Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ゼリージェタイル(Zellige Tile)とは

文京区S邸

文京区S邸のお客さまから、キッチンや浴室にこのようなタイルを使いたいとのご要望を頂きました。

https://www.alteret.com/en

海外では見たことがあるのですが、日本ではほとんど見たことが無いタイルでしたので、お客さまにどのような種類のタイルかを尋ねた所、モロッコ産のゼリージェタイル(Zellige Tile)と呼ばれるタイルで、今米国の富裕層の間で大流行しているとのことでした。

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サイズも色々、色もカラフルなバリエーションがあることが判りました。ろ過した泥を型に流し込んで整形し、釉薬を掛けてから焼き、それを機械ではなく手斧でカットしてモスクや宮殿などにモザイク模様で貼ることから発展してきたタイルだとのことです。20代後半にバックパッカーとして中近東を旅行した際に補修中のモスクの工事現場で見たことがあったので、記憶があったようです。
モロッコから輸入する建材に詳しい人は知らないので(笑)、イタリアの建材に詳しいアノニモデ・ザインの黒澤さんに聞いてみた所、幾つかのメーカーを調べて貰うことができました。

モロッコ産は基本となりますが、それをモロッコから直接入するのか、イタリアやスペイン経由で輸入するかで、品質や価格や納期も変わってくることも分かりました。まずはカタログでみてよさそうだったスペインのメーカーが扱っているサンプルを取り寄せて貰いました。
ひと月半掛かって届いたのが、こちらのタイルです。表面の不均一度合いはイメージ通りでしたが、裏返した背面の手作り感は想像以上の素朴さでした。

ゼリージェタイル_モロッコ

100ミリ(10センチ)角と50ミリ(5センチ)角のものが届いたので、まずは目地無しのイメージで並べてみたものを打合せ時にお客さまに見せたところ、正にイメージ通りだと喜んで頂けました。

ゼリージェタイルの平面モックアップ_モロッコ

最初に届いたのがスペイン経由のモロッコタイルに続いて、モロッコ直輸入のモロッコタイル(分かり難い…)も届いたので、平面モックアップを施工会社のにお願いして作って貰いました。と書くと、簡単なのですが、青が普段付き合っているタイル屋にこのタイルを見せた所、あまりに不均一でモックアップとはいえ貼ることができないと数社に断られてしまいました。

ゼリージェタイルの平面モックアップ_モロッコ

最終的にこのモックアップの為に一肌脱いてくれたのは、何と石屋のキダ・マーブルさんでした。考えてみれば石屋の方がボコボコのあれ肌の石などを張る技術にも長けており、これをタイルと考えずに張ることができたようです。

お客さまのSさまご夫妻にモックアップを見て貰っている様子です。モックアップの上に置いてあるのは、日本の輸入タイルメーカーから取り寄せたゼリジェタイルですが、モックアップを作ったものが一番雰囲気があると喜んで頂きました。

基本的にはスペイン経由で購入するゼリージェタイルでキッチンとパントリー、浴室とシャワールームの壁を張る方針が決まりましたが、設計からも施工からも気になることが多くあったので、このような同意書にサインをして貰ったうえで計画を進めることにしました。こちらは事前にお送りして見て貰っていたので、当日サインをして頂きました。

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平面的に張ることは何とかできそうだと判っていますが、浴室とシャワー室にはこの写真のようなニッチを作ることになっており、そのような施工ができるかが分からなかったので、まずは関係者全員で集まってどのように施工するかの相談をすることになりました。

左から青の片岡社長、現場監督の織田さん、キダマーブルの齋藤専務、アノニモデザインの黒澤さん、そして弊社副所長で担当スタッフの竹田さんです。

このような形で、出隅と入隅が混ざったモックアップを作って貰うことになりました。

ゼリージェタイル_モロッコ

こちらが余っていた緑のタイルです。

ゼリージェタイルのコーナーモックアップ_モロッコ

そして2週間ほどで出来上がってきたのがこちらの立体モックアップです!こちらもキダマーブルさんにお願いしたものです。

ゼリージェタイルのコーナーモックアップ_モロッコ

懸案の出隅は、このようにタイルの裏地を手作業で45度にシャープに削って張り合わせてくれています。

ゼリージェタイルのコーナーモックアップ_モロッコ

反対に入隅はこのようになります。目地材が少しでも欠けたら、裏に水が回ることが予想されますので、上記の同意書が施工側に重要になってきます。浴室とシャワー室はオーダーユニットバスの東京バススタイルに作って貰い、タイルは浴室設置後に張る形での施工となる予定です。その場合、タイル裏で一応防水を取っているので(このモックアップはベニヤ下地ですが、実際は耐水性のあるアクアパネルとなります)、例え裏側に水が回っても下の階に水漏れする可能性はほとんどありませんが、タイル地に水がしみて割れたりする可能性はないとは言えませんね…。

ゼリージェタイルのコーナーモックアップ_モロッコ

その後、お客さまにこのモックアップ模型を持て貰った所、出隅のエッジのシャープさで手を切りそうなことから子どもたちが使う浴室にはニッチは作らないことになりましたが、ご夫妻が主に使う主寝室付きのシャワールームでは、このゼリージェタイルを使ってのニッチを作ることが決まりました。ただ、ニッチの下の棚板に当たる部分はシャンプー等が染み込みそうなので、下台だけは大理石で作ることになりました。

