Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

中国福建省への大理石視察ツアー-3

港区R邸

福建省アモイ市近郊の大理石視察ツアーの3日目は、港区R邸のリビングダイニングの床に張る大理石の現品確認がメインの目的です。

キダマーブルの斉藤さんには同行してもらっていますが、代理店が昨日までの石販の秦さんからこれまでも幾度か他のプロジェクトでお世話になっているアジアングラニットの池田さんに代わり、現地側の代理人と通訳の方も変わりました。代理店によって特異な石種があるそうで、キダマーブルでは幾つかの代理店を使い分けているそうです。

また昨日に続き、巨大な大理石展示場を廻ってゆきます…。

今回捜している石は、当初サンプルを手に入れた際にはブレッチャ・オニチャータ(Breccia Oniciata)だと聞いておりましたが、人によっては、それはゴールデン・ストリングス(Golden Strings)だと言われたりしましたが、とにかく日本では見たことがない特殊な大理石なことは確かなようでした。
英語でも検索を掛けたところ、ベローナ・ゴールデン(Verona Golden)だったり、ツンドラ・ゴールド(Tundla Gold)といった名称で似たものが見つかりましたが、その正体は良く分かっておりませんでした。

中国側の代理人には事前にこちらのイメージ写真とサンプル写真を送っていたので、ある程度目安をつけておいた箇所を回ったので、最初から色味はピッタリのものが見つかりました。前田君が持っているものがこちらのサンプルですから、現物から切り出したと思えるほど似た色味&表情でした。その後に回った展示場でも、ほぼ同じ表情のものが見つかりましたが、ただ、残念ながらスラブの厚み(つまりは石の厚み)が薄すぎて、日本への輸入時に破損してしまいそうなことや、面積が足りないことが理由で採用することは出来ませんでした。

最後に回ったのがこちらの市場でしたが、スラブの厚みも最適で、面積も十分な量が確保できることが分かりました。ただ、1ブロック分のスラブ材に濃淡があり、濃い部分については、こちらがお客さまに出発前に了承をえていたものより黒味が掛かっていました。

日本であれば、仮押さえをお願いした上で、お客さまに事情をお伝えしてサンプルをお見せした上で、最終的な購入を判断できるのですが、中国の場合は仮押さえという概念がないので、ここで購入するしか確保する方法がないのです。購入を見送って、日本に戻ってお客さまと相談のうえで決定した際に、この石材が売れてしまっていれば、また改めて中国に飛ぶしかなくなってしまうということ、まだスケジュール的にも早急に決めないと輸入してからの施工も間に合わないことを勘案して、急遽中2階にある打ち合わせ室で、石割と石取り、さらにどの部分にどの濃さの石を使うかを検討することになりました。

その間に、帰国後にお客さまに色違いのことをご説明するために、それぞれの色味に近いサンプルをお願いして、現物と比較した写真を撮らせて貰いました。
キダマーブルの斉藤さんと前田君と各務で検討した結果、直接自然光が当たらない玄関ホールと来客用トイレと廊下部分に黒っぽい石を使えば、メインで大きく見えてくるリビングダイニングには明るい表情のものを廻せることが分かったので、その場から日本の工事担当のリフォームキュー坂本さんに電話したうえで、この方針で購入したい旨を伝えたうえで、すぐに現地で購入手続きを進めて貰うことに決定しました。

現地で購入する場合は、すべてのスラブをきちんとチェックしておいた方が良いので、市場の人にも手伝ってもらって、重たい石スラブを一枚ずつめくって、隙間から石材に傷や割れ目がないかを全て確認して行きました。

また、それぞれのスラブの横に掛れている数字と、背面に張られている番号を控えて、日本に入ってきた際に現物であることを確認できるように準備しておきました。因みにこの石材の中国名も色々とありましたが、購入したものは云多拉金という名称で、他には云多拉灰や金灰や黄金灰といった名称で展示されていました。

折角中国まで来たのに、うまく仕入れられないとすべてのスケジュールが変ってしまうという、責任重大なプロセスでしたが、何とか無事購入することができたので、一同ホッと致しました…。

この市場はBMGストーンという会社でしたが、他にも面白そうな大理石が多数展示されていたので、ちょっと散歩がてら見学して歩きました。

日本では良い柄のスラブ材がなかなか見つからないネロクラウンやネロマルキーナは黒白根という名称で、良さそうなものが沢山並んでいました。

初日に希少石の市場でも見たオニキスのユニークな柄のスラブも沢山展示されていました。

一枚のスラブだけでは、ただ不思議な模様にしか見えませんが、二枚のお揃いのスラブを本を開いたような張り方(ブックマッチ)で張ると、神秘的な文様になってくるのです。

日本へ戻る最終日の午前中は、少しだけアモイ市の市内観光をさせて貰いました。留守の事務所スタッフへのお土産を探しましたが、海を挟んでお向かいにある台湾土産ばかりで、福建省独自の特産品はほとんど見つかりませんでした。

