Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

設計開始から半年経って初めての現地調査

乃木坂U邸

乃木坂U邸の現場調査に、設計が始まってから6か月経って、初めて伺って参りました。

通常であれば、設計のお手伝いをすることが決まれば、なるべく早くに現地調査をさせて貰うのですが、Uさまご夫妻はこのお部屋を中古でご購入した際はオーナーチェンジ物件(賃借人付きでの物件購入)で、お二人もご自身の目で内装を見たことが無かったのです。賃貸契約が切れて、それまでの賃借人が出る時期が分かったので、早めにリフォーム設計を初めて、お引き渡し後なるべく早くに工事を実施なさりたいとのことで、早めに設計をスタートさせていたのです。

乃木坂U邸現地調査

ほぼ似ているマンションのリフォーム・リノベーションのお手伝いを何件かさせて頂いたことがあるので、写真と図面だけである程度予想をしながら設計を進めてきましたが、窓からの景色の広がりや角部屋ならではの風の抜け感などは、初めてお部屋に入って体感することできました。

乃木坂U邸現地調査

今回のリノベーション設計のクライマックスは、この写真に写っている中途半端な廊下を削減して、その分リビングダイニングを広げる計画なので、完成後に同じアングルでの写真で比較できるようにビフォーアフターのビフォー写真を撮影しておきました。

乃木坂U邸現地調査

キッチンはパッと見、きれいではありましたが、小さなお子さまがいらっしゃるUさまご一家には、このクローズド(閉じられた)のキッチンは適していないので、作り直すことはほぼ決定です。ただ、食洗器はまだ使えそうでしたので、コロナでドイツ製食洗器が品薄なこともあるので、再利用をご提案することになりました。

乃木坂U邸現地調査

玄関はまだまだきれいでしたが、広さの割に収納が少ないことや、タタキの床石がお好みではないとのことを伺っていたので、やはり全面的に作り替えとなります。

乃木坂U邸現地調査

各寝室と水回りへの廊下はとにかく長く退屈な空間に感じるので、通り抜け型の洗面を作ると共にインテリアでも工夫して、一つの見せ場に持っていくようにしたいと考えています。

乃木坂U邸現地調査

廊下の通り抜け洗面には、ビストージのブラケット照明をつけるお話しが進んでいるので、竹田さんが良さそうなサイズの照明を実寸で切り出したモックアップを作ってくれていたので、どんなサイズでどんな位置に取り付得るとどう見えるかの確認ために壁に張ってくれています。

乃木坂U邸現地調査

実際に使われた状態を見ないと、どこまで手を入れるべきか判断できないとお話しをしていた浴室ですが、クリーニングに入った際の水が抜けきっていない為か、かなり汚れて見えました。ただ、図面からはどこのオーダーユニットバス会社が施工したものか分かっていませんでしたが、色々と調べて日ポリ化工が作ったものだということが分かりました。他社ではほとんど対応して貰えませんが、日ポリさんの場合は、浴槽だけの交換や床だけの交換にも対応してくれるので、オーダーユニットバスを作り直さずに部分交換できれいにすることも出来そうだとの良い情報を得ることができました。

乃木坂U邸現地調査

この日はお客さまとの日程が合わず、僕らとリフォーム工事会社として想定しているリフォームキューの営業担当の坂本さんと設備の槻川原さんにも同行して貰いました。脚立で浴室の天井裏をのぞき込んだり、浴室暖房乾燥機を外して品番の確認もして貰いました。

乃木坂U邸現地調査

作り替えることになる洗面では、ビルトイン型の洗濯乾燥機の横の配管スペースを開けて…、

乃木坂U邸現地調査

水回りの床下スラブの深さを実測して貰いました。大よそ、当初見ていた竣工時の図面と同じで、ここまで設計してきた内容で工事が出来そうなことも確認することができました。

乃木坂U邸現地調査

リビングの梁型もダウンライトを外して、本当に構造の梁がどこに合って、度の位置であればダウンライトを入れることができるかも確認して貰いました。

乃木坂U邸現地調査

リフォーム計画では、キッチンもオープンになって、奥の扉のある壁もなくなるので、ツーサイズほどLDKが広くなるだろうと考えております。これからの計画がより楽しみになってきました!