造作家具の組立て@恵比寿A邸

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリープロジェクトの告知ブログです。
先回のブログで恵比寿A邸の造作キッチンの組立て状況を書きましたが、実はキッチンと同時にその他の造作家具の組立ても進んでいます。

こちらは、廊下からLDKへ入る建具の横にくる飾り棚収納です。枠材は黒の鏡面磨きで、背面にはカラーガラスが入るという凝った、逃げが無い造りとなっていますが、担当スタッフの前田君の細かい指示と、造作家具屋のアルノの粘り強く精度の高い加工技術で、うまく収まりそうです。

展開図を元にして、造作家具屋のアルノが最初に作ってくれた図面がこちらです。細かい寸法や取り合いは赤チェックで直していますが、実は上下の枠の納まりがこれでは上手く行っていないことが判りました…。

そこで前田君が作ったのがこちらの指示図です。腰下と腰上で、一旦カウンターで分かれている造作家具ですが、上下の枠をどこ位置で合わせるときれいに見えるかを検討してくれたのがこの指示図なのです。

細かい図面修正を経て(竣工お引き渡し時)完成したのがこちらの飾り棚です。

飾り棚の隣にはレザー張りの建具が入ります。この写真はまだレザーパネルが張られてなく、取っ手上のガラスもまだ入っていない、すっぴん(笑)の状態です。
その他、ワインセラー置き場やカラーガラス張りの収納、ベッドサイドのナイトテーブルの造作状況の開設はこちらのブログをご覧ください。

PS(パイプスペース)の内容確認

三田S邸

三田S邸の初期のブログで、PS(パイプスペースの略語)について、実は2種類のPSがあって、一つは内部に共用竪管が通るPSで、もう一つは専有部であるエアコンのドレイン管や冷媒管が通るPSという説明を致しました。前者は古いマンションでは専有部であるケースもありますが、ほとんど共用部となっており、従ってPS周りのLGSや石膏ボードも変形することはできません。それに対して、後者のPSは専有部ですので、配管をうまく避けながら壁裏の余剰スペースを活用したり、場合によっては内部の配管をずらして全部室内に取り込んでしまうことも出来る可能性があるのです。

この図面の赤で印されたPSの内部がどうなっているかによってキッチンのサイズや、リビングの使われ方が変わってくるので、事前に大工さんに入って貰って壁の石膏ボードに点検用の孔をあけて貰う手配を、施工予定のリフォームキューさんにお願いしました。

営業の坂本さんと大工の田島さんで手際よく点検口を作っていってくれています。この鏡張りの裏の①のカ所のPSが使えると、キッチン周りに寸法の余裕ができるので、なるべく早いタイミングで確認したいと思っていた部分です。

ちょうど上の写真で柱型の右側からPS内部を覗き込んだ写真がこちらです。奥にボコボコした肌で見えているのがコンクリート(RC)の柱で周囲に発泡系の断熱材を吹き付けられているものです。手前に見える白い管がガス管、赤が給湯管、緑が床暖房などのペアチューブ、銀色に巻かれているのがエアコンの冷媒管となります。写真左側、柱と壁の隙間は床下部分には配管がありますが、床上には何もなく、約17センチほど室内空間を増やすことが出来ることが判りました!

こちらは②のPSの内部です。PS内をのぞき込む場合は、目線より下方向だけでなく…、

上方向も確認しておく必要があります。このPSの場合、右側の躯体壁上部に梁型があることが判りました。その梁型を避けるためにエアコンのドレイン管などもクランクしているので、空いているスペース全てが使える訳ではないのです。

こちらは③のカ所です。ここは当初からPSとは銘打たれていなかったので、恐らく部屋の形をきれいにするためだけに作られた隙間だと考えておりましたが、それを確認することができました。

この日は、PSだけでなく、天井の下がりの中がどうなっているかも確認したかったので、天井点検口が無かったカ所は天井のボードに開口を開けて貰い、下がり天井の内部を確認させて貰いました。

現地調査をしている内に、以前から気になっていた主寝室の収納扉を坂本さんと弊社担当スタッフの竹田さに測って貰った所、新しく作るご主人さまのお部屋のクローゼットの扉に転用できることが判りました。天然木の突板の立派な扉だったので、うまく使うことができればSDG’s的にも良い流れになりそうです。

事前解体調査についてはこれで終わりとして、その後は仕上げ材の打合せをさせて頂きました。元々雑誌「家庭画報」に掲載された渋谷区Q邸の雰囲気がお好きだと仰っていたSさまご夫妻でしたので、Q邸のフローリング材とほぼ同じものをフローリングブランドの望造に作って貰ってをお持ちしたところ、他に考えている素材候補ともよく合いそうだと喜んで頂きました。フローリング材の右側のタイルは六本木のマリストショールームでSさまご夫妻が見つけてきたブレイズという手焼き風な温かみがあるユニークなタイルです。

打合せの初期の頃に青山のミノッティのショールームで考えていたソファの張地候補ともマッチしていました。ちょっとマッチし過ぎていて、すべてがアースアラーになりそうなので、アクセントカラーも取り入れた方が良さそうです…。

玄関周りの床の石材、トラバーチンも再利用することが決まりました。LDKと同じ素材感だと、ちょっと単調になりそうなので、真鍮のような金属と黒をどこかに取り入れると良さそうだとのお話になりました。