Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

FENIX(フェニックス)を面材に使ったオーダーキッチン

関西I邸

関西のペントハウス(マンション最上階)住戸のオーダーキッチンの設置が終わったとのこと、現場確認に行って参りました。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

斜めに上がってゆく伸びやかな天井の下に、大型のキッチンが据え付けられました。

最上階住戸の吹き抜け天井

キッチンの確認が第一目的なのですが、やはり天井の高さに目を奪われてしまいます…。担当スタッフの竹田さんの身長を比べると天井高さが際立ちますね。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

天井からキッチンに戻りますが(笑)、コンロのあるバックカウンターは濃灰色で引き締めて、手前にあるシンクカウンターは木目と石目調のクオーツストーンで家具のように柔らかい雰囲気にしています。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

もう少しディテールを説明すると、背面カウンターの面材は超マット仕上げで指紋が付かないFENIX(フェニックス)という素材の農灰色を使っています。イタリアで開発された素材で、表面上の小さな擦り傷が強くリネン等でこする熱によって消えてしまうという優れた性能を持っていることに、I邸の奥さまが一目惚れして選ばれたものです。キッチンの扉材は油汚れを拭き取りやすいように鏡面或いは7分ツヤ程度で仕上げることが多いのですが、フェニックスであれば艶ナシのマット仕上げが可能となるのです。
因みに、カウンタートップ(天板)は金属ながらやはりマットで傷が目立ちにくいホットバイブレーション仕上げのステンレス。白い壁のように見える部分は、ネオリスの大理石調のセラミックを張っています。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

こちらの写真は数日前の組立て途中のもので、今回のキッチンをお願いしているリネアタラーラの牧野さんが送ってくれたものですが、吊戸棚とレンジフード裏まで、LEDの間接照明を通して貰っています。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

下から見上げるとこのようになっています。よく見ると、吊戸棚の下面もFENIXで仕上がっているのが判りますね。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

本当のディテールに入り込んでしまいますが、一番奥のトール収納(床から吊り戸の高さまで伸びる背の高い収納)の横にはルーバーが切られています。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

トール収納の扉を開けて、横面の点検口を開けると、マンションの給気口が裏にあるのです。レンジフードのスイッチをオンにしたのに、給気量が十分にないと部屋が負圧になってしまうので、こちらの給気口は常時オープンにしておいて、先ほどのルーバーの隙間から新鮮な空気が入ってくるという仕組みになっているのです。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

対面型のペニンシュラ(半島)型カウンターはもう少しシンプルな構成となっています。クオーツストーンのカウンタートップは良く愛用させて貰っているシーザーストーン社のシイタケの大判の上に、同じブランドのミンク色の板状のものを載せて貰っています。カウンターは奥のキャビネットの中まで伸びて、電子レンジを隠せるようなコーナーを作っています。シンクカウンターの内側の仕上げは白のFENIXです。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

奥のキャビネットがちょっと工夫されている個所で、ダイニング側から見ると収納になっているのですが、一部がキッチン下から屋根裏へと伸びている通気管隠しとなっています。向かって右側の化粧パネル奥に配管が通っているのが見えるでしょうか。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

工事途中の写真を見ると良く分かりますね。この竪管を隠すためにキャビネットを作ったという訳なのです。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

造作工事のパントリー側から見たキッチンの全容です。ダークでシャープな背面カウンターと温かく柔らかな対面カウンターの組み合わせは、カガミ建築計画の得意技となってきました。

最上階住戸のオーダーキッチン設置

キッチン以外の工事の進んでいるので、軽くご紹介しておきます。この写真の右手ニッチになっている個所がワンちゃんスペースとなり、その背面に玄関からキッチンへと通り抜け可能なパントリー収納が設置されています。写真一番右手が玄関です。

最上階住戸の吹き抜け天井

二面から斜めに伸びあがる天井は、マンションリフォーム&リノベの現場では見る機会がほとんどないからかもあって、首が上を向いてしまいます。黒く塗装した天井には木製のルーバーが取付けられ、赤い鉄骨も濃灰色に塗装されていきます。

玄関下地

パントリーや屋根裏収納への梯子との関係で玄関ホールはあまり広く取れていませんが、コンパクトながら造作家具やベンチ、サルバトーリの加工大理石やカラーガラス、レザーなどで華やかな空間になる予定です。

玄関ホール下地のディテール

玄関入って右の壁には普段使いの靴収納とベンチが、

玄関下地

入って正面にはカラーガラス張りの壁と扉がはまります。キッチンまで一直線で通り抜けることができるパントリー収納が便利そうです。

玄関ホール下地のディテール

カラーガラスと、玄関ホールからリビングへの引き戸横の明り取りのガラス見切り等が細かく取り合っている面倒なディテールです。

渡り廊下

いままであまりブログで紹介していなかったプライベート部分も少しお見せします。右側の廊下が2室を繋ぐ廊下となっています。その途中にトイレがあります。

プライベート廊下下地

プライベート部分はモダンでスタイリッシュなパブリック部分と違えて、パネル壁のクラシカルなデザインとなっています。

浴室&ユーティリティー下地

ダブルシンクのカウンターが入る洗面脱衣と、その奥の洗濯乾燥機が入るユーティリティースペースの下地状態です。

最上階住戸の吹き抜け天井

最後の一枚はダイニング側からリビングを見た写真です。左上に浮かんでいるのが既存の屋根裏収納ですが、この壁にも木板を張って仕上げてゆく予定です。

代々木上原I邸のお引渡しとビフォーアフター

代々木上原I邸

細かく現場を見ながら、凝った素材やディテールを駆使して設計監理した代々木上原I邸もいよいよお引渡しとなりました。

B&Bイタリアに作って貰った大型ウォークイン・クローゼットの使い方説明から始まりました。なお、このクローゼットシステムの組み立て時の詳細は以下のブログをご覧ください。
・最高級ウォークインクローゼット家具の組立て