こちらは3泊したホテルの部屋からのアモイ市の景色です。戸建て住戸は極端に少なく、団地形式の古い建物が街区に沿ってブロック状に立ち並び、大きな道に沿って比較的新しいマンションやオフィスビルが並んでいました。大理石の一大集積地の近くではありますが、大理石を特徴的に使ったようなデザインの建物は見つけることができませんでした。

最後の写真は、帰りの飛行機の窓から見た大理石市場が集まった水头市の空撮です。白い屋根と黒いパネル屋根になっているところのほぼ全てが大理石市場でしたから、どれだけのマーケットが集積しているかが良く分かりました!
3泊4日ながら中身が詰まった大理石視察ツアー、大理石や御影石について、色々な勉強をすることができました。

中国福建省への大理石視察ツアー-2

港区R邸

港区R邸の石探しのために中国福建省に出掛けた出張の二日目の様子です。

この日の一番の目的はキッチンの2段カウンターに使う、御影石系の黒い石探しでした。昨日の希少な大理石ショールームは、入り口にセキュリティーがあって、簡単には入れない建物となっていましたが、一般的な大理石ショールーム兼市場は、このようにあまりに広いので、道路からフリーに車で入って、内部をドライブして目的の石を探すスタイルとなっています。

所々に中二階の打ち合わせ室があるので、そこから全体を見下ろした様子です。例えていえば、東京ビッグサイトのホール二つ分程の広さがある中を車で探してゆくイメージです。高い位置に掲示板がありますが、石は即金で購入してゆくのが中国流ですので、どこにどのような石の在庫があるかは、売る側でもきちんと把握できていないようです…。

本日のお目当てのミカゲ石のコスモスブラックは、これだけ広い市場で、写真に売っている二台の車の奥のブロックしかありませんでした…。

こちらが間近で撮影した現品ですが、黒のベースとなる部分はとてもきれいでしたが、模様として入っている斑の色が黄色で、もう少し流れのような文様が欲しかったので、こちらについてはペンディングとなりました。

先ほどのサイズの展示場を3か所廻ってようやく見つけたのが、こちらの御影石コスモスブラックです。ツアーに同行してもらっているキダ・マーブルの齋藤さんと一緒に撮影したものです。

黒地に白い宇宙の銀河のような模様がとてもきれいに入っているスラブ材でした。良く見たところ、大きなヒビが一か所ありましたが、それを避けて石取りすれば、カウンター材と横や前面の部分も柄を繋げて使えるサイズが確保できることも、現地で確認しました。

当日の午後は時間が取れたので、今後の勉強のために、近くにある大理石の加工工場を見学させて貰いました。こちらは、建物の外壁に張る御影石の柄をチェックするために、屋外に並べていた様子とのことでした。

室内もとても広い作業場があり、そこで沢山のプロジェクトの製品検査が行われていました。写真中央に中二階状のブリッジがみえますが、そこに上ると、

このように上階から石材を並べた様子を確認することができる仕組みになっています。日本でも関ケ原石材のような大きな工場では、似たような施設がありますが、人件費のことでほとんど中国に仕事が取られてしまっているそうです…。当日も日本の現場名が並んでおり、日本のゼネコンや設計者がこちらを訪問してチェックしているようでした。

工場奥にある加工場では、沢山の職人さんがちょっと古めの加工道具を使って、色々な加工をしている様子も見学させて貰いました。

こちらの工場では石材をカットして、モザイク状に張ることも得意とのことで、イメージ図があれば、その十r気にモザイクシートを加工してくれるとのことでした。

ちょうど港区R邸の玄関ホールでも、大理石のモザイク張りをイタリアのシチスにお願いしたことを話したところ、次回はぜひこちらの工場でやらせて欲しいとの話がありました。

他にも、この写真のように大理石の表面に色々な形状の溝を掘ったりすることで、ユニークな表情の石材を作ることもできることを教えて貰いました。

 

 

 

 

 

中国福建省への大理石視察ツアー-1

港区R邸

現在設計進行中のプロジェクト港区R邸で使う石材を探しに、中国福建省アモイ市郊外にあるアジア最大の石材マーケットにスタッフの前田君、石材の発注加工をお願いしているキダ・マーブルの齋藤さんと一緒に出掛けて参りました。

アモイ市から車で1時間ほどの水头市という、ほぼ全域すべてが大理石や石材に関連した市場になっている町があるのです。車の中から街の様子を撮影した写真ですが、看板には大理石各種の中国名だらけで、街を走っている車も大理石スラブを運ぶトラックばかりといった様相です。

東京からアモイ市までは飛行機で4時間半ほどで着くので、朝に成田から飛んで空港から車で水头に向かって、午後3時頃には、まずは最初の目的地(因みに、こちらは水头市のすぐ近くの泉州市です)に到着しました。その名も世界石材博物館!

