Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

大理石エンペラドールのカウンター材

渋谷区Q邸

高級オーダーキッチンが組立て中の渋谷区Q邸の現場に、ブラウン色の大理石、エンペラドールダークをピール加工したカウンター材が搬入されました。

昨年末に施工をお願いしているの現場監督の岡田さんと片岡社長、そして弊社担当スタッフで副所長の竹田さんと4人で岐阜の大垣市の石材屋ツアーをした際に決定したスラブを、日本辰華がカウンター形状に加工してくれたものです。

こちらが現場に搬入されて、荷解きされたばかりの状態で、これを用心深く裏返して、見やすいように養生材をはいでくれたものが、最初の写真です。

仕上がった面からは判りにくいですが、このように裏返した状態だと、柄が繋がるように同材を45度でエッジをカットしたものを継ぎ目が分からないように接合していることが判るでしょうか…。フラットな磨きの状態であれば、それほど難しくない加工ですが、アンティーク石材のように見えるピール加工(固めのブラシで表面磨いて柔らかい部部分を削る加工です)し、その上から撥水処理をした材を折り曲げて継ぐのは大変な作業だったと思われます…。

オーダーキッチンのリネアタラーラでは、大理石カウンター材が届く前までに、ここまで下のキャビネットを組み上げてくれています。写真右奥に見えているキャビネットだけは…、

実はキッチンキャビネットではなく、造作家具の現代製作所にお願いしたものでした。扉と側面に同じフローリング材を張って、コーナー加工を45度のトメにして、扉の厚みが見えないような特殊加工をして貰っています。

キャビネット上に、L字に組んだ大理石カウンターを載せた様子がこちらです。青いテープの部分が継ぎ目となります。

キッチン内側から見るとこのようになっています。手前の調理カウンターは、大理石調のフィアンドレの大判タイルで、88ミリ立ち上がっているエンペラドールの二段カウンターの横面に家具用コンセントを仕込んで貰っています。

大理石カウンターを真横から見た様子です。手前のキッチンから、右奥の壁の方まで大理石カウンターが伸びています。左手前にガスレンジのカウンター前の壁にもフィアンドレの大理石調タイルが張られていますね。

これはダイニング側から通路の正面からキッチンを見返したアングルです。左手手前の箱の中にも大理石柄が入っていますが…、

コンクリートの構造柱型の前に設置するワイングラスを入れるガラス扉付き収納の背面をコンロ正面の仕上げと揃えているのです。

床に転がっているこの不思議な井桁のような材料は…、

カウンター側にハイスツールで座った時のための足置きです。見えにくいですが、脚立に座った僕、各務が足を置いているのが、据え付けられた足置きです。

リネアタラーラのショールームにあるものと、ほぼ同じ寸法体系で作って貰ったものですが、荷重が掛かっても歪まないような取付けの工夫がされていることが、このスケッチ図面で分かります。

ほぼキッチンが組み上がった段階で、お客さまのQさまが現場に立ち寄って下さいました。この2段カウンターの石材の決定には、相当な時間と労力を掛けて下さったので、この出来上がりの雄姿はとても喜んで下さいました。ただ当初Qさまご夫妻が図面から想像していたよりも、キッチンカウンターが大きく長かったようで、果たしてこの大きなキッチンを使いこなせるかが不安になってきたとのことでした…。

元々Qさまご夫妻には、主寝室の奥にある洗面所のお化粧コーナー前の鏡面に取り付けるブラケット照明の高さと位置を見て頂きたかったので、半分仕上がってきた洗面室に立ち寄って頂きました。

こちらが現場に届いていた、お化粧コーナー用のキッチラーのブラケット照明です。シャワーコーナーの黒いサッシと色味が微妙に違っていたので、青の現場副監督の池田さんが、後日スプレーで塗装してくれることになりました。