最高級オーダーキッチンブランドのアムスタイルに作って貰ったコンパクトながらシャープなキッチンの取り扱い説明。
・アムスタイルのコンパクトキッチン組立て

キッチンが大きいと説明すべき内容も多岐に渡り、「細かい使い勝手や仕様はパンフレットをご覧ください」と説明を簡略化してしまうことも多いのですが、今回は設備機器類が少ないので、特注で作って貰ったレンジフードは分解するところまで担当の桑原さんに説明して貰いました。

寝室はまだベッドが入る前の段階でしたが、ヘッドボードのデザインもとても気に入って頂けたようです。
・緞子(どんす)張りのヘッドボードの作り方

施工会社のの片岡社長と現場担当の石坂さんの説明を受けながら、Iさまが工事完了受取証に記名捺印をして下さいました。これで長かったリノベーション工事がひと区切りしたことになります。

代々木上原I邸竣工記念撮影

最後に、Iさまを中心に関係者全員での記念撮影です。左から青の片岡社長、現場副監督の野口さん、現場監督の石坂さん、カガミ建築計画の設計担当の神崎さん、モザイクがIさまで、僕、各務です。
以下、リノベーション工事前(僕らがお手伝いし始めた時には、既に別業者さんで解体工事がほとんど終わっていました)と竣工時を比較したビフォーアフターの写真集です。

ヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

リビングダイニングキッチンのビフォー&アフターです。四隅のコンクリートの柱型が出っ張ったように見えていた空間ですが、南側べルコニー窓周りを木製フレームで囲い込むことで、窓部分だけが凹んだようなデザインに見せることができました。

ヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

上のビフォー写真の左側四角い囲い壁の中はキッチンでした。キッチン自体の位置は変えず、L字型のカウンターのあるセミオープンキッチンにすることで、空間の広がりを感じるようになりました。

ヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

メゾネット階段は、木製の箱のように囲い取ることで、建具や家具のように見せています。

メゾネットヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

寸法的にもあまり余裕がない階段でしたが、緻密な設計と現場監督の連携、そして大工さんの精緻な作りで素晴らしい工芸品のような階段ボックスに仕上がりました。
・メゾネットマンションの階段リフォーム

ヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

リノベーション前は小さな寝室と浴室セットが隣り合っていましたが、二つの部屋を連結して大きなヘッドボード付きのベッドルームを作りました。左右違うサイズの窓でしたが、パネルフレームでうまく隠して左右対称かのように見せることに成功しました。

ヴィンテージマンションリノベーションのビフォーアフター

納戸だった空間を大型スタイリッシュなウォークインクローゼットにリノベーションしました。四隅のコンクリート柱型もクローゼットでうまく隠すことができました。

セメント系建材のソリドをカッコ良く見せるディテール

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリーブランドでお手伝いしてる工事進行中の中央区S邸のお客さまは、武骨ながらカッコよい素材、そしてラフに見えてきちんとディテールがあることを重視する方です。ザ・ライブラリーとして提案した内装材の一つが、セメント系素材のソリドです。建物の外壁材に使えるほどの頑丈さを持ちながら、一枚一枚が違った自然で豊かな表情を持ち、それでいてリーズナブルな価格なこともあって、建築家が設計するデザイン性を重視した戸建て住宅では大人気の素材となっています。ただ、製品精度がそれほど高くないことと、端部がもろいので、そのままではザ・ライブラリーとしては使えないだろうとのこと、金属の目地を間に挟むことで硬質感と光沢を加えてご提案することとなりました。

まだ施工途中の段階ですが、壁に張ったソリドと金属目地の取り合いディテールを撮影したものがこちらです。セメントからカルシウムが白く滲み出てしまうエフロレッセンス(白華)をわざとデザインに取り込んだラフな素材の隙間にキラリとした光沢感があるステンレス鏡面磨きの目地棒が入ることで、設計側が狙ったデザイン意図がうまく表現できました。

サンプルでソリドの色味とステンレスの見切り材のサイズを決め、それを展開図に書き込むところまでは簡単でしたが…、

現場に届いたソリドの梱包を開けて、すべてを一旦箱から出して仮並べします。因みに、これは2層吹き抜けの上階から見下ろした写真です。

特注で作った見付け5ミリのステンレス鏡面磨きの見切り材とソリドを順番に取り付けていきます。

ソリドの端部が少し脆いので、ステンレス見切りを1ミリ程勝たせています。

手慣れた大工さんが一人でソリド、見切り、ソリドと順番に張っていきます。
以下は、ザ・ライブラリーブログで続きをご覧ください。