Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ハンターダグラスのシルエットシェード研究

港区R邸

窓際をすっきりと見せたいときによく使っているハンターダグラス社のシルエットシェードですが、現在採用を検討している港区R邸のお客さまから遮光性能などについての質問があったので、ご一緒に六本木一丁目のショールームに伺って参りました。

ハンターダグラスショールーム訪問

白金台S邸からシルエットシェードを使い始めて、もう9年もの月日が経ちます。以前、一度だけこちらのショールームにお邪魔しておりましたが、他に新しい製品も増え、グレードアップしたシェード類もあるので、それらについての一通り説明をして頂きました。

ハンターダグラスショールームにてシルエットシェード見学

同じシルエットシェードだけでも、2種類の羽幅の違いや、遮光と透過の二通りがあります。右側のガラスの奥の製品はより立体的な羽を使ったピルエット・シェードという製品です。

ハンターダグラスショールーム@六本木一町目

こちらの展示コーナーでは、シルエットシェードの背面になって見えなくなってしまっていますが、縦型のルミネット・シェードも展示されていました。こちらは以前南麻布K邸のリビングで採用させてもらったものです。

シルエットシェード(ハンターダグラス)

シルエットシェードの遮光タイプを使った際のデメリットも説明してもらいました。窓枠とシェードの間に隙間ができてしまうので、横からの光漏れがあることや、羽を閉じたときにでも上の方はそれなりに閉まるのですが、下の方は生地の重みで垂れてくることで、閉まり度合いが甘くなるとのことでした。

ハンターダグラスのシルエットシェードの色味確認

メリットとデメリットを説明した上でも、やはりシルエットシェードを使いとのことでしたので、色々な色味のサンプルを見て頂きました。

ハンターダグラスショールーム訪問

小さなサンプルだけで見ても、大きな面になった時のイメージが湧きにくいとのことで、ハンターダグラス社の営業担当の長濱さんに事例写真でプレゼンして貰いました。

シルエットシェードの色味

色味を実例写真で確認の上、主寝室は黒で、息子さんのお部屋は濃い茶色で進めることに決まりました。ただ、これらの色は廃版予定で、在庫が無くなり次第終了とのことで、早めにリフォームキューからオーダーして貰うことも決まりました。

シルエットシェードの汚れ掃除方法

以前、あるショールームでシルエットシェードを見たときに、蚊かハエの死骸がフィンの間に残ってしまっているのを見たことがあったので、そのようなことがあるかを念のために長濱さんに確認しました。ホコリについては静電気防止処理をしているので、ほとんど気にならないそうですが、たまに虫が間に入ってしまうことは確かにあるそうです。ただ、彼女が持っているようなエアスプレーを使えば、透過性のある側のスクリーン側から吹けば、すぐに除去することができるとのことで、実演もして貰い、この点でも納得してシルエットシェードを採用して頂けることになりました。

 

元麻布ヒルズのコンセプトルームでお打合せ

元麻布ヒルズA邸

元麻布ヒルズの150平米のリフォームプロジェクトで、森ビルが所有している高層階のコンセプトルーム(リノベーションのショールーム?)を使わせてもらっての打ち合わせをして参りました。

今回のリフォーム工事はマンションの分譲会社であり、今も棟内に賃貸住戸を多数持っている森ビルから紹介して頂いた会社にお願いすることになっており、その関係でこのコンセプトルームを使わせて貰いました。

実は、こちらのショールームはまだ完成したばかりの2015年に見学させて貰ったことがありましたが、改めてお客さまと一緒にお邪魔して、参考になることが沢山ありました。

今回のお打合せは主に素材の打ち合わせがメインでした。特に玄関ホールの床と壁に使う大理石又はタイルの候補サンプルとカタログを持参して、それぞれのメリット、サイズ、価格感を見て頂きました。
大判の大理石調タイルは輸入物ばかりで、国内在庫があまりないだけでなく、製品自体の扱いがすぐに無くなったりと、なかなか難しいのが実情です。

