Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

モロッコ産のゼリージュタイルの貼り方

文京区S邸

今年の3月のブログ記事に書いたモロッコ産のゼリージュタイルが、無事現場に届きました(といっても、当初納期の1か月遅れで、3種類お願いした内の1種類はまだ届いていませんが…)。ゼリージュ(ゼリージェ?)タイルとは、モロッコで手作りされる伝統的な装飾釉薬タイルで、ハンドメイドなので、一枚一枚が微妙に違い、広い面に張った時の美しさは格別ですが、規格品のタイルとは違い、張り方もかなりユニークなのです。

モロッコ産のゼリジェタイル

3月にサンプル(有償)を取り寄せた際には、3割近くのタイルが破損していたので、今回のオーダーでは、そのリスクの予備等を考えて50%増しの面積でお願いしていましたが…、

モロッコ産のゼリジェタイル

プラスティックのプチプチ梱包などは箱の中に全く入っていませんでしたが、丁寧に配送されたのか、隙間なく詰められてたからか、欠けも破損もほとんどない状態で届きました。

モロッコ産のゼリジェタイル

100ミリ角のものは縦に詰められていましたが、50ミリ角のタイルはこちらのように平積みとなっていました。

モロッコ産のゼリジェタイル

平積みになっていたのはこのように背面からネット張りになっていたからでした。

モロッコ産のゼリジェタイル

表に返すとこのようなものです。こちらも欠けや破損はほとんどありませんでした。

モロッコ産のゼリジェタイル

キダ・マーブルの職人さんに見て貰ったところ、ネット張りはパッと見はスピーディーに張れそうに見えるが、四周のラインがあまりにガタガタで揃っていないので、一枚ずつに分解して張らないとうまく貼れないだろうとのことでした。

モロッコ産のゼリジェタイル

早速職人さんが張り始めている様子を見学させて貰いました。予備のタイルもあったので、接着剤を何を使って、どのように貼るかの実験を幾度かしたうえで、いわゆる改良圧着張り工法で張るのが良さそうだとのことになったようです。

モロッコ産のゼリジェタイル

改良圧着張りとは張り付けモルタルまたは接着剤を下地面に塗り、それが硬化しないうちに、タイル裏面にも同じものを塗り付けて張り付ける工法です。

モロッコ産のゼリジェタイル

下地とタイル材の両面に張付けモルタルまたは接着剤を塗り付けるため、ばらつきが少なく、きわめて
安全性の高い工法とされています。

モロッコ産のゼリジェタイル

実験の結果、一番しっかりと圧着できるのが、こちらのアイカエコエコボンドだったそうです。

モロッコ産のゼリジェタイル

小さなタイルの裏面にもしっかりボンドを付着させてから、押し付けるようにして貼っていくのと、隙間なく貼ってゆくのがかなり難しく、かなり大変だとのことでした。

モロッコ産のゼリジェタイル

それでも一通り張り終わったとの報告を現場からもらったので、後日見に行ったのがこちらの様子です。まだ、目地が詰められていませんが、最初にお客さまとお話していたイメージとかなり近く、良い感じですと職人さんに伝えたところ、「本当にこれでよいのか自信がなかったけど、そういってもらえて良かった良かった!」と喜んでくれました。

モロッコ産のゼリジェタイル

僕ら設計の確認を受けてからと待っていてくれた目地詰めを始めた様子です。

モロッコ産のゼリジェタイル

目地が入っていないエリアと、(まだ余分な目地材が拭き取られていませんが)目地が詰まった個所を見比べると、目地が入ることで透明感のようなものが出てくるのが不思議です。

モロッコ産のゼリジェタイル

目地材を詰めて、きれいに拭き取った後はこのようになりました。一番大変だったシャンプー置きのニッチ部分もとてもきれいに仕上がっています。

こちらは今年3月に作ってもらったゼリジェタイルの出隅(出っ張ったコーナー)トメ加工(45度にタイルをカットしてシャープなコーナーに仕上げて貰う方法)のモックアップ模型です。コーナーの部分はタイル表面を傷つけないように裏地を斜め45度にカットするトメ加工の難しさが判りますね…。

