ヴィンテージのメゾネットマンションリノベーションの代々木上原I邸では、上階に大きなウォークインクローゼット(WIC)を設ける計画となっています。約20平米(12畳)の部屋の四周にクローゼット棚を設けて、中央に大きなガラス張りのアイランドカウンターを設けるというレイアウトです。
まずは完成後のイメージから。イタリアの高級家具ブランド、B&Bイタリアのバックステージというシステムを使った設計となっていますが、イタリアのハイブランドのファッションショップのような雰囲気になりました。
左側がビフォー(天井が解体済みで床の仕上げ材も撤去された状態)で右側がリノベーション後のアフターの写真です。左手奥の柱型部分だけしか共通しているものがありませんね…。
計画中にB&Bイタリアが作ってくれたCGがこちらです。
まず既存の造作棚と壁を撤去して、天井が貼られて壁下地ができたところで、B&Bイタリアの担当者の大山さんに現地に来てもらい、実測してもらいました。当初設計側で指示した寸法図と違ったところがないかを確認する作業です。
大きな出来上がった白い空間に内部のウォークインクローゼット家具を組み上げるだけだと簡単なのですが、今回は扉や造作家具で覆われない部分の壁まで、B&Bイタリアの世界観で纏めようとしているので、扉枠との取り合いや高さまで厳密に実測打合せをしております。
最終形のプランはこちらで、B&Bに実測してもらった寸法を書き込んだ採取的な寸法図がこちらです。床のレベル(水平度)壁の矩(カネ・垂直度合い)や壁同士の平行の制度のこともあるので、どこで逃げ(バッファー・建築用語で誤差を吸収させる意)のフィラーを入れるかも考えた寸法図となっています。
すべての寸法を特注で作ることができるオーダーの造作家具であれば、後での調整も楽なのですが、ある程度の寸法システムがあって、さらにイタリアで事前に部材を揃えた上で発送してもらうのが外国製のシステム収納の難しいところで、今回はB&Bと事前に決めた寸法に基づいて壁を立てて貰うという逆算的な作り方となりました。
現場にシステム収納の部材が届きました。ノックダウン方式(すべての材料を細かな部品と部材に分割し、現場への搬入を簡単にして、現場で組み立て・据え付けをする方式)というと欧州ではドイツが得意そうに思われますが…、
、高級家具ではイタリアが圧倒的で、工場で精密に作られた部材を特殊なオリジナル金物を組み合わせる方式は毎回見ごたえがあります。
一つ一つの部材には、このような立体図が貼られており、この部材がどこに使われるものかが、初見でわかる仕組みになっているのも、細かいですが素晴らしいアイデアですね!紙の貼り付け方がちょっといい加減で剝がれそうなのが少々心配ですが…。
ほぼ天井まで届くサイズのパネルが30枚以上並んでいますが、この立体図に従って、それぞれの壁面に並ばされています。
最初に壁面み沿った背面パネルが固定され、床の台輪(黒い四角いフレーム)が置かれサイドパネルという流れで組み立てられます。
床に置かれて真上から撮影した台輪がこちらです。
代々木上原I邸の床は、マンションの管理規約の関係でフローリングにできなかったので、サイザル麻となっています。台輪は床にぴったりと固定されるのではなく、写真の銀色の丸いシリンダー状のアジャスターで少し浮いた状態で固定されます。少し浮いていることで、事前に配線しておいた電気の線が通せるようになっているのです。
パネルが段々と組みあがってきた様子です。床だけでなく、天井にもパネルは固定されず、浮いているのが分りますね。仮に取り外すことになった場合でも床と天井に小手されていないので、きれいに外すことができるのがこのシステム家具のスゴイところなのです。
廊下側から入って正面壁の中央部分だけ、背面パネルの色をオレンジ色にしてアクセントにしています。
B&Bイタリア側で用意してくれた施工用の展開図です。展開図の赤い部分に壁固定用の下地を入れてほしいとの依頼でした。また、巾木部分にコンセントをつけるので、どこから配線を出しておけばよいのかの指示も左側の平面図に記載されています。
電気の配線は本当に簡単で、延長コードを床上に転がしておくだけで、そこから先は低圧用のトランスを接続して、台輪下の間接照明へ繋げる形になっています。
コーナーは二種類の納め方があり、柱型があった場所はこのようにサイドパネルを2枚組んでいます。通常はどちらかの収納ボックスを差し込む形となります。まだ組み立て途中ですが、間接照明を試しで点灯すると本当にきれいなのです!