大型ブラックキッチンの組立て-1

渋谷R邸

インスタなどでお馴染みの日本離れした、大型のブラックキッチンの組立てが渋谷R邸で始まりました。

まだ、アイランドキッチンに黒い大理石柄のタイルが張られていないので、真っ黒には見えませんが、背面壁全面を埋めるトール収納(床から天井までの一繫がりの収納)から、まずはサイズの大きさと黒さの度合いが判るでしょうか…。

背面収納は、ビルトインの設備機器や扉、引き出しもまだ入っていないスケルトン状態ですが、手前から引き出し式パントリー収納、引き違いの扉収納、アイレベルのビルトインオーブン、リープフェルのビルトイン冷蔵庫と冷凍庫とワインセラーが並び、その奥に収納扉付きのドリンクコーナー、最後にまた引き出しパントリーが入るという、超大型背面収納です。

扉で多少の調整はできますが、まずはこの箱部分の精度がきちんと出ていることが重要なのですが、このように真横から見て、ほぼズレが見えませんので、組み立ててくれている職人さんたちの丁寧な仕事ぶりが分かります。

収納扉付きのドリンクコーナーの組立ては、特に垂直水性が重要で、少しでも歪むとすぐに扉が開かなくなるので、慎重に組み立ててくれています。こちらはカウンダ―はクオーツストーンで上部にはガラス扉のワイングラス入れが入って、吊り戸にも吊り戸下にも間接照明が入るリッチな作りとなります。

収納扉の取っ手は、出っ張っているときれいに収納できないので、フラットに仕上げる必要がありますが、他の取っ手とデザインを合わせたかったので、この写真のように扉に引手のステンレス丸棒を埋め込んだ特注の取っ手を作って貰いました。

現場に立て掛けられていた収納扉の裏面です。ツヤの度合いは違いますが、裏面もきちんと塗装で仕上がっています。

大型の扉で重要な要素が、この「反り留め(ソリドメ)」と呼ばれる金物です。戸尻(扉の吊元側)は丁番等で調整できるのですが、戸先(扉の吊元と反対側)は湿気等のことで扉が歪むと、フラットな面として揃えることができなくなるので、地味ではありますが重要な要素なのです。

シンクやガスコンロが入る手前の大型アイランドカウンターも箱はほぼ組み上がっています。

シンクが入るべき箇所には、床から給水と給湯管が達が合っており、カウンター甲板にセットされたシンク裏で接続を待つばかりです。

この複雑な形をした金物は、フラット引き違い扉の金物です。通常の引き違い扉は、閉じているときに2枚の扉が段違いになってしまいますが、この金物を使うと、閉じているときにはフラットながら、引き違いが実現できるという優れものなのです!

アイランドカウンターの端部に空いているこの四角い穴は、最後に仕上げる大判タイルを内側から引き寄せるための工夫だとのことでした。

キッチンをお願いしているアルノの鵜飼社長が現場に来てくれていたので、副所長で担当スタッフの前田君が細かい取り合いのことを相談しています。

アルノが特注で黒を作ってくれたコンセントカバーです。これを…、

シンク手前のフィックス扉部分に取り付けることになるそうです。

こちらのやはり特注で作った黒いグリルは、ビルトイン冷蔵庫の上部の換気グリルだとのことでした。

カウンター上に置かれていた、この謎の道具のことも聞いたところ…、

キャビネット箱下の脚の高さを調整するための道具と教えて貰いました。

これは造作家具屋さんでも良く見ますが、厚み調整のフィラー材です。これもキッチン屋さんはきれいに整理しておいてありますね。

まだ、これだけのキャビネットや引き出し類を組み込んでゆき、

更にはアイランドカウンターの大判タイル張りもあるので、まだまだ気が抜けないとのことでした。

サイズ的には大きなキッチンのお手伝いをしたことは幾度かありますが、ここまで黒くてスタイリッシュなブラックキッチンを作るのは初めてなので、完成がとても楽しみです!

