Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

新規プロジェクト_ヴィンテージリフォーム大田区S邸

大田区S邸

新規プロジェクト、大田区のヴィンテージマンションリフォームのS邸が始まります。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

築30数年のバブルの頃に建てられた低層ヴィンテージマンションのオーナーのSさまからのご相談で、3人のお子さま達がそろそろ巣立つこと、エアコンなどの設備が徐々に不調になってきていること、キッチンをオープンで使いやすいものにしたいこと、お風呂が寒くて追い炊きができないことなどを解消なさりたいとのことでした。
カガミ建築計画では、最初から現地に行くことはなるべくせず、まずは事前にマンション竣工時の図面をお客さまに手に入れて貰い、それを見ながら弊社事務所でどのようなことができそうかを机上でお話をするようにしています(最初から現地に伺ってのご相談も可能ですが、その場合は現地調査費用として22万円をお願いしております)。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

こちらは、実はお客さまと初めてお目に掛かる前に弊社側で考えておいたリフォーム案です。まだ、リフォームのご要望を伺っていない段階ですが、僕らなりに間取り図からこれは使い勝手が悪そうだなと思われる個所をピックアップして、このお部屋のポテンシャルを最大限に引き出す案を考えてみるようなイメージの案です。時にはお客さまのご要望とは全く違う、勘違いな案になることもあるのですが、それでも事前に真剣に間取りを見て考えてみることが、お客さまには新鮮に映ることも多いようで、僕らにとっても良いトレーニングになるのです。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

大田区S邸は、コンクリートの壁構造なので、間取りをガラリと変えることは難しいので、まずは部分的にどのようなことができそうかを考えてみた案です。こちらは玄関とキッチンと来客用トイレ部分のラフリフォームアイデアです。変形コの字型のキッチンはどこからも閉ざされており、ご夫婦二人になった時にこのような閉じたキッチンでは会話も弾みませんので、まずはオープンでかつ整形なコの字型にしています。また、バブル末期の外国人仕様でキッチンに洗濯乾燥機があったので、洗濯関係の機器は浴室側に移動して、ダイニングから隠れる部分に冷蔵庫と家電収納を考えてみました。
合わせて、来客用トイレの手洗いカウンターを大きくして、玄関スペースも整えるアイデアです。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

浴室回りはもっと思い切った提案です。カーブした壁に沿ってあった浴室をベッドルーム側に移動し、洗面スペースを大きくするという案です。洗濯乾燥機は廊下に沿って設け、主寝室のウォークインクローゼットを一部削り、また個室はお子さまがいなくなった部屋をコンパクトな書斎にしています。実際には床スラブの段差範囲や排水や換気ルートを調べてみないと本当に実現できるかが分からないアイデアですが…。
そしてこのリフォームアイデアと、ヴィンテージマンションならではの問題である、全館空調の取り換えに掛かる費用や、お風呂の追い炊きの為にはマンション管理組合で躯体への穿孔のルール変更などをしないといけないといったお話をしたところ、是非カガミ建築計画にお願いしたいというありがたいお話になりました!

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

とはいえ、まだ全体のスケジュールや費用感のことも、まだほとんど打ち合わせもできていない段階でしたので、有料となりますが22万円の現地調査とそれに則っての33万円でのかなりリアルなリフォーム案の作成のご依頼を頂き、副所長の前田君と担当スタッフの松藤さんと一緒に現地調査に伺って参りました。
こちらがご自宅の玄関ホールです。もともとがクラシカルな建具やケーシングが使われている空間に奥さまがお好みのブランディボワールのフレンチシャビーシック家具や小物が飾られた素敵な空間です。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

玄関からリビングダイニング、そしてプライベートルームへと続く廊下の写真です。玄関とパブリック廊下の床は大理石で縁取られたテラゾータイルで貼られ、

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

プライベート廊下やリビングダイニングはオーク材のヘリンボーンで張られたシックな作りの空間です。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

リビングはグランドピアノ以外の家具は、その時期に気に入った家具を購入しているので、纏まりがないとのことでしたが、それでも伸びやかな空間に窓から自然光が降り注いでとてもきれいな空間でした。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

ダイニングは、キッチンが大きい分押されてコンパクトな空間で、アンティークのダイニングテーブルは素敵ですが、お子さまも含めて5人の家族が食事をするには少々狭いかなと感じました。ただ、お子さま達が大きくなって、食べる時間がずれるようになったので、それほどコンパクトさにかけてはあまりストレスを感じていらっしゃらないとのことでした。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

