Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

インテリアCGパースでのデザイン・コンペ@港区R邸

港区R邸

これまでのブログで、出来上がったばかりの新築マンションの現地確認と、奥さまと一緒に青山エリアのハイブランド家具ショールーム巡りのことを記事にしてきた港区R邸ですが、実は最初にお客さまからご要望を受けたのは、インテリアCGパースを作って欲しいとのお話でした。プラン提案ではどのような空間になるかがわからず、判断ができないので、最初からかっちり細部までデザインしたCG(コンピューター・グラフィック)図を作ってプレゼンテーションして欲しいとのことでした。
マンション販売会社系列のリフォーム会社提案とコンペティションの形で、見比べたいとのご希望でした。

最終的には、上記のようなインテリアCGを作って、お客さまに気に入って頂いたことで設計契約を結ぶことになりましたが、そこまでは色々な交渉がありました。
普通はまずリフォームプランを作るために、現地を調査するか、竣工図面を見て研究する作業を先行するのですが、ご相談があった際にはまだ建物が出来上がっておらず、従って竣工図面もなく、販売用の間取り図だけしかない状況でした。リフォーム案の作成を依頼された場合は、HPにも記載している通り20万円ほどの費用をお願いするのですが、今回はプランを通り越してのCGパースで、他社との比較資料でもあり、それもリビングダイニング×2枚、玄関×1枚、主寝室×1枚を見たいとのことでしたので、2.5か月の期間と200万円のご提案料をお願い致しました。(その後の交渉で、この金額より下げてのご請求になりましたが…)

見せて頂いた図面は、このスケッチ案のもとになった図面で、寸法もはっきりとしない上に、断面方向(例えば天井の高さや折り上げ天井の位置)がほぼ分からない状態でした。

マンションデベロッパーが販売時に作っていたパースのイメージ画から推測しながら描き起こした展開図に、仕上げ材や家具などのイメージを書き込んでゆく作業を始めました。

そこから、CGパースを作って貰うために、平面計画を進めながら、展開図もより立体的に見えるように工夫したものを描いていきます。

当初の段階ではまだお目に掛っていなかった奥さまからは、きちんと使える、収納まで考えたキッチンにして欲しいとのご要望もご主人さま経由で伺っていたので、どのような方かを想像しながら、キッチン計画も練っていきました。

全体にとにかくかっこよく、高級感があるインテリアにして欲しいとのお話でしたので、主寝室にも壁埋め込みのテレビやガラス張りのウォークインクローゼットなどを設ける提案としています。

平面図に照明プロット(照明の位置図)を落とし込んだものと床の大理石やフローリングの割方を指示した図面を作り、

リビングのテレビ後ろに張る超高級大理石のポルトロや、レザー張りの建具のイメージ、ダイニングテーブル上の華やかなペンダント照明のイメージと寸法、さらには主寝室床のランダム張りのフローリング等、それぞれの素材写真も揃えて、

 

最後に、どこからどの角度で見たパースにしたいかのアングル指定図を作って、いつもお願いしているCGパース屋さんにお願い致しました。

10日間ほどして出来上がってきた叩き台用のパースが以下のものです。

指示ができていなかったことで間違ってしまった箇所の訂正や、よりリアルに感じられるように小物などを使いする指示書を送って、また5日ほど待って出来上がったのが、最初の一枚のCGパースです。

ダイニング側からリビング側を見返したアングルのパースペクティブイメージです。小物が入ったことで、スケール感(広さの感覚)もより具体的になってきた気がいたします。

こちらが主寝室のイメージ図です。
冒頭にも書いた通り、これらのパースCGを気に入ってくださったことで、他社とのコンペティションに勝つことができ、リフォーム会社の施工契約と僕らの設計契約を結ぶことになりました。ただ当然ながら、契約までには施工の見積りも揃えて貰う必要もあり、その見積りのためには、平面から展開図、照明やエアコンなどの設備プロット図、キッチンや浴室の仕様書、置き家具(ソファやダイニング・椅子等)の提案まで、基本設計程度の図面と仕上げ表にインテリア家具提案までを用意しておく必要がありました。最後にはこれらの資料全てをRさまにお見せしたことで、CGパース提案料をしてご請求した金額に納得してくださいましたが、当初はCGだけでなぜそんなに高い提案料なのかと思われたと後から伺わせて頂きました。

ハイブランドの家具ショールーム巡り@青山

港区R邸

新築マンションリノベーションプロジェクトの港区R邸では、家具やラグ、カーテンなどもすべてインテリアに合わせて新調したいとのお客さまからのご要望がありました。Rさまご夫妻のテイストが良く分かっていないので、まずは奥さまと一緒に青山エリアのハイブランドのイタリア輸入家具屋を一緒に巡ることにいたしました。

スタートとして選んだのは、外苑前のB&Bイタリアでした。今回は家具選びというより、家具ショールームの雰囲気を感じていただくことが主目的なのですが、B&B1階の雰囲気はとてもスタイリッシュでお好きだとの言葉を頂きました。

3階のショールームでは、僕らも大好きなウォークイ・クローゼットの収納家具は気にいって頂けたようでした。

今回は、Rさまをご紹介してくれたリフォームキューの営業担当の坂本さんも一緒の家具屋巡りですが、B&Bの栄田さんがB&Bイタリアの特徴やファブリックやレザーのサンプルをご説明くださいました。

