Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

元麻布の200平米越えスケルトンリノベーションプロジェクトがスタート

元麻布I邸

先日、お付き合いのある不動産会社からご紹介頂いた、元麻布の200平米越えマンションのスケルトンリノベーションプロジェクト、お客さまと現地を拝見しながらご提案した案が気にいったとのことで、ご一緒に進めさせて頂くことになりました。

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築年数は10年ちょっとで、以前から前を通るたびに「素敵なマンションだな」、「いつかこのマンションのリノベーションをお手伝いしたいな」と思っていた憧れの建物だったので、声を掛けて頂けたことだけでもとても嬉しかったです。

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ご依頼を受ける上でカギになったのは、このキッチンだと思っています。というのは、当初不動産会社の担当者から伺ったリノベーションの希望条件では、キッチンはまだ比較的綺麗で十分使える状態にあるとのことを聞いておりました。

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確かに、現調時にもオーブンやガスレンジ、食洗器やレンジフードなどの設備類は十分使える状態で、そのままでも良いかなと思っていました。しかし、ちょうど初回面談でお目に掛る直前に、奥さまのご妊娠が判ったとのことで、こちらも考え方を切り替えました。初めてのお子さまを育ててゆくうえで、完全にクローズドなキッチンでは、お手伝いさんなしでは相当難しいことをお伝えして、ダイニング側に開閉式の扉を設ける考えで、キッチンも全面的にリノベーションするご提案をさせて頂きました。

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資料として手元にあったLDの写真をコピーしたものに、その場で赤ペンでスケッチした開閉式キッチンのアイデアです。来客時には2枚の大きな扉を閉めればキッチンを隠すことができますが、普段は子育てをするであろうリビングダイニングをオープンなカウンターから様子見しながら調理ができる台所の案をご提案いたしました。

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こちらが後日、そのアイデアを纏めたリノベーションプラン案です。開閉式のA案、オープンカウンターのB案、それらにまた水回りや廊下、沢山の本をお持ちなので書庫を作るアイデアを加えて、F案まで6つのプランを作ってお話をさせて頂きました。

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明るく開放的なリビングには、テレビを置くカウンターを設け、その手前に大きなL字型のソファーをレイアウトし、ダイニングとの間には、奥さまが弾かれるグランドピアノをレイアウトする予定です。

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水回りについては、奥さまのご出産までのスケジュールとご希望のお引越し日程を考えると、在来工法の浴室を作りなおすと一か月近く余計に工期が掛かりそうだったので、二つある浴室はそのままで、洗面とトイレまでは作りなおす計画としています。この写真は既存の洗面所で、十分にきれいな状態に見えますが、小さな赤ちゃんを育ててゆくには収納が不十分だと思われるので、全面的に作りなおす提案をさせて頂きました。

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こちらは仕上げ材のイメージを持ってもらうためにお持ちした各種サンプルです。奥さまがお好きなインテリアのイメージ写真もお見せくださったので、ここからお好みのエレガントでクラシカルな要素が混ざったモダンなテイストへと調整してゆきたいと考えております。

スケジュール的に、とてもタイトな状態ですので、これからは週に2度ほどのハイペースで打合せをしてゆくことになりそうです。Iさまご夫妻、急ぎながらも焦ることなく、インテリア作りを楽しんで頂けるように最善の努力をしてゆきますので、どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

造り付け家具の取り付け方について@原宿K邸

原宿K邸

オーナーマンションの原宿K邸のリノベーション工事で、僕らが設計が一番楽しみにしている造り付け家具(造作家具:ぞうさくかぐ)の取り付けが始まりました。

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一般に造作家具の取り付けというと、箱状の家具が現場に運ばれて、壁と壁の間にすっぽり嵌るように埋め込んでゆくようなイメージがあるのではないでしょうか?実際には、色々な作り方(組み立て方)があるのです。
例えば、こちらの造作家具は、先回のブログでも紹介されている通り、ウォールナット突板で作られたフレーム部分は、壁のボードとの取り合いがあるので、2週間ほど前から取り付けが始まっていました。窓横に見える灰色の箱状のものとその下に伸びているベンチ板が、本日現場に運び込まれて取り付けられたものです。

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同じフレームの反対側には、このようなカウンター(甲板:こういた)と吊り戸収納がとりついています。吊り戸の下に金物が顔を出していますが、これはワイングラスを引っ掛けるフックになっています。カウンターの下には、ビルトイン型のワインセラーがすっぽり嵌ることになっています。

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こちらは、玄関とリビングに渡って直角に折れながら連続している造作家具です。スタッフの竹田さんが立っている場所が玄関で、家具屋さんが作業しているエリアはリビングになっています。全部の5個の違うサイズの箱が現場で組まれ、その隙間にスチール(鉄)で作られたフレームがはまり、全体で一つの造形に見えるように組み上がる予定です。

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こちらが玄関側から見た、奥行の浅い靴収納(左側)とコート掛けと工具収納(右側二つ分)になっています。靴収納の上部には、分電盤と弱電盤が入るので、電気配線を指し込みながら家具を付けてゆく必要があります。

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こちらは洗面所の家具です。シンクカウンターが入る下台、ミラ張りの扉がついたメディスンキャビネット、そして手前にある扉付き収納がリネン用のトール収納です。こちらは電気配線だけでなく、給水給湯と排水が絡み、天井の高さのズレにも合わせながら組み合わせてゆきます。

