Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ゼネコン施工オーナービルのオーナー住戸設計の難しさについて

関西M邸

新築賃貸マンションビルの最上階オーナー住戸の設計&インテリアアドバイスの関西M邸の工事現場が進んできました。当初のお客さまと弊社のご契約では、設計内容を煮詰めて、インテリア素材や家具やカーテンの選定までのお手伝いの予定でした。というのは、当初より設計施工でゼネコンの建物本体をお客さまがお願いしている中で、オーナー邸の設計もゼネコンの契約に含まれているので、大まかな方針さえ決まれば、後はゼネコン設計部とお客さまとの打ち合わせで、詰めてゆくことができると考えていたからです。実際に、僕らの業務が終わった後、僕ら抜きでお客さまがゼネコンと打ち合わせをしてみたそうです。ただ、いざ僕ら抜きで打ち合わせをしてみると、打合せ内容が正確に理解できない部分があったり、どのように考えで判断すればよいのか迷うことが多かったとのことで、お客さまからも建物全体の設計施工をしているゼネコン側からも工事現場の重要なポイントではチェックしに来て欲しいとの、ありがたいリクエストを頂きましたので、改めて工事現場を施主代理としてチェックしたり、現場定例打合せに何度か出席するというコンサルティング契約を結ばせて頂き、関西方面に出張することとなりました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

12階建ての大きな建物の計画ですので、現場近くにゼネコンが現場事務所を借りてくれています。この日はキッチンと浴室の内容をの最終確認とのことで、オーナー邸のキッチンを作ってくれてい東京のオーダーキッチン屋リネアタラーラの担当者の牧野さんがキッチンで使う素材全種類を持って来てくれました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

リネアの牧野さんが手で支えてくれているのは、イタリアのポルフィド・ペドレッティ社に特注加工をオーダーしたポルフィードスラブ材サンプルです。の僕ら設計は、世田谷区用賀にあるリネアタラーラのショールームで、既にのサンプルを見ておりましたが、お客さまのMさまご夫妻は、これが初めての実見でした。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

3センチ厚の無垢接ぎ板(ハギイタ)のウォールナット材と、特殊加工のポルフィードの組み合わせは、Mさまが思っていた以上に良い出来で、とてもとても喜んで下さり、先日訪問した「パレスホテル東京のレストランを超えるね!」と言ってくだいました。

超大型キッチンで、使う素材もカウンター材だけで3種類、扉材は4種類、シンクが2つに冷蔵庫も2つあるモンスター級ですので、図面類もこれだけ揃えて貰いました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

3メートル×1.2メートルの大判のダイニングテーブルの天板や重量のあるポルフィード材は、実際にキッチンを組み立てるタイミングでは現場に搬入できない可能性があるので、もうこのタイミングで発注をしないとと納期が間に合わないとのことで、お客さまだけでなくゼネコン側にも組み立て方のこと、スケジュールのこと、そして費用のことを説明させて貰いました。

こちらもリネアタラーラさんが用意してくれた、組み立て方が判る図面で、非常に好評でした。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

キッチンについては全員からのOKが出たので、ホッとしましたが、次は造作家具です。造作家具の施工はゼネコン側の下請けの会社となるので、こちらからのコントロールがほとんど効きません…。施工図のチェックや扉材やカウンター材のサンプル確認は、東京に送って貰えればお手伝いすることができるので、まずはMさまと一緒に考えた素材をゼネコン側に渡しました。石材が見えていますが、これは玄関ホールの壁に張る予定のバサルティーナのサンプルです。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

こちらはオーダーユニットバスのニッコーが作ってくれた浴室の承認図です。事前にメールにPDF添付ファイルで送って貰っていたものに、こちらで赤チェックをして訂正して貰っているものです。今回はお客さまにご説明して承認するだけの手はずだったのですが、浴室内の床タイルの1か所仕様が直っていないことを弊社担当の竹田さんが見つけてくれました。設計者として施工監理までを請け負うお仕事であればこの承認作業もこちらの責任範疇となるのですが、今回は施主側のアドバイザーとして入っており責任は生じない形でのお手伝いで、最終的に間違ったまま施工されたとしてもゼネコン側の責任になるのですが、事前に間違いを見つけることができて本当に良かったです…。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

今回はそれだけでなく、壁にはる木目調クロスやビニールクロスの最終選定…、

さらには照明機器の位置やコンセント、スイッチ類の承認のお手伝いも致しました。こちらがラフに提案した照明計画に対して、ゼネコンが選定した照明器具メーカーが器具選定とプロット図を出してくれます。それを何度かチェックバックしながら精度を高めてゆくプロセスとなります。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場事務所打合せ