リフォームという意味では、間取りは大きく壁が移動する箇所は無いので、見積り用の資料もこのように平面図に仕上げ材を書き込んだものを中心に、

デザイン的にポイントになる部分については、このようなスケッチや展開図を描いて補足した見積り用資料を作っています。

見積りの項目に抜け落ちがないかを見て頂きながら、細かい箇所については口頭で打ち合わせをしてメモ書きを加えてゆきます。

コンセプトルームは外国からの投資家も意識した和の要素が強いので、今回の元麻布ヒルズA邸で考えているデザインの方向性や素材感などはテイストが違い、その点ではあまり参考になりません。ただ、気持ち良い空間で打ち合わせができることは何よりのメリットでしたし、細かな点では、A邸では廊下からリビングへの扉を床付けのフロアヒンジを使う予定ですが、こちらにもフロアヒンジがあるので、その使い勝手を実地で見て、体験して頂くことができたことなど、便利なことも幾つかありました。

和のテイストは確かにありますが、250平米の広さを贅沢に使った空間は家具やインテリアアート次第で、色々とアレンジが効きそうでした。

フレックスフォルムのソファにプロメモリアのチェア、アルマーニカーサのスタンド照明に、フルオーダーで作って貰ったラグ等、大好きな家具&インテリアに囲まれた中での打ち合わせはとても快適でした!

ニシザキ工芸との造作家具打ち合わせ

港区R邸

港区R邸の作り付け家具は、建築の造作家具分野では抜群の知名度を誇るニシザキ工芸さんが担当してくれることになりました。まだ、詳細が決まっていない段階から、こちらのデザインイメージを伝えるとともに、お客さまが色々と検討できるように突板の塗装サンプルを作って貰うところから打ち合わせを始めました。

造作家具&建具打ち合わせ_ニシザキ工芸

ニシザキ工芸が有名なのは、彼らが作る造作家具の精度以上に、家具塗装へのこだわりだと言われています。現在の造作家具屋は、家具を作る工場も自社で作っているところは少なくなってきており、塗装は外部委託しているところがほとんどなのですが、ニシザキは自社工場のすぐ隣に塗装工場を持っているのが、何よりの強みになっているようです。
因みに、先日のブログで紹介した、お客さまとの打合せで使った突板の塗装サンプルはほぼ全てニシザキさんにお願いしたものです。

造作家具ディテールスケッチ

初回の打ち合わせでは、初っ端から家具の詳細図を書いてもらうのではなく、まず初回の打ち合わせではこれまでに僕らがデザインしてきた造作家具の写真を見て貰ったり、仕上がりイメージに近い写真などを見て貰い、特に難しくなりそうな部分については、写真のようなラフスケッチを描いて、考えて貰うように依頼致しました。

造作家具&建具打ち合わせ_ニシザキ工芸

2回目の打ち合わせでは、先回の打ち合わせで詰めた箇所をより具体的に描いた図面を用意してくれたので、事前のメールやり取りで送って貰った図面に赤チェックをしたうえで、寸法の体系などを考えさせて貰いました。

家具図の赤チェック

チェックは赤ではなく、青でしたね…。
番号を振った造作家具だけで約30個あり、さらに建具や枠も加えると50個近い要素を、それぞれの機能的&デザイン的だけで判断してゆくと、全体としての作り方の統一感が無くなってしまうので、太い部材の寸法や細い目地の体系、金属との取り合いなどを整理して考えてゆきます。

シャム柿の塗装パネルサンプル

また、お客さまとの打合せに必要な具体的に塗装サンプルをどのように作って貰うかを相談させて貰いました。2枚ならんでいる塗装された突板は西麻布N邸でも採用したシャム柿の突板(他社製作品)です。実はこの突板の大元を扱っている山一商店さんには二種類のシャム柿の突板があり、それらを混ぜるのか単体で使うのかをニシザキ工芸の野田さんと上野さんに相談するためにお見せしたものでした。

シャム柿突板の貼り方研究

2種類の突板を撮影したものをどのように並べ、白太(シラタ:白い部分)がどのように見えて、デザイン的に一番映えるかを検討するための資料です。突板屋さんでは、突板には表と裏があって、できれば表面だけを使って欲しいと言われておりましたが、経験が豊かなニシザキ工芸さんでは、塗膜を厚く作る鏡面仕上げにするのあれば、裏面を使っても良いのではとのアドバイスも張って、裏面も使ってランダムに見える柄で進めることになりました。

