Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

180平米マンションのリノベーション下地工事@麻布台M邸

麻布台M邸

180平米の広さのマンションのリノベーション工事・麻布台M邸ですが、解体後の下地造作工事が進んでいます。

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天井は照明位置はずらしてゆきますが、ほぼそのままで、壁は全てやり直しでボードを剥がして、LGS下地の状態になっています。床は既存が床暖房の上に、ベニヤ板を張ってその上にフローリングとなっていたので、床暖房パネルを痛めずに、フローリングだけを剥がすことができました。

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高級マンションならではの工事騒音問題が関連して、大工さん一人&電気屋さん一人の少人数体制での工事が進んでいます。

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キッチンと玄関の戸境壁は、収納一か所を除いて撤去して、また新しい壁を立て直しています。建設当初の工事では壁下地はLGS(軽量鉄骨)を使っていましたが、今回のリノベーション工事では、施工の青からの相談で木製下地に変えて工事して貰っています。大きく全面的にやり直す工事ではLGSが早い上に、しっかりしているのですが、細かく部分的に触ってゆく工事では、大工さんだけで工事ができることなどから木製下地の方が却って早く作ることができるとのことでした。

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ちょうどこの木製下地を組んでいる位置の天井を見上げたところです。先回のブログでも話があった通り、キッチンの天井裏にはLD分の隠蔽型エアコンの本体とキッチンの天井カセット式エアコン、さらにはそれらのダクトや配管類が詰まっており、点検口も含めて位置を大きく動かすことができなので、ギリギリの線を狙って設備を移設して貰っています。

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解体時から進めて貰っている、床下のトイレや手洗いの排水管なども、新しく指示した箇所に手直しされていました。

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床下地の位置で一度墨出しをして確認していましたが、新しく床フローリング下地として張ったケイカル板の上にも、家具や壁の位置が墨出しされていたので、それらも設計側で確認いたしました。

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リビングには玄関ホールと、プライベート廊下からと2方向からアプローチできるのですが、こちらは廊下からアプローチする通路に作られるクローゼット収納の一部です。
以下からのブログは、その1週間後の現場の様子です。

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かつて部屋があった部分を縮小し(その分リビングダイニングを広げています)、書斎的に使えるDENを作る予定です。ちょうどこの写真の正面に見えている壁下地がその間仕切り壁となります。

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この壁には、表面に大理石が貼られて、中央には壁掛けテレビが設置されます。壁の左右には壁内部に引き込める引き戸が2枚付く予定となっています。

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斜めからこの壁を見ると、木製下地が二重に作られており、引き戸が入るポケットがあることが判るでしょうか?壁中央にオレンジ色の配管が通っているのが、テレビ線やちょっとずれた位置に設置するアンプなどと接続するためのCD管(後で線を通すことができるカラの配管)です。

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壁に扉を引き込むポケット部分の下地詳細です。

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先ほどのキッチン天井設備の位置も、こちらが希望した位置に変更して貰っています。特に造作家具の上部に来てしまう点検口については、そこからエアコン本体のフィルターの清掃をする必要もあるので、設備屋さんにも作業ができる寸法かを確認して貰った上で、位置を最終決定いたしました。

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プライベート廊下部分は、壁際の収納を撤去して、ギャラリー的に使えるように収納と飾り棚を作る予定です。写真奥に向かって左側に凹んだニッチがその部分になります。

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廊下一番奥の主寝室の扉の位置も移設しているので、既存扉枠を上手く撤去したものを、廊下の曲がり角ちょうどの所に再度設置して貰っています。

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この日は、造作家具の打ち合せをしたいとのことで、施工をお願いしているの田原さんと八木さん、そして造作家具屋の大沼さん、家具に含まれる間接照明やスイッチなどのことで電気屋さんにも同席して貰って打ち合わせを致しました。

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こちらが施工側で描いてくれた造作家具の施工図です。キッチンカウンターの厚みや、カウンター甲板の納まり、間接照明の位置などを細かく打合せさせて貰いました。

 

造作家具週間@元麻布I邸

元麻布I邸

元麻布I邸の現場は、この一週間のほぼすべてが造作家具の搬入組み立てに費やされました。

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220平米の空間に、これ以上は置けないほど本棚を設置して欲しいとのご依頼に加え、リビングのAVボードやキッチン横のパントリー、洗面やトイレのカウンターに加え、造作家具と揃えたデザインの扉(建具)等、様々な種類の箱やパネル、カウンター板が現場に運び込まれました。

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リビングの窓際で組立て中なのは、大きな造作AVボードです。PS(パイプスペース)と柱型の出っ張りに合わせたサイズのローカウンターで、仕上がりはすっきり見える予定ですが、実は内部にはテレビ・ステレオ関連の配線が複雑に絡み合い、排熱するシステムまでが組み込まれているので、造作家具の箱の設置段階から大仕事になっています。

