Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

レザー張り建具のディテール研究&工場訪問 

元麻布I邸

元麻布I邸の玄関ホールからリビングへの建具を人工レザー張りにしたいと考えています。これまでも、幾度か家具の天板や建具などに人工レザーを張って貰った経験がありますが、スティッチを入れた際の糸の細さや、その間隔といったディテールのことや、どのようなことができて、何ができないのかを研究したいと以前より思っていました。

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今回の建具製作をお願いしている現代製作所の藤田さんから、レザー加工を依頼している工場を紹介して貰い、スタッフの前田君と一日掛けて栃木県の工場まで打ち合わせ兼見学に行って参りました。
先方では、東京からわざわざ設計者が来るというので、何を知りたがっているかすら判っていないようでしたが、欧州のハイブランドで使われているレザー張りの建具や、レザーを使った取っ手ディテールなどの写真を見て貰いながら話をさせて貰ったところ、食いつくように写真を見ながら、これは出来るが、あれはどうやって作っているか判らない等、工場の人たちが集まって話をしてくれました。

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事前に、現代製作所経由で制作を依頼していたサンプルを見せて貰いながら、スティッチの線が曲がってしまう理由やコーナーでスティッチの間隔を合わせることが如何に難しいかの説明も聞かせて貰いました。

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スティッチの線が曲がってしまう理由は、下地として使っているベニヤ板の繊維にあるとのことでした。先ほどのサンプルの背面を見たところですが、ベニヤの繊維の方向に沿って縫っていると、微妙な力具合で繊維に負けてしまうそうです。
それでは、下地をベニヤ板代わりに繊維質がないMDFやアクリル板で作ったらどうかと聞いてみたところ、試してみる価値はありそうだと言ってくれましたが、硬い下地だと針が折れてしまう可能性もあるとのことでした。

実際に作業をしているところを見せて貰いたいとお願いして、2階の作業所に連れて行って貰いました。

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ミシンは家庭用ミシンを大きくしたようなものでした。貼る下地に合わせて作った大きなT定規(T字型のガイド)のようなものを使って、手で支えながらゆっくり5センチずつを縫ってゆく地味な作業でした。

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こちらが縫製用のミシンです。かなり使い込まれた年季物でした。

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厚手の下地だと、縫ってゆくうちに針が熱を帯びてしまい、そのことが原因で糸が切れてしまうことがあるそうで、職人さんが独自に工夫して、ミシンの上にオイルポットを取り付けて、糸をオイルに潜らせて熱を帯びることを防いでいるそうです。

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濃い木のガイドも職人さんが作ったもので、それに沿って大きなレザーパネルを動かしてゆきます。表面が濡れているように見えているのがオイルの跡で、縫製後にきれいに拭えるそうです。

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こちらは二つの針と裏地テープで、二枚のレザーを継ぎ張りできるミシンです。

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一枚のレザーにこちらのミシンを使うと、8ミリ間隔でスティッチを入れることができます。

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こちらは職人さんが今まで作業しながら作った型紙です。企業秘密だから、写真は撮らないでと最初はいわれましたが、この写真を見せても、誰も何だかすら判りませんよと言ったところ、笑って許してくれました。

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工場には、沢山の人工レザーや厚手の布のロール生地がストックされていました。

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レザーを縫い合わせる糸もあらゆる色のストックが置かれていました。

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こちらが工場の1階の様子です。昔は技術を活かして、色々な細工をした家具やパネルなどを制作していたそうですが、残念ながら今のレザー家具の主流はファミレスのベンチ型シートがほとんどで、作り甲斐のあるものが少なくなってきたと嘆いていました。それだけに、欧州のレザー家具や金物などの細工は刺激になったようで、僕らが依頼したレザー建具も良いものに仕上げたいと力強く言ってくれました。

 

 

 

四方向通り抜けキッチンの横浜伊勢山Y邸プロジェクトがスタート

横浜伊勢山Y邸

新しいプロジェクトが横浜市西区伊勢山で始まります。築年数5年未満の築浅マンションで、広さは165平米のお部屋です。

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こちらは、始めにご相談があった際に、プレゼンテーションで使ったリフォーム後のイメージスケッチ提案図です。その後の打ち合せで、少しずつディテールや色味が変ってきましたが、概ねこの方向でデザインが纏まってきています。

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こちらが現状写真です。大きなLDKは、広さは十分にありますが、大きな2枚の引き戸でリビングとダイニングが仕切れるようになっていることで、却って狭く感じてしまうことや、

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こちらの写真に写っているオープンスタイルのキッチンの動線が不便で、買い物をして帰ってきた際には、このLDを通るか、大きくプライベート廊下を回り込まないとキッチンに辿り付けない構成をなっていました。

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こちらで考えたリフォーム案では、LDは仕切りをなくして一体の大きな空間として、動線上の問題があったキッチンは、図のように4方向から抜けられるデザインで考えています。当然、既製品キッチンは使えないので、オーダーキッチンで組み上げる予定です。