次に伺ったのが、青山通りを挟んで向かいにあるカーッシーナです。いつもお世話になっている営業の植草さんが、すべてのフロアを案内してくれました。

次は、B&Bやカーッシーナから少し離れた南青山5丁目・6丁目エリアに移動して、フレックスフォルムのショールームを訪問し、

うちの事務所ではお馴染みのミノッティのコート店に寄って、

フィリップ・セルバのショールームを経て、

最後は、インテリアズのショールームまで駆け足で巡りました。
約4時間掛けての速足でのインテリアショールームツアーでしたが、これまでゆっくりお話をしたことがなかった奥さまと、ランチもご一緒しながらのお話で、ご主人さまとは違ったインテリアテイストもお好みであることが判って参りました。まだこれから、他の家具やラグやカーテン、そしてキッチンや浴室などの設備も、これから時間を見つけてはショールーム巡りをご一緒するお約束を致しました。

 

新規プロジェクト:港区R邸

港区R邸

新しく始まったプロジェクトのご紹介です。都内の新築マンションの全面リノベーションプロジェクト、港区R邸です。

こちらは、まだ完成したばかりの新築マンションですが、お客さまが望んでいらっしゃるインテリアとは程遠い作りとなっているので、お引渡しと同時にリフォーム申請を管理組合(実際にはまだ発足していないので管理会社)に出して、工事を始めることになっています。
新築マンションで、こちらのマンションのように数億を超える価格のお部屋であれば、新築オプションといってデベロッパー側が建物を建設するゼネコンとの間にコーディネーターを手配してくれて、間取りの変更や仕上げ材の変更をしてくれるのが普通です。ただ、今回のケースではお客さまのRさまがこの部屋の契約をなされたのが、発売後しばらく経ってからの少し遅いタイミングだったので、その時点で既に新築オプションの期限が終わってしまっていたのです。

ここまで10回以上のお打合せをお客さまご夫妻と、このプロジェクトを紹介してくれたリフォームキューの担当の坂本さんと行ってまいりましたが、実は現地を拝見するのはこの日が初めてでした。新築マンションの施主検査に相当する内覧に合わせて現地を拝見させて頂きました。リフォームキューからは坂本さんをはじめ、設備や電気屋さん、坂本さんの上司の森井さんや石原さんも現場をチェックしに来てくれました。

お引渡しまでは、管理組合に保管されるべき竣工図をチェックすることもできなかったので、これまで詳細が良く分かっていなかった窓サッシ際の実測をさせて頂きました。

アルミサッシの冷たいシルバー色がお嫌いとのことで、無垢の木材やダイノックシートを張る予定ですが、それらがうまく施工できるか、細かくサッシのコーナーや取り合いを確認して行きました。

こちらが部屋に入ってすぐの玄関ホールですが、マンションのエントランスからエレベーターホールへと続いてきたラグジュリアスな雰囲気はここらへんで途絶えてしまっていました。

この浴室は、残念ながら一度も使われないまま取り壊されてしまうのです…。でも、ちょうど打ち合わせ最中だった浴槽のサイズや洗い場からの跨ぎ高さ、使い勝手などのご説明用に使わせて頂きました。

お客さまが帰られた後には、設備関係や床下&天井裏の作り方をじっくり研究してゆきました。まずは分電盤の様子です。

天井と床下、壁に見つかった点検口は全て開けて、中を確認してゆきます。

天井裏はこのような状況なのですが、写真を何枚撮っても、どのような実態になっているかを理解するのが難しいので、天井高さとコンクリート躯体の関係(なぜそこだけ天井が下がっているか等)、LGSの建て方、設備ダクトの内容と通る方向、電気・弱電配線の位置、その他設備(自火報等)と分けて、少しずつコンテキスト(文脈)を読み解くように理解してゆきます。

床下の点検口は、隠されたところにあるので注意が必要です。ここでは、洗面所の引き出しを取り外した下部にありました。ほかの人たちが覗き込んだのですが、手が届かないとのことで、手だけは長い僕が頭と手をキャビネットに突っ込んで床下の様子を覗いてみました。

こちらが床下の状況です。灰色の太い管が排水管で、水色が給水、ピンクが給湯管となっています。水回りがレイアウトされている箇所は、床下のコンクリートスラブが一段下げられていることが分かりました。

浴室の天井裏からは、壁際に無駄になっているスペースが15センチほどあり、その分浴室を大きくすることが可能なことが判明しました。

壁から柱状に出っ張っているPS(ピーエス:パイプスペースのこと)もすべてチェックしました。キッチン横の大きなPSを低い位置にある点検口から手とカメラを突っ込んで上方向を撮影した様子ですが、床から150センチほどまでは何もなく、そこから上にダクトを集めたチャンバーボックスがありました。これは、床から150センチほどまでを収納に使うことができそうだとのことで、早速事務所に戻った後にお客さまに「良いニュースです!」とお知らせいたしました。キッチン回りの収納量に余裕が生まれそうです。

その他、壁際のPSにも結構な余裕があったので、配管のルートを変えることで、PSそのものをなくしたり、大きく縮小することもできそうでした。
まだ、お部屋の詳しい図面も揃っていない段階ですが、ここまでじっくりと調査をすることができたので、ここから先はその内容を検討しながら、より具体的な設計を詰めてゆくことができそうです。