Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ダミーカーテン(装飾用フェイクカーテン)の効用

乃木坂U邸

ダミーカーテン(Dummy Curtains)とは、聞きなれない言葉ですが、窓の両袖に吊る装飾用のフェイクのカーテンのことです。初めてこの単語を聞いたのは、30年近く前にニューヨークの設計事務所Cicognani Kalla Architectsで修業していた時でした。ただ、当時は実物を見ることは無く、知識として聞いただけのことでした。

ダミーカーテン

初めてダミーカーテンの実物を見たのは、2011年に旅行の際に泊まったニューヨークのホテルThe Surreyの客室でした。正面の窓に対しての正規のウィンドウトリートメントは半透明のシェードと遮光裏地付きのスクリーンの2本となっていますが、窓の両袖に窓らしい雰囲気を出すためにダミーカーテンが吊られています。冷静に見るとカーテン生地も足りていませんし、窓の足元にはラジエーター式暖房機が出っ張った形で置かれているので、カーテンを引くことはできないので、装飾用のカーテンであることが分かります。ただ、こちらは遮光スクリーンの横から漏れてくる光をカットする役目を果たしているという機能面もあるので、完全なるダミーではありませんでしたが(笑)。

ダミーカーテン

僕らが設計デザインのお手伝いをした幾つかのマンションリフォームの事例でも、ダミーカーテンをご提案したことがあります。こちらは六本木M邸です。軒が深いバルコニーがあり、ウッドブラインドもあり近隣から覗かれることはほぼないのでカーテン自体は不要でしたが、お客さまがコロニアルな雰囲気の空間をとのリクエストだったので、窓の両袖にダミーカーテン取り付けました。窓の枠がダミーカーテンで隠れること、またボリューム感を出すために遮光裏地を取り付けたことで、窓周りをしっかりと見せることができました。

ダミーカーテン

こちら白金台E邸でもリビングの窓周りにダミーカーテンを吊るしています。こちらのお宅では日中は窓からの光が燦燦と入るのですが、窓の外のちょっと離れた所に別のお宅がありそこからの視線が気になるので、白く光を透過するシャープシェードを常に閉めて使っていました。窓も二重窓になっており断熱的にカーテンが必要なわけではないので、カーテンは本来であれば不要ですが、二つの窓を一つの窓のように見せる木製フレームを設けたので、左右両袖を窓らしく演出するためにダミーカーテンをご提案しました。

ダミーカーテンの効用

ほぼ同じアングルの写真で、まだソファと造作家具とシェードしか入っていない写真と比較すると、窓周りがダミーカーテンによってドラマチックに演出されていることが判ると思います。窓周りの木製フレームに間接照明を入れていますが、ダミーカーテン無しだとモダンな雰囲気でしたが、入れることでソファの定位置が収まった感じになりますし、窓周りの一体感も出ていますね。

ダミーカーテン

僕らのこれまでの経験では、ダミーカーテンはボリューム感を出すために遮光裏地を付けるのですが、お客さまのEさまが選んだこちらの生地は、裏から光を通すことでカーテンの模様が浮き出来るのが素敵とのことで、裏地なしとしています。カーテンの足元に以前からお手持ちの小さな朱塗りのアンティーク椅子を置くことで、更に落ち着きが増しています。

乃木坂U邸のダミーカーテン

さて、現在工事進行中の乃木坂U邸のリビングでもダミーカーテンを採用する予定となっています。こちらのマンションは低層ではありますが、リビングの窓は南西向きではありますが、遠くにオフィスビルが見える程度で、プライバシーを気にするような視線が近所から無いことからレースのカーテンだけでも良いとのお話がありましたが、マントルピースやパネル壁を設けるクラシカルなインテリアのお宅なので、こちらからダミーカーテンをご提案致しました。

乃木坂U邸_カーテン選び

ちょうど先日、Uさまご夫妻と中目黒の輸入カーテン生地屋のマナ・トレーディングにダミーカーテンとレースのカーテン生地を探しに行って参りました。

ダミーカーテン探し

素敵な生地がとにかく沢山並んでいるマナ・トレーディングのショールームでは、お客さまが迷子になってしまうこともあるので、これまでの打ち合わせの中でなんとなくわかってきているUさまのお好みとファブリックの価格帯や納期等を考えて、まずは弊社担当の竹田さんと少し前にショールームに伺って、幾つかの候補を選んでおきました。

ダミーカーテン

選ぶ際のイメージとして、マナ・トレーディングが新宿の伊勢丹デパート内のショールームで展示していたこちらのカーテンの写真も参考にしております。

ダミーカーテン

生地に軽い凹凸があり、かつ輝きのある糸を編み込んでいることで、光の当たり方によってとても華やかに感じられるカーテンで、ダミーカーテンとして使ってもとても良いだろうと思っていました。

乃木坂U邸_カーテン選び

一つの生地でも色味のバリーエーションも多彩で、

乃木坂U邸_カーテン選び

暫定で選んだ生地、どれも良さそうだと仰って下さり、中々決め手に欠けていたのですが…、

乃木坂U邸_タッセル選び

通常とは逆さまの選び方となりますが、視点を変えるためにタッセルを見て頂いたところ…、

乃木坂U邸_タッセル選び

Uさまご夫妻の直観力が発動されて、グレーのレザー編み込みのタッセルが良さそうだとのことになりました。

乃木坂U邸_カーテン&タッセル選び

そこから逆算的にダミーカーテンを選んでいったところ、ちょっとモダンなレザータッセルとの相性、色合いや生地のハリなどから、すぐにダミーカーテンを決めることができました!

