Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ミラノサローネ2023_サルバトーリ市内SR

ミラノサローネ2023

加工大理石のサルバトーリの市内ショールームは、イタリアキッチン御三家のうちの一つのボッフィと同じ建物の中にありました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

ボッフィは2時間待ちの大人気の中、サルバトーリは行列の横をすり抜けて待ち人ゼロですぐに入ることができました(笑)。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

古い集合住宅の中を改装したショールームなので、区切られた部屋が続くような空間展開です。ほとんどすべての部屋が水回りの仕様になっていました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

部屋ごとに石材の色味を同じにしているようで、こちらの部屋は灰色のグリス・ドゥ・マレの石材です。壁面は本来であれば捨てられる半端石材を接着剤で積層させてから直角に切って再生したリートヴェルデ柄です。カウンター上の無垢の大理石を削り出したボウルもサルバトーリ製品とのことです。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

同じ石種でももう少し大きく面を取り、黒くて細い金属目地を入れたトラッティ柄だと、少し風情が変わって見えます。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

こちらの部屋では、床と正面右側壁は白いビアンコカラーラの大理石に黒い目地を入れたトラッティを張っています。床にサルバトーリを張る考えは全くなかったので意表を突かれました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

こちらの壁材は、まだ日本では発売されていないプリッセ(プリーツ)柄でした。因みに床は、幅違いのストーンパケですね。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

白いビアンコカラーラと、濃い灰色のピエトラ・ダヴォーラを重ねていますが、モダンに見えますね。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

中央の一番大きな部屋には木と白大理石を組み合わせた本棚(こちらもサルバトーリ社製)が展示されていました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

横材が木板で小口に黒く塗装した金属板が被せられており、竪材は大理石となっていました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

さらに近くに寄ってみてみると、端部を抑えるT字型金物を木板に差し込んで、その立上り部分で石材を固定していることが分かりました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

棚には、やはりサルバトーリ社製の無垢大理石から削り出しの可愛らしい(しかし重い!)小物が置かれていました。

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

開口部を抑える石材枠のディテールや、

サルバトーリ_ミラノサローネ2023市内展示

光を透過する大理石をくり抜いて作られた照明器具なども見ることができました。
うちの事務所では、水回りより、リビングダイニングや玄関などに使うことが多い素材ですが、本国では水回りを得意としているようです。

ミラノサローネ2023_イリス(フィアンドレ)市内SR

ミラノサローネ2023

ここからは、私共カガミ建築計画が日本のプロジェクトで良く使っている建築材料や照明器具ブランドの市内ショールームを見学した様子をお伝え致します。

大理石柄大判タイルのフィアンドレサピエンストーンアリオステア等を傘下にもつグループ会社のイリス・セラミカ・グループのショールームです。

美しい表情・柄の大理石が世界中の富裕層に引っ張りだこで、資源が枯渇しつつある中、きれいな大理石柄を転写したタイルの需要が増えています。地中海沿岸(イタリア、スペイン、トルコ等)で大判セラミック生産が盛んですが、その中でも白系の大理石柄セラミックで一番美しいのがこちらイリスグループのフィアンドレだと考えています。

セラミックは光沢感もきれいで含水率が低く(つまり汚れにくい)、キッチンや水回りのカウンター材として優れた点が多くあるのですが、表面にしか柄が転写されていないことが大きな問題の一つでした。

以前はコーナーをトメ加工(各部材を45度にカットしたうえで接着する)でも2ミリ程の隙間が出来ていましたが、近年はほぼゼロに加工できるようになってきたとのこと、その問題も大きな要因ではなくなってきたのかなと思っていたところ…、

いつもフィアンドレとサピエンストーンの仕入れと加工をお願いしているアークテック社からタイルをどの面で切っても小口に模様が繋がる新しいタイプのセラミックの開発に成功したらしいとの話を聞いていました。それがこの製品なのです!

元々フルボディーと言って、表面のベースになる色味とセラミックの基材の材料の色を揃えてはくれていましたが、ここまで小口に染料を含浸させる技術ができたとは…。まだ、石種、色味によってはそこまできれいに出来ていないものもあるようですが、

切る個所をうまく指定すれば、こちらなどはかなり本物の大理石に近く見せることができるのではないでしょうか。

上階のこちらのテーブル天板も大判セラミックです。パッと見ても小口まで柄が続いていますが、

アップで見てもこのようになっています。ここまで繋がってくると、もう十分なのではないでしょうか。これがどこでカットしても実現するというのが本当に凄いことなのです。現在は厚み2センチのものでしか実現できていないそうですが、追々他の厚みでもできるようになりそうですね。

石種のタイプも着実に増えているようです。こちらは世界中で大人気のパタゴニア柄の水磨きです。本磨きになると、透明な部分はどうやっても印刷では表現できないので、水磨きにしているようです。

