石張り

床面積の約7割のエリアに大理石かタイルを張る予定で、現場には5人の石職人さんが入って、あちこちで同時多発的に石張り工事が行われていました。

床大理石張り作業

キダマーブルの職人さんたちで、よく現場で話をしている人たちなので、今回の張り方のことや、使っている接着剤のことなどを質問させて貰いました。

床大理石張り作業

床に大理石を張る場合は、接着剤を点付けする方法と、今回のようにベッタリと接着剤を塗る方法があるのですが、今回こちらの方法を採用した理由を聞いてみました。床下地にベニヤ板が見えていますが、その下には床暖房があり、その暖房の熱効率を上げるためには、このようなエポキシ樹脂系接着剤圧着工法が適しているとのことでした。確かに、点付け工法だと、床下地と大理石の間に空気層ができてしまい、そこで熱の伝わりが悪くなりそうなので、納得致しました。

大理石のブレッチャオニチアータ

床に使っている石材はブレッチャオニチアータという、中国福建省のアモイ近郊の石材マーケットから仕入れた大理石ですが、ベースとなる灰色の色味が薄いものと濃いめのものが二種類あったので、使うエリアを分けると共に、サイズも変えて張って貰っています。

床大理石張り作業

リビングダイニングエリアは、色味が薄めのものでサイズは約50センチ角を使って貰っています。このサイズだと一人の職人さんで持ち運びができるので、一日で20枚程度のスピードで張れるとのことでした。

キッチン床の大理石張り

ただ、こちらのキッチンの床でお願いしたした60センチ×120センチサイズになってくると、二人掛かりで作業することになり、一日で数枚しか張れないとのことでした。

黒と白のボーダー入り床大理石張り

また、今回はこのように黒(山西黒)と白(ビアンコカラーラ)のボーダーを四周に回すデザインとしているので、張る際の逃げがないので、とにかく難しい現場だとのことを指摘されました。

黒と白のボーダー入り床大理石張り

ただ、この2色のボーダーが入ることで、デザイン的にグッと締まって見えることは、お客さまにもご納得頂けそうです。

ブレッチャオニチアータの床付け照明の穴開け

こちらの石には丸い穴が空いておりますが、これは床下に埋め込むアッパーライト(埋込式上向き照明)ようの孔です。これも事前に石割と平面図を重ね合わせて、工場にて機械で正確な位置に空けて貰ったものです。

奥さまの書斎部屋の床タイル張り

奥さまの書斎とお嬢さまの寝室の床の大理石調タイルの施工も,大理石と同じ石屋の職人さんで進んでいました。本来はタイルについてはタイル屋さんの方が腕も確かですし、スピードも速いのですが、今回は石工事の量があまりに多いので、石屋さんにタイルを張って貰うことにしたそうです。

奥さまの書斎部屋の床タイル張り

こちらでは、職人さんの手と熟練の勘頼りの石とは違い、写真のようなプラスチック製の道具を使って、フラットさを確認しながら素早い勢いで作業が進んでいました。

子供部屋のフローリング張り

他の部屋では違う工事が進んでいました。息子さんのお部屋のフローリング張りや、

リストネ・ジョルダーノのフローリング張り

主寝室のリストーネジョルダーノの変形フローリング張りも始まっていました。

リストネ・ジョルダーノのフローリング実なし

特殊な形の材を特殊な工法で張ってゆくのですが、一般のフローリングでは常識の実(サネ)がありません。普通はオス実とメス実を合わせてゆくのですが…、

リストネ・ジョルダーノのフローリングの金属製実(サネ)

こちらで、この薄い金属板を実代わりにフローリング板のスリットに挟んで微調整しながら張ってゆくそうです。

リストネ・ジョルダーノのフローリング張り

端から張るのではなく、この写真のように中心から広げてゆくようにして張ってゆくのだそうです。

リストーネジョルダーノのフローリング張り

こちらが張り上がった様子です。細かいコーナーまでピッタリと合った張り方はまさに職人技でした!

床大理石施工途中_夜の視察

夜には、Rさまご夫妻が石張りの始まった現場を見に来てくださいました。

塗装状況の施主確認

お嬢さまの寝室の天井が仕上がってきた様子は、イメージにも近く、とてもきれいだと奥さまが喜んで下さいました。