Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

引き込み扉の特注取っ手のバリエーション

元麻布I邸

引き戸を作るときは、なるべく壁の隙間のポケットに入り込む形の引き込み戸で作るようにしていますが、いつも工夫しているのが取っ手の形状と素材です。既製品では、取付け方法や色味のコントロールが難しいので、鉄を加工して貰った特注の取っ手をオーダーで作って貰っています。

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こちらは、造作家具に揃えて、突板に同じ染色をして貰った建具です。ここでの特注取っ手は、いつもよりサイズを大きくして、染色の色に合わせて焼き付け塗装をして貰いました。取っ手のサイズに合わせて、建具にも横目地を入れて貰っています。

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黒染色の突板で作って貰った建具では、ステンレスのバイブレーション仕上げ(方向をわざと乱して研磨した仕上げ)の取っ手も作って貰いました。焼き付け塗装をしないと、溶接跡を隠すことができないので、試作品を作って貰って研究した成果です。

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余談になりますが、これらが以前から試作として作って貰った特注取っ手です。一番左で木材に組み込まれたものが通常の焼き付け特注取っ手で、その左からバイブレーション仕上げ、ヘアライン仕上げ、ステンレス鏡面仕上げのものです。

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造作家具と建具の8割方をお願いしている現代製作所の藤田さんと取っ手試作品を見ながらの打ち合わせ時の様子です。

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右下のスケッチが、試作品を作るうえでこちら側でお願いしたイメージ図です。いつかは、鏡面仕上げの取っ手も、どこかのプロジェクトで使ってみたいと思っています。

アンティコスタッコ壁の作り方@元麻布I邸

元麻布I邸

大規模リノベーションの元麻布I邸では、玄関ホールとダイニング壁の一部をアンティコスタッコで作ることになりました。
「アンティコスタッコ」とは聞き馴れない建築用語かと思いますが、ベネチアンスタッコとも呼ばれるもので、大理石を細かく砕いた粉を漆喰に混ぜて、ヘラを使ってムラ感がありながら光沢感のある美しい壁を作る技術のことです。

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アメリカではよく使われる技法でしたが、日本に戻ってからは使ったことがなかったので、リフォームキューの現場監督の神成さんに工程を事前に確認しておいて、施工される様子を見学に行って参りました。

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写真の左側の壁と、そこからさらに折れ曲がってダイニングの突き当りまでの壁がアンティコスタッコで仕上げる壁となっています。

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日本でも幾つかの会社が施工してくれるようですが、色合いが最も美しく、色の種類も一番多かったAIZUさんにお願いしています。こちらが事前に調合されたアンティコスタッコのベースです。

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僕らが見学に行った前々日からボード壁のパテ処理、そして前日にはラフな下塗りを終えている段階でした。そこから職人さんがヘラで塗ってゆくのですが、その手の動きのスムーズなこと…。
左官といえば、鏝(コテ)にもっと湿気のすくないモッサリした土状のものを持って押し付けてゆくものです。塗装といえば、ローラーや筆にもっと湿気の多い液状のペンキを塗ってゆくものですが、アンティコスタッコは、ちょうどその中間のようなものでした。お好み焼きで使うヘラに、ちょっとベースをのせて、ランダムな円弧を描くように塗りつけて、同時に磨きだしてゆくような作業でし。

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まだ完全に乾いた状態ではありませんでしたが、こんな感じに仕上がってゆくのです。

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当日の作業が全て終わってから数時間経った状態です。まだ乾いていないところもチラホラ見えますし、照明を当てていないと地味な仕上げにしか見えませんが、肉眼ではきれいに仕上がっていました。
外壁と同じザラッとしたタイルが貼られている玄関ホールとリビングに対して、滑らかでしっとりとしたアンティコスタッコの壁が上手く対応してくれそうです。素晴らしい職人技と仕上がりの美しさでワクワクする一日でした!

