Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

解体着工&現場でのディテールスケッチ

一番町A邸

先日の部分解体調査で、浴室と洗面の位置交換リフォームが可能なことが判明した千代田区一番町A邸で、お施主さまから工事着工のGOサインが出て、解体に取り掛かりました。

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一般にスケルトン(マンションの基本骨格であるコンクリート躯体)状態まで解体したリフォームをスケルトンリフォームや(全面)リノベーションと呼んで、より高度な技術ともてはやされる傾向がありますが、実際には使える部分を残しながら不要な部分だけを解体した工事の方が技術的には難しいのものなのです。

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こちらの建物は築年数が12年と比較的築浅なので、使える部分はなるべく再利用することで、コストダウンも図っております。因みに、この規模のマンションであれば、壁下地・天井下地ともにLGS(軽量鉄骨)で作られていることが多いのですが、こちらではなぜか木製下地で作られていました。

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壁で仕切られていたクローズド型のキッチンがあった部分は、間仕切壁を撤去して、キッチン本体も取り外してもらいました。

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こちらが取り外されたキッチンユニットです。ガスコンロは汚れも酷かったので、交換予定ですが、その他のシンクや食洗器、収納ユニットはまだ十分に使える状態だと判断していたので、きれいに取り外して、養生保管してもらい、クリーニングをしたうえで、再度取り付けなおしてもらう予定としています。

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こちらが水回りを配置転換することになったかつての浴室と洗面の場所です。こちらについては、設備配管のやり直しが必要なので、ほぼスケルトン状態まで解体して貰いました。

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事前の部分解体調査と管理組合が保管していた竣工時の図面から推察していた通り、スラブが一部さげられており、排水管の位置も問題がないことが判り、当初の予定通りに洗面床仕上げとほぼフラットな浴室を設置することができそうです。因みに、コンクリーと床に記された墨(壁の中心を示す線や描き込み)は、竣工時のものです。

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床に座って、かつての天井裏を見上げた様子です。こちらは当初からスペースの余裕があったので、問題がなさそうなことが判っていましたが、ダクトの内部の汚れもあまりなく、そのままダクトルートを変更すれば、再利用できることも判りました。

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かつての洗面の場所に浴室を設ける上で、実はもう一つ懸案になっていたことがありました。サッシの内側が木製で作られており(外側はアルミ製です)、そのまま浴室内にそのサッシが面するようにすると、湿気でサッシが傷んでしまうことが心配されていました。オーダーで作るユニットバスを東京バススタイルにお願いしていたので、現地を見て貰ったうえで、浴室用のインナーサッシを考えたスケッチディテール図面がこちらです。

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リフォームキューの現場監督の富田さんと東京バスの眞柄さんがインナーサッシの取り付け方を現地で打合せしている様子です。元々のサッシが、外開きにも内倒しにも対応するドレーキップというタイプの変則的なサッシ(自然換気には内倒しで、窓清掃には外開きで対応するタイプ)なので、どちらでも使えるように、ワンサイズ大きめのインナーサッシを取り付けることになりました。

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こちらはリビングの既存床下地の状態です。根太式の置床で、下部には断熱材が敷かれているタイプでした。

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現場監督の富田さんが、職人さんたち全員が床の組み上げ方を共有できるように壁に描いてくれたスケッチです。フローリング仕上げのリビングダイニングと、タイル仕上げのキッチン・洗面・廊下の床仕上がりをフラットにするためには、床下地の厚みを3ミリ変えておかないといけないことがこれを見て分かるのです。

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他にも、僕等設計側が伝えた情報は、拡大コピーした図面と共に、特に重要だと考えられる情報は、その場所ごとに赤いマーカーで壁にメモ書きされていました。因みに、こちらの寸法はキッチンの冷蔵庫やトール収納の幅を示した情報です。
設計側がいくら図面で指示しても、うまく職人さんたちに伝わらないこともあるのですが、現場監督が情報を整理して、それぞれの職人さんたちに必要な情報をタイムーに伝えてくれているととても安心することができます。

 

「世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション」発売!

