Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

最新のAVシステムとヴィンテージ家具が出会う南青山IDEALショールーム訪問記

城南R邸

180平米のお部屋2軒の同時リノベーションの城南R邸のインテリア設計が進んでいます。最上階ペントハウスにはテレビと連動したステレオシステム、1階のゲストハウスにはプロジェクターとスクリーンを使ったホームシアターをご希望とのことだったため、新しく南青山に画期的なショールームを作ったIDEAL(イデアル)さんにお客さまのRさまご夫妻と一緒に伺って参りました。

こちらがIDEALのショールームです。イデアルは社長の小泉さんが展開するB&O(バング・アンド・オルフセン)を中心としたステレオ&ホームシアターシステムの設計&販売、そして事業パートナーの分林(ワケバヤシ)さんの北欧ヴィンテージ家具の販売というユニークな会社となっています。建築家・中村拓志さんが設計したビルの一角に、小泉さんと分林さんが構想した歴史と未来が重なった素敵なショールームとなっています。

こちらのガラスボックスの中がホームシアターシステムの体験スペースとなっています。

ボックスの中にシートが3席あり、それに座っていると小泉さんが説明をしながらアイパッドのスイッチを入れると…、

ガラス壁の前に2枚のスクリーンが自動で降りてきます。奥が遮光スクリーンで手前がプロジェクション用のスクリーンです。そしてシートの背面から隠れていたプロジェクターが出てきて、映像と迫力のあるB&Oのサウンドが鳴り始める仕組みになっています。

ボックス内の設えはこのようにシンプルな作りとなっていますが…、

写真のように、ニッチに隠された高性能プロジェクターがスイッチ操作で降りてきて、スクリーンに投影されるのです。そしてその横の隠し扉の収納の中には…、

ステレオシステムや、調光システムのルートロンやコンピューターなどが内蔵されいるのです。因みにこのガラスボックスは、窓面が多い高層マンションでもホームシアターを窓前に組み込むことができることを体験してもらう意図があるそうです(今回は中低層マンションですが…)。

ボックスでのホームシアター体験を終えた後は、ボックスの外のB&Oのテレビとスピーカーシステムを体験して頂きました。

木製リブのついたこちらのベオラボ18のスピーカーのデザインと音質をとても気にって頂けたので、金属の色と木製リブの色を幾パターンかCGに落とし込みつつ、お見積りもお願いすることとなりました。

その後は、北欧ヴィンテージ家具も見て頂きました。イタリアのモダン家具が今のインテリア業界を引っ張っていることは事実ですが、それらの家具は一度でも使ってしまうと中古品になってしまい、価格が5分の1ほどにまで下がってしまうのです。それに対して、手作りの北欧家具は職人技が詰まった一品生産品なので、中古品がヴィンテージ品として、購入した時より高く販売することができるというコレクターズアイテムになっているのです。分林さんはフランスに留学した時に北欧家具の魅力にハマって、個人的に輸入していたものをIDEALという形で販売することになったそうです。

ハンス・J・ウェグナーの名作椅子のベアチェアの座り心地も体験して頂きました。まずはこの日はB&Oのステレオシステムのご紹介だったこと、分林さんご自身は当日はいらっしゃらなかったので、日を改めて訪問することとなりました。

3週間後に分林さんがいるタイミングで再訪問いたしました。黄色いカーディガンの女性が北欧ヴィンテージ家具の伝道師こと、分林さんです。

ヴィンテージ家具はカタログで選ぶ新品家具とは違い、実際に在庫されているものからしか選べません。分林さんに相談して、ペントハウス住戸のインテリアに納品可能なキャビネットと椅子をCGに3パターンいれたものを作った上での、Rさまご夫妻との再訪でした。

CGに入れてあるものと(ほぼ)同じキャビネットの使い勝手を確認して頂いている様子です。イタリアモダン家具は、ブランドにお願いすれば3Dデータを出してくれるので、かなり正確なCGが作れますが、当然ながら北欧ヴィンテージ家具にはそのようなサービスはないので(といってもベアチェアのような有名品はデータがネット上にあったようです)、担当スタッフの前田君の手作りCGなのです。

ステレオシステムとホームシアターシステムについては、僕ら設計側とAV設計がかなり密接に繋がっているので、僕らもお客さまとIDEALの間に入ってお手伝いします。ヴィンテージ家具は、ご夫妻の気持ちやタイミング次第で、じっくり迷いながら選ばれることになりそうです。そこで、僕らは一旦引き、今後はIDEALと直接やり取りしていただく形にさせて貰いました。