モロッコ産のゼリジェタイル

ニッチの底板だけは白い大理石のビアンコカラーラを最初から、ユニットを作ってくれた東京バススタイルにお願いして仕込んでおいてもらいましたが、コーナーのトメ加工が本当にきれいにできていて、感動しました!
因みに、日本のタイルメーカーにもモロッコからの輸入品のゼリージュタイルが幾つか見つかります。弊社では面倒な(笑)輸入品よりも保証が効く、国内代理店があるタイルの方が安心感があるので、各社からサンプルと取り寄せて、お客さまに見て貰いましたが、今回のように目地なしで張るタイプが無いこと、どれもエッジのシャープさがないことから、不採用となりました。ただ、今回のようなタイルの貼り方は、日本の一般的な工務店ではお願いしても色々なリスクがあるので、難しいと思います。今回はお客さまに先回のブログで書いた覚書にサインをして貰ったうえでの施工となります。

造作家具の取り付け工事@新宿区T邸

新宿区T邸

先回のブログでTVキャビネットの取り付けを紹介した新宿T邸ですが、他の造作家具の取り付けについてご紹介します。

施工会社・の下請けとして入ってくれている造作家具屋の大沼木工所さんとは、初めてご一緒したのは約12年前の杉並区S邸のリフォーム工事現場でした。それから幾度もご一緒していますが、工場を見学したことが無かったので、今回のT邸の造作家具の製作途中も見せて貰いがてら工場を訪問してまいりました。

2段重ねになっていますが、箱と扉をメラミンでお願いしている来客用トイレの手洗いカウンター下の箱ががほぼ出来上がっていました。

こちらも同じ家具の他の部分ですね。奥の壁に立てかけてある四角い穴の開いたパネルはゴミを捨てるための穴です。少しタイミングが悪く、他の塗装仕上げの家具は別の塗装会社に送ってしまった後とのことで、残念ながらT邸の他の家具は見ることができませんでした…。

それでも、大沼さん兄弟のお父さんが昭和初期に始めた木工所とのことで、沢山の小口テープが並んでいる棚に驚かされたり、

迷路のように入り組んだ工場の奥には、昔大沼家が住みながら家具を作っていた築50年を軽く超える古い倉庫があったりと、見どころが色々とありました。

新宿T邸の造作家具は、実は3回に分けて現場に入れられています。石膏ボードとの取り合いがシビアでカウンター周りシールを最小限に収めたい、例えばこの来客用トイレの手洗いカウンターは、ボードが張られる直前に入れて貰いました。

こちらは大沼木工所に作ってもらった家具の製作図です。大沼さんの会社は、実はここまでの図面はあまり作らず、大沼さんの鉛筆手書きのスケッチ図面で打ち合わせを進めるのが普通のやり方なのですが、僕らは製図の費用が掛かっても良いので、より細かいディテールまで詰めたいので、作図をお願いしているのです。

新宿T邸‗造作家具組立

ボードやタイル下地のベニヤ板が完全に張られてから入ってきた造作家具の第2弾の洗面カウンターです。

新宿T邸‗造作家具組立

リネン庫と下着等を入れる引き出し収納が入ったトール収納とダブルシンクのカウンターが繋がった大きいキャビネットですが、カウンター材がトール収納にまで差し込まれているようなデザインとするために、この写真のような面倒な組み立て方となっています。

新宿T邸‗造作家具組立

箱を一旦組んだ後、クオーツストーンにダブルシンクの穴があけられているカウンター材をセットします。

新宿T邸‗造作家具組立

来客用トイレの手洗いのように石膏ボードを貼る前にカウンターがセットできると、隙間をほぼゼロで納めることができるのですが、反対にこれだけの大きな家具を先に入れてしまうと、傷がつかないように養生をしながらの石膏ボード張り作業となってしまうことや、先行の家具が多くなると、工場のスケジュール調整が大変になるので、バランスを見て、こちらの家具は石膏ボード張りの後でのセッティングとなりました。

新宿T邸‗造作家具組立

カウンターがきれいに乗った洗面家具です。

新宿T邸‗造作家具組立

反対側から見返すと、カウンターのクオーツストーンが、手前のトール収納の中まで入り込んできているのが良くわかりますね。

新宿T邸‗造作家具組立

引き出しや収納扉がを取り付けると、ほぼ完成となります。

ほぼ最後に入ってくるダイニング横のワインセラー入りキャビネットは、塗装工事が終わった後に取り付けられます。この写真のキャスター付きゴミ箱と掃除機が入れられているニッチに、その家具が入ってきます。