千代田区一番町Y邸

僕らのこれまでのマンションリフォーム&リノベーションの実績を纏めた書籍「世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション」(エクスナレッジ社)が8月3日から発売になっております。

表紙

全頁カラー印刷で、とにかく写真が豊富なリノベーション事例集となっています。
因みに、表紙は千代田区一番町Y邸のリビングの写真です。

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大きな写真(ほぼ全て自分で撮影した写真ばかりです)に簡単な説明文、そしてリノベーションのポイントなっている図面(平面やディテール)、そして写真に写っている仕上げ材や家具、備品等のリストまで掲載しておりますので、リフォーム・改築だけでなく、インテリアの本としても、参考にできるのではと思っております。こちらは六本木N邸のリビングです。

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ブログでは掲載しておりますが、カガミ・デザインリフォームのHPにはまだ未掲載のプロジェクトも、こちらの本では惜しみなく紹介しております。こちらは中央区のサービス付き高齢者向けアパートメントS邸のリビング事例です。

キッチン-6

リビング・ダイニング、キッチン、玄関、廊下、寝室、その他諸室と項目分けして、それぞれに特徴のある事例を掲載するスタイルの本となっています。キッチンでは、この写真の南麻布K邸のような、超大型キッチンから、よりコンパクトなキッチンまで幅広く紹介しております。

水廻り-12

トイレでもバリエーションある事例をなるべく多く掲載するようにしております。

建具

全てが事例紹介の写真だけでは、退屈になるので、建具や家具、照明計画等のコラムやビフォー&アフターを比較できるページも設けています。

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読者対象として、高級マンションのリフォーム&リノベーションを検討していらっしゃる方、ハイエンド・インテリアに興味がある方、これから高級リフォームに取り組みたいと考えている若手建築家、家具やファブリック類の実例を色々と見てみたいインテリア・コーディネーターの方々などと想定して、僕らのこれまでの取り組みを紹介する本となっています。
一般本屋でもインターネットでも、税込2,592円で絶賛発売中ですので、是非本屋で手に取ってみてください!出版に関連して、セミナーやサイン会(誰がサインを欲しいのか疑問ですが…)の企画も考えておりますので、その節には是非ご参加頂ければ幸いです。

 

 

 

大理石探しツアー 元麻布I邸に最適な石を探して

元麻布I邸

超高級マンションリノベーションプロジェクト、元麻布I邸に使う大理石を探しに、担当スタッフの前田君、施工会社リフォームキューの岩波さんと丸一日掛りで、岐阜県と三重の石屋の倉庫(ストックヤード)と加工場を5か所見て回ってきました。

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5か所の倉庫といっても、特に岐阜の関ケ原石材と三重の松下産業は、ともに巨大は倉庫を持っているので、一通り見て回るだけでも、相当な時間が掛りました。

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今回の大理石探しツアーのコンダクターをしてくれたのはキダマーブルの斉藤さんとアジアグラニットの池田さんで、まず最初に岐阜県大垣市のアジアングラニット本社にて、図面を見ながらどこにどのような石が必要かを確認してからツアーをスタートいたしました。因みに、キダ・マーブルは大理石の設計(こちらの指示に従って施工図を描く)・加工・取付工事までを行ってくれる東京の石専門の施工会社で、アジアングラニットは、設計図に基づいて、スラブ材からの切り出しや石材のエッジの磨き加工などをしてくれる加工専門の会社です。

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元麻布I邸プロジェクトの為に探している大理石は、リビングのテレビボード背面とカウンター材として使う黒字に白い線が入ったネロマルキーナというスペイン産の大理石、それに洗面カウンター材として使う白い大理石(まだ種類は決めていません)、そして玄関ホールの床に使うベージュ色のライムストーンの三種類の石材です。
なかでも一番重要なのが、黒い大理石のネロマルキーナです。こちらの石材は、日本での在庫が乏しいネロマルキーナのスラブを、事前にアジアングラニットで確保しておいてくれたものです。

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きれいな大理石ではありましたが、黒い部分に灰色が混じっており、白い線もちょっとはかなくて、頼りなげな風合いでした。もしこれより良いものが見つかればそちらに、見つからなければこれでも良いだろうとのことで、一つの宿題になりました。

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こちらは、洗面カウンター用のドラマチック・ホワイトのスラブ材です。自分の倉庫にあったものを見やすい位置に出しておいてくれました。こちらはとてもきれいな柄で良いのではないかとことになりました。

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大垣のアジアングラニットに保管してあったのは、上記の2種類だけだだったので、まずは一路三重県のいなべ市にある松下産業の石材倉庫に向かいました。こちらには素直な色と柄のライムストーン、ブランドドマールが保管されておりました。ライムストーンも質の良いものが少なくなってきている中で、こちらの石材はとても良く、かつスラブ枚数も揃っていたので、決定といたしました。

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きれいではありますが、少し斑(フ)が入っているので、それをどのような石取りで使ってゆくかを、キダマーブルの斉藤さんとリフォームキューの岩浪さんと決めてゆきました。3つの石のうちの一つを、早々に決定することができて、まずはホッといたしました。

