Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

リビングダイニングの折上げ天井範囲を拡大

六本木Y邸

工事進行中の六本木Y邸ですが、当初から美術館やギャラリーのような生活感のない白い空間になさりたいとのことでデザインを進めてきましたが、解体時の判断でリビングダイニングの折り上げ天井の範囲を広くして、高さも高くすることが出来そうであることが分かっていました。

こちらがLDの天井裏のダクトと配管類を整理した後の写真です。緑色の管はスプリンクラー、肌色のちょっと太めの線はエアコンの冷媒管、銀色のキラッと光っている管はエアコンのドレイン管、灰色の細い線はこれから設置してゆく天井埋め込みのダウンライトや間接照明の電気の線、左奥のLGS壁下地の間を縫って走る大蛇ようなものがキッチンのレンジフードの給排気のダクトです。

解体時(ビフォー)と、配管整理をした後(アフター)の写真を同じアングルからの写真で比較すると、どれだけ天井裏が整理されたかが分かるのではないでしょうか?(厳密に考えると、どちらもビフォーでもないし、アフターでもなく共に途中経過ですが…)

キッチンのダクトなどの太い大物は整理できることが簡単に分かっていましたが、実は一番難しかったのが、各務が眺めているエアコンのドレイン管でした。エアコンの冷媒管は、勾配や長さの制限が緩いので、他の壁を使って床下に落としてから、必要な個所に移動することができるのですが、エアコンのドレイン管(冷房時に除湿で出る水を流す管)は勾配が厳密に決まっているので、無理をさせることができないのです。ただ、一つのエアコンのドレイン管は、違うバルコニーへと流して、唯一リビングからこちらのバルコニーにしか流せないドレイン管は、勝手口のカーテンボックスの中に隠すことができたことで、折り上げ天井範囲を広くすることができたのです。

左が既存で赤線が折り上げライン、右がリフォーム後で青線が新規の折り上げラインです。面積で見ると元が6平米だったのが、8平米にまで約35%広がりました。天井カセット型エアコンの位置を変えたこともサイズを大きくできた要因でした。

この日は壁下地も大分立ち始めてきたので、Yさまご夫妻に現地に来て頂き、照明器具のスイッチ類やコンセント類の位置の確認もお願い致しました。工事をお願いしているリフォームキューの営業の坂本さんと現場監督の神成さんも立ち会ってくれています。

きれい好きな奥さまがどこまで手直しなさるか、悩んでいらっしゃった浴室についてですが、①オーダーユニットバスを作って全面交換する、②洗い場床タイルと浴槽は交換し、壁タイルも薄タイルを上張りする、③浴槽はメーカーのジャクソンに磨き直して貰い、シャワーや水栓等の金物類を交換する、の3つの案で進めてきましたが、明るい状況で既存浴室を再確認して頂いたところ、③で良さそうだとのお話しになりました。

こちらは移動するキッチン位置に合わせて先行配管して貰った給水給湯管と排水管です。左上に伸びている濃い色の管と水色の管は…、

将来的に背面収納の中に、食洗器を設置する可能性があるかも知れないとのことで、用意した給水管と排水管と電源です。

玄関正面にある、こちらのコンパクトな空間は、ご主人さまの書斎空間です。

また、既に発注済みで現場に届くのを待っていた床仕上げのグレー色のタイルですが、メーカーからコロナのことと戦争のことで納期が間に合わないのでキャンセルさせて欲しいとの連絡がありました。価格帯もこなれており、癖もなく良いタイルだと気に入っていたのですが、状況が状況だけに他の選択肢を考える検討が必要となりました。担当スタッフの副所長の前田君が、持ち前のパワーと情報収集力で、在庫と納期、色味とテクスチャー、価格帯も大きく変わらないタイル候補を何種類か選んでくれました。

テーブル右側のタイルがそちらです。当初選んでいたものとかなり近いものが見つかっていたので、お客さまも納得してくださいました。新しく選んだ床タイルに合わせて、寝室のカーペット、洗面カウンターのクオーツストーン、壁紙やキッチンパネル等の素材や色味も再確認しつつ、最終決定させて頂きました。

最後に、小物を飾る棚が欲しいとのお話しになっていましたが、現場の大工さんが柱型に作っていたこちらの棚を見て頂いたところ、まさにこんなイメージの物が欲しいとのことで、思わぬところで似たイメージの物を見つけることができました!

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

代々木上原I邸

最近、真鍮(しんちゅう・ブラス)をアクセントに使ったインテリアをご希望の方が増えていますが、真鍮を使った場合の問題は、使っていると錆びてくることです。取っ手などの場合は手や指の汗、触らない場所でも空気中の湿気でうっすらと錆が浮いてきます。ピカールのような研磨剤入り乳化性液状金属磨きを使えば、比較的簡単に錆は取れますし、錆を経年変化だと理解して喜んで下さる方は問題ありませんが、そういったことは面倒だとい方には、ステンレスにウレタンカラーを掛けて真鍮色に近い色の金属を作ることができます。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

この写真の左右の金属板、右が真鍮の磨き仕上げ、左が真鍮のバイブレーション仕上げに見えますが、実は共にステンレスにカラーラッカーで仕上げたものなのです。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