こちらがその家具です。天井高がかなり高い空間なので、上部の空間も収納として使えるように工夫しています。ビニールが掛けられてい黒い塊はワインセラーキャビネットです。
セインセラーが収まっているニッチ空間とその左側のカウンター家具の間の仕切り板を見てください。

通常のキャビネットで作ると、厚みが20ミリほどの塗装仕上げの板が入ってくるのですが、そうなるとかなり野暮ったくなるので、ここは厚み3ミリのステンレスヘアライン仕上げの方立(ホダテ)で納めて貰っています。

斜めから見ると方立の厚みというか、薄さが判りますね。

こちらは玄関横、来客用トイレ横の靴収納(この状態ではスリッパ収納として使われていますね)ですが、こちらも塗装工事が終わった後に造作収納と取り付けます。

靴収納は2つの扉に分かれており、一つは姿見を兼ねた鏡扉に、もう一つは鏡面の輝きは同じですが、顔が映り込まないカラーガラスの扉となっています。これらはの扉は現場で扉の基材に鏡とカラーガラスを接着するのですが、数日間は平らな場所で置いておかないといけないのです。

そして、最後に扉を取り付けると、このようにすっきりと納まるのです。

渋谷区N邸のお引き渡し

渋谷区N邸

新築マンションリノベーションの渋谷区N邸の工事が終わり、お引き渡しとなりました。

まずはビフォーとアフターをほぼ同じアングルで見比べた写真です。後ろの窓と柱型だけが残っており、他は全て変わってしまったことが判りますね。

日程を少しさかのぼりますが、お引き渡しの数日前に、弊社手配の新しい家具が搬入されてきました。大塚家具のセラミック天板のダイニングテーブルです。

梱包を解いて組み上げている最中の様子です。大理石調セラミック天板の模様がとても美しいテーブルです。以前お手伝いした代官山N邸の時は、オーダーメイドでセラミック天板のダイニングテーブルを作ったのですが、細かい反省点が色々とあったので、今回は既製品で大型サイズのセラミック天板のテーブルを担当の前田君が調べて資料を作ってくれました。

大塚家具とAYANOアルフレックスカッテランボーコンセプトがサイズ的に良さそうなテーブルを作っているようでしたので、この比較資料を作ってNさまご夫妻と相談した結果、テーブル高さを調整することが可能で、かつ17柄あるセラミックから天板を選べて、シンプルな作りで、かつ金額も一番安価な大塚家具にお願いすることとなりました。

セラミックの大理石柄がとてもきれいなテーブルで、これならNさまご夫妻にとても喜んでもらえそうです!

そして、もう一つの家具はリビングのタイル壁の前に置く、テレビ用のキャビネットです。こちらはTime & StyleのTVボードです。

AVボードについても、前田君がタイムアンドスタイルだけでなく、アルナイのボードと比較した資料を作ってくれています。機能的にはアルナイの方が良いのではと思っていましたが、キャビネットの下が空いており、軽く見えるタイム&スタイルの家具が選ばれた経緯がありました。

そしてお引き渡し当日です。キッチンカウンターの上に、取り扱い説明用のリモコンや資料、そしてお引き渡し用の保証書などが並んでいます。

まずは一番の大物のクチーナのキッチンの取り扱い説明からスタートしました。

先日の検査の際にも、前田から簡単には説明していますが、IHヒーターやレンジフードの清掃方法、そしてビルトインのミーレのコンベックを使っての料理方法などを熱心に聞いてくださいました。

ブラインドの使い方などのキッチン以外の部分(笑)では、ご主人さまも取説をご一緒に聞いてくださいました。

その他、床フローリングのメンテナンスや、造作家具の使い方などの取説も一通り行いました。

最後に施工をお願いしたリフォームキューの森井さんから保証書をご説明して、お引き渡しの書類に記名捺印して頂き、工事費や設計料のご請求書をお渡しして、無事お引き渡し完了となりました。そこで冒頭の記念写真をリフォーム前とほぼ同じ位置で撮影してもらったという次第です。

サインをして貰った新しいテーブルの上には、ガラス球が入ったイタリア産高級ペンダント照明、パペット・リング(ヴィストージ社)燦然と輝いていました。
Nさまご夫妻、竣工からのお引き渡し、どうもおめでとうございます!