Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

解体工事完了@白金台E邸

白金台E邸

ヴィンテージマンションリフォームの白金台E邸の解体工事が無事終わったとのことで、現場に伺って参りました。

築38年のヴィンテージマンションの解体状況確認

床仕上げを剥がしたところ、予期していなかったところからシンダーコンクリートが表れて、ハツリ範囲が増えましたが、施工会社の頑張りで騒音が発生すると近隣の方々に告知させて頂いたスケジュールの中で斫り(ハツり)も含めて終えることができました。

ヴィンテージマンションの解体_床シンダーコンの斫り作業

こちらが来客トイレの床の嵩上げモルタル(シンダーコンクリート)を斫り機ではつっている様子です。

築38年のヴィンテージマンションの解体状況確認

施工をお願いしているスタイル・イズ・スティル・リビング(以下SISL)さんは、同じマンションのほぼ同じ間取りの部屋の工事をしたことがあるので、とても頼りになります。

ビンテージマンションの解体

廊下からキッチンへの勝手口部分には、当初から天井の下がりがありましたが、天井ボードをめくってみたところ、集中エアコンのダクトが表れて、経路変更も難しいことが判ったので、キッチン側に伝えて、この箇所のデザインを変更することに致しました。

ヴィンテージマンションの解体

かつてキッチンがあった背面壁の解体の様子です。これも違うフロアの同じ間取りでの解体状況の写真を事前にSISLから見せて貰っていたので、想定通りという設備の配管経路を考えてゆくことができそうです。

ヴィンテージマンションの浴室の扉撤去

こちらは家族用浴室の扉サッシを撤去した様子です。床からの立ち上がりは残しているので、実測の上、そこに新しくステンレスの枠と強化ガラスのサッシを入れてゆきます。

ビンテージマンションの床シンダーコンクリ―ト斫り後のモルタル均し

こちらは解体確認の数日後ですが、シンダーコンクリートを斫った部分は左官屋さんによるモルタル均しの施工も終わっていました。

ビンテージマンションの床シンダーコンクリ―ト斫り後のモルタル均し

キッチンの箱が入る部分は遮音は関係しませんが、通路となる部分には遮音下地を入れたうえでフローリングで仕上げてゆくので、この均し作業が必要になるのです。その他、リビングの床スラブ中央部分に多少のたわみがあったので、床フローリングの施工精度のことを考えて、セルフレベラーを打って、フラットに仕上げて貰っております。

 

テーブルのメンテナンスとソファの張り替え相談

南平台N邸

2014年の春にリノベーション工事のお引渡しをした南平台N邸のお客さまから、リーヴァ1920のダイニングテーブルに輪染みが付いてしまったことと、ミノッティのソファの張地が汚れてきたことによる張り替えのことでご相談を頂きました。
2015年の春にお引渡し後1年点検で伺って以来、3年ぶりに弊社の担当スタッフだった竹田さんと一緒にご自宅にお邪魔して参りました。

南平台N邸にメンテナンス訪問

新しいアートや置物などが置かれて、以前にも増してNさまらしさで満たされた空間でしたが、本当にきれいに暮らしてくださっていることとても嬉しく感じました。

コップの補修後に輪染みが付いてしまった無垢材ダイニングテーブル

ご相談の一つが、この写真に写っているテーブルの輪染みのことでした。いつもコースターを敷いて飲み物を置いていたそうですが、一度間違えて氷水のコップを置きっ放しにしてしまったところ、このようなシミができてしまったそうです。3年前の一年点検の際に、このリーヴァのヴェンゲ無垢材のテーブルを入れて貰ったアルフレックス社の当時の担当の中山さんにメンテナンスをして貰った際の道具を使って、ご自身でも手入れをしてみたそうですが、却って目立つようになってしまったとのことでした。

リーヴァ・ダイニングテーブルのメンテナンス@南平台N邸

今回は事前に上記の写真を送って貰って中山さんに相談したところ、1.5万円程度の費用がかかってしまうが、十分補修可能だと思うとの返答を貰っていたので、Nさまにもご同意を頂いた上で中山さんにも同行してもらいました。職人さんを連れてきて作業すると思っていましたが、状況を見た中山さんがおもむろにテーブルを磨きだしたのには、驚きました!なんでも以前はメンテナンス部隊で働いたこともあるとのことで、補修の腕にも自信があるとのことでした。

リーヴァのテーブルの補修用木質由来の天然色素

まず金属繊維を織り込んだ特殊な布で、テーブル面全面を丁寧に削ってゆきます。削る際は木目に沿って削ることが重要だそうです。その後、リーヴァ社が出しているこの着色剤を、シミができて色素が落ちてしまった周辺に薄く塗ってゆきます。この着色剤は、木材由来の染料を抽出した天然由来のものだそうです。