白系大理石探しの旅・福建省厦門(アモイ)郊外の巨大石材市場を歩く_1

ザ・ライブラリー

リノベーションブランドのザ・ライブラリーのブログのご紹介です。カガミ建築計画でも5年前に福建省に大理石探しに出掛けていますが、今回はお客さまと一緒の旅となりました。
大理石をふんだんに使ったキッチン、浴室と浴室等の水回りを計画している横浜H邸のHさまと、ザ・ライブラリーの田口さんと設計担当の岸本さんと各務で、中国福建省厦門市郊外の水头(頭の旧字体)鎮(以降、水頭)に大理石を探しに来ています。石材のプロで、先日の岐阜関ケ原&大垣エリアでの石材ツアーでも同行してくれた、キダマーブルの齊藤副社長、アジアグラニットの高木社長と池田さんも同行してくれての大理石探しの旅です。

成田空港から厦門空港までは厦門航空の直行便で約4時間、厦門市から車で約40分で水頭鎮に到着しました。

水頭の街に入ると、いたるところに白大理石を扱う石材店が軒を連ね、町全体がまるで巨大な石材展示場のようです。街中には石材を積んだトラックが行き来し、巨大な体育館のような石材展示場が何棟も連なっています。

石材展示場はほぼ全て開放型で、車でそのまま中に乗り入れて見学できるスタイルとなっています。東京ビッグサイトの展示場サイズの巨大空間の中に、色々な石材会社が区画スペースを借りて、大理石スラブを展示するというシステムになっているのです。

今回は白系の大理石が目的なので、実際に見て回ったのは白い大理石ばかりを展示しているお店でしたが、通りの左側には緑色系大理石を専門とした店もあれば、黒に特化したお店などがバラバラと散らばっています。

まず最初に訪問したのが、こちらです。ここでなんと奇跡が起きそうになったのです!

なんと、最初の展示場で最初に見た、このアラベスカートをHさまが気に入ってくださったのです!
最初はさすがに水頭には良い大理石がありますねといった感じだったのですが、マジマジと見ているうちに、これで良いかもとの話になってきたのです。

確認したところ、枚数が足りないことが判りましたが、隣に置いてあるこの石材の兄弟のような似た色味なので、右をメインのキッチンにして、左のこちらを水回りにするのでも良いとの話にまで膨らんできました。
ただ、その後、石材のプロの齊藤さん高木さん、池田さんが細かくチェックしてゆくうちに、3つの問題があることが判りました。

  1. スラブ材のほぼ中央横にかなりの山傷(ヤマキズ)が入っており、その傷のラインの近くでカットすると石材が割れてしまう可能性があること。
  2. スラブの短手サイズが1500ミリ程度しかないこと。
  3. キッチン扉や浴室では、ハニカムやFRP樹脂で裏打ちした薄いスラブ材に加工する必要があるのですが、こちらのスラブ材はそもそもの厚みが15ミリしかなく、ハニカム加工が難しそうなこと。

特に①に関しては、石材加工屋としてかなりのリスクがあるため、かなり余分目にスラブ材を購入しなくてはいけないことになるのに、そもそも右側のスラブが8枚ほどしかないことから、そうなると結局一番気にいっていらっしゃる左側のスラブよりも、ベストとは思われていない右側のスラブをメインにすることになってしまうので、一旦こちらは保留として、他のスラブを見て回ることになりました。

そのすぐ裏にあったのがこちらのSFストーンさんの倉庫です。ここで展示されているスラブの種類だけでも、おそらく60種類以上のアラベスカート、カラカッタ、スタトゥアーリオが所狭しと並んでいます。

普通のアラベスカートに交じって、このような迫力満点のアラベスカート・ヴィオラ(紫がかった模様が特徴の希少種)なども並んでいました。

その次に伺ったのが、ちょっと町はずれにある、こちらの捷成石材さんです。白系の大理石のスラブだけで恐らく500種類以上並んだ大きな石材屋さんです。

白系大理石スラブの海の中を泳いでいるような感じで、見ているうちに何が良くて何を探しているのか分からなく、頭の中が迷子になってしまいそうでした…。
それでも強い意志を持ったHさまは、設計担当の岸本さんと一緒にグングン、その海の中を迷わず進んでゆくのです!

