Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

遮音壁作りから始まる解体工事

目黒区O邸

目黒区O邸は、施工会社のでの工事が決まり、マンション管理組合からのリフォーム工事申請の許可が出る前に、お客さまご夫妻で近隣への工事前のご挨拶をして回って頂いたところ、隣接住戸にお住いのご家族から、コロナ禍の中リモートワークで在宅でお仕事をする機会が多いので、工事中だけでなく工事後のことも含めて音の対策を考えて欲しいとのお話しがありました。Oさまからも、工事前に仮住まいになってみた際に、隣家からの生活音が結構聞こえたとのお話しがありましたので、コンクリートの戸境壁の手前に遮音壁を作ろうとのお話しになりました。
そして工事中の音のことをあったので、解体工事を2段階に分けて、最初に隣家との戸境壁のGL壁と床及び天井の一部を壊し、そこに遮音壁を作ってから、本格的な解体工事に入るという変則的な工事工程を組むことになりました。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

まず、GL工法で作られていた既存壁を解体した状態です。因みに、GL工法とはGLボンド(ジーエルボンド)と呼ばれる接着材と石膏を練ったものをコンクリート面に団子のよう一定間隔で付けて、そこに石膏ボードを張って壁をつくる工法のことです。スピーディーに石膏壁が作れて、費用も安く抑えられるので、一時期は良く使われていた工法ですが、現在は断熱性や結露、遮音の問題であまり使われなくなってきております。コンクリート壁に白い水玉模様のように見えているのが、壁に残ったGLボンドの跡です。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

GLボンドを壁から剥がすのは手間も掛かりますし、結構大きな騒音も発生するのでそのままにして、その手前にLGS(軽量鉄骨)の壁下地を立てます。写真手前は納戸だった部分で天井を剥がしているので、上階との境となるコンクリートスラブまでLGSを立てているのがハッキリ見えます。梁の奥のリビング部分も見て頂くと、50センチほど天井を壊してLGSの下地を上階のスラブまで立ち上げて貰っています。ここを手を抜くと、音が漏れてしまうのです…。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

一部壊した天井からLGSが上までしっかり伸びているのが判ります。そこにもしっかり断熱材を充填して貰いました。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

こちらが壁に充填している断熱材です。今回の遮音壁はほぼ、石膏ボードメーカーの吉野石膏Sウォール・65の仕様に準じた作り方としています(「ほぼ」というのは、実はLGSの隙間に詰めるこのグラスウールが仕様にはないのです。ただ、常識的に考えて空隙を断熱材で埋めた方が太鼓現象が亡くなってよいだろうとのことで、ボーナス的に加えているからです)。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

一部だけ、躯体壁に弱電の線の取り出し口があったので、将来対応のことを考えて、遮音性能はこの部分だけ欠けてしまいますが、お客さまにもご説明の上、点検口をつけることとしました。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

遮音壁の仕様に従って、せっこうの芯にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した石膏ボードのタイガーボードZを張ってゆきます。2層張りとなりますが、仕様通りに1層目は横張り裏面張りにしてにして貰っています。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

ボードとコンクリートが接する部分には、このロックフェルトというスポンジ状のテープを差し込むのも吉野石膏の仕様通りの施工となっていることを確認しています。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

まずは一枚目の石膏ボードが張られた状態です。この写真だと、ロックフェルトが隙間に挟まっているのかよく分かりませんが…、

この写真だと良く分かりますね。

実際には、この写真のようにボードを張る前にロックフェルトを張ってからボードを張っているので、抜けはないと現場監督の石坂さんが大量の施工途中の写真を見せてくれながら説明してくれました。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

ロックフェルトがどうしても入らない隙間には、このジプタイトを充填して貰っています。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

石膏ボードも通常の壁に張る12.5ミリや天井用の9.5ミリと違って21ミリの厚いものを使っているので、ボード屋さんの作業も大変そうです…。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

2層張りのボードの施工が終わった状態がこちらです。2層目はボードが縦張りになっており、これで遮音壁の完成となります。遮音壁作りから始める解体工事は初めての経験ですが、これがあることで、室内のコンクリートブロック壁の解体時の音も、少なくとも隣室にはそれほどご迷惑を掛けずに工事ができそうで、少し気が楽になります!