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お客さまは、以前からこの規模のマンションを中古でご購入して、僕らにリノベーションデザインを一括して任せてくださり、グレードアップ工事完成後に再販売なさるというビジネスを展開しているYさまで、不動産購入や販売のお手伝いもしてくださっている不動産会社のNさんもご一緒に打ち合わせをさせて頂いております。

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床に並べられた素材類が、今回のプロジェクトで使いたいと考えて現地に持ち込んで仕上げ材サンプルです。

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使いにくかったキッチンカウンターで、プランをどのようにリフォームすればよくなりそうかを、Yさまにご説明している様子です。

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以前、こちらのマンションの近くでリノベーションのお手伝いをした横浜市O邸のインテリアイメージがお好きだとのことでしたので、そちらの竣工写真を見て頂きながら打ち合わせをさせて頂きました。

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不整形な玄関ホールは、天井の高さも変えて、玄関&玄関ホールとして作り直す予定です。

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こちらの来客用トイレも、面積に余裕がある割に、手洗いカウンターが小さく、コンパクトに纏まり過ぎているので、長いカウンターに大き目の手洗いボウルを設置できるレイアウトにリノベーションする予定です。

 

複雑に絡み合った造作家具と建具と壁

一番町A邸

一番町A邸で、担当スタッフの前田君が一番デザイン検討で頑張ってくれたリビングダイニングの造作家具の設置が終盤を迎えています。

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リビング正面に見える壁は、左からクロスパネル張りの壁、スチール製の特注建具、柱型をカバーする羽目板、背面の玄関ホールとを区切る半透明な飾り棚、そして右端へと延びてゆくキッチンカウンターという構成になっています。

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それらの中を、何本かの目地が段違いになりながら通り抜けるようなデザインになっているのです。
キッチンカウンターの下端の線が、飾り棚の甲板と揃って、その下端の線が、柱をカバーする羽目板を通り抜けて、スチールサッシやクロスパネル張りと揃ってゆくというデザインです。

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反対側の玄関ホールから見ると、単純に親子のスチール扉としか見えませんが…dsc_3567_pt

反対側に回り込むと、スチールサッシの枠センターラインとクロスパネル張りのラインが揃ってきます。

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凹んだニッチの個所のディテールは、以前のブログで紹介したもので、そこにLDK関係の照明スイッチが並んでいます。

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そこから細かく段差を付けながら、こちら手前のキッチンカウンターまで目地が繋がっているので、施工する側も相当に大変なようです。

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途中の飾り棚の個所は、四周枠を付けないで、棚板だけが浮いているような意匠としているので、取付け方法も工夫してくれています。

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縦桟、横桟共に、このような溝を事前に突いておいて、左側に固定されているような雇い実(ヤトイザネ)のような定規に差し込んで固定するという方法です。

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右奥から縦桟を差し込んでいる様子です。木工用ボンドと見えない個所へ打ち込む隠し釘で固定してゆきます。

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こちらは、20センチほど飛び出ているキッチンカウンター甲板の延長部分の支えを、下から見上げた写真です。その下端のラインが、左側の違い棚の甲板の上端と合っているのが判るでしょうか…。

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他にも、厚み6ミリほどのキッチンパネルを突き付けのように出隅で納めるために、ステンレスの見切りを入れて貰ったり、

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鏡張りの壁のラインと、下がり天井のラインを揃えて、その出隅で2色のクロスを貼り分けて貰ったりと細かく施工して貰っています。

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キッチンカウンターの右奥の方では、窓と絡んだテレビ置き場を作って貰っています。

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まだ組立て途中で判りにくい構成ですが、PSを囲むように木製フレームが回り込んで、その一部が20センチほど出っ張って、そこがテレビ置き場になる算段です。PSの隙間を使ったAV機器収納がその下部に差し込まれる予定です。

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トイレには、天然大理石を使った手洗いカウンターが設置されました。トイレ背面壁は、キッチンパネルをステンレス目地で張り分けています。

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水避けで甲板を立ち上げた上には、木製枠の鏡が入ります。

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ダブルボウルのセンメンカウンターと、背部の洗濯機収納も設置されていました。

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マンションで、窓付きの洗面脱衣室は珍しいと思いますが、ちょうど窓部分をセンターに、左右に手洗いボウルを振り分けています。

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窓の左右に振り分けたメディスンキャビネットの上部には、トランス付きのLED間接照明を入れています。

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リビングの大きな折り上げ天井には、ブリッジ状の照明ボックスも取りつきました。

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一番奥の主寝室では、床カーペット張りのためのグリッパー取付けも始まっていました。
ここからは造作家具だけでなく、壁や床仕上げ材も一気に張り上げて、施主検査そして竣工へと進んでゆきます。