 

 

一番町A邸リノベーション完成 ビフォー&アフター

一番町A邸

ここまでリノベーション工事が進んできた千代田区一番町A邸の工事が完了いたしました。デザインアドバイスとしてお手伝いしたプロジェクトでしたので、設計検査ではなく施主検査への同行という形で、検査に立ち会って参りました。

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検査には、お客さまのAさまが来てくださり、工事をお願いしたリフォームキューの森井さん(設計&営業)と富田さん(施工管理)が主体で進めてくれました。

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とはいえ、細かいチェックは、事前に僕らデザイン側で一通り見ていたので、それらのポイントを説明する程度で終わり、あとは家具をどのようにレイアウトするか等のお話に始終してしまいました。

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玄関扉を開けてすぐに見える玄関ホールです。光を取り込む工夫をしているので、以前に比べて明るく開放的になったことをAさまが褒めてくださいました。

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浴室と洗面脱衣の位置交換をして作った、少し変形の浴室です。オーダーユニットバスの東京バススタイルにお願いした浴室の解放感にもとても満足して頂くことができました。
この後は、その後家具を入れて頂いた状態で、ほぼ同じアングルの写真を比較したビフォー&アフターをご紹介いたします。

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赤っぽいフローリングと壁面が目立っていたリビングはフローリングをライトグレーのものに交換し、タイルやカラーガラスを使って、凹凸感を強調したデザインとしています。折角の天井高さが活かされていなかったので、照明を仕込んだボックスを折り上げ部分に浮かせることで、天井の高さを強調してみました。

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一番変わったのはこのアングルだと思っています。扉で閉じられていたクローズドキッチンの壁を撤去することで、冷蔵庫を家電置き場だけは隠されていますが、それ以外が解放さたオープンキッチンになっています。

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壁面のガスレンジとシンクがついたキッチンカウンターは、位置をズラしていますが、基本的には同じユニットを再利用しています。ステンレスの天板は磨き直して、扉は全て取り外して塗装し直して、取っ手も少しモダンなものへと変更してみました。以前は冷蔵庫の奥に洗濯機がありましたが、これは洗面に移動しています。

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柱型が目立っていたリビングのコナーですが、その柱型と窓を絡め取るような木製フレームを廻して、カラーガラス張りのテレビ置き場を新たに作ってみました。下部にはAV機器を収納するボックスも埋め込んでいます。柱型そのものにもカラーガラスとミラーを貼って、存在感を弱めています。

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玄関からLDは入ってすぐのエリアです。中途半端なサイズのニッチがありましたが、背面の靴収納を作り直すことで、半透明の飾り棚を作りっています。ダイニングテーブルを置く位置に合わせて照明計画も考え直しています。

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玄関側から見ると、このような違いになっています。何より、閉じるとホールに光が差し込まない構成でしたが、扉を天井いっぱいのスチールサッシとガラスで作ることで、開放感が演出されています。扉が隠されてしまっているので判りにくいのですが、スチールサッシの左横にこじんまりとはしていますが、コート掛けも作っています。

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キッチン部分に次いで大きく変わったのが、この浴室と洗面でしょう。浴室と洗面脱衣の位置を取り換えることで、浴室は少し小型になりましたが、かつてはシングルボウルだった洗面にダブルボウル+洗濯機置き場を作ることができました。上の写真は、ほぼ同じアングルで撮影された写真であることが判るでしょうか?

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こちらも同じアングルからの写真で、廊下からの扉の位置は全く変えていません。マンションで、洗面と浴室、両方に窓があって外光が入ってくるのも珍しい構成でしたので、それは継続して活かしています。

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最後はトイレ空間です。といっても、こちらはそれほど変わっていませんね。手洗いボウルが小型で、手首までは洗えないものだったので、カウンター幅を10センチ増やして、大き目のボウルに変えています。また、キッチン背面の壁は、汚れも取りやすく、インテリア性も高いキッチンパネルを貼っています。