Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

渋谷M邸の一年点検

渋谷M邸

ちょうど一年前にお引渡しをしていた渋谷の高層マンションリフォームプロジェクト、渋谷M邸に一年点検ということで、工事をお願いしたリフォームキューの担当の森井さんと一緒に伺って参りました。

渋谷M邸_一年点検

とてもきれいにお住いで、もう一年経ったことが信じられないほどきれいな状態のお宅でしたが、事前にメールのやり取りで幾つかの不具合や問題点をMさまに指摘して貰っておりました。

渋谷M邸_一年点検

一つはダイニングテーブル上のペンダント照明(ヴィジュアルコンフォート社)のカバーガラスのシミについてでした。写真では全く分からない小さい汚れのように見える染みでしたが、近くで肉眼で見ると判りました。ただ、これが製品としての瑕疵なのか、この製品独特のニジミなのかが分からないので、照明器具をお願いしたベイカー@東京にアメリカ本社に聞いて貰うことになりました。

渋谷M邸_一年点検

本当に近寄って良く見ないと分からないものなので、まずは向きを変えて目立たないようにしておきました。

渋谷M邸_一年点検

これも写真ではほとんど表現できないのですが、この壁の真鍮目地にうっすらと錆が浮いていることも指摘された事項でした。ただ、これは森井さんから事前に乳化性液状磨き材のピカールをご紹介して、柔らかい布でこすって頂いたところ、錆は取れたとのことでした。今回はコーティングされていない真鍮を使っているので、特に加湿器を良く使う冬にはうっすらと錆が発生してしまうようです。ただ、清掃方法が分かったことで、Mさまもご納得してくださいました。

渋谷M邸_一年点検

こちらの小さな棚は、設計の最後の段階で付け足したものでしたが、下部がお掃除ロボのルンバ基地となり、棚の中にはティッシュやストック品を置き、上部には充電式の照明や植栽を置く場所となり、とても役立っていることが分かりました。

渋谷M邸_一年点検

寝室もとてもきれいでしたが、ベッドのヘッドボードのレザーパネルが一部剥がれてきたことと、お化粧コーナーの引き出しが少し沿っていることが問題でした。

渋谷M邸_一年点検

ヘッドボードのパネルについては、接着があまっかったようですので、改めて伺って両面テープと接着剤できちんと固定することでご了承頂きました。

渋谷M邸_一年点検

引き出しの反りについては、簡単に直るものではなさそうでしたが、一旦家具屋に引き取りに来てもらい、クランプ等でゆっくり圧を掛けて補正できないかトライしてみることとなりました。

渋谷M邸_一年点検

廊下の空間もトイレの空間もとてもきれいで、改めて写真撮影させて貰いたくなりました。

渋谷M邸_一年点検

ご招待するお客さま、全ての方が素敵なインテリアだと誉めて下さるとのことで、Mさまが僕らのリフォームデザインを大絶賛して下さったことが何より嬉しい一日でした!

モダンリビング&ホテルAzabuTen&アレキサンダー・ラモント

港区R邸

現在発売中のインテリア雑誌「モダンリビング」(ハースト婦人画報社)の262号「素材と色」特集号に、弊社紹介のブティックホテルとインテリア素材が掲載されております。

モダンリビング_素材図鑑

素材感と色彩豊かな住宅事例が沢山並んだ後の最終コーナー直前に「素材図鑑」というコーナーがあり、その中の「その他の素材」で私、各務が登場しています。

モダンリビング_素材図鑑

木質系と塗装系をラブアーキテクチャーの浅利さんが、石材をIKGの池貝さんが、タイル系素材を芦沢啓治建築設計事務所の芦沢さんと華々しい建築家の方々の中に入れて貰えました。

モダンリビング_素材図鑑

元々はモダンリビングの編集部から、上記の木質、塗装、石材、タイル、その他の項目それぞれに対して、注目している素材をリストして、更にそれらを実際に一般の方でも見学に行ける場所があれば教えて欲しいとの取材依頼がありました。木質ではリストネジョルダーノ(ADワールド)のフローリング材、石材ではアントリーニ(関ヶ原石材)の希少大理石とサルバトーリの加工大理石、タイルではフィアンドレ(アークテック)の大判大理石柄タイル、その他素材でアレクサンダー・ラモントエルクリエーション)を紹介したところ、全て採用となりましたが、紹介文としてはラモントを紹介することになりました。

アレキサンダーラモントの壁素材

ラモントは、こちらの港区R邸のダイニング壁でストローマルケタリー(らい麦の茎の寄木細工)を使ったことがあり、他にも魅力的な素材が沢山あるので、このような特集であれば是非紹介して貰いたいというコメントをつけて編集部に送ったところ、採用となった経緯があります。

これは小さなサンプル板ですが、毎年新しい素材が増えていますが、現時点でも100種類以上の素材を研究開発しているという凄い会社なのです。
ただ、今回のモダン特集は、こういった小さなサンプルを見ることができるショールームではなく、実際にラモントの素材を使っていて、一般の方でも見学に行ける店舗などを紹介して欲しいとのことでした。そういったお店を知らなかったので、編集部の高橋さんと左近さんがエルクリエーションに問い合わせをしたところ、まさにうってつけの場所を紹介してくれました。それが麻布十番にあるホテルAzabuTen(アザブテン)でした。

ホテルAzabu Tenのアレクサンダーラモント

編集部からの紹介で伺ったところ、玄関ホールに入って正面の壁がラモントの金色のストローマルケタリーでした。ご本人が建築家であるホテルのオーナーがインテリアに拘った隠れ家ブティックホテルとのことで、本当に凝ったインテリアで見どころばかりのホテルなのです。