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トイレは壁が斜めになっているの、その点が難しいところです。壁から壁の間にぴったりとくっつけたいので、塗装仕上げでボード2重貼りにする壁下地を、この部分だけは一枚貼りで置いておき、その間にカウンター家具を組んで、仕上げにボードを被せてゆくことで、壁ぴったりに組み上げる仕組みになっています。

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こちらは寝室の窓横に嵌められた本棚です。右側奥に丸い管が竪に通っているのが見えますが、建物建設当時はこの場所はベランダで、上階のベランダからの排水竪管が通っていたのです。オーナーマンションなので、以前にリフォームをした際にベランダも室内に取り込んでいましたが、この雨水管が居室としては気持ちが悪いとのことで、造作家具の一部を取り外し式の点検口として、隠すことになりました。

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玄関の靴収納の扉のディテールです。ちょうど凹ん箇所に、スチールで特注で作ってもらった金物をはめ込むとそれが取っ手になる仕組みです。

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慎重に接着剤とビスを使って、扉材に特注取手金物を職人さんが固定してくれています。

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造作家具が徐々に組み上がってゆく横では、在来工法で作る浴室の作業が進んでいました。防水下地ができて、水溜試験も終わった壁に、下地材のラスカットが張られました。天井には塗装して仕上げにするケイカル板が張られています。

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その後、タイルを張る下地になるモルタルが左官工事で塗られました。乾かしている間に、浴槽や水栓金物が運び込まれています。

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梱包を解かれた浴槽が設置されています。今回はドイツ製カルデバイの鋼製ホーロー浴槽を採用していますが、ピンク色のブニュブニュしたものは、発泡性の断熱材を事前に吹いておいて貰ったものです。これでお湯を貯めておいた時に、温度の低下を避けることができます。左側に緑色の蓋がされた黒い円筒形のものは、床スラブを貫通して下階に繋がっているバス兼トラップ(バスケントラップ)です。洗い場からの排水と浴槽からの排水を一つに纏めて排水する仕組みになっています。

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実は、このバス兼トラップと浴槽の位置関係、そして洗い場のタイル割りなどは、非常に緊密に関係しているので、当日は三人掛かりで、半日以上掛けて設置をしてくれました。

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バス兼トラップの上に載せたステンレス製の四角い箱は、目地スルータイプの排水ユニットを載せる箱で、それをモルタルでがっちりと固定している様子です。この箱の位置のタイル割りから逆算された位置になっています。
これで、来週からは造作家具の残りの組み立てとキッチン組み立てになってゆきます。

 

 

「ばか棒」と「さや管ヘッダー」について

成城Z邸

成城のZ邸では、遮音二重床の床下地が作られていました。

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先回の記事では、際根太のことを説明いたしましたが、メーカー側がうたっている遮音性能を確保するためには、すべてをマニュアル通りに作ってゆく必要があります。基本は防振支持脚の上に、パーティクルボード(通称パーチ)を敷いて、メーカー指定のボードを敷いて、必要に応じて床暖パネルを載せて、仕上げのフローリングを張る構成となっています。大工の内原さんが張っているのは、パーチ同志を継ぎ目を塞ぐビニールテープだそうで、これもマニュアルに指示されているものだそうです。

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そして下のパーチと互い違いになるように石膏系不燃制振材(ケイ酸カルシウム板のようなもの?)を敷いている様子です。接着剤が継ぎ目に入らないこともマニュアルに指示されているのでしょうか…。今回使用したのは万協フロアーの製品ですが、ご興味がある方はインターネット上に公開されている簡易マニュアルをご覧ください。

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床を作っている大工の内原さんが大切そうに持っている道具を見せて貰いました。パッと見ても良く分からないでしょうが、実は床レベルを決める上ではとても重要な定規になる道具だそうです。横に書いてある「すてない」、「たいせつ」というメモがその重要さを物語っていますね。

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事前にレーザーで墨出しをしてある床仕上げレベルから、どの厚みのどんなボードを張るかを実寸で示したもので、大工用語では「ばか棒」と呼ばれているものです。計算ができない人(つまりバカ?)でも間違わないように、シンプルに寸法を記した物差しなので、そのような名前がついているそうです。

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こちらの現場では、大工は内原さん一人で工事を進めて貰っていますが、広いお宅なので、部屋ごとに進度が違っているので、人つの現場で色々な作り方を勉強することができます。

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まだ床が張られていないキッチンでは、給水と給湯用のヘッダーが置かれていました。色のついた管はさや管と呼ばれるもので、二つを合わせてさや管ヘッダー方式と呼ばれる給水システムです。従来はメインの給水管から枝分かれ状に分かれていましたが(スター配管ともいいます)、ヘッダーという部材に水を集めて、そこから分岐させることで、各部屋で水を同時使用した際、均等に水が供給することができるというシステムです。さや管は、CD管とも呼ばれる部材で、その中に架橋ポリ管を入れているサヤになっています。後日、さや管の中の架橋ポリ管を交換することで、メンテナンスや後々のリフォームが楽になるということで一世を風靡いたしましたが、実際には後日のリフォームが面倒なことと、給水箇所が10カ所程度の住宅では水圧の軽減もほとんどないこと、また費用が余計に掛ってしまうことなどから、ここ数年一気に廃れてしまった工法です。

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今回は折角部材が揃っているので、さや管もヘッダーも再利用することになりました。

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奥の寝室側の状況です。こちらは床下地も完了しており、壁のボードも張られいている状況です。床下地が出来上がると、廊下のフローリングヘリンボーン張りに入るとのことで、非常に楽しみです。