Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

細かい下地・大工造作工事の工夫について@赤坂S邸

赤坂S邸

赤坂S邸の工事は、フローリングが張り終わり(すでに養生済みです)、ボードも大分仕上がってきました。

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今回の工事では、LGS(軽量鉄骨)工事もボード張りも、造作工事もひとりで作業ができる、大工の内原さんが担当してくれています。これまでも幾つかの工事でお世話になっていますが、これまでの経験から色々な細かい工夫をしてくれたそうです。

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新規の窓枠と幅木がフラットに収まった所に、3ミリの目地をあけてまた塗装仕上げの壁がフラットに収まる仕上げを考えてくれました。石膏ボードだけだと角が崩れてしまうので、通常はプラスチック製のコーナー見切り材を入れるのですが、そうすると、その見切り部分がパテ処理で2ミリほど膨らんでしまうので、目地際の3センチ部分を特殊な素材で作ってくれました。

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その特殊建材が、こちらの伊藤忠建材の地球樹Mクロスだそうです。表から見ると普通の合板ですが、裏にライナー紙を張り付けたものだそうです。コーナー部分に合板を使うと、仕上げ塗装をした際にベニヤ板のアクが浮いてきてしまうのですが、ライナー紙を貼ってあることで、合板から染み出るアクやシミを防止してあるそうです。また、石膏ボードと併用できるように、コーナーを面取りしてあるため、塗装下地を作る際のパテ作業も楽になっているスグレ物だそうです。

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こちらかリビングと寝室を間仕切る壁と引き込み扉の吊枠、クロス巻き仕上げの壁下地にピクチャーレールが絡んだコーナーの下地ですが、こちらでも地球樹Mクロスを使ってみたそうです。

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違う箇所の引き込み扉の吊レール埋め込み個所ですが、こちらでも普通のベニヤ板は使っていませんでした。

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こちらも普通の納まりに見えますが、奥の室内側はダクトを隠す分だけ天井が下がっています。縦面と横面でクロスを張り分けるために、出隅にクロス用の巻き込みコーナーを埋め込んでくれています。

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リビングと寝室は引き込み扉で仕切られていますが、床がフローリング(リビング側)とカーペット(寝室側)と分かれているので、ステンレス製の見切りを挟み込んでくれています。壁も塗装(リビング側)とクロス(寝室側)と分かれているので、幅木や枠の納まりもきちんと仕上げられるように作り込んでくれています。

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こちらも同じようなディテールですが、左側が床タイル張り仕上げの洗面で右側がフローリング張りのリビングですが、ステンレス製の見切りがきれいに通っていることが判ります。

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キッチン側から見た寝室と洗面への扉が入る開口部です。それぞれの開口部が少しずつ違った条件になってくるのですが、それを図面からきちんと読み取って、仕上げ工事まで考えた下地を作ってくれている内原さんに感謝あるのみです…。

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玄関ホールの壁と建具の枠下地も出来上がってきていました。

玄関木製フレーム詳細スケッチ

こちらがスタッフの前田君が描いてくれた玄関ホールの二つの建具をフラットに収めるためのディテールスケッチ図です。今回はデザインアドバイスとしてお手伝いしているので、本当はディテールまでは図面化しないお約束でしたが、リフォームキューの現場担当の石原さんと鈴木さん、そして大工の内原さんの頑張りを見て、僕らも頑張らざるを得ない状況になっていました。

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寝室部分の下地も仕上がってきています。正面壁の左寄りにコンクリートの柱が見えますが、これを造作家具で隠して、雰囲気のある寝室に仕上げるデザインを考えていますが、何とかうまく行きそうです。正面壁の右下と左下には、壁裏の免震ダンパーを避けて、追加でお願いした収納が入る孔が空いています。

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リビング側から玄関ホール側を見返した写真です。キッチンを収めるための壁が仕上がり、天井のエアコンの移設も完了していました。

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玄関ホールとリビングの間には、木製建具が入りますが、そのためのフロアヒンジも無事埋め込まれていました。

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そして、数日後には玄関ホールには大理石のグリジオカルニコが張られ始めました。