ただ、このキッチンは、孤独で収納が少なく、きれいにしようと思ってもできないキッチンで、全てやり直したいとのご意向でした。

ヴィンテージマンションリフォーム大田区S邸‗新規プロジェクト

洗面脱衣もトイレがあることで、トイレを誰かが使っていると浴室にも入れず、狭くて収納も少なくて不便とのことでした。

キッチンと同じくらい困っていてやり直したいのがこちらの浴室でした。広い浴室ですが、冬は寒くて耐えられないこと、追い炊きができなく、浴室暖房乾燥機も入っていないので、干し物のできず、更には浴室の扉が木製で、下部の水にぬれる部分はかなり腐っているようでした。

竣工時の図面集もお客さまがお手持ちだった縮刷版をお借りして、更に設備や内装についての調査内容をまとめた資料も後日作ってお渡ししました。
ここから1年半から2年掛けての長くて大きなプロジェクトになりますが、Sさまご夫妻、どうぞ宜しくお願いいたします!

渋谷区N邸のビフォーアフター

渋谷区N邸

先日工事が終わりお引き渡しを終えた新築マンションリフォームの渋谷区N邸のビフォーアフターです。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

まずは一番部屋の広さが変わったことが判るこちらの写真から。正面の窓は変わっていませんが、その右側にあった個室との間仕切り壁を取り払って、リビングダイニングの幅を広げて、新たにキッチンを個室側に移動しました。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

間取りで比較すると、判りやすいと思います。上がビフォーの平面で下がアフターの間取りです。キッチンをかつての洋室の位置に移動して、かつてキッチンとダイニングがあったエリアに、新しいトイレ+手洗いと洋室を持ってきています。
リフォームをしたことで、
①リビングダイニングキッチンが整形になって、空間の広がりを感じやすく、かつ家具レイアウトもしやすくなりました。
②キッチンが大きくなり、背面収納も充実しました。
③キッチンに奥さまが立っているとLDKが見渡せるようになりました。
④玄関正面にかつては個室の扉が見えていましたが、整形の壁を作ることができました。
デメリットとしては、
⑤個室が廊下からではなく、リビング・インになったことと、面積が減っています。ただ、お子さまの特性と家具レイアウトを考えたことで、Nさまご夫妻はこれはこれでデメリットではないと仰ってくださっています。
⑥トイレがリビング・インになってしまいました。ただ、手前に独立した手洗いができたことで、トイレ使用時の音や匂いの問題もあまり感じられず、家に帰ってきた子どもたちが手を洗いやすくなったそうです。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

かつてのダイニングがビフォーの奥の方に見えていますが、幅80センチのダイニングテーブルを中央に置くと、片側にしかダイニング椅子を置けないほどの幅しかありませんでしたが、下のアフターを見て頂くと分かるように、かなり大きなダイニングテーブルを置いて、左右に合わせて6脚の椅子を置ける広々としたダイニングができました。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

ダイニングテーブルは幅95センチ、長さ240センチの長さがありますから、両端に椅子を置けば8人での食事も可能です。また、キッチンのメインカウンターのダイニング側に収納が充実しているので、お子さまの勉強机としても使えます。アフターの写真手前の右にテレビ台が置かれ、左に元々のお手持ちのソファがすっぽり入っています。キッチンからご家族の様子が見渡せることも、この写真から良くわかりますね。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

ビフォーアフターの意味があまり良くわからない写真ですが、ビフォー写真は、かつての洋室からの写真です。壁を取り払ったことで、これだけの広さの空間を作ることができました。かつてはキッチン前は壁でしたが、リフォーム後は、広いリビングダイニング越しに大きな窓が2面に広がっています。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

ビフォー写真は、玄関から入ってすぐのキッチン越しに正面窓を見た写真です。アフターでは、正面に3枚あった窓のうちの一つが斜め壁の後ろの洋室に取り込まれて、リビング側には窓2枚分が残っているのが判るでしょうか。斜め壁も唐突に見えないように、グレーの枠で縁取っています。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

ちょうど反対側から見返したビフォーアフターです。以前はダイニングとリビングの間が狭く、それそれが別の空間に分かれていましたが、大きな整形の形のリビングダイニングになりました。右側の壁には斜め壁、洋室1と手洗い+トイレへの扉、更には収納の扉が並んでいますが、同じ素材で仕上げることで、沢山の扉が並んでいるように見えなくなっています。

