Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ポリフォーム社のウォークイン・クローゼットの組立て

渋谷R邸

通り抜け型のウォークイン・クローゼット(実際はウォークスルー・クローゼットですね)家具の組立てが渋谷R邸で始まっています。

ポリフォルムのウォークインクローゼット組立て

コロナのこと、ウクライナの戦争のことがあって、イタリアから発送されたシステム部材全てが、当初の予定より一月ほど遅くなってしまい、検査後お引渡し直前に組み立てるスケジュールになってしまいました。

ポリフォルムのウォークインクローゼット組立て

イタリアのハイブランド家具の壁面収納やウォークイン・クローゼットなどの箱もの家具は、ノックダウン方式(部品と接続金物のセットで容易に組み立てられるようになっているシステム)で搬入設置されるので、手慣れた職人さんが組み立てると、どんどん組み上がってゆくのです。

ノックダウン方式は現場での作業が多く、スペースが必要なことが弱点ではありますが、何よりもマンションなどの現場では搬入が容易なことがメリットとなります。一つ一つの部品がユニット化されていることがこの写真で良く分かりますね。

引き出しはユニットとして組まれていますが、それ以外の部材は、ほぼ全てノックダウン方式です。

棚下に間接照明などが組み込まれていますが、低圧照明器具用の見えない部分に収納するシステムまで組み込まれているのです。

ポリフォルムのウォークインクローゼット組立て

全体の四分の一程度が組み上がった様子です。事前の寸法確認と矩(カネ・壁や床天井の垂直や水平度合い)の確認、更には間接照明やコンセント等の事前配線が重要ですが、組み立て始めると、このサイズであれば、丸一日で仕上げることが可能となります。
イタリア製と聞くと、芸術的センスは良くても製品精度は悪いのではと想像してしまいますが、実はこのシステム収納の分野では、イタリアは世界一技術が進んでいるのです。部材はすべてが工場生産で、金物類はその分野で世界一のメーカーと共同開発しているものが多いと聞いています。メラミン材の作り方の精度などはドイツをも凌駕しており、キッチンの世界では世界一と言われているドイツ製キッチンもメラミン材はイタリアから輸入しているほどなのです!

ポリフォームのウォークインクローゼット

そして、後日完成したウォークスルー・クローゼットがこちらです!イタリアの箱ものシステム収納では、モルテーニと今回採用したポリフォルム(日本国内ではアクタス取り扱い)が双璧で、他にリマデシオB&Bイタリアレマカッシーナ取り扱い)にフレックスフォルムポロインテリアズ取り扱い)があります。

ポリフォームのウォークインクローゼット

やはりシステム家具を先行して開発してきたポリフォルムだけあって、精緻なディテールと素材の組み合わせが上手で、高級感がありながらある程度価格も抑えた(設計担当の前田君とアクタス側の担当者の三上さんの頑張りで、特注寸法の部材をほぼ使わないことでハイ・コストパーフォーマンスが実現できました)素晴らしいクローゼットが完成しました。

こちらが三上さんと前田君が何度もやり取りをして最終形まで持って行ってくれたウォークインクローゼットのプランと展開図です。

ポリフォームのウォークインクローゼット

因みにこちらはご入居後にお二人の洋服が入ったクローゼットの様子です。まだ整理途中とのことで、使われていない棚や引き出しがあるようでした。

ドライルームと洗濯機置き場

先日の検査の時にはまだ未完成だった、ユーティリティー・スペースも完成していました。左側が洗濯機置き場で、右側のガラス引き戸の奥が浴室暖房乾燥機を入れた乾燥庫となっています。

ドライルームと製氷機置き場

乾燥庫横には洗い物家具を入れるスペースが、更にサウナ後の水風呂のための製氷機もこちらに設置しています。上部には十分すぎるほどのリネン収納を確保しました。

トレーニングルーム

ご主人さま用のトレーニング室にもワークアウト用のマシーンが入りました。

リビングダイニングの折上げ天井範囲を拡大

六本木Y邸

工事進行中の六本木Y邸ですが、当初から美術館やギャラリーのような生活感のない白い空間になさりたいとのことでデザインを進めてきましたが、解体時の判断でリビングダイニングの折り上げ天井の範囲を広くして、高さも高くすることが出来そうであることが分かっていました。

こちらがLDの天井裏のダクトと配管類を整理した後の写真です。緑色の管はスプリンクラー、肌色のちょっと太めの線はエアコンの冷媒管、銀色のキラッと光っている管はエアコンのドレイン管、灰色の細い線はこれから設置してゆく天井埋め込みのダウンライトや間接照明の電気の線、左奥のLGS壁下地の間を縫って走る大蛇ようなものがキッチンのレンジフードの給排気のダクトです。

解体時(ビフォー)と、配管整理をした後(アフター)の写真を同じアングルからの写真で比較すると、どれだけ天井裏が整理されたかが分かるのではないでしょうか?(厳密に考えると、どちらもビフォーでもないし、アフターでもなく共に途中経過ですが…)