リーヴァ1920のダイニングテーブルのメンテナンス@南平台N邸

そこからはオイルを布に染み込ませて丁寧に塗布してゆきます。Nさまも見てくださっている中で、シミがきれいに消えてゆきました。

リーヴァ・ダイニングテーブルのメンテナンス用オイル

このオイルもやはりリーヴァ社独自のものだそうです。

南平台N邸にメンテナンス訪問

オイルを塗っている間に、ミノッティのソファの張地の候補を準備してゆきました。

補修後に輪染みが消えた無垢材ダイニングテーブル

オイル塗布後に乾拭き(カラブキ)をした後の様子です。当初の輪染みがあった個所もすっかり分からなかくなっており、Nさまもとても満足してくださいました。

染みとその清掃跡が残ってしまったミノッティのソファ

ソファもいつも座っている場所にシミが付いてしまったそうで、ご自身でネットなどを見てシミ取りを試みてくださったそうですが、却って染みの周りが目立ってしまうようになってしまったとのことでした。こちらも事前にこの写真をミノッティの担当の早坂さんに見せましたが、汚れの原因とその後のNさまの対処方法を伝えたところ、ここまで来てしまうと、残念ながら汚れを落とす方法はないとの返事でした。

ミノッティのソファ張地候補

当時と同じファブリックの張地があれば、汚れた部分の張地だけを交換するという考えもあったのですが、当時の布地が無くなってしまっているとのことで、似たような素材感のファブリック帳を事前にミノッティから幾冊か借りて持って伺いました。

ミノッティのソファ張地候補打ち合わせ中

ある程度良さそうな生地の選定はすぐに出来ました。僕らが改めてチェックをしても、他の箇所はそれほど汚れていなかったことから、シェーズロング部分(背もたれに対して座面が長く、脚や体全体も休ませることができる部分)だけを張地を変えてツートンカラーにするか、あるいは思い切って全面的に張り替えるかを、事前にミノッティから取り寄せていた見積りと見比べながらNさまと相談させて頂いた結果、少し今の張地に飽きてきていたこともあって、もう少し暗めのトーンのファブリックで全面張り替えることに決まりました。

南平台N邸の寝室のテレビ高さ

その他、幾つかの細かい補修項目がありました。こちらは主寝室ですが、当初はベッドに寝そべっていても、手前のラウンジチェアに座っていても、どちらでも見やすい高さに壁掛けテレビを設置しましたが、ベッドからしかテレビを見ないとのことで、もう少し高さを上げて欲しいとのご依頼がありました。

大きな浴室のコーナーに設けたドライサウナ

こちらは元からあった大きな浴室の奥に作ったドライサウナコーナーです。こちらも愛用して下さっているとのことでしたが、下部に設けたグリルから錆汁が出始めたとのことでした。

サウナ下の鉄ルーバー状カバーの錆

屈んでグリル部分を見たところ、焼付塗装で作ってたグリルに錆が発生していることが確認できたので、こちらも工事をお願いしたリフォームキューに取り外して塗装し直してもらう見積りを取ることに致しました。

 

 

オニキス(石英)素材探しのプロセスとパネル取り付け

港区R邸

造作家具の取付が山場を迎えている港区R邸ですが、超大物の部材、光を透過する石英のオニキス(オニックス)パネルの取付が行われました。

このオニキスのイメージは、お客さまがとある場所で見かけたというオニキスらしい写真を設計早い段階で見せて下さり、そこからその素材探しが始まりました。

お客さまが見つけたオニキスらしい写真イメージ

この写真をベースに、まずは日本の知っている石材屋に問い合わせをしましたが、全く見つかりませんでした。昨年11月に中国福建省のアモイ郊外まで出かけて、ようやく似たようなものを見つけることができました。

オニキスと背面から光を照らした様子

ただ、この材料はサンプルを貰うこともできず(サンプルを貰うためにスラブ材一枚を買ってもらう必要があると言われてしまいました…)、お客さまに確認する方法が見つかりませんでした。
以前ニューヨークの石材屋さん巡りをした際の写真から、イタリアにほぼ同じものを扱っている会社を見つけたので、イタリア輸入建材に詳しい商社経由で資料を取り寄せて貰いました。色違いのものが幾つかあったので、それらのサンプルを取り寄せて貰いました(サンプル一枚につき約2万円の費用に加え、サンプルの納期が2か月ほど掛りましたが)。

ブラウンオニキスのサンプル

ホワイトオニキスのサンプル

一枚につき取り寄せ費用が約2万円掛った貴重なサンプルです。サンプルも2度に分けてお願いしたのですが、最初のものはひと月ほどでしたが、二番目の便はさらにそこから2か月ほど掛りました。サンプルでこの状況だと納期が心配になりました…。

