Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

多灯ペンダント照明のレイアウトの決め方

代々木上原I邸

ペンダント照明と言えば、ダイニングテーブル上に大きく印象的なデザインの照明を吊るすというイメージが強いですが、最近は小粒のペンダント照明を集合体として見せる方法にも調整しています。
今回ご紹介するのは、メゾネットマンションの代々木上原I邸の階段踊り場の多灯ペンダントです。こちらのお宅では、下階のパブリック空間と上階のプライベート空間を区分けるために、階段部分を木の仕上げ材で包み込んだトンネルのような空間としています。階段の踊り場の壁上には小粒のペンダント照明を星空のように(ちょっと大袈裟?)パラパラとレイアウトしています。

木製のトンネルのように見せるコツは階段室の入り口廻りを全て木製のフレームで囲っていることなのですが、わざと階段空間を暗くして、その先に上へと導くように星空のような照明が散りばめられているデザインとしています。下階の廊下を玄関からリビングへと通ると、左手にチラりとこの照明が見えるのです。

階段踊り場の多灯ペンダント照明

多灯ペンダントの群れは完成した状態を見ると簡単そうに見えるのですが、各照明機器の高さを調節してパラパラ感を演出するのは設計側にも施工側にも相当な苦労があるのです。

階段踊り場の多灯ペンダント照明

施工的には狭く天井が高い空間での作業となること、小さなフランジの根本を触るだけでは高さ調整はできないので、この写真のように手前の天井に点検口を設けたことで、何とか電気屋の職人さんに作業をして貰いました。これはダイニングや玄関などの多灯ペンダントでも重要なことですが、吊元をきれいに見せるためには、近くに電気屋さんが天井裏まで潜り込めるような天井点検口が設ける必要があります。

階段踊り場の多灯ペンダント照明

選んだ照明はカナダ人デザイナーが設計したボッチ(Bocci_スタジオ・ノイ)の14シリーズという製品です。そしてこのなんとも手が掛かる電気配線工事を頑張ってくれているムラデンのヤマトさんは、施工会社の青の現場監督の石坂さんの高校の同級生なのです!

弊社設計担当の神崎さんが工事前に描いてくれた配当イメージです。途中で数が少ないのではとのことで、2灯追加しています。実際に吊ってみないとどのようにみえるか分からないのですが、それでも設計者としてある意図をもってデザインするようにしています。

一応完成した様子を上階から見下げたのがこちらの写真となります。現場でのIさまとやり取りで多少変更していますが、概ね設計当初案通りにレイアウトされています。

階段を上っている途中で踊り場から見上げた様子がこちらです。壁に張ったカラーガラスに写り込んで、本当に多数の照明が散りばめられたイメージに仕上がりました!

設計側は左側から階段を上がっていく視線と連動して、右肩上がりのレイアウトでとても良いと思っていたのですが、Iさまからは、追加での費用が掛かっても良いのでレイアウトを変更したいとのこと、違うレイアウトも考えて貰えないかとのことで神崎さんが作ってくれた資料がこちらです。

階段入り口から上へと誘うように見えるこのレイアウト、設計者としてはとても気に入っているのですが、弊社は常にお客さまファーストですので、次回他のカ所でのメンテナンス工事に入る段階で、どうすべきをご相談することになっています。

イタリア製大型クローゼット家具の組立て

因みに、同じ代々木上原I邸の大型ウォークインクローゼットもフランジ付きですが、多灯ペンダント吊りでした。

既製品を使ってコストパフォーマンスを追求したマンションリノベ

六本木Y邸

ギャラリーライクな(こんな言葉があるのか知りませんが…)なインテリアデザインの六本木Y邸、造作・取り付け工事の後半で、竣工までのスケジュールが見えてきました。六本木Y邸では、空間の質と同様、コストパフォーマンスにもこだわっての計画となっており、その工夫をご紹介いたしました。

造作工事の終盤@六本木Y邸

養生されたペニンシュラ(半島)型キッチンカウンター背面は、ガラス扉で隠す収納となっています。キッチンも普段はフルオーダーキッチンを使う頻度が高いですが、YさまはTOYOキッチンのステンレスの質感をとても気に入っていらしたので、造作では作れないレベルのステンレス加工でもあり、既製品のキッチンを採用しました。
キッチン背面は隠す収納なので、内部の棚はコストパフォーマンスに優れた南海プライウッドの既製品を使っています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

南海プライはシステム収納としてはバリエーションも豊富で種類も色々とあるなので、選び甲斐があります。

赤いペンで書かれた部分だけが造作家具工事で、箱も棚も全て既製品です。因みに、棚を天井まで伸ばそうとすると既製品が使えなくなってしまうので、その点だけはお客さまに事前にご説明しています。

特に今回は、アルミ製ガラス扉もユニオン社の既製品で考えたので、扉の割り付けと内部のシステム棚の組み合わせが多様で、前田君が何通りものパターンを作ってお客さまと打ち合わせをしてくれました。

最終的なものは②の4枚扉の引き違い引き戸と割を合わせたシステム収納棚で決まりましたが、途中2枚と3枚の扉を組み合わせるパターンなども検討し…、

それぞれの組み合わせ案のメリット・デメリットに加えて、金額的な差額まで計算したうえで、Yさまご夫妻に決めて頂きました。因みに上記の表では、キッチンをリクシルにした場合の費用や、アルミ扉をサンワカンパニーにした場合の費用も比較しています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