キッチンのダクトなどの太い大物は整理できることが簡単に分かっていましたが、実は一番難しかったのが、各務が眺めているエアコンのドレイン管でした。エアコンの冷媒管は、勾配や長さの制限が緩いので、他の壁を使って床下に落としてから、必要な個所に移動することができるのですが、エアコンのドレイン管(冷房時に除湿で出る水を流す管)は勾配が厳密に決まっているので、無理をさせることができないのです。ただ、一つのエアコンのドレイン管は、違うバルコニーへと流して、唯一リビングからこちらのバルコニーにしか流せないドレイン管は、勝手口のカーテンボックスの中に隠すことができたことで、折り上げ天井範囲を広くすることができたのです。

左が既存で赤線が折り上げライン、右がリフォーム後で青線が新規の折り上げラインです。面積で見ると元が6平米だったのが、8平米にまで約35%広がりました。天井カセット型エアコンの位置を変えたこともサイズを大きくできた要因でした。

この日は壁下地も大分立ち始めてきたので、Yさまご夫妻に現地に来て頂き、照明器具のスイッチ類やコンセント類の位置の確認もお願い致しました。工事をお願いしているリフォームキューの営業の坂本さんと現場監督の神成さんも立ち会ってくれています。

きれい好きな奥さまがどこまで手直しなさるか、悩んでいらっしゃった浴室についてですが、①オーダーユニットバスを作って全面交換する、②洗い場床タイルと浴槽は交換し、壁タイルも薄タイルを上張りする、③浴槽はメーカーのジャクソンに磨き直して貰い、シャワーや水栓等の金物類を交換する、の3つの案で進めてきましたが、明るい状況で既存浴室を再確認して頂いたところ、③で良さそうだとのお話しになりました。

こちらは移動するキッチン位置に合わせて先行配管して貰った給水給湯管と排水管です。左上に伸びている濃い色の管と水色の管は…、

将来的に背面収納の中に、食洗器を設置する可能性があるかも知れないとのことで、用意した給水管と排水管と電源です。

玄関正面にある、こちらのコンパクトな空間は、ご主人さまの書斎空間です。

また、既に発注済みで現場に届くのを待っていた床仕上げのグレー色のタイルですが、メーカーからコロナのことと戦争のことで納期が間に合わないのでキャンセルさせて欲しいとの連絡がありました。価格帯もこなれており、癖もなく良いタイルだと気に入っていたのですが、状況が状況だけに他の選択肢を考える検討が必要となりました。担当スタッフの副所長の前田君が、持ち前のパワーと情報収集力で、在庫と納期、色味とテクスチャー、価格帯も大きく変わらないタイル候補を何種類か選んでくれました。

テーブル右側のタイルがそちらです。当初選んでいたものとかなり近いものが見つかっていたので、お客さまも納得してくださいました。新しく選んだ床タイルに合わせて、寝室のカーペット、洗面カウンターのクオーツストーン、壁紙やキッチンパネル等の素材や色味も再確認しつつ、最終決定させて頂きました。

最後に、小物を飾る棚が欲しいとのお話しになっていましたが、現場の大工さんが柱型に作っていたこちらの棚を見て頂いたところ、まさにこんなイメージの物が欲しいとのことで、思わぬところで似たイメージの物を見つけることができました!

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

代々木上原I邸

最近、真鍮(しんちゅう・ブラス)をアクセントに使ったインテリアをご希望の方が増えていますが、真鍮を使った場合の問題は、使っていると錆びてくることです。取っ手などの場合は手や指の汗、触らない場所でも空気中の湿気でうっすらと錆が浮いてきます。ピカールのような研磨剤入り乳化性液状金属磨きを使えば、比較的簡単に錆は取れますし、錆を経年変化だと理解して喜んで下さる方は問題ありませんが、そういったことは面倒だとい方には、ステンレスにウレタンカラーを掛けて真鍮色に近い色の金属を作ることができます。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

この写真の左右の金属板、右が真鍮の磨き仕上げ、左が真鍮のバイブレーション仕上げに見えますが、実は共にステンレスにカラーラッカーで仕上げたものなのです。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

斜めから見ると、このようになります。カラーステンした後、傷が付きにくいようにウレタンのクリアコートを掛けているので、完全な磨きのようにはなっていませんね…。でもさびが発生せず、扱いが容易なのは魅力的です。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

代々木上原I邸では、扉の取っ手や2種類の違った素材の見切り材などで真鍮色カラーのバイブレーション仕上げを使う予定なので、造作家具の現代製作所の藤田さんにサンプルを作って貰っています。

ステンレスのウレタンカラー真鍮色仕上げ

廊下からLDKに入るデザイン扉では、二種類のファブリックと木突板に真鍮色カラーを使うので、その色味のマッチングを確認するためのサンプルです。

ステンレスを真鍮色にカラー仕上げ

こちらの写真は確認後3週間後の物ですが、壁にスイッチを仕込むための見切り材をステンレスの真鍮カラーで組み上げている様子です。

最終的に仕上がった、お引き渡し時の様子がこちらです。壁の見切り材は写真ではほとんど目立たない存在ですが、一緒に見えてくる建具の取っ手と繋がってくることで、精度が高く仕上がっていることが分かるでしょうか…。