Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

カガミ建築計画の新事務所移転計画-6_クロスパネル貼り・サルバトーリ大理石・多素材キッチン

カガミ建築計画事務所移転計画

南青山の新事務所リフォームも、塗装とクロス張り、そして事務室の書棚と建具とキッチンを残すのみとなってきました。

お客さまがいらっしゃる打合せ室とは違い、スタッフが使う事務室はあまり費用を掛けない方針なので、既存の壁&天井クロスと同じ品番のクロスを貼りまわすことになっています。

以前は壁で仕切られていた小部屋をかつてのLDに合体させたこと、またキッチンにも新しい開口を作っているので、それなりのクロス張り作業がありました。

打ち合わせ室にテレビを設置する壁は、クロスのパネル貼りとしているので、クロス屋の清水さんがパテ作業をしてくれています。

ベニヤ板で5ミリの隙間をあけて張ってもらった壁にクロスを貼り込んで、このようなパネル貼りとするのです。

アップでディテールを見ると、このようになります。それほど材料費を掛けたデザインではありませんが、安っぽくないデザインになるので、この仕上は良く使わせてもらっています。

壁塗装の直前には、玄関壁の加工大理石のサルバトーリ張りも進んでいます。今回採用したのはワザとザラザラに仕上げた白系大理石のビアンコカラーラと黒い金属の目地棒を交互に張るタイプのトラッティです。

なぜか大理石の厚みと金属の目地の厚みがズレているので、目地棒に厚み調整為の両面テープを張ってもらい、大理石+目地棒のセットを作ってもらい、それを順番に張ってもらうようお願いしています。

2液混合型の接着剤をこんもりと大理石の裏につけて…、

垂直と水平を正確に出しながら一枚一枚を押し付けて張っていきます。

斜め上から見下ろすとこのようなディテールになっています。

玄関扉を開けて最初に目に入る部分なので、どのように仕上がってゆくのか楽しみです!

事務室側にはクロス張りの作業途中で、事務室の書棚の材料は搬入されました。こちらもリーズナブルなシステム家具の南海プライウッドで書棚を作ってもらうのです。かなりの大量の板材が届きました。

大工の小野寺さんたちが、平行や直角がきちんととれていない現場寸法に合わせて微調整をしてくれています。

こちらが組み上がった様子です。窓下だけではサイズが特注なので、造作家具屋さんに作ってもらう予定です。

次はキッチンの組み立てとなります。因みに、造作家具やキッチンといった現場組み立てがある工事は、実際に組み上げる場所の3~4倍ほどのスペースが必要だと言われています。

先行して大工さんが張ってくれたキッチンパネルの上から、吊戸棚用の下地を作っていきます。

背面側はトールの引き出し式パントリー収納が入るバックセットが組まれています。

大型シンクと60センチ幅の食洗器と3口のガスコンロが入るキッチンカウンターもセットされました。こちらの甲板はスペイン産のデクトン(コセンティーノ社)のものとなります。

一通りキャビネットが組みあがったところで、オーダーキッチン・リネアタラーラの弊社担当の牧野さんがチェックに来てくれています。

まだ扉や引き出し、機器類が入っていませんが、大枠が見えてきましたね。

間接照明を吊戸棚やレンジフードの背面に通した特殊なデザインが特徴のキッチンとなります。

ここまでできたところで、一旦キッチン組立作業は空けて貰い、側面セットの立ち上がり壁部分にマラッツィ社のカラフルなタイルのルーメをデザイン貼りしてもらいます。因みに、デザイン貼りした理由は所々に縦のタイルを貼ることで、タイル面のサイズ調整をして、カットするタイルの枚数を減らしているのです。

最後に扉材と引き出しをセットして…、

キッチンの完成です!カガミ建築計画が得意とする、多様な扉材や甲板を使った、複雑に絡み合ったキッチンです。
ところで、良くなぜ1種類の天板材や扉材にしないのかと質問されることがありますが、内部に周のされるものが多岐にわたるキッチンで、扉を一つの面材にする方が却って不自然だと感じています。
今回は以下の様に考えています。重たい鉄製の鍋やフライパン、ステンレス製のボウルやザルを収納する箇所はハードで機能性を感じさせる濃灰色の扉材に、ガラスのコップなどを収納する吊戸棚はトープ色の塗装扉、食材や和食器といったものを収納する箇所はオーク突板の扉としています。甲板や壁材も機能に合わせて、セラミックとクオーツストーン、キッチンパネルやタイル張りにしています。