照明器具だけでなく、スイッチプレートやコンセントの形や色味も壁紙等とのマッチングを考えて承認してゆきます。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の現場確認

現場事務所すぐ近くの工事現場も拝見させて貰いました。この建物の最上階にお手伝いしているMさまのご自宅ができるのです!
そうこうしている内に、またひと月の月日が経過し、現場でのコンセントと照明スイッチ位置の確認に同行する日になりました。

オーナービル最上階住戸_関西M邸の工事現場確認

構造体の鉄骨に耐火被覆がなされ、断熱材も吹かれた室内にお客さまご夫妻と一緒に入ってゆくと、ゼネコンにサブコン、下請け会社の方々と10数人の人が待っていました(因みにこの時点はコロナは下火で、窓も全開で全員マスクをつけての打合せでした)。

コンセントもこのような図面を元に打ち合わせを重ねてきましたが、お客さまからしても図面上での位置確認は抽象的過ぎて中々理解しにくいので…、

オーナービル最上階住戸_関西M邸の工事現場確認

LGSの下地状態でしたが、このように照明のスイッチプレート等をを実寸大でコピーしたシートを実際の場所に張ってくれており、とても見やすい状態でチェックすることができました。この場所は、キッチンのコーナーを曲がった壁で、リビングやダイニングから隠れた位置に…、

オーナービル最上階住戸_関西M邸の工事現場確認

インターフォンや床暖房、エアコンのリモコン、セキュリティーのコントロールパネルなどを設置しています。特にインターフォンのようにモニターと受話器がある機器の設置高さはご夫妻やお子さまの身長とも連動してきます。沢山のスイッチ類をどのようにレイアウトするかも重要なチェックポイントとなるのです。

こちらは、照明機器のレイアウト図です。どこのスイッチからどの照明器具のグループをオンオフできるのか、こちらの図面も一緒に見ながらの確認となります。因みに、こちらの照明プロット図も最初はこちらがラフ案を作ってゼネコンの下請けの照明機器メーカーが図面化し、それを3度ほどチェックバックしながら精度を高めてきたものです。

造作家具についても、こちらが作ったラフな図面をベースに下請けの造作家具屋が作ってくれた製作図を何度かチェックバックしながら、詳細を決めていきました。お見せしている図面は全体の一部で、この3倍量程の図面を何度もチェックしてゆく作業は、僕らのようなプロの助けなしでは一般のお客さまだけでは難しいだろうと思っております。

メゾネットマンションの階段リフォーム

代々木上原I邸

代々木上原I邸は4階と5階の2フロアがあるメゾネットマンションで、室内に階段があります。ヴィンテージマンションなので、大きな吹き抜けがあるタイプではありませんが、メゾネットマンションリノベーションそのものも、階段のリフォームも珍しいので記事にしてみました。

左側が解体時の階段で、右側がリフォーム後の階段です。どもに階段中腹の踊り場から同じアングルで撮影したビフォーアフターの写真です。

リフォームの設計デザインの基本は実寸の測量から始まりますので、施工をお願いしているの現場監督の石坂さんと、弊社のプロジェクト担当の神崎さんの二人で詳細な調査をして図面を起こして貰うところからスタートです。

メゾネットマンションの階段リフォーム

施工会社が見積ることができて、施工計画を立てられる図面を作ります。基本的な寸法を抑えた所で、まずは施工側の図面を待ちます。

メゾネット階段の施工図

A2サイズの大きな図面を縮小したので、詳細が見えにくいですが、青の石坂さんが作ってくれた施工図がこちらです。まだ手摺りの細かい部分は決まっていませんが、階段部分の施工はできるレベルまで設計が詰まってきたので、工事を進めて貰います。

リノベーション工事を開始する際に近隣にご挨拶した際に、こちらの部屋の階段を上り下りする際の音が伝わるとのお話しがあったので、階段の踏み板にクッション材を張りました。ただ、クッション材の上にはサイザル麻は敷き込めないので、更にその上からベニヤ板を張っていきます。

事前に加工場でこちらのように踏み板と蹴込みを組み上げたもののを…、

大工の矢野さんが固定していきます。

因みにメゾネットマンションの階段は、主要構造物になるので、役所への申請なしに変更することはできません。今回はどちらにしろコンクリートで作られた階段だったので、作り直しは検討にも上がりませんでしたが、木製階段や鉄骨製階段の場合、作り変えなくなってしまいますが、要注意です。

