Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

上階からの水漏れ対応の顛末-2

成城Z邸

ある日突然マンション上階のリフォーム工事が原因で、ご自宅のクローゼットや寝室の天井から水漏れが起こった成城Z邸の補修対応顛末のその2です。最初の水漏れ発生時の様子はこちらのブログをご覧ください。

ここまでの調査で水漏れが原因で使えなくなったウォークインクローゼットと書斎と寝室空間の補修と、床下や天井裏の水漏れチェックために開けた点検口の補修工事、そして水漏れをキッカケに色々とこれまでに気になっていたカ所をデザイン的にもっと良くしたいというZさまのご要望を盛り込んだグレードアップ工事の2種類の工事を見積もるための図面を作って貰いました。

図面だけでは補修やグレードアップ工事の内容を表現できない個所が沢山あるので、リフォームキューの工事監督の高木さんに現地に来てもらい、森井さんと一緒に改めて細かい部分をチェックして貰いました。こちらは家具の透明ガラス入り扉をカラーガラスに変える工事ですが、ガラスの厚みが違うので、どう処理するかを見て貰っています。

書斎の壁の色を気分をリフレッシュするために変えたいとのご要望で、良さそうなブルーの色サンプルを作って、

お客さまと一緒に選ばせて頂きました。

こちらも気分転換的な要素が多いのですが、リビングの黒いレザーのソファにあまり座ることが無かったそうで、それはリラックス感に乏しいからだとのこと、同じミノッティのソファのコネリーで、この写真の丸い部分一つだけを入れたらどうだろうかとのご相談も承っています。

靴を脱いで座面に乗って貰い座り心地を体験して頂きました。

サイズも柔らかさも座り心地(寝心地?)も良いとのことで、どのようなファブリックとレザーを張ればよいかもアドバイスさせて頂きました。

因みに、こちらの以前から使っていたソファーは、ミノッティに下取りに出すと、廃棄の費用が掛からないだけとのことが分かっていたので、数社の中古家具販売会社に資料と写真を送って見積もって貰ったところ、最大で30万円程度で売ることが出来そうだとのことが分かりました。
そうこうするうちに見積り額が出て、水漏れ原因の大手リフォームN社の担当者からのOKも出たので、仮住まいに引っ越して頂いて、工事が着工となりました。

床と壁は厳重に養生して、水漏れ箇所については天井を全て解体して更なる水漏れが無いか、

電気配線やその他の設備が傷んでいないかのチェックを行いました。

この写真は天井スラブを見上げたものですが、斜めに黄色いテープを張ってある箇所に長いクラック(ヒビ)がありますが、このクラックの真下の被害が酷かったの、ここから水漏れがあったのだろうと推察することができました。

記録写真として、全ての部屋の天井裏のスラブを見上げた写真を撮影しておきました。

N社の担当者にも来てもらい、水漏れ箇所を確認して貰いました。ここから先は新しい天井を作ってゆくことになりますが、クラック内部の水、そしてその水分によっての鉄筋の錆の可能性についても話をさせて貰いました。

N社としては、上階の工事もこれから進めるが、水漏れが起こってから既に3か月ほど経っており、その間に新しい水漏れは発生していないので、遊び水はもう残っていないと考えているとのことでした。また、下側からクラックを塞いでしまうより、上階の工事をする際にクラックのラインに沿ってU字型に溝を掘って可とう性エポキシ樹脂を入れて処理した方が良いと考えているとのことだったので、それには賛成だったので、そのことをN社からお客さまに伝えて貰うよう依頼致しました。

念のため、パッとは見えない造作家具の上面をのぞき込んでいる様子です。

天井のクラックはここまで伸びていましたが、石膏ボードには水染みはありませんでした。

こちらの材は、解体時に水漏れが酷かった箇所の石膏ボードを保管しておいて貰ったものですが、左側の丸穴周辺はボロボロになっていました。

他の造作家具の上面や、

壁周りから床下に水が落ちた痕跡が無いかもN社の担当者と一緒にチェックして回りました。

水漏れ箇所はもちろんですが、その他の空間も職人さんの出入りや物の運び出しで壁や床に傷がつかないようにしっかり養生がされていました。

廊下などはアーティストのクリストの作品のようになっていました!