セラミックvsクォーツストーン_キッチンカウンター材のメリット・デメリット

乃木坂U邸

高級キッチンカウンター材の2大潮流は、セラミックとクオーツストーンの争いになってきています。

セラミック材はタイルの一種ですが、焼成技術の革新で、大判化(3メートル×1.5メートル!)、薄型化(厚み6ミリで軽量化)、そして大理石模様やセメント柄や木目等のデザインが洗練されたところが特徴の建材です。大判化したことで、目地なしの一枚物でキッチンカウンターを作れるようになったことや、歪みがほぼなくフラットに焼けるようになったことで、一気にキッチンカウンター材として普及し始めました。
カウンター材としてのメリットは、

  • 非常に硬く傷が付きにくいこと、
  • 水がほぼ染み込まないこと、
  • 熱い鍋を直接置いても変色しない耐熱性があることとなっています。

しかし、当然ながらデメリットも幾つかあるのです。

  • 材の断面には模様が無いこと、つまり、厚みを持たせたカウンターとしてデザインする場合は、カットしたままではタイルの断面が見えてしまうので、高額なトメ加工をすることになりますが、すこし不自然なデザインになってしまうこと、
  • 薄くて、搬入や施工中に割れやすいこと。キッチンカウンターではガスコンロやシンクの形にカウンター材を切り抜くのですが、細くなった部分に応力が働くと割れてしまうことがあること、
  • 継ぎ目が出てしまうこと。1枚物であれば、3メートルまで継ぎ目がない計算になりますが、L字型のカウンターとなると、継ぎ目が出てしまうこと、

コーリアン等の人工大理石(人大(ジンダイ))は特殊な接着剤を入れて乾いてから研磨すればシームレスなカウンターを作ることができますが、セラミックはそうはいかないのです。上の写真は、日本に最初に入ってきたセラミックのラミナム(スペイン製)の物です。

セラミックの代表的なブランドはラミナム以外では
デクトン:スペインからのセラミックで、日本のオーダーキッチン会社では、ネオリスとデクトンが使いやすさで2大巨頭となっています。弊社事例では、元麻布I邸の黒いキッチンカウンターで採用させて貰いました。
ネオリス:スペイン製の大判セラミックです。黒系に強いイメージがあり、高層マンションリノベの渋谷R邸の大型ブラックアイランドキッチンで大々的に使わせて貰っています。
フィアンドレ:イタリア製の大判タイルで、薄型(6ミリ厚)のマクシマルミと同柄で厚型(12ミリ厚)のサピエンストーンがあります。特に白系の大理石柄の美しさは特筆すべきものがあります。弊社でキッチンカウンター材として採用した事例は、渋谷区Q邸白金台E邸代々木上原I邸外苑前C邸、原宿K邸などがあります。また背面壁の素材としては、更に多数の事例で採用しています。
マラッツィ:世界最大の販売量を誇るイタリア発のタイルブランドです。グランデマーブルルックシリーズのゴールデンホワイトは白地に金の模様が特にきれいで、新宿H邸のキッチン壁面に使っています。
スタイルメガ:石材メーカーとしては日本最大級の関ヶ原石材が扱っているイタリア産の輸入セラミックです。港区R邸の浴室壁としては使ったことがありますが、キッチンでの弊社採用事例はまだありません。
メガスラブ:石材の顧客向け販売としては最大手のアドヴァングループの大判セラミックです。キッチンのカウンター下のお化粧材としては、麻布台M邸で採用しておりますが、まだカウンター材としては使った経験がありません…。

ラミナムショールーム@南麻布

もう一つの候補はクオーツストーンとなります。コーリアンなどのアクリルやポリエステル等の樹脂で作られている人工大理石に対して、クオーツストーンは天然成分である石英(クォーツ)を砕いて、ポリマー樹脂で固めたものです。石英の含有率が90%以上あることで、天然石に近い質感と光沢を持っているのが特徴です。メリットはセラミックと似ているのでが、

  • 非常に硬く傷が付きにくいこと(セラミックに比べると若干柔らかいです)、
  • 水がほぼ染み込まないこと(これもセラミックに比べると若干悪いです)、
  • 色を混ぜた石英を固めているので、カットした断面まで全て柄が続いていること、