階段自体はシンプルな構成ですので、デザインの勝負所は階段室の壁周りと手摺りになってきます。現場監督の石坂さんと相談して、最薄で作れる手摺り壁の下地を組み上げて貰いました。

踊り場から手摺りが上階まで伸びてきます。

手摺り下地としては、ここまで作って貰いました。

手摺りの笠木(持ち手)部分の形状を決めて、各コーナー部のスケッチを描きます。

手摺りの笠木の実寸モックアップ

無垢材から作って貰った実寸の手摺り笠木のモックアップを…、

手摺りの各コーナーに当てて、どのように納めるかを考えます。

写真とスケッチを見比べながら、担当の神崎さんと各務で納まりを検討しました。

写真に描き重ねたスケッチを見て、現場の大工の矢野さんが作ってくれた、手摺り端部のトメ加工です。何のために作られたものか、説明するのも難しいのですが、実はこの変態的な納まりが重要なカギとなるのです。

矢野さんは、この手すりの作成に相当気合を入れてくれているようで、現場の一角に手摺り加工場を作って、細かい納まりに対応する姿勢を見せてくれています!

端部の削り合わせや、コーナーのトメ加工等、実寸のモックアップを作ってくれるのは本当に頼りになります。

矢野さんの腕が相当に良いことは以前から知っていましたが、本気を出すと、ここまで凄いとは分かっていませんでした…。

その変態的ともいえるコダワリを持って作ってくれた手摺りがこちらになります。

まだ製作途中で未完成ですが、大工の加工の粋を集めた素晴らしい手摺りになることは確実です。

固定用のクランプを取り外して、やすりで整えると、一本の無垢材が曲がりながら流れてゆくような美しさです。手摺りの上階の下地は、寄りかかった時に揺れる可能性がありそうだったので、鉄の補強材を仕込んでいます。

今回は手摺りだけでなく、階段部分を他の空間とはデザイン的に切り分けるために、壁と階段ボックスの取り合い部にも工夫をしています。

階段ボックスの内部を木張りにして、他の空間との切り分けに間接照明を入れるデザインとしているのですが、間接のLED照明を後日交換できるようにするために、取り外しができる木枠を作ろうとしています。

その木枠の原寸モックアップも作って貰いました。

長物として現場に届いたのが、こちらです。

実はこの枠も一癖ある代物で、どのようにLEDの配線を通すかの検討を重ねた結果、最下部だけは固定にして、溝を掘った部分に電線を通し、上部枠はそこに差し込むような形で取り外しができるという複雑な作りになりました。

階段最下部の手摺りの端部も中々難しい取り合いでしたが…、

大工の矢野さんが、このように美しく仕上げてくれました。

階段室の大枠が完成したところから、内装を仕上げていきます。先回の突板ベニヤ板工場見学の際に指定して作って貰った特注の突板を内部に張っていきます。

踊り場部分には、梁上のニッチ部分にカラーガラスと照明を組み込んで印象的なコーナーとなる予定です。

ボッチ14シリーズの照明を16灯吊るしたものが、背面のカラーガラスに移り込む仕様となっています。後日照明器具の高さを変更できるように、天井部分を開閉できるように工夫しています。

階段床はサイザル麻を巻き込みで張りました。そして養生を取り外して完成した階段が以下からの写真となります。

上階からの降り口です。薄い間接照明が効いていて、木製の箱が室内に挿入されたようなデザインとなっています。

踊り場はガラス照明が上から吊るされたものがカラーガラスに反射して、星降る夜のようなドラマチックな様相です。

大工の矢野さんの労作の手摺りの仕上がりがこちらです。

どの角度から見ても隙間がない完璧な納まりです!

下階の階段の登り口です。こちらは下りてきた手摺りと階段下の収納扉の取っ手のデザインがピタリと合って、秘密の隠れ家への入り口のような雰囲気に仕上がりました。

最後にもう1枚、ビフォーアフター写真です。ここまで頑張ってくれた、弊社設計担当の神崎さん、施工会社青の現場監督の石坂さん、そして腕を存分に古くってくれた大工の矢野さんに感謝あるのみです。

ザ・ライブラリーのインテリアディテールの考え方

ザ・ライブラリー

TAGKENとの共同リノベーションブランドのザ・ライブラリーの南青山モデルルームのインテリディテールについての考察ブログを書いてみました。

カラーガラスとクロスパネル張りの見切りの話や、

巾木とクロスパネルの取り合い詳細、

間接照明の立上り部分に使った金属製のルーバー材の意味、

また、彫刻作家・水田典寿さんの作品を玄関に置いた理由などについて書いてみました。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。