Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

幼稚園増築園舎の見学会

見学記

仲良しの建築家・須田充洋氏の設計事務所SUDA設計室が設計した幼稚園園舎増築の見学会(オープンハウス)に伺ってまいりました。大船駅から車で10分ほど離れた、のどかな田んぼと住宅がちょうど具合良く混ざった場所にこの幼稚園はあります。道路からは古い園舎しか見えませんが、裏手に周ると、遊具が並んだ園庭に正対するように、増築部分が建っていました。完成一歩手前の段階でしたが、まずは外構の豊かさには驚きました。
大きく出っ張った光を透過する屋根の下には、屋根以上の大きさのウッドデッキが張られています。デッキも単なる平面ではなく、ある箇所は階段状に掘り込まれ、砂場も埋め込まれ、手洗いや靴収納がパラパラと配置されています。しかし一番のクライマックスは写真の水溜りプールでしょう。暑い日にこのプールに水を貯めれば、子どもではなく大人でも遊びたくなるようなデザインになっていました。

園庭のプール

園舎内部はすっかり安定したSUDA設計事務所の仕様となっていました。無垢材のフローリングに、AEP塗装壁、シナ合板目透かし張りの天井に、シナランバーコアOSの造作家具の内装です。二つの部屋がどらからでも開閉できる工夫や、造作家具はいつも通り緻密に工夫が凝らされていましたが、教室の裏にある薪ストーブコーナーは、幼稚園では新しい試みではないでしょうか。火を使う楽しさと、裏あわせの危険、そんな重要なことをこの場所で学ぶことが出来そうです。

増築幼稚園園舎のインテリア

(まだ本当は完成はしておりませんが…)「無事の完成、おめでとうございます!」

床暖房と三層フローリング

白金台S邸

白金台の高級マンションリノベーションの現場は、設計者がお盆休みを満喫していた間も、着実に進んでいます。ちょうどお盆前までに、床暖房の敷設が終了いたしました。

今回採用したのは、リノベーション前から使われていた、東京ガスのTESシステムです。TESはパネル方式の敷設なので、細かい部分の融通が利かない、不便もありますが、工事時間の短縮と、システムの簡略化を目指しての採用です。

マンションリフォーム 床暖房

因みに、新設の床暖房では、手間は掛かりますが、架橋ポリエチレンパイプと発泡スチロールの組み合わせの床暖システムを使うケースが多いです。この方法であれば、細かい部分にも床暖房が敷設できる便利さがありますが、同時に時間が掛かるので今回は採用できませんでした。

特注のパネルの製作も意外と簡単かつ安価に出来るのですが、既成のパネルをきちんとレイアウトした方が、やはり簡易で安価なので、その方針で進めました。広いリビングなので、壁付けのコンセントだけでは不足なので、床付けコンセントも使うことになり、その位置を上手く避けながら、パネルレイアウトを行いました。

お盆があけて、フローリング張りが開始されました。張るに当たっては、何を基準にどの位置から張り始めるのか、
そしてどのくらいずつずらしながら張るのかを、工務店の現場担当者の樋口さんと打ち合わせました。

基準ラインは、広いリビングに取るのではなく、玄関入って直ぐの玄関ホールに取ることとしました。広い部屋では気にならない半端寸法でも、狭い部屋では気になってくるので、このように指定しました。また、ずらし方も無駄が少ない1/3方式としています。

マンションリフォーム 三層フローリング張り

フローリングは、スカンジナビアンフローリングの三層フローリングです。低温床暖房との相性が良く、精度も高く、何よりも広幅で美しいので、最近の事務所の定番となっています。

189ミリの広幅は、広いリビングをより広く見せ、厚さ4ミリのオーク(ナラ)無節の表面材は、無垢といってもおかしくない重厚な仕上げ感です。仕上げもホワイトオイルとなっているので、一般的なウレタン仕上と比較すると、肌触りも自然な感じで、とても美しい仕上げです。

ちょうど本日から張り始めとなりましたが、大工さんたちももフローリングの精度の良さには、感心しているようでした。

とらや菓寮@京都

見学記

お盆休みに京都に出掛けてきた際に、建築家・内藤廣氏が設計した「とらや菓寮」を見学して参りました。御殿場のとらや工房やとらや菓寮に続き、とらや本店が経営する建物を新しくリニューアルしてゆく一環のプロジェクトのひとつだそうです。元々京都が発祥の地であるとらやが、単にお菓子を販売するだけでなく、老舗としてのプライドを掛けて、お菓子を楽しむという文化を発信する新たなる基地として作り上げた空間のように感じられる建物でした。特注の丸みを帯びたタイルで囲われたどっしりとした建物と、鉄骨の軽やかなフレームに木製の建具を纏った平屋、その間に引き込むような静かなアプローチ。

京都とらや菓寮 アプローチ

鉄骨と木製のフレームが、お互いに助け合うように支えあう、繊細な構造体に囲まれた空間には、お菓子とお茶を楽しむ喫茶席のほかに、京都の伝統文化についての本が楽しめる、小さな図書コナーが設けられていました。建物内部だけでなく、外周部にも設けられた喫茶空間は、外部とは御簾戸だけで屋外と区切られた、半屋外のスペースとなっています。

京都とらや菓寮 インテリア

細かなディテールに至るまで、美しくコントロールされた建物の奥には、古くからのお蔵などに囲まれた、芝生と水盤、植栽からなる中庭があります。建物の中にいると、外を歩いてみたくなる外部空間、そして外部を散策していると、中に入ってお茶を楽しみたくなる、そんな風に建物と外構が、お互いをより美しくみせるように補い合う空間構成は、内藤廣氏の建築家としての円熟度を感じさせる素晴らしい建築施設でした。

一設計者してはただただ感服するばかりでしたが、一訪問者としては、本当に静かで気持ちよいひと時を
楽しませて頂きました。