造作家具と建具へのシャム柿突板の貼り方指定

実際に上記の突板を作った場合に、造作家具と建具がひと繋がりになった個所にどう貼るかを検討したのがこちらのスケッチです。

造作家具&建具打ち合わせ_ニシザキ工芸

より詳細な製作図を作って貰ったうえでの3回目の打ち合わせで、ようやく図面に赤チェックを入れて、ニシザキ側の考え方とこちらのデザイン意図のすり合わせを行いました。

造作家具&建具打ち合わせ_ニシザキ工芸

金物などのサンプル(金物はニシザキではなくリフォームキュー工事)が届いたので、それらと絡む部分のディテールも打ち合わせをさせて貰いました。写真中央左の真鍮色のルーバーは、玄関折り上げ天井内の立ち上がりや、リビングの窓際の小壁に貼る部材のサンプルです。

金属ルーバーの取り付け方スケッチ

ルーバーの取り付けは建築工事の範疇で、造作家具との絡みは無いのですが、リフォームキューの坂本さんも全ての打ち合わせに同席してもらっているので、一緒にタイミングで相談させて貰いました。
この金属製ルーバーの質感がとてもきれいで、お客さまも気に入ってくださっているので、柱型に合わせて作るAV収納の扉に真鍮の目地棒を追加で入れる提案をしたところ、そのようなグレードアップの提案は大歓迎だとお客さまに言って頂けたので…、

真鍮目地入りの柱型AV収納スケッチ

急いでこのような立体スケッチを描いて、お見積りをお願い致しました。真鍮目地と合わせるスティッチ入りの人工レザーパネルのサンプルも依頼致しました。この作り付け家具は、デザイン的なディテールだけでなく、内部にAV機器類や照明コントローラーのルートロン、更には下部の床との隙間にお掃除ロボのルンバも入ってくるので、どこの扉がどう開いて、内部の熱をどう排熱するかも理解してもらう必要があります。

金物ディテール_ニシザキ工芸

そしてニシザキ側から上がってきたのがこの詳細製作図です。真鍮の角材とアングル材をうまく組み合わせて、目地がきれいに通るように工夫をしてくれていました。機能的にも、リフォーム工事側からAV機器やスイッチ類の寸法も出してもらっていたので、何とかうまく収めることができそうです。

レザーパネルサンプル_スティッチ

人工レザーのパネルサンプルもその後届きました。スティッチの色を2種類お願いしていたのが、一つしかなかったことと、コーナーの部分の縫い幅が変わってきてしまっていたので、その再調整をお願い致しました。

建具と建築工事との取り合い

一通りの家具打ち合わせが終わったところで、建築工事との絡みの確認をしてゆきます。造作家具を製作図レベルで詰めてゆくと、細かいディテールにまで入り込んでしまい、建築工事とのスケールギャップが生じてしまうことがあるので、建築工事と造作家具工事を同じペースに戻すために、建築と造作の取り合いを見ながら復習してゆきます。

特注の建具取っ手スケッチ検討

また、実際に人の手が触る取っ手等については、縮尺の小さい図面だけでなく…、

特注の建具取っ手実物大スケッチ検討

原寸大に起こした図面を作って、指がうまく入りそうか、デザイン的に重たく感じないかなどをチェックしてゆきます。

特注取っ手と鍵の合体ディテール

また、これまでのデザインでは、特注の金属製取っ手と鍵がバラバラになってしまっていたので、それを何とか一体化させようと、リフォームキューの坂本さんがサンプルで取ってくれた鍵を見ながら、特注取っ手に組み込む工夫を前田君が考えてくれました。
合計で5回の打ち合わせを経て、造作家具の詳細まで詰めることができました。その後は、現地を野田さんや上野さんに実測行って貰い更に精度を上げた図面を、石工事や金属工事との取り合いを微調整し、メールで3度ほど赤チェックのやり取りを経て、最終的なGOサインを出すことができました。ここまで粘り強く僕らのデザイン&アイデアを具現化するために付き合って、図面の修正も重ねてくださったニシザキ工芸チームの皆さまとリフォームキューの坂本さん、どうもありがとうございます。そしてここからの実際の製作と取り付けもどうぞ宜しくお願い致します!