ユニットバスではありながら、在来工法浴室のように浴槽もシャワーも水栓も自由に選べて、ステンレス枠に強化ガラスのシャープでホテルライクなデザイン、そして壁仕上げ材もほぼ自由に選べるオーダーユニットバスの作りを徹底解剖します。
渋谷R邸の現場にヴェルデにお願いした大型オーダーユニットバスが入ってきました。手前に見えているのは壁下地のLGSで、その奥に少し床から浮いて置かれているものがオーダーユニットバス(壁の裏側)です。因みにヴェルデでは、カスタムメイドシステムバスという名称で販売しています。
オーダーユニットバスは、床を構成するFRP製の床防水パンと、壁パネルと天井パネル、そして出入り口のサッシ部分から成り立っています。アップで見ているこちらの写真は、床防水パンの接合部の裏側です。
通常サイズのユニットバスであれば、床防水パンは一枚で作ってくるのですが、今回のように大型の場合は、浴槽が載る部分と洗い場のパンに2分割されています。防水パンの下を覗き込むと、排水管が接続されているのが分かります。
ベージュ色の筒状の物が排水トラップで、そこから灰色の管が繋がっているのがVP管の排水管となります。手前で床設置面に接着されているものがパンの脚です。
浴室内側から見た防水パンの全容です。
浴槽を設置する側のパンがこちらです。小さい穴が幾つか空いている個所は、パン下の脚の高さを上から調節するねじ穴となっています。大きなキャプ付きの丸い穴は浴槽の排水への接続口で、四角い穴は配管接続及び位置確認・点検口を兼ねた窓穴となっています。
手前の防水パンが洗い場となる個所です。養生されており今は見えませんが、防水パンの洗い場には既に指定した床タイルが指定した勾配で張られた状態で現場に届きます。
2枚の防水パンの接合部分はこのようになっています。お互いが嚙み合う形で接続され、最終的には上からアルミのキャップをかぶせて念入りにシールで固定されています。朱色のダンベルのようなものは、タイル仕上げの壁パネルを取り扱う際に使う吸盤付き取っ手です。
防水パンの接合部の反対側の様子です。パンの壁側上端を良く見ると、アルミのランナーが付いていて、壁パネルと噛み合うように設計されています。
今回は洗面側からの入り口と隣り合って、サウナ室の出入り口があるので、ステンレス枠と強化ガラスの入り口サッシが2セット付く作りとなっています。サウナ使用時には浴槽に冷たい水を満々に入れて、ザブンと飛び込む際に水が大量にあふれ出るので、出入り口側にはグリル付きの排水口を切っています。パンの立上り部分には既に壁と同じタイルが張りつけられています。
洗面側から見た防水パンと壁パネルの取り合いです。
こちらが現場に運び込まれている壁パネルです。今回は60センチ角のタイルを使っているので、壁パネルは幅60センチの縦長のパネルとなっていますが、最大で90センチのパネルまで作ることができるそうです。横長のパネルになると接合部からの水漏れの可能性があるので、タイル目地も縦に通る形となるのがオーダーユニットバスのあまり知られていない特徴の一つなのです(ただ、特殊な作り方で(当然費用も高くなります…)横長のタイルや横型のパネルを作ることも可能ではあります)。
レーザーで垂直を合わせながら、壁パネルを立てていきます。壁後ろにはスペーサーを挟んで倒れないように工夫されていますね。在来工法浴室では、壁タイルは防水下地を作った躯体やコンクリートブロック壁に直接張ります。裏までしっかり重量がある質感が魅力ですが、寒さ対策で考えると、壁パネル裏に空気層があるオーダーユニットバスの方が温かいというメリットもあるのです。
あれよあれよという間に、三枚の壁パネルが張られました。因みに一番最初の写真を見返して貰うと、この壁の反対側の壁の裏側が見えています。アルミのフレームに耐久性・対候性のあるフレキシブルボード(通称フレキ)を張り、そこにタイルを圧着して壁パネルを作っています。浴室内側から金物類(シャンプーホルダ―や手摺り)を取り付ける箇所にはビス固定用のベニヤ板が張られています。
直線部分では壁パネル同士はこのように接合され…、
コーナーでのパネル、そして防水パントの納まりはこのようになっています(少しピンボケですが)。
浴室の隣室に立て掛けられているこちらの部材もオーダーユニットバスの部品です。手前で横になっているのが洗面から浴室への出入り口のステンレスサッシ枠で、奥の四角や丸穴が空いているものが天井パネル(裏面)です。
ステンレスサッシ枠は、鏡面仕上げの枠に傷が入らないように白いテープで養生されています。
断面も複雑な形状に見えますが、一番重要なのは防水パンとの接合部の欠き込み部となります。ここが防水パンのランナーとガチっと噛み合って、水を漏らさないのです。
二つのステンレス枠が取り付けられた様子です。浴室内側からの写真で、左側が洗面で、右側がサウナとなります。
こちらは浴槽の上にかぶせるタイル仕上げの平板部(通称:デッキ)を裏側から覗いた様子です。上部に人の体重が掛かるので、溶接された鉄角パイプで頑丈に作られています。
デッキ材の端部にもアルミのチャンネルが付いており、壁パネルとがっちり組み上がって、水を内部に入れない構造となっているのです。
先ほどの天井パネルを裏返したのがこちらの写真です。青い養生シートが張られていますが、仕上げはツルツルの白い面となっています。四角い大きな穴は、浴室暖房乾燥機とそのメンテナンスのための点検口で、大きな丸い穴は音楽を聴くスピーカー、小さい丸い穴はダウンライト用の開口となっています。
一通り組み上がったオーダーユニット浴室を洗面側から覗いた写真です。高層マンションのビューを楽しむために、PSから一番遠い窓際に浴室を設置したので、当初の設計通り、洗面床から浴室床が約10センチほど上がっています。
2連のステンレス枠が合体したサッシ枠の見上げです。左側が洗面で、右側のベニヤ板下地の部分がサウナになります。
洗面側の天井は、天井裏のエアコンのことで浴室より天井が落ちています。サウナも天井が高いと、熱気が上に逃げてしまうので、わざと天井を落としています。まだ仕上がっていないので殺風景ですが、施工をお願いしているプレステージプランニングの松永さんと弊社担当の前田君が立っているのがサウナ室です。
こちらはサウナ側から浴室のサッシ枠と天井を見上げた写真です。
水栓やシャワー、シャンプーラックが付いた浴室壁です。こちら側は梁と干渉するので、天井に一部梁型が作られています。
組み上がった天井です。当初の天井パネル割だと、浴室暖房乾燥機の直上にダクトがあり干渉してしまうことが分かったので、急遽パネルを作り変えて貰いました。
既存の窓とデッキの取り合い部です。タイル一枚分だけ枠を取り付けて、オーバーフローした水がそのまま窓サッシに流れ込むことを少しでも防ぐようにすることができました。これからサウナ部分を大工造作で作ってゆくので、完成はもうしばらくお待ちください。
因みに今回のオーダーユニットバスは色々な理由が重なってヴェルデの立花さんにお願いしましたが、弊社では東京バススタイルや、バンクチュール(ニッコウ)などにお願いすることがあります。それぞれ得意とする範疇が少しずつ違いますが、皆素晴らしい会社です。オーダーユニットバスは価格が高いことが玉にキズですが、在来工法よりも防水性能が高く、通常のユニットバスでは不可能なデザイン性を実現することができる、素晴らしい工法です。