上下階工事が追いかけ合うように進むリノベ現場_メゾネット住戸の渋谷区L邸

渋谷区L邸

メゾネット住戸の上下階、時間差で同時リノベーション工事進行中の渋谷区L邸です、

下階は解体が終わって、床地工事が進んでいる最中ですが…、

上階ではすでに建具枠造作が終わり、石膏ボード張りが始まっています。こちらは主寝室となるお部屋で、左側がベッドのヘッドボードで、右側のニッチ部分にテレビが入ります。

天井の折り上げ部分は、コーナーを直角ではなくカーブさせるデザインとしていますが、コーナー部分の木製の役物が入っていました。

石膏ボードが張り終わると、このように仕上がってきます。折り上げ部分には間接照明を入れると共に、隠蔽式エアコンの吹き出し口と吸い込み口が入っています。

ヘッドボードの奥側から見返した寝室の様子です。既にこちらのブログ記事で書いていたアドモンターのフローリング材が現地に入り、床フローリング張り工事も始まっています。

とても素直な木目で節(フシ)もほぼ無節と言えるほどきれいなフローリングです。

こちらは寝室の奥にあるウォークインクローゼットの空間です。

こちらにもフローリングが張られています。

先日組み立てていた東京バススタイルにお願いしたオーダーユニットバスも組みあがっていました。正面のガラス扉を開けると…、

ちょっと大きめサイズのこのような浴室となっています。正面壁上部の欄間(ランマ)窓はちょうど背面のミニキッチンに空いています。

こちらが、背面ミニキッチン側からみた欄間窓です。

石膏ボード張りが終わるとこのようになります。
外壁側の窓がない浴室ですが、廊下越しに自然光が入ってくるので、日中は電気を付けないでも浴槽の栓の開け閉めができるのです。

こちらは廊下と主寝室のラウンジも間仕切り壁です。引き込み扉用に二重壁になっていますが、ここだけ特注色で金属製枠をオーダーしたので、取り付けが遅れているようです。

そうこうしているうちに、金属枠が取り付けられて、石膏ボード張りと塗装の下塗りまで進んでいます。

廊下側から見たその開口部です。かなり大きな開口で、一枚の建具で納めようと当初は考えていましたが、これだけ大きな建具となると、室内へ搬入できないことが判り、袖壁を作ることとなりました。

先ほどの主寝室も徐々に仕上がってきました。壁には大理石のオデッサベージュをデザイン張りにしています。

上階は全ての部屋が仕上げ段階mに入ってきたので、関係者揃っての現場定例会議は、下階で行っています。おおよそ1.5か月遅れで下階も追っかけてきているので、ずーっと同じような打ち合わせが繰り返し行われています。

リノベ設計に効くハーフェレ金物_270度ヒンジを使った大田区S邸キッチン

大田区S邸

大田区のヴィンテージマンションリフォームS邸のキッチンの組み立てが始まりました。
今回は、トール収納の扉を270度まで開く特殊なヒンジと、極小サイズのエアヒンジといった、ちょっとマニアックな金物の工夫をご紹介します。

まずは背面コンロ側のキャビネットの組み立てからスタートします。左右にトールキャビネットがあり中央のカウンターセンターにガスコンロが入るキャビネットです。今回はこの向かって左側のキャビネットの使い方と特殊なヒンジについて後半で解説したいので、以下、キッチン組み立ての様子は簡単な紹介に留めておきます。

左上の大型ビルトイン型冷蔵庫が入るサイドキャビネットは、右から順に、引き出し式パントリー、その左が冷蔵庫置き場、動かせないPS部分をキャビネットと同材で囲んだ柱型、という構成です。
さらにその左側には、コーヒーメーカー等を置くカウンターと吊り戸が続きます。右上は中央に来るペニンシュラ型(半島型)カウンターです。こちらにシンクが入ってきます。3つの大きなキャビネットのレベルを出しながら慎重にセットしていきます。次は大判セラミックなどの化粧材を取り付けていきます。