玄関ホールの左右のカーブ壁も出来上がってきました。入って右側のこちらの壁はキッチンカウンター搬入のことを考えて、造作家具として作って貰ったカーブ壁です。

造作工事の終盤@六本木Y邸

反対側のこちら側はFGボードで現場で大工さんに作って貰った壁ですが、クロス張りも終わりました。こちらの壁中央の扉は、コンパクトはシューズインクローゼット(SIC)のへの扉で、既製品の神谷コーポレーション・フルハイトドアを使っています(まだ仕上げていない素地です)。
因みにギャラリーや美術館のような雰囲気というお客さまのからのご要望があった際には、塗装仕上げを考えていましたが、お掃除好きな奥さまが水拭きができるビニールクロスにして欲しいとのご依頼がありました。ビニールクロスも考えてみれば既製品の建材ですね。

既製品としては、カミヤの建具はそれほど安価ではありませんが、造作建具に比べれば枠も丁番も金物も込みでの価格となるので、メリットが十分にあります。今回は、建具にも枠にもクロスを巻き込むことができるステルスタイプの物を選んでいます。

カミヤの建具は、引き戸も開き戸もほぼ同じデザインなのも使い勝手が良いのです。ただ、取っ手は既製品らしくグレード感が不足しているので、施工をお願いしているリフォームキュー坂本さんからの情報提供で、建具の芯が入っている寸法を貰ったので、弊社の前田君が芯に触らない位置で特注の取っ手を取り付けてカスタマイズすることになりました。

何枚かの引き戸には鮮やかなカラーのダイノックシートを張るので、建具の小口だけは金物で納める形で検討していましたが、建具との納まりの問題で、小口のフラットバーは中止となりました…。

造作工事の終盤@六本木Y邸

神谷の既製建具に特注取っ手を取り付けた扉のディテールがこちらです。

造作工事の終盤@六本木Y邸

因みにこちらがコンパクトSICの内部です。正面壁には、塗装された有孔ボードが取り付けられています。

ワンちゃんのお散歩用の道具を引っ掛けられる場所が欲しいとの当初のご要望に対して、既製品の有効ボードに簡単にフックを取り付けられるシステムを見つけたので、そのシステムを使えることができるように工夫しています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

有孔ボードを背面の壁から少し浮かせておいて、フックが差し込めるようにすることがポイントとなります。
既製品の建材や建具、収納システムといったものは、どれも比較的安価で、使い勝手は良く研究されていながら、施工がしやすいように工夫されていて、かつスピーディーに取り付けられるといったメリットはありますが、デザイン的にはイマイチだったり、寸法の自由が利かなかったり、安価なりの安っぽい仕上がり感といったデメリットもあります。ただ、コストパフォーマンスという観点からみると、圧倒的に既製品の方が優れていますので、既製品をうまく活用しつつ空間の質を担保するのも設計者の腕の見せ所なのです。

造作工事の終盤@六本木Y邸

この日は他に、床カーペット張りの職人さんが入っており、

造作工事の終盤@六本木Y邸

洗面の造作家具は据え付けが終わり、

造作工事の終盤@六本木Y邸

寝室のベッドのヘッドボード側のクロスのパネル張りも終わっていました。因みに、クロスのパネル張りもビニールクロスの安っぽさを回避するために考えた設計手法の一つでした。

造作家具取付け@乃木坂U邸

乃木坂U邸

竣工お引渡しに向けて順調に工事が進んでいる乃木坂U邸の現場に、造作家具(作り付け家具)が入ってきました。

造作家具取付け@クラシカルハウス

まだ木下地状態のマントルピース型の横、飾り棚付きの造り付け家具を据え付けしています。

造作家具取付け@クラシカルハウス

据え付け前はこの状態でしたが…、

造作家具を据え付けて、天井との隙間に支輪(シリン)を入れて納めると…、

造作家具取付け@クラシカルハウス

同じ白色で塗装してある造作家具なので、壁や装飾モールディングと一体になったように感じられますね。

造作家具取付け@クラシカルハウス

ダイニングに仮置きされている引き出しがふんだんにあるこちらの家具は、

脱衣兼ユーティリティーの部屋に据え付けられてカウンター板を載せて、引き出しを入れると、このようにコンパクトに収まるのです。

造作家具取付け@クラシカルハウス

こちらは廊下途中に設けた通り抜け型のダブルの洗面カウンターですが…、

甲板とメディスンキャビネットと照明とカラーガラスが付くと、このような美しい姿となります。

造作家具取付け@クラシカルハウス

先日組み上げていたキッチンは、ほとんど養生されてしまっていますが、ぴったりと収まっています。

造作家具取付け@クラシカルハウス

お客さまが選んだクオーツストーンのサマーヒル(カンブリア)と壁に張ったセラミックタイルのインヴィジブルホワイト(ラムナム)の組み合わせの美しさを垣間見ることができました。因みに外国製品に見えるシンプルなIHヒーターはレンジ―フードと同じアリアフィーナ社の製品です。

造作家具取付け@クラシカルハウス

この日は、大工の工藤さんが来て、廊下部分のフローリング張りをしてくれていました。

造作家具取付け@クラシカルハウス

リビングダイニングキッチンがヘリンボーン張りだったのに対して、コストパフォーマンスも考えて、廊下部分はストレートな乱尺張りとしていますが、仕上げは同じメーカーIOC社のオーク材としています。

造作家具取付け@クラシカルハウス

奥の寝室に並べられていたこれらの細かい部品は、建具のヒンジやレバーハンドル、ロックセット達です。各居室への扉は塗り直して再利用することになっており、塗装の際に邪魔になる金物類を外して工場で吹き付け塗装をしてくれているとのことでした。

造作家具取付け@クラシカルハウス

黒い鳥かごのようなものが現場に届いていましたが、これは玄関ホールに吊るペンダント照明のフレームでした。