LEDの面照明

背面から照らす照明のシステムも色々な方法を検討致しました。最初は、LEDの面照明を扱っている会社を見つけて、そこからサンプルを借りて照らしていました。

オニキスの照明実験

因みにこちらは中国で貰ってきたいわゆる本物の一枚もののオニキスのサンプルで、

オニキスの照明実験

こちらはイタリアのクリスタルストーン社の着色オニキスです。共に最初の頃に手に入れることができたサンプルでしたが、残念ながらこれらは検討の対象にもなりませんでした。

LEDとオニキスパネルの取付詳細スケッチ

LED面照明を背面に使う場合のメリットは、LEDのラインが見えないことでした。オニキスの背部のスペースを最小にすることができるのです。

LED面照明用のLED器具

このような光源に特殊な加工をしたアクリルを差し込んで照らすのですが、ある程度以上の光量を確保できないことがネックになって、最終的にはLEDのライン照明を一定の間隔で並べることになりました。

オニキスとラインLED照明の実験

オニキスとラインLED照明の実験

それがこちらのイメージです。こちらのスタイルでもLEDの間隔を変えながら、光量を調光して変えたり、オニキスの背面に乳白色のアクリルを挟んだりしながら色味を確認してゆきました。手作りの理科実験道具のようですね…。

オニキスの背面からLEDを照らす実験

オニキスの実照テスト

最終的にお客さまに了承を頂いたのがこちらの実験でした。黄色味が掛った色が良いとのことで、LEDの色温度も低めにして、ラインは密度を高めにして調光することで光量を調節する方向で進めることで決まりました。

オニキスの背面からLEDを照らす実験セット

その時に実験の様子がこちらです。これで素材とLEDのシステムがようやく決まりました。

ただ、サンプルをお願いしたイタリアの会社から仕入れることになると、大判2面分で800万円近くの価格になってしまうことが見積りで分かり、かつ納期が全く読めないとのことだったので、何とか同質のものをより安価に入れることができないかと担当の前田君が色々なツテを辿って探したところ、なんと3分の1ほどの価格で入れられる会社が見つかり、そこでの施工をお願いすることになりました。

人造オニキスの組み立て

送って貰ったサンプルも良かったので、こちらで進めることになったのですが、送って貰う現物スラブの写真を見せて欲しい旨頼んだところ、それは出来ないとのことでした。「なぜ?」と質問したところ送られてきたの、こちらの写真です。つまり、オーダーが入ってから材料のオニキスの小板を型に嵌めて接着剤を流しいれて固めて作るので、完成するまで写真は送れないとのことだったのです!
このようにして作った原材料の表と裏を磨き込んで、両面から透明ガラスを貼って、その中央部分を機械でスライスして、それぞれ裏面にガラス、表面に人造オニキスが張られた材料ができあがるとのことでした。

現地に届いたオニキスの原版

そしてはるばる日本の現場まで届いたオニキスのスラブ材がこちらです。背面を透明ガラスで固めているとは言え、強度の心配があるので3枚に分割したものを取り付ける手はずになっています。

オニキス壁の色味確認テスト

最初の写真と同じものですが、このスラブをLED照明の前に掲げてみた様子です。やはりこのままだと背面のLEDが見えてしまうので、乳白色のアクリル板を当初の予定通り挟むことになりました。

オニキス壁用のLED照明の確認

LEDの熱を排熱するための給気口と排気口の工夫

背面のLED照明のシステムはこのようになっており、上部と下部にそれぞれ天井裏と床下の空間を繋げる排気口と給気口を設けて、内部の温度が上がらないように工夫をしています。箱自体は光を乱反射するように白いポリ合板で作って貰っています。

職人さんたちが、オニキスを取り付けてくれている様子です。

オニキス壁のディテール

全てを取り付けて、黒く焼き付けたL字型の金属製の押し縁(オシブチ)で外れないように留めて完成です!

オニキスが2枚張られた港区R邸のリビングダイニング

2枚のオニキスを取り付けた様子です。

LED背面照明を点灯したオニキスの様子

背面からのLED照明を点灯した時のオニキスです!設計開始当初にお客さまから頂いたイメージによくぞここまで近づけることができたものだと、我ながら感心してしまいました。ここまで色々な形でご協力くださった素材メーカー、建材輸入商社、LED照明メーカー、そして造作家具のニシザキ工芸、工事のリフォームキューの坂本さんと織田さん、弊社の設計担当の前田君、ありがとうございました。これは必ずお客さまも満足して下さるハズです。