渋谷区N邸‗ビフォーアフター

こちらは玄関入って正面の壁です。以前は中途半端な位置に洋室への扉があり、来客を迎えるような雰囲気ではありませんでしたが、リフォーム後はスクラッチ模様の入ったベージュ色のタイルが正対し、堂々とした空間へと変わっています。正面左側の扉は手前の壁へと引き込める扉となっているので、春や秋には常時開放していても邪魔になりません。右側の扉2枚と間の壁には同じダイノックシートを貼ることで、扉の存在を目立たなくしています。

造作家具の現代製作所工場見学

文京区S邸

先回に引き続き、また家具工場の見学です。今回は、一番良くお世話になっている現代製作所の神奈川県横浜市都筑区川和町の工場です。

現代製作所とのお付き合いはかなり深く、まだ設計者として独立したばかりの頃、ご縁があって自分の出身幼稚園である白金幼稚園の建替えを発注者側(つまり幼稚園側)としてお手伝いさせて頂きました。その時に工事をお願いすることになった工務店佐藤秀の現場所長が上林さんで、その後彼が佐藤秀を辞めてお父さまが作られた造作家具屋の現代製作所を作ったという経緯があります。幼稚園が完成したのが2000年、工事はその1年半前から始まっていたので、上林さんとのお付き合いは25年を超えていますね。その後、難しいプロジェクトの造作家具や建具だけでなく、元請けとしても何度も助けて貰ったことがあり、若い頃は造作家具図も満足に書けなかったので、こちらの工場に幾度も相談に来たことがありました…。

昔ながらの懐かしい工場だなと思って足を踏み入れたところ、奥には見慣れない大型機器が鎮座していました。NCルーターです!

コンピューターで3次元の図面を描くと、それに沿った形で刃物をコントロールして木材等の材料を削り出すという優れものの機械です。

こちら四角い部品がバキュームになっていて材料をしっかりと固定し…、

こちらの歯やドリルを使いながら削ってゆくという最新鋭の機器です。

こんな素晴らしい機械があれば、僕らがお願いしている文京区S邸の家具も、ハイスピードでどんどん組み立てられているだろうと思っていましたが、案に相違してNCルーターは全く使わず、昔ながらの手作業で組んでいるとのことでした…。

今回のSさまのご要望は、なるべく無垢感があって、かつ造作家具なのに置き家具に見えるようなデザインのものが欲しいとのことでした。この写真のキャビネットも普通の箱家具に見えますが…、

箱同士の接合部を見ると、機能的にはほとんど意味がない板材が挟まれています。その表面の単板も厚みが2ミリほどある大手(オオデ)が張られています。通常であれば、小口テープと呼ばれる表面に厚み0.45ミリの薄く削った木を貼った粘着テープを貼るのですが、厚みがその4倍ほどある大手を使ってもらっています。

また箱を組む材料も、通常であればフラッシュ合板と呼ばれる、木製の芯材を梯子状に組み表面に薄い板を接着剤で張り付けた板材(中空合板)という軽い材料を使うのですが、お客さまからのリクエストで無垢感を出すためにベタ芯(中空部分が無い)仕様として、しっかり重たい材料を使って箱を組んでもらっているのです。

足元も、普通の造作家具であれば、台輪と呼ばれる巾木のような板を、キャビネットの箱から少し凹んだ位置に取り付けるのですが、今回は脚で立っているようなデザインとしています。

それぞれの箱の中に入る引き出しですが、これも通常は清掃性と頑丈さを考えてメラミンで作ることが多いのですが、お客さまの好みを考えて、シナ合板で作ってもらっています。

こちらはマッドルーム(いわゆる土間)に設置するL字型のベンチの基材です。

工場長が仮組してくれたようにL字型に繋がるカウンタ材のようになります。

ベンチ板を支える脚も、ベタ芯でしっかりと重量がある脚となっています。足元にコンセントを設けたかったので、このように板の中にCD管を挿入しておいて、足元に家具用のコンセントをつける仕様となっています。

クローゼットの扉も出来上がりつつあります。框(カマチ)仕様の扉となっていますが、本框と鏡板で作るとかなり高額になってしまうので、MDF合板に薄板を框のように張り付ける仕様としています。

最後に、工場長と設計担当の吉岡さん、弊社担当の竹田さんと僕での記念写真を撮らせてもらいました。懐かしい手作業道具と手練れの職人さん、最新のNCルーターが同居した現代製作所の工場で作られるS邸の家具の現場での組立、楽しみにしています!