解体された様子をお客さまにも確認に来て頂きましたが、水漏れでここまで解体しないといけないということを改めて見て、驚かれていらっしゃいました。
ここから先はようやく復旧工事とグレードアップ工事という段取りになります。

ミラノサローネ2023_ポリフォーム・ラボ-2

ミラノサローネ2023

盛りだくさん過ぎて1回のブログではご紹介しきれないポリフォーム・ラボ(巨大ショールーム)の第2弾です。

ポリフォルム・ラボ

まずはポリフォームの最も得意とする壁面クローゼット家具をご紹介いたします。今ではイタリア製ハイ・ブランド家具システムでは標準仕様ともなっている、クローゼットにガラス扉を取り付けたり、間接照明を入れて中の服を魅力的に見せることは、このポリフォルムが世界で初めて先駆けて手がけたとのことです。

ポリフォルム・ラボ

また、こちらの事例のようにワードローブクロゼットで部屋を仕切るアイデアもポリフォルムが世界初の販売したとのこと、とにかくこの壁面クローゼットシステムのデザイン開発が、ポリフォルムの発展の基盤となっているとのことでした。

クローゼットシステムを大きく分類すると、箱を作るシステムと、ポールを立てるシステムと背面壁から持ち出すシステムの3通りが用意されています。

ポールを立てるシステムは、クローゼット空間に一定間隔で床と天井の間に突っ張り棒を立て、その間に棚板や引き出しボックスを挟みこんでゆくシステムです。建築をいじらずに後施工でできるので、比較的安価となります。安価ながら部材は豊富で、ポールに電気を通して間接照明をつけることも可能です。

こちらの右側濃紺の部分はは壁から棚板やハンガーを持ち出すシステムです。パネルの間にスリットがあり、そこに特殊な金物を差し込むことで可動式の部材を取り付けられるようになっています。こちらも比較的簡易なシステムではありますが、間接照明も可能となります。

ポリフォルム・ラボ

こちらの写真の右側半分が箱型を組んだクローゼットです。前者2つは扉を取り付けることができないのに対して、箱型のみ扉を取り付けることが可能です。扉も塗装仕上げやガラス扉のバリエーションがあるので、3つのタイプを組み合わせると魅せる収納や隠す収納、特別感を出す部分などを自由自在に演出することが可能となるのです。

ポリフォルム・ラボ

クローゼットのガラス扉の創始者(笑)だけあって、扉や取っ手のディテールには工夫があふれています。こちらは扉のフレームをシャープに見せるテーパー加工…、

ポリフォルム_ミラノサローネ2023展示

こちらの扉はガラス面を大きくして、フレームをガラス背面に隠しつつ、使いやすい取っ手となっています。

ポリフォルム・ラボ

クローゼット内部の引き出しや棚板、間接照明の収まりもとても研究されておりきれいです。こちらがガラスの小口から照明を入れてガラス棚そのものを照らすディテールです。

棚板の奥に黒い帯が見えていますが、こちらは新たに開発した除湿システム(PSE認証の関係で、日本での発売予定は未定)だそうです。扉付きのクローゼットだと湿気が溜まることを嫌がるお客さまもいらっしゃるので、もしコンパクトな除湿システムが組み込めれば、欲しいという方は多くなるだろうと思っています。

ポリフォルム・ラボ

2000年に始めたという置き家具も毎年確実にコレクションを増やしているようです。

ポリフォルム・ラボ

こちらはアクタスの新宿ショールームにも置いてある(あった?)モンドリアン・シリーズのソファとテーブル類です。

ポリフォルム・ラボ

ソファの間に挟まっている木製テーブルの下が引き出しになっている優れものデザインです。すぐ見当たらなくなってしまう、テレビやDVDのリモコン類の収納に最適ですね。

ポリフォルム・ラボ

ベッドやサイドテーブル類のバリエーションも増えてきています。こちらの寝室レイアウトではベッドを部屋の中央に置き、ベッド背面にスクリーン(こちらもポリフォルムの製品、ヒマ)を置き、その後背部の空間にセットアップカウンターとラウンジコーナーを設置しています。