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同じグリジオカルニコのスラブ(石の板材)で作られた、トイレのカウンター材も搬入されました。右側のベージュ色の物体が、手洗いシンクを裏返してみたところです。接着剤などでしっかりと固定されています。

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洗面所のタイルを張っている作業中です。正面左上の方で、二枚同じ柄のタイルが同じ向きで並んでいる個所があったので、その分だけは職人さんにお願いして、張り直してもらいました。

照明プロット

照明計画も、お施主さまのSさまと最終確認が取れました。キッチン上部だけ少し変更がありますが、照明器具の取りつけの準備も終わりました。

カーペット等仕上げ材

建具の取っ手の色や、建具のツヤなどについても、一度お打ち合わせで決めた後、前田君が混乱しないようにそれぞれの部屋の仕上げ材と並べて写真で記録を作って、お施主さまと施工会社に送って確認してくれています。

 

 

ヴィンテージマンションリフォーム白金台P邸完成!

白金台P邸

工事がほぼ終わったヴィンテージマンションリフォームの白金台P邸に設計検査で伺って参りました。

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まず何よりも、この窓から見える緑が一番の贅沢なので、その景色を邪魔しないようなデザインを心がけました。造作家具は、設計要素の中でも、最も好きなもののひとつですが、この景色と一緒に見える造作家具は、大人し目なデザインにしています。

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LDでも緑の景色と反対側にある壁には、少し凝ったデザインの造作家具をデザインしてみました。廊下からの扉は、以前は一枚でしたが、他の場所から移設してきた扉と合せて、両開きに変更しています。

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リビングもそうでしたが、フローリングの張り方は少し工夫しています。まっすぐにフローリングの筋を通さず、空間単位でボーダーを廻した張り方にして貰っています。床暖房(温水式)が入っていると、このようなボーダー張りは難しいのですが、今回は床暖房がないことをメリットにできないかと考えて、この張り方にチャレンジさせて貰いました。

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デザイン的にもう一つチャレンジしてみたのが、この廊下のブラケット照明(壁付け照明)です。廊下の幅が十分に広くないと、却って狭く感じてしまい要素ですが、今回は広過ぎる廊下だったので、アクセントとして採用させて頂きました。よく見ると、扉の大きさが違っていたり、廊下に防火扉が2枚も合ったりと、整理することができない要素が多くある廊下でしたが、このブラケット照明のお蔭で、一体感が感じられるようになったのではないでしょうが…。

色々な是正すべき点を指摘させて貰って、一週間の補修期間を経て、次はお施主さまと一緒の施主検査です。

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時間の都合が付かず、暗くなってからの施主検査になってしまいましたが、照明の中での独特なヴィンテージ感に、Pさまご夫妻はお二人ともとても喜んでくださいました!

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リノベーション後に再販することを考えていらっしゃるので、こちらのキッチン設備にはそれほど費用を掛けていませんでした。ただ、それでもデザイン的なこだわりをある程度表現したかったので、大理石柄のタイルを斜め45度に張ってみました。壁際で黄色ジャケットを着ているのは、AllAboutの高級マンションのガイドの坂根康裕さんです。
実は、当日の夕方からお施主さま検査の前に、坂根さんにお願いして、こちらのマンションを取材して頂いていたのです…。その時の記事が「ヴィンテージマンションリフォーム事例」です。

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広いリビングダイニングには、大の大人が7人入っても、全く狭さを感じさせませんね…。と同時に、家具がないと広さの実感が湧かないので、急遽お施主さまにお手持ちの家具やラグ、小物等を入れて頂くことになりました。

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お施主さま検査での指摘事項を直しながら、お手持ちの家具や新しく購入頂いたラグ、小物類などを現地に持ってきていただき、僕らがお手伝いしてステージングしてみたのがこちらの写真です。

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緑だけが見える快適なテラスには、新しく屋外用の家具を購入して頂きました。リフォーム前からあったウッドデッキも、清掃したことで、本当にきれいになっています。

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少し広く感じられた玄関のベンチにも、素敵なクッションと小物を置いてくださったことで、快適なコーナーになりました。廊下奥のガラス張りの部屋は、書斎か書庫をイメージしていましたが、テーブルとイスを置いてくださったことで、ちょっとした打合せができそうなミニオフィスにも見えるようになりました。

