Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

とらや菓寮@京都

見学記

お盆休みに京都に出掛けてきた際に、建築家・内藤廣氏が設計した「とらや菓寮」を見学して参りました。御殿場のとらや工房やとらや菓寮に続き、とらや本店が経営する建物を新しくリニューアルしてゆく一環のプロジェクトのひとつだそうです。元々京都が発祥の地であるとらやが、単にお菓子を販売するだけでなく、老舗としてのプライドを掛けて、お菓子を楽しむという文化を発信する新たなる基地として作り上げた空間のように感じられる建物でした。特注の丸みを帯びたタイルで囲われたどっしりとした建物と、鉄骨の軽やかなフレームに木製の建具を纏った平屋、その間に引き込むような静かなアプローチ。

京都とらや菓寮 アプローチ

鉄骨と木製のフレームが、お互いに助け合うように支えあう、繊細な構造体に囲まれた空間には、お菓子とお茶を楽しむ喫茶席のほかに、京都の伝統文化についての本が楽しめる、小さな図書コナーが設けられていました。建物内部だけでなく、外周部にも設けられた喫茶空間は、外部とは御簾戸だけで屋外と区切られた、半屋外のスペースとなっています。

京都とらや菓寮 インテリア

細かなディテールに至るまで、美しくコントロールされた建物の奥には、古くからのお蔵などに囲まれた、芝生と水盤、植栽からなる中庭があります。建物の中にいると、外を歩いてみたくなる外部空間、そして外部を散策していると、中に入ってお茶を楽しみたくなる、そんな風に建物と外構が、お互いをより美しくみせるように補い合う空間構成は、内藤廣氏の建築家としての円熟度を感じさせる素晴らしい建築施設でした。

一設計者してはただただ感服するばかりでしたが、一訪問者としては、本当に静かで気持ちよいひと時を
楽しませて頂きました。

マンションリフォームの監理のコツ

白金台S邸

以前から何度か掲載していただいた、リフォーム業界唯一の新聞社、リフォーム産業新聞の取材を受けました。今回掲載していただく予定の記事は、新聞の名物コーナー「ザ・クラフトマン」になりそうだとのことです。

通常は、現場の管理をするプロの活躍ぶりや、現場管理のコツ・秘訣などを聞くコーナーだそうです。私、各務(カガミ)の場合、リフォームはあくまでも設計で、施工側ではありませんので、設計側の監理となります。

同じ読み方「カンリ」でも、管理(通称:クダカン)と監理(通称:サラカン)は違う作業を示します。

管理は、施工側が施工の品質や、現場の安全性を監督する作業を指すのに対し、
監理は、設計側が設計図通りの施工がなされているかを監督する作業を指します。

今回の取材では、これまでの幾多のマンションリフォームの設計・監理で培った経験を、お話しました。幾つかのポイントを紹介すると、

  • お施主さまを上手に工事にまきこむこと(お施主様に上手く関与して貰うこと)
  • マンションの管理会社、管理事務所と仲良くすること、
  • 廃材を少なくして、既存部品を上手く転用すること、

更に、近隣との関係のこと、職人と設計者の関係のこと、などなど、多岐にわたる内容をお話いたしました。8月18日に発売されるリフォーム産業新聞に掲載される予定だそうです。どうぞお楽しみに。
因みに二枚目の写真は、キッチンキャビネットの組み立て中です。

オーダーキッチンとシステムキッチンの違い?

白金台S邸

マンションリノベーションの工事進行状況ですが、現在オーダーキッチンの組み立て中です。オーダーキッチンとシステムキッチンは、よく混同されることがありますので、その違いを、設計者の視点でまとめて見ました。以下、オーダーキッチンの特徴です。

・扉材とカウンター材をあらゆる素材から選ぶことができる
(システムの場合、決まった選択肢の中から選びます)

・金物、金具、装置類を多様なカタログから探すことができる
(システムの場合、そのメーカーが指定したものから選びます)

・クライアントの好みで、ありとあらゆる組み合わせができる
(システムの場合、提示されたユニットの組み合わせとなります)

・ミリ単位で寸法の指定ができる
(システムの場合は3〜5センチ単位で決めることになります)

・照明器具の組み込みや、建具との連動など、デザインの自由性がある
(システムの場合、特注変更の自由度はあまりありません)

・選択肢の豊富さや、デザイン性のバラエティーがあるため、時間と費用がかかる
(システムの場合は、カタログから選ぶので、時間はそれほど掛かりません、但し、費用はメーカーによってマチマチです)

オーダーキッチンの組み立て

システムキッチンも、各メーカーが競ってユニークなデザインや独特の機能を開発しているので、最近はオーダーキッチンなみの自由なデザインを実現しているものもあります。また、オーダーの場合、金物類は選べると書きましたが、あるシステムメーカーが開発した金物や装置類は、使えないケースがほとんどです。
今回の白金台の高級マンションリノベーション計画では、オーダーキッチンを選択しました。その理由は以下の通りです。

  • 扉の面材をリビングダイニングのデザインに合わせたかったから
  • リフォームで平面の寸法や天井高さから、通常のシステムキッチンが使いにくかったから
  • 使い勝手と同様、デザイン性をきちんとコントロールしたかったから

特にキッチンの引き戸を開けた際、ダイニングと直に空間が繋がり、ダイニングやリビングの家具や建具で使っている面材と同時に見えてくるシーンが多いことが、一番の理由です。

既存の壁を解体した時点で、下地や配管をチェックしてもらい、更にリフォームの壁を立てた時点で、詳細な寸法確認をしてもらい、それらを基にした製作図面を設計側でチェックし、ようやく製作が開始され、現在の現場での組み立てに至るという長い道のりです。一昨日からキッチンの搬入が始まり、約四日のスケジュールで組み立ててゆくことになります。

キッチンリフォーム ビフォーアフター

キッチン完成後の様子はこちらをご覧ください。