ポリフォルム・ラボ

ヒマ・スクリーンはロープ張りで光も風も適度に通しつつ、視線をうまく遮ってくれるので、こちら側に回り込むとベッドのある寝室らしさが薄れます。

ポリフォルム・ラボ

こちらのベッドでは、壁いっぱいにまで伸ばしたレザー張りのヘッドボードが印象的です。レザーについては、ハイ・ブランド家具では牛皮から人工レザー(テクノレザー)への転換が進んできていますが、こちらはまだ牛皮の様でした。

ポリフォルム・ラボ

ミラノサローネの会場展示のブログでも書きましたが、壁面パネルシステムもポリフォルムでは進化させているので、床と天井と照明計画だけをきちんとしておけば、このようなスタイリッシュな寝室を置き家具と壁面システムだけで組み上げることができるようになっているのです。

ポリフォルム・ラボ

こちらのセットアップカウンターは、右側の天然石天板部分は置き家具で、左側のテーブルカウンター部分は壁面システムから持たせている形になります。

ポリフォルム・ラボ

それらを部屋の隅で直行させると、このような空間作りができるというわけです。

ポリフォルム・ラボ

こちらのソファーセットは、ベルポートのレザー張りに、センターテーブルのクリーク、木製コーヒーテーブル/チェアのウベを合わせ、得意の大型壁面収納で纏めたコーナーです。

ポリフォルム・ラボ

ソファーの横には超希少な天然大理石のラピス・ラズリ(青色大理石)のサイドテーブルが置いてありました。アクタスの大岩さんに聞いたところ、特注の製品で、一般では販売していないとのことでした。

ポリフォルム・ラボ

地下展示室だけでも300坪、

ポリフォルム・ラボ

グランドフロアと合わせると3000坪の広さがあるので、一つ一つのコーナーをじっくり研究するというより、早歩きで回りながら気になった部分を撮影してゆくような流れでの見学になってしまいました。

ポリフォルム・ラボ

最後のおまけはこちらの建具です。今回のツアーは皆さん、建築畑の方々なので、ディテールのチェックには余念がありませんでした。

ポリフォルム・ラボ

こちらの建具は製品としては販売していない、ラボだけの特製品とのことでしたが、取っ手は家具の取っ手は表裏に貼り合わせたスタイルで、

ポリフォルム・ラボ

内側からはボタンで開閉ができ、外側からタッチキーで制御できるシステムになっていました。

ポリフォルム・ラボ

フロアヒンジで吊った扉でしたが、戸先も戸尻も特別な加工で気密性がとれるようになっていました。

ポリフォルム・ラボ

程よく疲れた(というかかなり疲れましたが…)あとは、ラボの奥にあるレストランに招待され、

ポリフォルム・ラボ

美味しいランチを頂きました!この日の午後は、さらにポリフォルムのキッチン工場を見学させてもらいます。

ミラノサローネ2023_ポリフォーム・ラボ-1

ミラノサローネ2023

イタリア・高級家具ブランドのポリフォームの本拠地は、北部イタリアのブリアンツァ地方のインヴェリーゴという町です。この町に大小5つの工場とラボ(研究所)という名前の施設があり、そのラボを見学させて貰いました。

ポリフォルム・ラボ

今回のミラノサローネは、家具会社アクタス社主宰のツアーで、日本からはアクタスのお二方(大岩さんと阿部さん)そして、日本の不動産会社やゼネコン、大手設計事務所や僕らのような小アトリエの設計者まぜこぜで11名の総勢13人のグループツアーでした。アクタスが日本でのポリフォームの独占販売権を持っている関係から、今回のラボ見学が可能となりました。

ポリフォルム・ラボ

ラボの正面玄関入って正面に、立派な作りのクローゼット家具が置いてあります。1987年に限定30点でポリフォルムが作った折り畳み式の「イオ(イタリア語で私)」という名前のクローゼットシステムです。

ポリフォルム・ラボ

多様な引き出しや開き扉、特殊な金物や素材が使われた相当に凝った作りのクローゼットでした。ポリフォルムが初めて作ったシステマティックな収納ということで、初志貫徹という意味で入り口に置かれているとのことでした。