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廊下からリビングへのエントランス前に、ジャストサイズのラグを置いてくださったのも効いています。

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ダイニングの家具の上の小物や、ガラス扉に移り込んでいる、鮮やかな赤色のラグも、マンションが持っていたヴィンテージ感を強く感じさせる要素になってくれています。

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どなたかが暮らし始めれば、恐らくテレビを置くことになる個所には、円形のオブジェが、飾り棚にも小物が置かれています。ダイニングエリアとリビングエリアを、文字通り色分けしてくれるラグも、このためにお施主さまが購入してくださったものですが、本当に素敵になりました!

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出来上がりの様子を、まだきちんとご紹介していなかった洗面と浴室です。こちらは、ヴィンテージ感よりも、清潔でスタイリッシュに感じることに主眼を置いてデザインいたしました。

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来客用のトイレは、周りをコンクリートの躯体壁で囲まれていたので、広さの調整ができませんでしたが、床と揃えたタイルを壁面にも張り、黒い木製フレーム鏡などで、廊下の雰囲気に繋がるように考えてみました。

 

解体で現れたキッチン部分の逆梁への対処法

原宿K邸

先日アップした原宿K邸のブログ記事で、解体時に予想していなかったカ所に逆梁が現れて、キッチンのレイアウトを大幅変更することになった件のその後の経緯です。

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上のCGが解体前まで進めていたキッチンのデザインです。ダイニング側から見て、左側手前にはテレビを置いたカウンター、右手には、正面奥のガスレンジから、出窓前のシンクを経て、大きくL字に曲がったカウンターが対面で伸びてきていました。キッチンに入って左側の調理機器を置くカウンターや冷蔵庫が設置されていました。
解体で現れた逆梁はせい(高さ)が20センチ近くありましたので、冷蔵庫を20センチ嵩上げすれば、物理的には同じレイアウトが可能ですが、それでは使い勝手は極端に悪くなってしまうので、急遽キッチンレイアウトを大変更することになりました。

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元々築古で図面もきちんとしたものがなかったので、何かあった時の為に解体をリフォーム工事本体とは別契約にしてあり、解体後に改めてリフォーム案を検討しお見積りを作り直してからリフォーム本体工事契約を結ぶスケジュールとしていました。時間的には3週かのほどの余裕があったので、ご主人さまにもオーダーキッチンのアムスタイルの代官山ショールームに足を運んで頂きました。

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やむを得ない事情とはいえ、急ぎでリフォーム案を変えると、何か大きなポカミスをしてしまうことがありがちなので、キッチンについてはここまであまり打ち合わせに参加してくださっていなかったご主人さまに立ち会って頂くことで、冷静な判断をすることができたと思っています。

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当初案(左)と最終的に決まった案(右)のレイアウトを比較した図面です。
シンクとガスレンジのレイアウトは全く変わっていません。図面上部に紫色の点線で示した部分が逆梁の個所で、新しい案では冷蔵庫をダイニング側に少し出っ張らせて、その代りにその部分にビルトインのスチームオーブンと調理機器を置く収納カウンターを設けました。また、中央部分のスペースが少し大きかったので、幅40センチのアイランドカウンターを設けることになりました。

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こちらが最終的なレイアウト(実際には面材の色や細かいレイアウトは、ここからもさらにグレードアップされていますが…)をCGにして貰ったものです(CGは2枚ともアムスタイルにお願いしています)。ガスレンジがある正面の壁には、以前ショールームで確認したイタリア・フィアンドレ社の大判タイルをブックマッチの形で張って貰うデザインとなっています。

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キッチンレイアウトの変更とその見積りも上がってきて、他のコンクリートが傷んだ箇所の補修見積りも揃ったので、最終的な金額とスケジュールをご説明したうえで、リフォーム本体工事の契約をお施主さまと辰(しん)の間で結んで頂きました。
ここまでまどろっこしいプロセスを辛抱強く見守ってくださったKさまご夫妻、どうもありがとうございます。いよいよ、ここからリフォーム本体工事開始がいよいよ開始です!