こちらはペニンシュラに載せる天然石の甲板です。先回のブログ(他のプロジェクトのブログ記事ですが…)で細かく説明したクォーツサイトの「タージマハール」です。二段カウンター構成で、立ち上がり部分にコンセント穴が開いています。

ペニンシュラにカウンター材が乗った様子です。二段カウンターの上段(右側部分)と側面は天然石ですが、シンクが入っているメインのカウンター(左側部分)はタージマハールとそっくりな柄の大判セラミックです。

さて、今回のブログの本題です。ガスコンロの左側のトールユニットをご覧ください。こちらに一工夫がされているのです。箱の左側にちょっと大きめの丁番が幾つか取り付いているのが見えるでしょうか?実はこのトール収納の扉は270度開いて欲しいと考えていました。

270度まで扉が開く丁番を使う理由は、こちらの図解を見て頂くと分かりやすいと思います。お客さまが来たときには電子レンジや炊飯器を収納するトール収納内部を扉で隠すことができるが、普段は扉を開けて使いたいので、扉が邪魔にならないようにトールキャビネットの側面にピタリと寄せることができるという仕組みを実現することを目指しているのです。

12年前にお手伝いしたプロジェクトで、270度回転するヒンジが必要になり、色々と調べてハーフェレ社のこちらのヒンジを使ったことがありました。今回オーダーキッチンをお願いしたリネアタラーラの牧野さんに調べて貰ったのですが、残念ながら廃盤となっていました。

他社で探しても見つからないとのことでしたので、こういった複雑な動きをする丁番の専門会社であるハーフェレ社であれば、後継機種があるのではと考え、ハーフェレ社に直接問い合わせをしてみました。そうしたらなんと、日本では販売していないが、ドイツ本国では上記のヒンジが販売されていることが判り、このキッチンの為だけに輸入してもらうこととなりました!

特殊な動きをするヒンジなので、まずは分解写真で見てください。ただ、これだけだと良く分からないので、(初めて)動画をブログにアップしてみます!

手で押さえている部分が箱で、青いパネルが扉だとすると、扉を270度回転させることできる特殊な家具ヒンジです!このモックアップはオーダーキッチンをお願いしているリネアタラーラが扉の取っ手のことや、扉背面に取り付ける反り止めとの関係も含めて検討したうえで作ってくれたものです。

ちょっと先走ってしまいますが、完成時の様子がこちらです。担当スタッフの竹田さんにモデルさん役をやってもらいました。扉が完全に開くので、トール収納内部の炊飯器用引き出し式の出し入れもスムーズです。そして普段開ききった状では、玄関へと抜ける通路の行き来も問題なく、照明スイッチもうまく使えるように仕上がりました!

もう一つ、同じハーフェレ社の極小ヒンジもご紹介します。エアヒンジという名称のやはり優れものなのですが、こちらは既に日本に入ってきて約9年経つので建築・インテリア関係の方はご存じだと思います。

キャビネットにこのような穴をあけて、ヒンジを差し込んでビス止めするだけで取り付けができて、サイズが極小なので、ほとんど目立たないというものです。こちらについては、ハーフェレ社のデモ動画がありますので、そのリンクを張っておきます。

そしてこちらがひと通り組みあがって、養生されたキッチンの全容です。
以下、ちょうど良いタイミングでニュース記事が公開されました。

先月、新宿デザインセンターオゾンにて話題の(笑!)ハーフェレショールームを訪問取材した際の記事「リノベ設計に役立つ!ヨーロッパで磨かれたハーフェレの家具/建築金物の活用法を建築家・各務謙司氏が解説」がちょうどアップされました。

以前より金物で困った時に相談に乗って貰っていた、ハーフェレの佐野さんと大木さんに色々と細かく詳しくお話をした様子が分かる記事ですので、どうぞご覧ください!