今回の中国大理石ツアーの目的は大きく二つあります。1つは背面からの光を通すオニキス系の大理石探しで、もう一つはすでに日本に取り寄せたサンプルでお客さまから大よその了解を得ている大理石の実物探しが目的となっています。
こちらの博物館という名前のショールームでは、事前にある程度調べていたオニキス系の大理石が本当に使えそうかを確認することになっていますが、そこに到着する前から、凄い迫力のスラブ材が並んでおり、目移りしてしまいそうです…。

このショールームの最も奥深い場所に、お目当ての希少石のコーナーがありました。色々な色の水晶やメノウ、オニキスなどの光を透過する石材を集めて接着して、それをスライスしたような風合いのスラブ材が並んでいます。

この写真のような青や、赤茶色の石材から、

このようなとても天然石の色とは思えないような鮮やかでカラフルな石スラブが並んでいます。

僕らがお目当てにしていた透過系の石材は二つあったのですが、一つはこちらのグラフィック・フェルドスパー(Graphic Feldspar)という石材です。フェルドスパーは長石という石の種類で、黄色味のあるゼブラ柄の石材を集積させてカットしたものがこちらのスラブ材のようです。

早速、先方の職人にお願いして吊り上げて貰ったうえで、背面から強い光を当ててみました。写真左が普通の状態で、右側がバックから光を当てた状態です。相当に強い光を当てると、ここまで光を透過することが分かりましたが、残念ながら当初想像していたものとは少々違っていました…。

もう一つの石材がこちらのスモーキー・クオーツ(Smoky Quartz)です。水晶の一種で煙水晶とも呼ばれるやや灰色&茶色掛った色味の石材だそうです。

上半分が表から光を当てた状態で、下がバックライトで照らしたものです。同じ名称の石材で、色が濃いめのダークと色味の薄いライトがあるようで、本当はライトを見たかったのですが、こちらにはダークしかなく、そちらは 確認することができませんでした。

実は、この写真は2年ほど前に、ニューヨークの石材屋巡りをした際に見たイタリアのAntolini社のスモーキー・クオーツ・ライトのパネルに背面から光を照射したもので、これを実物で確認できればと思っていたのですが…。
どちらにしろ、グラフィック・フェルドスパーよりは、こちらのスモーキー・クオーツの方がこちらが想像していたものに近いことが分かりました。ただ、こちらのショールームでは現物のカットサンプルを貰うことができないので、写真をもとにお客さまに相談することになりそうです。

今回のツアーの前半を一緒に回った方々です。キダマーブルの齋藤さん、中国と日本を行き来して石材を探してくれた石販の秦さん、そして現地の代理人兼通訳兼運転手の孟さんとテイさん、そしてスタッフの前田君です。

この巨大なショールームの中には、その他にも希少で珍しい石材が沢山あるので、帰りがてらそういったものを拝見させてもらいました。こちらは、実際に港区R邸のリビングでも採用予定のイタリア産の超高級大理石のポルトロです。これだけの枚数のスラブ材が並んでいることはめったに見ることができないので、大いに驚きましたが、良く柄と色味を見ると、すでに日本の関ケ原石材で見つけていた同じポルトロのスラブ材と比べると、質は見劣っていることが分かりました。ただ、日本ではめったに見つけることができない石種がこれだけ並んでいるのは、やはり中国の凄さを感じました。

こちらはオニキス系のスラブ材です。オニキスもあまりに高価なため、日本では岐阜&三重エリアの石材屋でもめったに見ることがないものですが、これだけ並んでいるとは驚きでした。

その他、ド派手な石材が沢山並んでおり、この広さのショールームを全て回ることはとても難しいことが分かりました。

とにかく、世界中の石材が中国福建省に集まっていることは良く分かりましたが、唯一弱いのがこちらの白系の大理石だということも推察できました。こちらはカレカッタと呼ばれるイタリアの大理石ですが、スタトゥアーリオと並んで、アメリカで大人気の石材で、中国に来る前にアメリカに取られてしまっている様でした。

ショールーム内には小さな打ち合わせ室や石材を使った多くの実例室がありましたが、こちらは総大理石造りの打ち合わせ室(家具は除く)でした。

エントランス横には、このような大空間がありましたが、石材ショールームの面積はこの空間の数十倍の広さがありました。

このショールーム前での記念撮影です。正味2時間ほどの見学でしたが、初日からおなか一杯になる大理石三昧のツアーでした…。