ポリフォルム・ラボ

とにかく広い施設で、延床で3000坪(地下だけでも300坪)の面積があるそうです。まずは会議室にて、ポリフォルムの歴史(1942年に2つの家族(のちに3つの家族)から始めたファミリービジネスで、1970年にポリフォルムの名称に…)と、会社独自の考え方やシステム、そしてインヴェリーゴの町に散らばる工場の内訳等を説明して貰いました。

ポリフォルム・ラボ

ラボで合流したアクタスの他のメンバー(野口さん、海野さん、神山さん、花登さん、谷口さん)も一緒に、まずは幾つかのポリフォルムキッチンの説明を聞きました。

ポリフォルム・ラボ

2.5メートル高さの折れ戸を垂直に収納できる扉金物をボルトルッツィという金物メーカーと共同開発したとのことで、実演して見せて貰いました。これを使えばゴタゴタしがちなキッチン家電や食器収納を隠したい時には全面を扉で隠し、使いたいときにはこの写真のようにフルオープンで使えるとのことでした。

ポリフォルム・ラボ

こちらのキッチンは厚みを持たせたカウンターキッチンとダイニングテーブルを長手方向に継いだスタイルです。

ポリフォルム・ラボ

ちょっとアルクリネアのキッチンに似ていなくもないですが(笑)、端部を立ち上げて、水がカウンター上からこぼれないような水返しのディテール等はとてもきれいでした。

ポリフォルム・ラボ

大岩さんが説明してくれているこちらのキッチンは、一枚の天板が3種類の素材で構成されているという珍しい作りでした。

ポリフォルム・ラボ

メインのシンクとコンロは中央の天然大理石部分に纏め、左右に広いステンレス・ヘアラインのカウンターをウイングのように広げ、正面に木製のイートインカウンターを設けています。大理石カウンターはステンレス板に対して四角く飛び出ていますが、木製カウンターは斜めにテーパーを切っているところなどは憎い納まりです。

ポリフォルム・ラボ

こちらのキッチンは、カウンターは大理石柄のセラミック(陶板)の薄いカウンターとなっています。

ポリフォルム・ラボ

コンロがIHとガス両方を備えていますが、ガスコンロ部分はセラミックカウンターに直接穴をあけて取り付けています。熱い油などがこぼれても傷まない、強度と耐久性を兼ね備えたセラミックならではの作りとなっていました(日本ではガスコンロの規制が厳しいのでこれはできませんが)。

ポリフォルム・ラボ

こちらでは、白いセラミックのメインカウンターの上に、角を丸めた黒い木製のスナックカウンターを取り付けたデザインでした。載せただけのように軽く見えるカウンターですが、手で体重を乗せてもびくともしない頑丈さでした。こういった軽食用カウンター付きのキッチンを開発している分、ハイスツールが多様で、それぞれ秀逸なデザインでした。

ポリフォルム・ラボ

とにかく広いスペースにキッチンだけで10カ所以上の展示があり、それぞれが最新の趣向を凝らした実験的なキッチンとなっています。こちらL字型カウンターの端部に丸いスナックカウンターを取り付けていますね。

ポリフォルム・ラボ

先ほどのキッチンは木板張りの扉でしたが、こちらは石目柄の扉材です。実際は薄いセラミック板を張り付けた扉となっていました。

木仕上げのイートインカウンターの突板加工も見事です。

ポリフォルム・ラボ

キッチンの背面収納もバラエティーに富んでいます。

ポリフォルム・ラボ

収納の取っ手が取り付く部分はこのようにテーパーをとって無垢材を削り出したかのように見える金物ディテールとなっています(実際は突板をうまく加工しているだと思いますが…)。
キッチンについては、1996年にヴァレンナという高級キッチンブランドを買収して、しばらくはヴァレンナbyポリフォルムという形で並走していましたが、2018年に完全統合して、これまでの壁面家具等で培ってきた素材とディテールをキッチンにも注ぎ込んで、一気に花開いたかのようです!
次のブログで、置き家具や壁面収納見学の様子をご紹介します。