デメリットとしては

  • 耐熱性には難があること。人大に比べれば随分熱に強いのですが、それでも高熱で変色する可能性が高いこと、
  • 継ぎ目は出てしまう。これはセラミックと同じです

こちらの写真は、日本では最後発ではありますが、ユニークで独特な柄を持つカンブリア(アメリカ製)の写真です。

クオーツストーンの代表的なブランドはカンブリア以外では、
シーザーストーン:イスラエル製の日本に最初に入ってきたクオーツストーンです。キッチンカウンターでの採用事例は、白金台H邸横浜A邸六本木N邸品川N邸などがあります。
サイルストーン:スペイン製のクオーツで、先のセラミックのデクトンと同じコセンティーノ・ジャパンが輸入元で、南青山に新しいショールームのコセンティーノ・シティをオープンさせたばかりです。目黒区O邸のキッチンで採用しています。
フィオレストーン:韓国製の製品で、日本の代理店はメラミン等で有名なアイカ工業です。比較的価格が安価で、いざという時に頼りになります。キッチンでの採用事例はありませんが、洗面カウンターやテレビボード等で最近よくお願いしています。
オキテ:イタリア製で日本の大手石材会社の松下産業が扱っているブランドです。まだ弊社では採用事例はありませんが…。
クララストーン日本辰華が輸入元の中国産のクオーツストーンで、華やかな柄でも比較的安価なので、洗面所やトイレの手洗いカウンターでは幾度か採用したことがあります。

現在、キッチン部分を設計検討中の乃木坂U邸では、セラミックとクオーツストーンのメリットデメリットをご説明の上、両者をうまく使い分けながらデザインを進めています。

現在進行中のキッチン図面の左側中段の平面図を見て頂くと分かるのですが、対面型のシンクカウンターはクオーツストーンを使い、壁面側のコンロ側カウンターはきれいな大理石柄のセラミックを使った設計となっています。

コンロ側のカウンター及び壁面に使う予定のラミナムのインヴィジブルホワイトの艶ありとツヤナシを五反田のショールームで見比べた際の写真です。

ラミナムショールーム@南麻布

ほぼ決定となったインヴィジブルホワイトのサンプルを頂いて、次に伺ったのが南麻布のアステックショールーム内にあるクオーツストーンのカンブリアコーナーです。

ラミナムショールーム@南麻布

色々と見てみましたが、最初にリネアタラーラのショールームでも気に入っていらした、サマーヒルがやはり一番品が良くマッチングも良いとのことになりました。
今回のキッチンは、「ニ」の字型キッチンで、壁面のコンロ側には耐熱性で抜群の性能を誇るセラミックカウンターを、ダイニングに対面したシンク側は無垢感があり、天然石に近い質感をもつクオーツストーンと、二刀流の使い分けをすることとなりました。

クォーツストーンとセラミックの良い点を組み合わせたオーダーキッチン

最終的に出来上がった、セラミックとクォーツストーンを組み合わせたオーダーキッチンがこちらです。

クォーツストーンとセラミックの良い点を組み合わせたオーダーキッチン

ダイニング側に面したシンクカウンターは、無垢の大理石と似て小口(カウンターの切断面)まで柄が繋がるクォーツストーンを使い、デザイン的に強調するためにカウンターの端部まで折り下げています。カウンター奥の電子レンジを置くカウンター部分までクォーツストーンで仕上げています。

クォーツストーンとセラミックの良い点を組み合わせたオーダーキッチン

背面のIHコンロがあるカウンターですが、本来はカウンターとバックパネル(壁面)両方共に熱と清掃性に高いセラミックを使いたかったのですが、金額のこともあって、カウンタはクォーツストーンでバックパネルはセラミックとなっています。全く違う会社(どころか作られた国も違う)のに、デザイン的には統一されたキッチンに仕上がりました。

クォーツストーンとセラミックの良い点を組み合わせたオーダーキッチン

最後の写真は、キッチンの最奥からキッチンの長手方向を見返したアングルです。セラミックとクォーツをふんだんに使ったスタイリッシュなキッチンとなりました。因みにシンクカウンターの手前にある木柄の二段カウンターは本物の天然木ではなく、汚れに強いメラミン製となっています。