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

その他解体工事の準備は進んでいます。電気工事の照明スイッチ類やエアコンのコントローラーの取り外しや…、

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

インターフォンの取り外しも終わっています。

遮音壁作りから始めるマンション解体工事

ユーティリティーでは床仕上げ材を剥がして、便器を取り外して、配管の向きをチェックして貰ったところ、シンダーコンクリート内に埋まっている配管経路がほぼ分かったので、そのルートに沿って、コア抜きをして新規の排水管を埋め込むことができそうだとのことも分かりました。

18年ぶりの訪問!白金T邸

リフォーム

18年前に竣工お引渡しをした白金T邸に、本当にお久しぶりにお邪魔して参りました。

白金台T邸

リフォーム計画に取り掛かった18年前の当時で築32年のヴィンテージマンションでしたが、今になってみると築50年の超ヴィンテージとなっています。実はこのマンションの建て替えが決まったとのことで、家具の取り外しができるかどうかの確認をして欲しいとのことで、Tさまからお電話を頂きました。

因みに、こちらは竣工お引渡し直後のTさま邸のリビングダイニングの写真です。Tさまは白金&白金台エリアを生活の拠点としていらっしゃるので、よく道でお目に掛ってご挨拶はしておりましたが、ご自宅に伺うのは18年ぶりのことでした。

白金台T邸

当時のカガミ事務所の図面が手書きだったからCADだったかすら覚えておりませんでしたが、引っ張り出した図面はCADで描かれていました。当時はまだマンションリフォーム専門ではありませんでしたが、斜線制限で斜めなった柱型や大きな梁型を隠す造作家具を多用した、凝った作りの工事だったことはよく覚えております。

白金台T邸

お引越し前で、荷物が散らかっているので恥ずかしいとのことでしたが、お願いして幾枚かだけ写真撮影させて頂きました。

白金台T邸

結論としては、取り外せるのはキッチンの家電収納家具だけで、他は造作家具として壁や柱や天井にノリとビスで固定されているので基本は取り外せないことを確認致しました。ここまできれいに使ってきたので、引っ越し先にも何か持ってゆきたいとのことでしたが、そのありがたい想いはほぼ叶わないことが判りました…。
3~4年後には、新しく建て替わったマンションに戻ってくるので、その時にはまた改めて相談に乗ってくださいと仰って下さり、設計者冥利に尽きるひと時となりました。

最近は、昔のお客さまから再リフォームの相談などもあり、先日も22年前に初めてのお仕事としてお手伝いした高輪のOさまから、老後に備えての再リフォームのご相談を頂きました。ただ、その際はお考えの案は費用対効果があまり良くないので、違う方法を考えた方が良いのではとアドバイスさせて頂きました…。

ファブリック生地選び@トミタ京橋ショールーム

代々木上原I邸

色々と事情があって、ブログの更新が滞っていた代々木上原I邸ですが、竣工お引渡し一年を機に、改めて途中からブログを再開することとなりました。見積り用の図面を施工会社の青に渡した段階で、ファブリックを見るために京橋のトミタショールームにお邪魔してきました。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

これまでファブリックと言えば、マナトレーディングで選ぶことが多かったのですが、ここまで判ってきたIさまの好みから考えて、今回はトミタにお邪魔しました。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

元々、洋服を見たり選んだり買ったりすることが大好きなIさまですので、建材や設備類を見ているときとは、ショールームに入った時の気持ちの高揚感が全然違ったようです!

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

布地の質感、滑らかさ、光沢感、色味を見比べながら、この生地をどこかに使いたい、この生地で家具を作りたい、或いはこの生地で洋服を作れないかと、発想が膨らむようで、このショールームだったら、毎日でも通いたいとのご感想でした。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

今回のショールーム訪問では一つ大きな目標がありました。主寝室のヘッドボードに使うファブリックの候補を見つけて、見積りの中に入れ込みたいのです。普段は人工レザーでヘッドボードをご提案することが多いのですが、レザーもお好きなIさまですが、寝室のヘッドボードはもう少し柔らかい素材で作りたいとのご希望でした。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

主寝室周りでここまで決まっている木目や、他の部屋で使う予定でIさまのテイストにあっている家具の張地などを見比べながら、ヘッドボードの候補生地を探してゆきます。が、どうも脱線しがちです(笑)。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

お気持ちが色々な処に飛んで行きそうなIさまを必死に追いかけながら、ヘッドボード生地の候補を探しました。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

そしてついに候補として見つけることができたのが、この右側にある少しツヤのあるスペインのLizzo社の生地でした。緞子張りにするにはある程度の伸縮性が必要なのですが、それも十分に取れそうだとのことも分かりました。ただ、イギリスから輸入する生地とのことで、国内在庫はなく、スペインの在庫もそれほど余裕がないことが判りました。トミタの場合、2週間ほどまでは在庫を抑えることができるとのことでしたが、それ以上の期間は抑えられないこと、工事契約まではまだひと月ほどは掛かりそうなので、それまで在庫がなくならないことを祈るばかりとのことでした…。

トミタ京橋ショールームでのファブリック選び

Iさまが先に帰られた後、トミタの担当者とファブリックの最終確認をさせて貰いました。上記の在庫抑えは延長できないことなどがはっきりしたので、工事契約の2週間前まで祈りながら待ち、その時点でまだ在庫があるようでしたら、在庫抑えをして貰い、工事契約と同時に工務店からトミタに発注及び入金をさせて貰う流れとすることにいたしました。