シャワーブース内の壁タイルが張られた様子も見て頂きました。

後日凹んだシャンプーボトル置き用ニッチ内部にもきれいにタイルが張りまわれていました。

同じタイルを選んだ浴室も段々と仕上がってきました。因みに、朱色のピンのように見えるのは、タイルの目地幅を揃えるためのスペーサーです。

こちらはリビングの様子です。キッチン組み始めは大混雑でしたが、ようやく片付いてきて…、

先日張っていた加工大理石のサルバトーリのTVボード壁も見えてきました。

エクセルジョイントでひび割れを補修した折り上げ天井もしっかりと細部まで確認できましたが、キッチンが片付いてきたと思ったら…、

今度は合番の造作家具や、壁のフローリング張りのための材料がまた目白押しになってきました。現場監督の岡田さんたちが、日程調整しながら作業スペースを確保しつつ、搬入される大量の箱や材を整理してくれていますが、現場監督さんの実力は先を読む力だと感心するばかりです!

オーダーメイド・ヘッドボードの作り方

渋谷M邸

造作AVボード家具の制作状況を説明したブログが好評だったので、渋谷M邸の寝室のヘッドボードの造作手順も時系列に並べて解説します。

まず、こちらが完成後の主寝室のヘッドボードです。

こちらが最初のご相談時にお客さまから頂いていた寝室のイメージ写真です。

他の部屋のインテリア素材や色味からこちらのような色味で進めることが決まっていきました。ピンク色のペンダント照明のサンプルは、当初想定していた照明器具でしたが、サンプルを借りて見比べた所、色味が合わなかったので、後日別の物に変えました。

素材選びと同時に設計側で作っていたヘッドボードの図面がこちらです。ヘッドボードを周りをアンティコスタッコで塗る以外にも、タイルを張る案なども検討していました。

ペンダント照明を変更するプロセスのなかでは、このような簡単な実物大モックアップ模型を作って、お客さま立会いの元サイズや個数を確認させて頂きました。

現場が始まってから、まず最初に工事会社のリフォームキューが、養生テープでヘッドボードのサイズや、横のドレッサーの位置関係、飾り棚の高さ関係が分かるように現地にマーキングしてくれた様子です。

解体が済んだ主寝室の壁には、作り付け家具を固定させるためのベニヤ板の下地張りがされてゆきます。照明のスイッチやコンセントを設置する位置に合わせて、電気配線も再レイアウトされています。

こちらで作った展開図から、施工会社のリフォームキューが作ってくれたヘッドボードの施工図がこちらです。パネルや家具はすべて家具工場で作り、現場で用意した真鍮目地の間にはめてゆく形で施工されてます。

図面通りの位置に真鍮目地が固定され、その隙間に棚板が組み込まれていきます。

ヘッドボードの本体(コンセントやスイッチ、間接照明を組み込んだ出っ張った箱で、仕上げにレザーパネルを張る下地になる)も取り付けられました。

真鍮目地とピタリと合ったカ所に据え付けられているのは、図面通りで当たり前なのですが、それでも職人技には感嘆してしまいます。

ヘッドボード上部の壁のアンティコスタッコ塗りが終わり、横のカラーガラスも張り終わった状態です。

点検口を開けた内部に照明やコンセントの配線が隠されています。

窓側のサイドテーブルは、下部をオープンにするために、壁から片持ちで固定されたものとなっています。四角い滑らかな箱のように見せたいので、引き出しの表板の3辺を45度にカットしたトメ加工にして貰っています。

最後にレバーパネルを張ってスタイリッシュなヘッドボードの完成です(とはいっても、実はレザーパネルの人工レザーの輸入がコロナのことなどで間に合わず、仮のレザーパネル状態でのお引渡しでしたが…)。
ベッドは寝心地を重視して選んだレガリア(大塚家具)のヘッドボード無しマットレスで、ベッドカバーとピローケース(枕カバー)はイヴ・ドロームでお客さまが選んできてくださったものに、マナトレーディングのブルー系のクッションが組み合わせられています。

照明は、手前のペンダントがエクリプス(LeeBroom)、奥のテーブルランプがオルーチェのアトーロです。因みに天井の照明はミニ・ジョガーリ(ルミナベッラ)で、照明のスイッチやコンセントもヘッドボードに組み込まれています。

背面の緞子張りのレザーパネルは、納期の関係で竣工時は、似た色国産人工レザーで仮のパネルを作ってお引渡しをしましたが、その後、米国製の人工レザーが届いてからステッチを入れたこちらの物に交換させて頂きました。

