Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

フレンチヘリンボーン張りのフローリング@成城Z邸

成城Z邸

成城Z邸の玄関ホールと廊下で、お施主さまがずっと楽しみに待ってくださっていた床のフレンチヘリンボーン張りが始まりました。

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といっても、慎重な大工の内原さんは、墨出しして一気に張る訳ではありません。全ての部材を仮置きして、どこからどのように貼っていったら良いかを研究し始めました。

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このように、センターにだした墨と、サイドに設けた当て木の間に、薄いビニールテープ一枚をかましながら、全体を並べてゆきます。

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フレンチヘリンボーンはこのような状態で(搬入時は勿論梱包されていますが)、現場に運ばれてきます。通常のフローリングであれば、ある程度を仮並べしてみれば、寸法的な精度や、反ったりムクったりしている状況も判断できますが、一般的なヘリンボーン以上に張るのが難しいと言われてるフレンチヘリンボーンなので、全てを仮並べしてみることになったそうです。
因みに、ヘリンボーンとは模様の名前で、へリング(魚のニシン)を開きにした状態のボーン(骨)の模様に似ているので、この名前で呼ばれています。一般的なヘリンボーンは四角いフローリングを互い違いに並べてゆくイメージですが、よりエレガントなフレンチヘリンボーンは、本当の魚の骨のようで、頭と尻部分が尖った長いひし形(平行四辺形)を並べた状態に仕上がります。

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大工の内原さんと現場監督の鈴木さんが座っているのが玄関ホールで、手前に設計担当の森井さんが屈んでいるのがリビングになります。奥に長く続いている廊下にもフレンチヘリンボーンは伸びてゆきます。

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内原さんにお願いして、作業しているところを、真上から撮影させて貰いました。張り始めと張り終い(はりじまい)が難しいそうで、中間部は寸法さえきちんと押さえておけば、ある程度はきれいに張れるとのことでした。
「魚の骨」模様なことが、この写真で一番良く判ると思います。

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こちらはナメルように覗いてみたヘリンボーンの様相です。周囲には、同じオークの無垢フローリングをボーダー状に張ることになっていますが、実は同じ厚みの材料が見つからなかったので、違うメーカーで厚みも違うフローリングをフラットになるように張って貰うことになっており、これも相当な苦労になってしまいそうです…。
まだ、フレンチヘリンボーンも無塗装の状態ですが、張り上がってオイルを塗布した仕上がりが今から楽しみです!

以下、後日仕上がってきたフレンチヘリンボーンの様子です。
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ヘリンボーン同志の隙間と周りを回っているボーダー状のフローリングとの隙間もピタリと同じ寸法で収まっています。

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長い廊下なので、廊下の中央にもボーダーを廻して、縁取るように仕上げて貰っています。

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廊下全体を俯瞰した様子です。手前で養生されている部分にもフレンチヘリンボーンが張ってあるので、最終的な仕上がりは凄い迫力になりそうです。

 

元麻布の200平米越えスケルトンリノベーションプロジェクトがスタート

元麻布I邸

先日、お付き合いのある不動産会社からご紹介頂いた、元麻布の200平米越えマンションのスケルトンリノベーションプロジェクト、お客さまと現地を拝見しながらご提案した案が気にいったとのことで、ご一緒に進めさせて頂くことになりました。

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築年数は10年ちょっとで、以前から前を通るたびに「素敵なマンションだな」、「いつかこのマンションのリノベーションをお手伝いしたいな」と思っていた憧れの建物だったので、声を掛けて頂けたことだけでもとても嬉しかったです。

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ご依頼を受ける上でカギになったのは、このキッチンだと思っています。というのは、当初不動産会社の担当者から伺ったリノベーションの希望条件では、キッチンはまだ比較的綺麗で十分使える状態にあるとのことを聞いておりました。

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確かに、現調時にもオーブンやガスレンジ、食洗器やレンジフードなどの設備類は十分使える状態で、そのままでも良いかなと思っていました。しかし、ちょうど初回面談でお目に掛る直前に、奥さまのご妊娠が判ったとのことで、こちらも考え方を切り替えました。初めてのお子さまを育ててゆくうえで、完全にクローズドなキッチンでは、お手伝いさんなしでは相当難しいことをお伝えして、ダイニング側に開閉式の扉を設ける考えで、キッチンも全面的にリノベーションするご提案をさせて頂きました。

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資料として手元にあったLDの写真をコピーしたものに、その場で赤ペンでスケッチした開閉式キッチンのアイデアです。来客時には2枚の大きな扉を閉めればキッチンを隠すことができますが、普段は子育てをするであろうリビングダイニングをオープンなカウンターから様子見しながら調理ができる台所の案をご提案いたしました。

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こちらが後日、そのアイデアを纏めたリノベーションプラン案です。開閉式のA案、オープンカウンターのB案、それらにまた水回りや廊下、沢山の本をお持ちなので書庫を作るアイデアを加えて、F案まで6つのプランを作ってお話をさせて頂きました。

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明るく開放的なリビングには、テレビを置くカウンターを設け、その手前に大きなL字型のソファーをレイアウトし、ダイニングとの間には、奥さまが弾かれるグランドピアノをレイアウトする予定です。