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その後は大きな倉庫を黒い大理石と白い大理石を探して、ウロウロさせて頂きました。その際、白い大理石で玉柄の斑がとてもきれいなビアンコ・ブロイエが見つかりました。ビアンコ系の大理石は、ビアンコ・カラーラがもっとも有名ですが、斑や柄、白地の色の違いによって掘り出された際に命名されるそうで、実際にはと同じイタリア・トスカーナ州のカラーラの街で採れるものです。
とてもきれいな模様だったので、最初に取っておいてもらったドラマチックホワイトと比べるために、同じ材から切り出したサンプルを貰うと共に、他の人に売れてしまわないように抑えて貰う手筈を進めて貰いました。

その後は松下産業にはめぼしいものが見つからなかったので、岐阜県の関ヶ原市の関ヶ原石材に向かいました。

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関ヶ原石材は、誰もが認める日本一の石材屋です。大きな倉庫が幾棟もあり、さらにブロック材からスラブ材を切り出す大型カッターが何台も可動し続けている大工場でもあります。
こちらの倉庫には、珍しい希少種の大理石が沢山並んでいました。

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日本の石材産業は、80年代後半のバブル期が一番盛んで、その後は中国で加工された石材に押されっぱなしで、昔のように珍しくユニークな柄の大理石を仕入れても、ほとんどでなくなってしまったとのことで、こちらに残っているのは、同じ石種が一枚か二枚程度しか残っていないスラブ材ばかりでした。

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こちらは珍しいグリーンウェーブという中国産の大理石だそうです。

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以前、他のプロジェクトで使って、その後も他のお客さまから、良いものがないか探しておいてくれないかと依頼されていた、イタリア産のポルトロという大理石も見つかりました、ただ、そちらのプロジェクトに使うには、柄が大きすぎるのと色味が合わなさそうでした。

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こちらも希少な大理石のシルバートラバーチンのきれいな柄が見つかりました。僕らが良くお願いするオーダーキッチン屋のアムスタイルさんの受付カウンターに使われている素材で、とてもきれいな色味でした。

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黒い石ということで、屋外に置かれている御影石もザッと拝見させて貰いましたが、こちらはベタッとつぶしたような黒でしたので、使えそうではありませんでした。

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気分を変えて、ブロック材が置かれている倉庫も後学のために、見学させて頂きました。身長186センチの僕、各務が小さく見えますから、どれだけ大きなブロック材かが良く判るのではないでしょうか。

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こちらは加工工場です。写真ではあまりうまく撮影できませんでしたが、幾つもの大きな機械が音を立てて動き続けている様は、凄い迫力でした。

日本の中部地方が誇る二つの大きな倉庫を見ても、最適な大理石が見つかった気がしていなかったので、近くにある幾つかの比較的小さな倉庫を持っている石材屋さんを二つほど追加で見学させて頂きました。

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大垣市のワダマーブルで見つけたのが、こちらの黒い大理石です。黒地がとても深く黒くて、白い線もクッキリ入っており、ちょっと見ただけで、これこそ探していた石なのではと思えるような石材でした。

夕方で暗くなり始めていましたが、無理をお願いして、クレーンでスラブ材を吊り上げて貰い、全体の柄も拝見させて貰いました。この石材はネロ・クラウンと呼ばれている中国産のネロ・マルキーナの代替え品でした。中国産の大理石は欧州産と比較すると、安物で質も悪いとされているようですが、これは少し山キズ(山から切り出した時から入っているキズで、スラブ加工した後に割れたキズとは区別されています)が見受けられましたが、それを避ければ、上手く使えそうでしたので、最後になって、アジアングラニットが保管していたものと差替えて貰うようにお願いいたしました。

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最後は、スタート地点のアジアングラニッとに戻って、こちらの工場で得意としている技術を見せて頂きました。

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小幅に切り出した石は、搬入や取り付け時に割れやすいので、背面にスリットを入れて、そこに鉄筋を埋め込んで、接着剤で埋める加工技術が得意だとのことでした。他にも、石磨きのための道具や、カッターの刃なども間近で見学させて頂きました。

とにかく、ほぼ丸一に掛けての大理石探しツアーで、満足が行くものが見つかって、とにかくホッといたしました。あとは、カットサンプルと、撮影した写真をお施主さまにお見せして、了解を得たうえで加工を始めて貰う段取りになりますが、設計デザイナーとして、自信を持ってお勧めすることができる素材が見つかって、丸一日の努力が報われた気がいたします。