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黒いネロ・マルキーナという大理石の甲板を色を合わせるために、オーク突板を木目を半分見えるように(セミ・オープンポア)に黒く仕上げて貰った材料を組み立ててゆきます。

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一通り組み立てられたAVボードです。フレーム状に天井にも枠が回っており、甲板と壁に柄を揃えた大理石を貼ってゆきますが、窓廻りは黒く塗装した鉄板を張って貰うなど、まだ細かい調整が残っています。

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組み上がったAVボードをダイニング側から見た様子です。まだ手前で職人さんたちが削り合わせているフィラー(壁と造作家具の隙間を埋める材料)や棚板が組み込まれてゆきます。

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廊下には、大量の本棚が組み込まれてゆきます。

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隣り合った本棚の側板をピッタリと寄せることで、縦横の桟のサイズがあってくるデザインなので、このようにクランプを使って、ガッチリと隣同士を連結してゆくことになります。

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扉で開口部がある上部にも本棚が続いているんで、その部分も竪桟を二重に重ねないデザインで作って貰っています。見た目はどうということない納まりに見えますが、実は相当面倒な作り方なのです…。

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ほぼ出来上がったプライベート廊下の本棚群です!

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それ以外にも、パブリック部分に並ぶ黒い本棚や、

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ご主人の書斎の壁にも両側に本棚が並んでゆく予定なのです。

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こちらは、キッチン横に組み込まれているコーヒー&ワインコーナーの棚です。正面右奥のカウンター下にビルトインのワインセラー機器が組み込まれる予定です。

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収納量は大量に確保したいのですが、全ての壁面が収納で埋まってしまうと、圧迫感が出てしまうので、この吊戸棚のように、一部をオープンにしたり、色味やサイズを細かくコントロールして、軽やかに見えるように工夫しています。

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以前にある程度組み上がっていた洗面所のカウンターにも、白いビアンコブロイエという大理石の甲板と立ち上がり壁が設置され、メディスン・キャビネットも取り付けられています。

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来客用トイレの手洗いカウンターにも、AVボードで使う黒大理石の残り板を有効活用したカウンターが付きました(今回の大理石は、スラブという大判の状態で買っています。大きく材料取りした後に残った部分が無駄にならないように、他で転用できそうな部分はなるべく使い切るようにしているのです)。

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こちらは主寝室の入り口に作っている小さな引出収納ですが、こちらの天板には洗面の白大理石の残りを使うことにしています。

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その他にも、キッチン壁のイタリア・フィアンドレ社(日本側の輸入代理店アークテック社)の大理石柄大判タイルの貼り込みも始まっています。

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重量のある大理石の貼り込みと比較すると、大判ながら6ミリと薄いタイルなので、二人の職人さんで軽々と持ち上がっていて、安心感があります。
ここ数日は、大好きな造作家具組立て週間でしたので、ほぼ毎日、担当スタッフの前田君と現場に通いました。お陰さまで、大きな問題なく据付けが進み、あとは竣工まで秒読みになってきました。

 

 

引き込み扉の特注取っ手のバリエーション

元麻布I邸

引き戸を作るときは、なるべく壁の隙間のポケットに入り込む形の引き込み戸で作るようにしていますが、いつも工夫しているのが取っ手の形状と素材です。既製品では、取付け方法や色味のコントロールが難しいので、鉄を加工して貰った特注の取っ手をオーダーで作って貰っています。

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こちらは、造作家具に揃えて、突板に同じ染色をして貰った建具です。ここでの特注取っ手は、いつもよりサイズを大きくして、染色の色に合わせて焼き付け塗装をして貰いました。取っ手のサイズに合わせて、建具にも横目地を入れて貰っています。

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黒染色の突板で作って貰った建具では、ステンレスのバイブレーション仕上げ(方向をわざと乱して研磨した仕上げ)の取っ手も作って貰いました。焼き付け塗装をしないと、溶接跡を隠すことができないので、試作品を作って貰って研究した成果です。

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余談になりますが、これらが以前から試作として作って貰った特注取っ手です。一番左で木材に組み込まれたものが通常の焼き付け特注取っ手で、その左からバイブレーション仕上げ、ヘアライン仕上げ、ステンレス鏡面仕上げのものです。

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造作家具と建具の8割方をお願いしている現代製作所の藤田さんと取っ手試作品を見ながらの打ち合わせ時の様子です。

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右下のスケッチが、試作品を作るうえでこちら側でお願いしたイメージ図です。いつかは、鏡面仕上げの取っ手も、どこかのプロジェクトで使ってみたいと思っています。