乃木坂U邸_カーテン選び

流れで、レースのカーテンも選び始めましたが、ダミーカーテンさえカッコよければ、レースはお子さまも小さいし、汚れたときのクリーニングや交換のことを考えると、こだわりはないとのことで、マナのものではなく国産のリーズナブルな価格の物を選ぶことになりました。
ダミーカーテンのもう一つの効用としては、窓の面積全てをカバーする生地の分量と比較すると、纏めた時にある程度のボリュームがでる分量で良くなるので、予算削減にも繋がるという効用があるのです。

乃木坂U邸_壁紙選び

お子さまのお部屋のアクセントクロスも選びたいという、もう一つの目的もあったので、カーテン選びがひと段落したところで、お二人で色鮮やかで楽しい輸入クロスの候補を探して頂きました。

乃木坂U邸_壁紙選び

幾つかの候補を選んで頂いた上で、面積を計算して概算のお見積りを取ってから最終的に決めてゆこうとのことになりまた。

乃木坂U邸_色彩決定

リビングに作るマントルピースの石材のサンプルも持って来ていたので、内部の枠の色も同じタイミングで選ばせて頂きました。
ダミーカーテンの仕上がり、今からとても楽しみです!

ウッドショックならではの軽量鉄骨と木製下地の組み合わせ

六本木Y邸

六本木Y邸の工事が順調に進んでいます。この日は、大工さんと軽鉄屋さんが入っての工事でした。

既存は壁下地が木製下地で、天井は軽鉄(LGS)でしたが、新しく作る天井や壁の一部は軽鉄で進めて貰っています。

天井は折り上げ範囲を大きく変えること、そのためにダクト類を大きく動かしているので、ほぼスケルトンになっているので、新たな軽鉄下地を作ってゆく必要があります。

天井のコンクリートスラブをアップで見た写真ですが、赤や緑色の丸いマークのようなものがコンクリートに埋まっています。これがインサートと言われる金物です。インサートはコンクリートアンカーともよばれますが、コンクリートを傷つけずに軽鉄の下地や、エアコン、ダクトなどの設備類を天井から吊るための金物です。

インサートに合った径のツリボルトとナットと野縁受け金物をドリルで取り付けながら天井LGSの下地を組んでいきます。

軽鉄工事の特徴は、木製下地に比べてとにかく早いことです。細かい造作には向かないですが、文字通り軽量で組立てや接続用の部材が揃っているので、ビス打ちなどの手間が少ないのです。

壁下地や天井下地用の軽量鉄骨の束です。中空の素材なので、これだけの量があっても搬入が楽なのです。特に、現在のウッドショックによる木材不足の中では、有効な建材なのです。

主寝室の折り上げ天井は既にLGSで組み上げられていました。

大工さんはその間に、造作本棚が入ったり、引き戸を納めるための壁などを木製下地で作ってくれています。

玄関入って左側の壁の端部は、まだ下地状態ですが、カーブしているのが判るでしょうか?

天井を見るとカーブの具合が分かるのですが、この箇所を少しでも空間的な広がりを感じさせたかったので、カーブの壁を作って貰っています。こういった複雑な下地には木製下地材が合っているのです。

大工工事で作って貰う本棚を設ける書斎壁も木製下地ですし…、

吊りレールで一本引きの扉を納めるポケット部分もランバーコアなどの木製建材を大工さんにお願いしています。

こちらは洗濯機用の給水給湯栓を壁に埋め込んだ部分ですが、やはり細かい調整が必要なので木製下地になっています。ただし、こちらの木製下地はLGSのランナー(天井と床に取り付けるガイド的な金物)と組み合わせることが可能なLVL(ラミネーテッド・ベニヤ・ランバー)を組み込んだハイブリッド工法となっています。木材不足の中での工事で、リフォームキューの営業の坂本さんと現場監督の神成さんが建材も色々と工夫して調達してくれています。

床下地については、遮音性能のことがあるので、木製下地となります。このベニヤ板の下に、置床システムとパーチ合板(パーティクルボード)と呼ばれる木屑を接着剤で固めた建材を組み合わせた下地が組まれていますが、そのパーチ合板がウッドショックで中々手に入らなくなっているとのことでした。
床に何カ所が四角い穴が空いていますが…、