これだけあっても中々お気に入りのスラブが見つからないでいると、お店の担当者、ちょっと外に出てみないかと誘われて外に出てみた時の景色です。
白系大理石のブロックが地の果てまでに続いているかのようでした。
以下、続きは、ザ・ライブラリーブログをご覧ください。

ヴィンテージマンションに最新エアコン導入_レントゲン調査とコア抜きレポート

大田区S邸

ヴィンテージマンションリフォームの大田区S邸では、空調システムの設計を詰めている段階です。これまでも隠蔽式エアコンが入っていましたが、お客さまからはなるべく既存と同じような全館空調システムにして欲しいとのご要望を頂いております。


こちらの図面は、当初設計側で考えていた天井裏の隠蔽式エアコンとダクトのルート図です。灰色に塗られている部分がコンクリート壁で、その壁の中に濃いピンク色で塗られた箇所が、マンション建築当初に空けられていたダクト貫通用の穴(スリーブといいます)です。リフォーム前と同じく廊下天井裏にエアコン本体を設置し、そこから各部屋にダクトを通して冷房と暖房を配する予定でした。

この白黒図面は設計初期にお客さまに見せて頂いたマンション竣工時の図面集(全132ページ!)の中の空調図です。ここからコンクリートの構造壁とダクトルートを読み取って、どの壁にどのサイズの穴が開いているかを、担当スタッフの竹田さんが読み込んでくれたことで、先の図面ができているのです。


構造図を参照しながら、まずはコンクリート(RC)の壁を灰色に塗って、設備のダクトルートをグリーンに色付けして…、

それらが交差している箇所を赤い四角で表示しましたが、それが天井裏でRC壁にスリーブが空いている箇所と特定する訳です。こちらの設備図にはダクトのサイズも書き込まれているので、それよりワンサイズ大きいスリーブが空いていると推定することができました(実際にはこの空調設備図のほかに、に、もう一枚換気設備図があり、それにも同じプロセスでスリーブ位置とサイズを推定しています)。
ただ、往々にして、ヴィンテージマンションの設備図面は解体してみると、実際の工事と図面にずれがあることが多々ありますので、注意が必要です。

見積りの段階で施工をお願いする予定のリフォームキューから、以下の様な指摘がありました。
当初考えていた一つの室内機からダクトで全ての部屋に冷気と暖気を配る方法ですが、2025年4月からビル用マルチエアコン(大田区S邸は大型住戸なので、ハウジングエアコンでは賄いきれないのです)の冷媒の種類が環境に配慮したR32に切り替わることになり、システムを変えた方が良いのではとのアドバイスです。まだ古いタイプの冷媒も発売されていますが、今後システムが変わった際にメインテナンスに不都合が生じる可能性があるのではとの指摘でした。お客さまにもご相談したところ、それでは新しいタイプの冷媒で考えて欲しいとのことになりました。
以前のR410冷媒と比べてR32は燃焼性があるため(といっても微燃性ですが)、その安全対策として、冷媒漏洩の早期検知センサーを設けるために、各部屋で吹き出し口と吸い込み口が完結する必要があり、大型室内機を一台ではなく、各部屋に小型(または中型)室内機を設ける方式になりました。
それを反映してエアコンシステム図を竹田さんが書き直してくれたのがこちらの図面です。

実際の見積もりをする段階になると、リフォームキューの設備担当の槻川原(ツキガワラ)さんから、この図のようにびっしりと計算式と注意点が書かれて戻ってきました…。
良く図面を見比べないと分からないと思いますが、LDKの空調は大きな室内機を廊下に置いていますが、各居室はそれぞれの室内に室内機と吹き出し口と吸い込み口を一体でセットしています(ただ、空調全体を一つのスイッチで全館空調のようにコントロールするシステムは担保できそうです)。

そしてエアコンのシステム図と同時に、マンション共用部に置かれている室外機と土中で繋がっていた冷媒管が全て老朽化しているため新たに交換するため、また今までは無かったお風呂の追い炊き管やガス乾燥機の乾太くんの新規ダクトを設けることとなっており、それらすべてを天井裏で回すためには、コンクリート壁に新たなスリーブを開ける必要があるのです。
日本のマンションの区分所有法では、コンクリート躯体は共用部となるため、スリーブを空けるためには管理規約を確認しつつ、マンション管理組合に許可申請を出す必要があります。特にマンション全体の構造的なことに関わってくるので、お客さまと相談の上、構造計算書を添付することといたしました。