床付近を覗き込んだ写真では、台輪もサイドパネルも床から浮いていて、そこを間接照明が照らしているのが分ります。
WICの中央に置くアイランドカウンター収納です。この上に引き出しとガラス製のカウンタートップが乗ります。
ガラストップのアイランドキャビネットは日本には初めて入ってくるものだとのこと、日本側もよくシステムが分っていなかったので、弊社の担当の神崎さんとB&Bイタリアの大山さんと本国で、何度も質疑のやり取りをして内容を確認してからの発注となりました。
すべての部材の平行と垂直が担保されていないと、棚板の設置がきれいにできないので…、
ある程度組みあがってからの矩(カネ)の調整がとにかく大変なのです。
ようやすべての部材の矩の調整ができたところで、センターのアイランドカウンター設置です。
丸2日の作業でここまで組みあがりました!間接照明とアイランドのガラス面がキラリと光って華やかでとてもきれいです。組みあがると、職人さんたちのここまでの苦労が昇華された気がするのです。
アイランドカウンター上には建築工事でペンダント照明を吊るします。天井からの吊り下がりがきれいに見えるように多灯用のフランジを取り付けています。
選んだペンダント照明器具はオルーチェのKIN(キン)(スタジオ・ノイ)でサイズ違いの4灯吊りです。取付時にはアイランドを外して、高さを確認するためにまた戻してと、地味ながら大変な作業なのです…。
ちょうどアイランドカウンターの上で、歩いても当たらないエリアなので、思い切って低めに設定しました。
建築工事で用意した建具のミラーも入って、完成したWICです!どのアングルから見ても、どこにもスキがない完璧なWICですが、やはり主役となる洋服がないと、主のいない宮殿を見ているような寂しさがあるのです…。
そんな時に、B&Bイタリアの大山さんから魅力的なご提案がありました。
B&BでもここまでのサイズのWICの施工事例はなかったので、B&Bがお付き合いのあるエルメネジルド・ゼニアから洋服や小物を借りて、洋服を入れた状態での撮影をさせて貰えないかとのお話でした。お客さまのIさまにご相談したところ、Iさまの洋服は黒が多く、洋服を入れた状態でも華やかな様子にならないので、ぜひ記念に撮影してくださいとのことになりました。
お客さまのIさまにご相談したところ、Iさまの洋服は黒が多く、洋服を入れた状態でも華やかな様子にならないので、ぜひ記念に撮影してくださいとのことになりました。
運び込まれた洋服や小物を、やはりB&Bで用意してくれたハンガーに掛けてスタイリングしてくれている様子です。
ガラス張りのアイランドカウンターは内部までよく見えるので、ネクタイやスカーフまできれいに飾ってくれています。
洋服・小物入りで撮影させて頂いたWIC写真がこちらです。中央のアクセントのオレンジ色が効いています。
右端と左端は姿見用の鏡張り建具なので、向こうまでWICが繋がっているような錯覚を覚えますね。
アイランドカウンターも透明感があって素敵です。お客さまのIさまも、どのように洋服を収納したらきれいに見えるかの参考になると喜んでくださいました。
ちなみに、こちらは当初に計画していた、今よりもサイズが1.5倍ほど大きいWICのレイアウトプランです。アイランドカウンターとアイランドクローゼットがある約30平米(18畳)のWIC案でした。
隣接したオープンなシューズインクローゼット(SIC)とも繋がった本当に大きな案でしたが、窓際にはご主人さまの趣味室を作ることが最後に決まって、この案は残念ながらボツとなってしまいました…。
以下はその他の弊社で設計デザインを手がけた大型ウォークイン・クローゼットの実例ブログです。
・男女別の造作ウォークインクローゼット@六本木N邸
・ポロ(イタリア)社で組んだウォークインクローゼット@渋谷区Q邸
・ポリフォーム(イタリア)で組んだウォークスルークローゼット@渋谷R邸