それは床付けコンセント用の孔となっております。リビングに置く家具のレイアウトを考えたうえで、スタンド照明や携帯の充電用のコンセントを壁に見せないために床付けにしています。美術館やギャラリーのようなシンプルなスッキリした空間が六本木Y邸のテーマですので、僕ら設計側はとにかく壁をシンプルにそしてきれいに見せるために、コンセントやスイッチ類はなるべく壁から消す努力をしているのです。

天井裏にこちらの配線は、窓に取り付ける電動ブラインドの配線です。今は電池式のブラインドもありますが、電池が切れた時の交換が面倒なので、なるべく配線を通すようにしています。ただ、今回は窓際に梁が通っており天井裏にスペースがないので、コンセントを埋め込むことができないのですが、現場監督の神成さんの工夫で、先に電動調光スクリーンとして採用することになっているWISのフーガの延長コードを取り寄せて、先に天井裏に仕込んでおいて貰ったのです!

まだ決まっていないディテールや今後の工事の流れを、神成さんと弊社の設計担当の前田君が綿密に打ち合わせてくれています。

アムスタイルのコンパクトキッチンの組み立て

代々木上原I邸

いつもはスペシャルな大型のキッチンをお願いしているオーダーキッチンのナンバーワンブランドのアムスタイルですが、代々木上原I邸ではコンパクトで機能的なスタイリッシュキッチンを作って貰いました。

アムスタイルのコンパクトキッチン

こちらが完成後のコンパクトキッチンの様子です。
以下、組立ての様子です。

アムスタイルのコンパクトキッチン組立て

まず最初に、箱ものや金物類が現場に運び込まれます。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

箱ものはこのように最初から引き出しレールやコンセント用の穴あけがされ、更に高さやレベル(水平性)を調整できる脚までついています。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

現場監督のの石坂さんと相談しながら、大物の箱から組み立てていきます。とにかく、箱モノの設置レベルと箱同士の連結が基本になるので、ここでいい加減な組み方にしてしまうと、後で修正が効かなくなってしまうので、アムスタイルの熟練の組立て職人さんたちが丁寧に進めてくれています。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

L字型ながら、少し角度を付けた変形キッチンなので、箱の平面形状も少し歪んでいます。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

カウンターや引き出し、扉が取り付く前のキッチンはこのようにスカスカです。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

変形L字の延長部分をこのように組み合わせて行くと…、

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

このように組み上がってきます。手前に伸びてきたカウンターの側面ラインと左側のLGSで組み立てられた壁とがフラットに仕上がるので、この時点から相当な微調整が必要となります。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

ジョイント部と設備の取り合いを確認しました。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

ここまで来ると、第二弾の金物や設備類が運び込まれます。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

一度に全ての部品を搬入した方が効率的ではあるのですが、こちらの金物類や設備類は重ねて置きにくい物なので、現場がコンパクトな場合はこのようになってしまうのです。

こちらは事前にアムスタイルと打ち合わせをしていた大判タイルのフィアンドレの割付図です。

岐阜のアークテックの工場で養生テープで割り付け確認をして貰った大判タイルの写真です。折り曲げる部分は大理石柄が繋がるように考えての割り付けとしています。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

大判セラミックカウンターを載せた様子です。

アムスタイルのオーダーキッチン組立て

レンジフードを組み込みながら、引き出し類を入れ込んでいくと、ほぼ全容が見えてきます。

アムスタイルのコンパクトキッチン

ガスコンロは2口タイプでレンジフードも小型の特注タイプで、電子レンジはミーレのビルトイン、炊飯器等の調理機器は引き出し内に収納することで、ここまでコンパクトなキッチンにすることができています。

アムスタイルのコンパクトキッチン

ダイニング側から見ると、トール収納の背面に冷蔵庫と引き出し式パントリー収納が組み込まれているのが分かります。キッチン内部に入ると、コックピットのように自分は動かないので、回転するだけですべてに手が届いて動かく機能的なキッチンになっています。

アムスタイルのコンパクトキッチン

リビング側から見ると、シンクカウンタがちょっと見えるだけの、静かで控えめなキッチンのように見えます。壁材と同じセラミックをカウンター材として使っているので、壁との一体感が生じて横からは存在感を消すことが出来ているのです。

コンパクトキッチン平面図

冷蔵庫とコンロとシンクを繋いだ三角形をなるべく小さくするのが、キッチンを使いやすくするコツですが、こちらのキッチンは本当にコンパクトなのです。

在来工法浴室の仕上げ工事

キッチン以外の部分では、在来工法で作っている浴室の全容が見えてきました。

壁面装飾の下地作り

廊下壁の装飾要素や、

壁面装飾の下地作り

玄関空間と廊下空間を仕切るケーシング枠も出来て来て、後は塗装を待つのみとなってきました。