そして先の資料とマンション竣工時図構造図と計算書から、新たにスリーブを空けることに対しての構造的な検討を、以前からお世話になっている建築構造設計事務所Bファームの構造設計一級建築士、中野久夫先生に手計算で計算してもらったのがこちらの資料となります。

最初の資料だと素人にはさっぱりわからないので、竹田さんが最後の検証部分に赤字でコメントを入れてくれたものがこちらです。考察部分には、「…改修工事に依り設備配管のコア抜きが生じ、壁量の検討を行った結果、X方向の壁量が1.02%減少となりました。全体の壁量からするとわずかな量であり、また必要壁量も満足しているので、本建物は安全と思われる。」とのコメントを頂きました。
こちらをお客さまから管理組合と管理会社にリフォーム申請書と同時に提出してもらい、無事申請が通りました。ご参考までに、にこちらの構造検討資料の作成費用として20万円+消費税(友達価格でありがとうございます)をBファームにお支払いしています。
この構造計算書と図面をリフォーム申請に同封して提出したところ、2週間ほどで工事と同時のスリーブ空けの許可が下りました。

お客さまの仮住まいへのお引っ越しも終わり、ここから解体作業が始まります。床とマントルピースが養生されているだけのように見えますが…、

リビングの下がり天井部分の石膏ボードと木製下地が外されており、エアコンのダクトも既に外されています。その奥に四角い穴が開いているのが、ここまで話題に挙げてきた既存のRC壁のスリーブなのです。よく見ると、その側面にも大きめのスリーブが空いています。

リビングから見てRC壁を挟んで反対側の主寝室から見ると…、

天井裏のスリーブの様子が良く分かります。本来のスリーブは建物の建設時に穴の周りに鉄筋を回し、型枠を組んでコンクリートを打設するので、このように鉄筋が見えていたり、コンクリートの面がゴボゴボになっているのはおかしいのです。ただ、古いヴィンテージマンションでは、設備がうまく入らず現場でコンクリートを斫ったりすることは多々あったようです。鉄筋が露出している箇所は現場監督の大阿久さんと相談して、さびを除去してから無収縮モルタルでカバーするようにお願いしておきました。

上階の排水管や給水給湯管に加えて、Sさまのお宅の給排気のダクトが所狭しと並んでいる洗面所の天井裏の様子です。コンクリートの壁にスリーブが空いていることが判りますね。

まだ解体の初期段階ですが、弊社設計担当で副所長の竹田さんと大阿久さんの二人が、確認出来る限りの既存スリーブの位置とサイズを見て回ってくれました。

やはり当初想定していたスリーブ位置やサイズが変わっている箇所がかなりありましたが、何とかLDKのエアコン室内機をランドリースペースの上に設置して、そこから既存スリーブと新規スリーブを使ってエアコンシステムを組みことができることが判ったので、まずはホッと致しました。

ここからはレントゲン調査からのスリーブのコア抜きとなります。レントゲンは、壁にターゲットと呼ばれる的のようなシートを貼り、その表からフィルムを貼っておきます。レントゲン照射器(黄色い筒状の機器)を反対側の壁に設置し、別室に置いたレントゲン発生器(四角い箱)からシャッターを切る仕組みとなっています。

車の中で現像した写真がこちらとなります。縦に何本か見えるのがコンクリート内の鉄筋となります。実際には、鉄筋だけでなく埋設された電気配線なども確認しつつ、コア抜き時にそれらを傷めないように位置決めをする非破壊調査となります。

鉄筋を避けた位置に改めてコア抜き器をアンカーでコンクリート壁に設置して、中空のドリル機を高速で回し、水を機械に入れながらコンクリートに穴をあけてゆきます。

新しく壁に空けられたコア抜き箇所と、4か所のコアの写真がこちらとなります。レントゲンとコア抜き作業については、以前い書いたブログ記事の方が細かく説明しておりますので、ご興味がある方は以下の記事をご覧ください。
コンクリート壁のレントゲン調査立会い(2011.08.04)
コンクリート壁のコア抜き(2011.08.09)
RC壁へのコア抜き(2021.01.21)

無事にコア抜き工事も完了したので、ここからは解体工事をさらに進めて貰いつつ、エアコン機器の正式発注と機器設置位置やダクトルートの詳細設計へと進みます。