こちらもアップで見て、触ってみると、凹凸もかなり正確に演出出来ていることが分かります。

技術革新はどんどんと進んでいますが、現場での加工を考えると、小口を如何に隠すかはやはり大判タイルの大きなデザイン的な課題となってきます。こちらの造作家具では、サハラ・ノワール柄を使っていますが、

小口をほぼゼロに見せるディテールとしていました。

トメ加工の技術もかなり進化し、このような薄いパネル材でも三方トメがきれいに出来ていました。

こちらの上階の打ち合わせ室では、タイルの小口に金属の金物を廻して隠していました。

コーナーのカーブした箇所では、セラミックを細く割いて張り合わせるという高等技術を使っています。

とはいえ、出隅が現れてこない奥まった壁、こちらの折り上げ天井の上面のような箇所の方が、まだまだ安心しますが。

ミラノサローネ2023_エンジ(Henge)市内SR

ミラノサローネ2023

今回のミラノ訪問で一番衝撃を受けた家具展示が、こちらエンジ(Henge)の市内ショールームでした。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

このブランドについては、以前から聞いておりましたが、金属細工で本棚やライン照明を作る家具屋程度の知識しか持っていませんでしたが、そこから大幅にヴァージョンアップして、凄いブランドに育っていました。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

キッチンはほとんど無垢の大理石の塊のようで、

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

コーナーの納まりもこのような凝った作りとなっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

一応(笑)IHヒーターやシンクもきちんと組み込まれています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

壁面収納は光を透過するオニキス(アラバスター)を背面として、手前にシャープな鉄板と鉄棒とガラスの収納を作っています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

この壁面収納はさらに横へと続き、少し歪んだ金属の塊の中に冷蔵庫等を収納する流れとなっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

実際的な収納ではありませんが、溶接すれば歪んでしまう薄さの鉄板にどのように接合しているのでしょうか…。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

ショールームに入って最初に迎えてくれるのは、この印象的な照明と大きな楕円のテーブルです。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

鉄板と木を使った棚は以前より大幅にバリエーションが増えています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

上階にあるこちらのキッチンも、また無垢感満載のキッチンです。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

この端部のディテール、キッチンであることを完全に忘れさせてくれる存在感です!

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

キッチンとしても使える構成にはなっていますが、恐らく実際に料理をするより、料理もできる石造のオブジェといった方が良いのかも知れませんね。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

木製のダイニングテーブルのデザインも常識では測れない特殊なものです。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

厚突きのウォールナット突板を不思議な曲線に合わせて象嵌しているのです(異種素材をはめ込んでフラットに仕上げるのが象嵌なので、こちらは同じ素材なので、厳密には象嵌ではありませんが…)。

脚との取り合いや、分割位置の真鍮目地などのディテールもたまりませんね。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

この写真の左側の壁面、何だと思いますか?

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

スラブの石材をこのような形で彫り込み加工した、扉材なのです!

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

高さ3メートル以上の扉付き造作収納なのです。さりげなく吊るされていますが、このガラス製シャンデリア照明も凄い迫力です。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

手前のダイニングテーブルも2センチほどの厚みのある金属鉄板のテーブルですが、脚はグレートラバーチンを削り出したような独特のデザインとなっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

こちら正面は巨大なテレビキャビネットです。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

金属のテーパーを切った枠にガラスが嵌った大型扉がスライドするのです。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

内部も虹色掛かった金属の棚や、バーズアイウォールナットの扉付き収納となっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

ここまで来るとソファは普通に見えてきますが、その前に置かれたセンターテーブルも独特の造形ですね。金属と大理石を折り紙のように曲げたように見えるデザインとなっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

当然ながら大理石板を折り曲げることはできませんので、間近で見たディテールはこのようになっています。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

地階にあったこちらのキッチンも(良い意味で)変態的です。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示


無垢の石材カウンターと金属の取り合いも妥協がありません。

エンジ(Henge)_ミラノサローネ2023市内展示

キッチン収納の引き出しの中も、無垢材から削り出したかのようなディテールとなっています。超高級家具ブランド・チェコッティのデザイナーであるマッシモ・カスターニャや、ジュエリーデザインで有名なウーゴ・カッチャトーリ、麻布台ヒルズのアマン・レジデンスのインテリアデザイナーでもあるヤブ・プッシェルバーグなどをデザイナーとして採用し、超攻撃的(?)な家具デザインにチャレンジしているそうです。

最後の写真は、ちょうど偶然にエンジのショールームでご一緒になったバケラッタの森山さん、アールテクニックの井手さん、その日に初めてご挨拶させて頂いたIKAWAYA建築設計の井川さんとの記念撮影写真です。
エンジについては建材ブランドのアドヴァンが日本の代理店になるかもしれないとのことですが、ここまで大規模なショールームを日本に持ってくるのは現実的ではないかも知れませんね…。