代々木上原I邸の主寝室のヘッドボードは、Iさまが気に入って下さったファブリックを緞子(どんす)張りにした造作で作ることになっています。因みに緞子張りとは、張り下地にクッション材を張って起伏を作り、その表面に織物を張る工法のことです。
こちらが完成時の様子ですが、最初のパネルサンプル作りからご紹介いたします。
Iさまが気に入って下さったトミタのファブリックの大判サンプルを有償で取り寄せて、I邸の造作家具工事をお願いしている現代製作所の藤田さんに、3通りのクッション下地を入れて貰ったサンプルを作って貰いました。
このように並べてみると、どんすパネルの厚みの違いが良く分かりますね。お客さまのIさまにサンプルをお見せしたところ、ヘッドボードのうち、ちょうど頭が来る部分のパネルは厚みのあるものが望ましいが、その他の部分はもう少しフラットな仕上げで構わないとのことでしたので、2種類の厚みのパネルを使ってデザインを進めることになりました。
緞子張りパネルは端部がデリケートなので、基本的には木製の枠で囲むデザインで検討していますが、木製枠との取り合いもサンプルで確認させて貰いました。
こちらはI邸の設計担当の神崎さんが既存の窓割と合わせてパネル割のデザインを考えてくれた展開図です。まだ、この時点では、木製枠のサイズや細かいディテールは決まっていませんでした。ただ、向かって左側の窓は縦滑り出し窓で、開閉するためには手前に設置するインナーサッシを全開にしないと開けないので、インナーサッシを一本引きで作ることになっており、その手前のパネルはメンテナンスの際には取り外せるようにしてあります。右側の窓は元々が引き違いなのですが、窓としては右側の窓だけが見えるデザインとしています。こちらのパネルも取り外し可能となっています。
元のデザイン展開図から、リノベーション工事を請け負って貰っている青の石坂さんと片岡社長、現代の藤田さんと3度ほど打ち合わせを重ねてから作って貰った製作図がこちらです。
実際に造作家具で作ったフレームが壁に取付けら始めた様子がこちらです。展開図の時にはなかった、壁の厚みを利用した棚が取り付けられました。壁の厚みが無駄なように見えますが、この後で断熱のためのインナーサッシが取り付けられることと、そのインナーサッシも含めてメンテナンス可能にするために、寸法に余裕を持たせています。
左端部分の既存アルミサッシ窓の開閉との取り合いが分かる写真です。横滑り出し窓は窓枠より随分内側に窓の端部が飛び出てくるので、この窓のインナーサッシは特別仕様で一本引きにして貰っています。
同じ窓の上部を見たアングルの写真です。アルミサッシがぶつからないように、上部枠も彫り込んで貰っています。
壁の厚みを利用したベッドサイドの掘り込みの棚です。下部にはコンセントも付けて、携帯の充電ができるようにしています。
中々に複雑な形で、造作家具の職人さんだけでは収まらない部分があったのか、施工会社青の現場監督の石坂さんが手伝っていますね。
右側の端部の納まりです。窓を取り囲むようにきれいに木製のフレームが回っています。
木製フレームが組み上がった頃を見計らって、現場にインナーサッシ枠が入ってきました。
斜めから見ると、木製枠の裏側にスカスカに隙間が空いているのが分かりますね。そこに一本引きや引き違いのインナーサッシを納めて貰います。
インナーサッシはアルミ枠と障子(ガラス窓)に分かれており、アルミ枠は比較的スムーズに取り付けができましたが…、
真ん中の方立が邪魔で、障子の取付けは手慣れた職人さん達でも難しいようで、色々な角度から差し込もうと努力をしてくれました。こんなに苦労するのだったら、方立も後付けにすればよかったと後悔致しました…。
インナーサッシの取付けが終わったところで、ようやく緞子(ドンス)張りパネルの取付けです。もうすでに2枚の緞子パネルが取り付けられていますね。
今回のパネルの取り付け方は2通りあります。こちらの写真のように背面にベニヤ板のパネルがあるケースでは…、
オス型とメス型があるボタンのようなものを押し付けて固定する方法です。
この写真がわかりやすいと思いますが、
日本が誇る金物メーカーのスガツネのパネルマウンティングシステムのVLシリーズを使っています。
もう一つは、背面にメンテナンスのためにベニヤ板がなく四周フレームだけの箇所で使っている金物は、こちら…、
やはりスガツネのボタンフィックスシリーズの金物を使っています。垂直面にワンタッチでパネルを取り付けることができる便利な金物です。
竪枠に対してはこのようにオス型を取り付けておきます。当初はパネルは両面テープと接着剤で取り付けた方がしっかり取り付けることができると考えていましたが、使っているうちに緞子張りのファブリックが緩んだり、汚れてしまったときに張り替えることができるように、製作をお願いした現代製作所の藤田さんのアドバイスで変更した経緯があります。
ほぼ出来上がった様子ですが、ちょうどベッドが来る正面上の緞子パネル2枚だけがふっくらとしているのが判るでしょうか?パネル同士のラインがきれいに出るように調整し、最後に二つの窓にブラインドを取り付けて完成です。
2枚上の写真で藤田さんたちが最後に留めているパネルはこのように簡単に取り外すことができるようになっており、パネル背面のインナーサッシに何か不具合があった時にはメンテナンスできるように工夫しています。
夜に照明をつけた写真を良く見ると、中央上段の2枚の緞子張りのみが、ふくらみが大きいのが分かりますね。
緞子張りに使ったファブリックと同種で色違いのファブリックで作ったシェードを窓に吊って完成です。
ベッドとリネンも入ったアフターと、リフォーム前のスケルトン状態でのビフォーをほぼ同じアングルで比較したビフォーアフターの写真です。
以下のページに、これまでカガミ建築計画でデザインしてきたオーダーメイドのヘッドボードの事例をご紹介しています。