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水回りについては、奥さまのご出産までのスケジュールとご希望のお引越し日程を考えると、在来工法の浴室を作りなおすと一か月近く余計に工期が掛かりそうだったので、二つある浴室はそのままで、洗面とトイレまでは作りなおす計画としています。この写真は既存の洗面所で、十分にきれいな状態に見えますが、小さな赤ちゃんを育ててゆくには収納が不十分だと思われるので、全面的に作りなおす提案をさせて頂きました。

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こちらは仕上げ材のイメージを持ってもらうためにお持ちした各種サンプルです。奥さまがお好きなインテリアのイメージ写真もお見せくださったので、ここからお好みのエレガントでクラシカルな要素が混ざったモダンなテイストへと調整してゆきたいと考えております。

スケジュール的に、とてもタイトな状態ですので、これからは週に2度ほどのハイペースで打合せをしてゆくことになりそうです。Iさまご夫妻、急ぎながらも焦ることなく、インテリア作りを楽しんで頂けるように最善の努力をしてゆきますので、どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。

造り付け家具の取り付け方について@原宿K邸

原宿K邸

オーナーマンションの原宿K邸のリノベーション工事で、僕らが設計が一番楽しみにしている造り付け家具(造作家具:ぞうさくかぐ)の取り付けが始まりました。

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一般に造作家具の取り付けというと、箱状の家具が現場に運ばれて、壁と壁の間にすっぽり嵌るように埋め込んでゆくようなイメージがあるのではないでしょうか?実際には、色々な作り方(組み立て方)があるのです。
例えば、こちらの造作家具は、先回のブログでも紹介されている通り、ウォールナット突板で作られたフレーム部分は、壁のボードとの取り合いがあるので、2週間ほど前から取り付けが始まっていました。窓横に見える灰色の箱状のものとその下に伸びているベンチ板が、本日現場に運び込まれて取り付けられたものです。

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同じフレームの反対側には、このようなカウンター(甲板:こういた)と吊り戸収納がとりついています。吊り戸の下に金物が顔を出していますが、これはワイングラスを引っ掛けるフックになっています。カウンターの下には、ビルトイン型のワインセラーがすっぽり嵌ることになっています。

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こちらは、玄関とリビングに渡って直角に折れながら連続している造作家具です。スタッフの竹田さんが立っている場所が玄関で、家具屋さんが作業しているエリアはリビングになっています。全部の5個の違うサイズの箱が現場で組まれ、その隙間にスチール(鉄)で作られたフレームがはまり、全体で一つの造形に見えるように組み上がる予定です。

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こちらが玄関側から見た、奥行の浅い靴収納(左側)とコート掛けと工具収納(右側二つ分)になっています。靴収納の上部には、分電盤と弱電盤が入るので、電気配線を指し込みながら家具を付けてゆく必要があります。

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こちらは洗面所の家具です。シンクカウンターが入る下台、ミラ張りの扉がついたメディスンキャビネット、そして手前にある扉付き収納がリネン用のトール収納です。こちらは電気配線だけでなく、給水給湯と排水が絡み、天井の高さのズレにも合わせながら組み合わせてゆきます。

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トイレは壁が斜めになっているの、その点が難しいところです。壁から壁の間にぴったりとくっつけたいので、塗装仕上げでボード2重貼りにする壁下地を、この部分だけは一枚貼りで置いておき、その間にカウンター家具を組んで、仕上げにボードを被せてゆくことで、壁ぴったりに組み上げる仕組みになっています。

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こちらは寝室の窓横に嵌められた本棚です。右側奥に丸い管が竪に通っているのが見えますが、建物建設当時はこの場所はベランダで、上階のベランダからの排水竪管が通っていたのです。オーナーマンションなので、以前にリフォームをした際にベランダも室内に取り込んでいましたが、この雨水管が居室としては気持ちが悪いとのことで、造作家具の一部を取り外し式の点検口として、隠すことになりました。

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玄関の靴収納の扉のディテールです。ちょうど凹ん箇所に、スチールで特注で作ってもらった金物をはめ込むとそれが取っ手になる仕組みです。

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慎重に接着剤とビスを使って、扉材に特注取手金物を職人さんが固定してくれています。

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造作家具が徐々に組み上がってゆく横では、在来工法で作る浴室の作業が進んでいました。防水下地ができて、水溜試験も終わった壁に、下地材のラスカットが張られました。天井には塗装して仕上げにするケイカル板が張られています。

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その後、タイルを張る下地になるモルタルが左官工事で塗られました。乾かしている間に、浴槽や水栓金物が運び込まれています。

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梱包を解かれた浴槽が設置されています。今回はドイツ製カルデバイの鋼製ホーロー浴槽を採用していますが、ピンク色のブニュブニュしたものは、発泡性の断熱材を事前に吹いておいて貰ったものです。これでお湯を貯めておいた時に、温度の低下を避けることができます。左側に緑色の蓋がされた黒い円筒形のものは、床スラブを貫通して下階に繋がっているバス兼トラップ(バスケントラップ)です。洗い場からの排水と浴槽からの排水を一つに纏めて排水する仕組みになっています。

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実は、このバス兼トラップと浴槽の位置関係、そして洗い場のタイル割りなどは、非常に緊密に関係しているので、当日は三人掛かりで、半日以上掛けて設置をしてくれました。

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バス兼トラップの上に載せたステンレス製の四角い箱は、目地スルータイプの排水ユニットを載せる箱で、それをモルタルでがっちりと固定している様子です。この箱の位置のタイル割りから逆算された位置になっています。
これで、来週からは造作家具の残りの組み立てとキッチン組み立てになってゆきます。