ホテルAzabu Tenのアレクサンダーラモント

ホールのカウンターに使われているこの素材もラモントの物です。魚のうろこのような表情の素材ですが、ジェッソ(石膏ベースの下地材)を布に塗った後、乾燥後続けて全面に漆を塗り、手で縦横の細かい割れ目を入れて割れ目部分を研ぎ出し、研いだ部分には糊代わりの漆を塗って金箔をはるという、実に手の込んだ素材となっております(現在はあまりに手が掛かり過ぎて金額も驚くほど高くなってしまうので、廃番寸前だそうですが、特別な依頼があれば、まずはお見積もりはして貰えるそうです)。

ホテルAzabu Ten

オーナーの建築家と家具ブランドのカッシーナが共同で設計したとのことで、カッシーナの最高級家具のチェコッティのラウンジチェアがさりげなく置かれています。入り口の自動扉の仕上げも金属の編み込みとなっていました。

ホテルAzabu Tenのインテリア

ホテルのお部屋一つ一つが違ったデザインモチーフとなっており、素材や色味も違っており、ホテルの部屋を毎晩変えるだけで、沢山のデザインを体験できるというとてもユニークなホテルなのです。(写真提供:ホテルアザブテン)

ホテルAzabu Tenの吉田さま

ご案内くださったホテルのエグゼクティブ・アドバイザーの吉田さま、どうもありがとうございました!

モダンリビング_素材図鑑

話が大分長くなりましたが、雑誌モダンリビングの素材と色特集はこちらとなります。本屋で見かけましたら、是非手に取ってご覧ください。

乃木坂U邸_リフォーム案のバリエーション

乃木坂U邸

先回、青焼きのマンション竣工時の図面のことから書き始めた乃木坂U邸ですが、初回のお打合せ時にこちらでザッと考えたリフォーム案をお見せして、とても気に入って頂けたところから、具体的に費用が発生してしまう竣工時図面調査へと進んだ経緯があります。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

お客さまの熱心さやご提供された既存図の状態、こちらの時間的な余裕等で、ケースバイケースではありますが、初回のお打合せ前までに、ザッとしたリフォーム案を作っておくことがあります。今回はお手伝いしたことが無いマンションではありましたが、同じシリーズのマンションは良く知っており、メール添付で送って頂いた既存図が分かりやすい状態の物でしたので、お客さまのご要望も伺っていない中ではありますが、勝手な妄想リフォーム案を作ってみました。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

それがこちらです。玄関からリビングダイニングを通らずにプライベートゾーンの個室や浴室に行けるのが当初の間取りですが、そのことで廊下の面積が大きくなって、リビングダイニングが小さくなってしまっていたので、玄関から直接大きなリビングダイニングに入って、そこからプライベートエリアに進む動線にし、またクローズドだったキッチンをセミオープンにすることで、LDKの空間サイズが体感ベースではありますが、50%ほど広く感じるであろうプランを練ってみました。

乃木坂U邸_インテリアイメージ

初回お打ち合わせでお目に掛ったUさまご夫妻は、以前より弊社のホームページやブログを見て下さっており、いつか機会があればお願いしたいと考えて下さっていたとのことでした。弊社の事例では、広尾N邸や、代々木上原I邸がお好みで、これらの写真のようなクラシカルなパネリング壁にヘリンボーンの床フローリングで、品の良いお住いになさりたいとのお話しでした。
こちらがご提案したリフォーム案に、この壁はパネル仕様にして、こちら壁にはコンソールとアートを飾ってとお話しをしていったところ、とても盛り上がって、是非弊社をパートナーにしてリフォームを進めたいとのことが決まった次第です。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

調査した竣工時図面で、床下スラブの段差位置や、水回りの排水管経路などが相当な精度で分かったので、担当することになった弊社副所長の竹田さんがすぐに既存図をCAD化して、こちらで作ったリフォーム案をベースにリフォーム案を4つに増やして、2回目のお打合せ時にご提示させて頂きました。こちらのリフォームA案は、コストパーフォーマンスも考えて既存浴室を残した形で、初回打合せに伺ったご要望をなるべく取り込んだ案です。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

洗面所は広くして、できればダブルシンクのカウンターが欲しいとのご要望でしたので、ダブルシンクは実現できませんでしたが、浴室をダウンサイズして洗面を広げた案がこちらのB案です。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

以前お手伝いした世田谷N邸で実現した、廊下に洗面所を持って来て、浴室の横は脱衣と洗濯機置き場にするという大胆な提案がこちらのC案です。Uさまは、拙著「世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション」を読み込んでくださっていたので、「このプランは見たことがあります!」と喜んで下さいました。

乃木坂U邸_リフォームプラン案

最後のD案は、浴室位置は変えず、元々が広かった主寝室のウォークインクローゼット側にダブルシンクの洗面を持ってゆくという、もっと大胆なプランでした。ただ、大手術の割には、そこまで実用性がなく、お客さまはとても喜んで下さいましたが、予算のことやデメリットをお伝えしたところ、ここまでやる必要はなさそうだとご理解下さいました。

キッチンについては、フルオープンからセミオープンまで色々な種類を書き込んでみています。Uさまご夫妻は、A案かB案か、思い切ったC案かと悩まれてたいので、次回以降の打合せ時、それぞれの良い点をミックスしたE案にチャレンジしてみますから、今決めないで良いですよとお伝えしましたが、お二人でご相談の上、C案で進めたいとのご判断を頂きました!