斜めから見ると、このようになります。カラーステンした後、傷が付きにくいようにウレタンのクリアコートを掛けているので、完全な磨きのようにはなっていませんね…。でもさびが発生せず、扱いが容易なのは魅力的です。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

代々木上原I邸では、扉の取っ手や2種類の違った素材の見切り材などで真鍮色カラーのバイブレーション仕上げを使う予定なので、造作家具の現代製作所の藤田さんにサンプルを作って貰っています。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

廊下からLDKに入るデザイン扉では、二種類のファブリックと木突板に真鍮色カラーを使うので、その色味のマッチングを確認するためのサンプルです。

ステンレスを真鍮色にカラー仕上げ

こちらの写真は確認後3週間後の物ですが、壁にスイッチを仕込むための見切り材をステンレスの真鍮カラーで組み上げている様子です。

最終的に仕上がった、お引き渡し時の様子がこちらです。壁の見切り材は写真ではほとんど目立たない存在ですが、一緒に見えてくる建具の取っ手と繋がってくることで、精度が高く仕上がっていることが分かるでしょうか…。

ペントハウス吹き抜けの解体状況確認

関西I邸

いよいよ関西I邸の解体工事が始まりました。まずは先行して詳細を決めて発注をしてゆく必要があるオーダーユニットバスのサイズ決定をする必要があるので、浴室部分から解体を始めて貰っています。

これまで天井高さ2.4メートル(折り上げ上部)だった空間の天井を取り去ったことで、傾斜天井に沿って約4メートルの高さの空間が現れました!
解体前は、この写真の銀色のダクトの下に天井があったのですから、その上に隠れていた空間の大きさには驚かされますね。

天井の高さをどのように活かすかでワクワクするところですが、当日はオーダーユニットバスをお願いしている東京バススタイルの眞柄さんがわざわざ東京から現地に来てくれていたので、まずは浴室部分の打合せからとなります。

浴室の床レベルの設定に於いては、ダウンスラブ(水回りの部分だけ床コンクリートスラブが一段下がっている)の高さとこの写真にある排水竪管の横引き管のフランジ位置が重要になってくるのです(実際にはもう一点、浴室床から浴槽のマタギ寸法も重要になります)。

当然ながらお客さまからは、できれば浴室床を洗面や他の床と同レベルでフラットにして欲しいとのご要望は頂いておりましたが、既存図面からの計算では、最大で10センチほどになるのではと設計していましたが、眞柄さん、現場監督のHさんと弊社担当スタッフの竹田さんとの打ち合わせで5.5センチの段差で行けることが分かりました。

もう一つ、この壁に沿った配管のうち、奥の配管が途中で曲がっているのですが、この曲がった個所がクセモノで、新しく設ける浴室の天井付近に絡んでくる位置であることが分かり、浴室内に梁欠きを作ることになりそうです。

梁欠きと言っても、ちょっと分かりにくいので、こちらの資料は事務所に戻ってから竹田さんが作ってくれたお客さまへの説明用の資料です。

お風呂については、問題点の整理ができたので、現場監督のHさんと斜め天井のあるマンションのベントハウスの特徴でもある、吹き抜け部分のデザイン的な処理のことを相談しました。

白い箱が空中に浮かんでいるように見えるのは、天井裏のロフト収納への折り畳み式階段です。2つの住戸それぞれにロフト収納がありますが、先行解体したこちらの部屋のロフト階段は位置も向きもそのまま再利用致します。

子ども部屋を2室設ける南側のエリアも中央を走るダクトを整理すれば、天井高さかなり高くすることができそうです。

天井の勾配に合わせて、ダウンライトの据付寸法を考えながら、暫定的な天井高さを決めました。

かつての天井裏を走っていたダクト、配管、電気配線のそれぞれの意味を理解した上で整理することで、きれいな空間を作ることができそうです。

主寝室部分も頑張れば変形ではありますが、天井高さをそれなりに上げることができそうです。

解体して分かったことの一つが、竪館が通っていると考えていたPS(パイプスペース)が給水と給湯菅を通しているだけの専有部だったことです。マンション共用部に当たる排水管や通気管等の竪管は動かせないので、このエリアに計画していたトイレが窮屈な寸法でしたが、給水給湯管は専有部で自由に動かせるので、余裕のあるトイレを作ることができるようになりました。

隣室の解体はまだそれほど進んでいませんが…、

キッチンは撤去されて、排水管の流れが見えてきました。かつてのキッチンは床が一段あがっていたのでさか、排水管の位置を工夫することでフラット床のキッチンにすることができることを確認することができました。

こちらの住戸の玄関エリアの解体状況です。こちらは、今の計画だとロフト階段の位置があまり良くないので、位置を変えるか向きを変えるかして、何とか使い勝手の良さと空間のデザイン性を両立させたいと、担当スタッフの竹田さんと考えております。ただ、まだ判断をするための材料が出揃っていないので、解体が進むのを待つしか無さそうです。

こちらの資料はお客さまに解体状況をご説明するために後日作ったものです。天井の高さを上げると仕上げをする範囲が増えたり、照明計画も作り直す必要があるので、施工金額ご上がってきます。次回のお客さまも一緒の現場解体状況確認時までに追加金額をお示しするために工務店に追加見積もりの作業も進めて貰うことになりました。