ヘッドボードの上には、壁を照らす間接照明が組み込まれており、置き型のサイドテーブルの横のドレッサー(お化粧テーブル)と各板に間接照明を組み込んだ飾り棚板も作り付けとなっています。壁面は、真鍮目地で見切ったカラーガラスとアンティコスタッコ(大理石の粉を混ぜた左官仕上げ)で仕上げています。

マナ・トレーディングで選んで頂いたカーテンとレースも入って、(レザーパネルと、ラグとお化粧用椅子以外)ほぼ完成の寝室の様子です。最初のイメージ写真から、ここまできれいでカッコよいヘッドボードと寝室インテリアが完成したこと、Mさまもとても喜んで下さいました!
以下は、他の事例でデザインしたヘッドボードの事例写真です。

六本木N邸のヘッドボードです。家具のように取り外し式として、ウォールナットとレザーパネルで構成したボードです。

松濤D邸のヘッドボードは、元々お手持ちのベッドにヘッドボードがついたタイプでしたが、背面壁周りを木製パネルで覆い、背面壁にはステッチ入りの灰色のレザーパネルを張ったものです。

代々木上原I邸の主寝室も、壁一面がヘッドボードになった構成です。窓まで取り込んだ木製フレームの中に、緞子張りのファブリックパネルと凹ませた収納を組み込みました。

外苑前C邸では、ウォールナットで作った家具の中に、レザーパネルを落とし込んだスタイルのヘッドボードです。

港区R邸の主寝室は、僕らの事例の中では一番費用を掛けて、凝ったデザインのヘッドボードとしています。木製塗装枠の中に間接照明を組み込み、ヘッドボード部分は大理石とレザーパネルとミラーの組み合わせ、サイドボードも木製と大理石カウンターの組み合わせとしています。

高輪M邸はクラシカルなヘッドパネルです。木製の格子枠の中に緞子張りのファブリックを落とし込んだスタイルです。

元麻布I邸は壁紙をパネル状に張ったシンプルなヘッドボードです。

神戸M邸はコンパクトな寝室で、壁とフラットにウォールナットパネルを張ったものです。

南平台N邸のヘッドボードもほぼ似た構成ですが、サイドボードの代わりに逆三角形のミニカウンターと照明のスイッチとコンセントを組み込んだニッチを作っています。

原宿K邸では、部屋の構成上、窓際にベッドの頭を持ってゆくことになってしまったので、窓台よりも高くなるヘッドボードを設え、裏側にブラインドが入り込むようにしております。窓際からの寒い風が枕元に流れてくるコールドドラフトを防ぐ役目もしています。天井から壁をRの形で繋げたのもデザインのコダワリでした。
色々なタイプのヘッドボードをご紹介させて頂きましたが、残念ながらヘッドボードだけのリフォームはお手伝いできませんので、悪しからず…。

漆喰塗のための石膏ボード下地作り

千代田区M邸

千代田区M邸のマンションリフォーム工事では、ボード張りから漆喰の下地作りが進んでいます。

リビングダイニングでは、まだ二重の石膏ボード張りが進んでいます。右手前の壁はこれからキッチンが組み立てれられるエリアなので、まだボードが張られていません。

ビニールクロス仕上げの場合は、壁や天井のボード下地は12.5ミリを一枚張るだけですが、塗装仕上げや漆喰仕上げの場合は、12.5ミリと9.5ミリの二重張りとなるので、ボード張りの労力と時間は倍になります。

天井も二重張りとなるので、先行してダウンライトの位置に穴をあけて、通線してから2枚目のボードを張ってゆきます。

リビングエアコン部分も下地が組み終わったので、これからのボード張りで隠されていきます。

こちらは数日後に、ボードできれいに隠されてしまったエアコン部分です。色の違うボードが張られていますが、こちらは、キッチン天井部分に使っている強化石膏ボード(芯材にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化したボード)を使って貰っています。

廊下では、まだ八掛枠に対して、1枚目のボードしか張れていません。

八掛の枠とピクチャーレールの取り合いで、細かい細工が必要なのです。

まだ造作家具との細かい取り合いが決まっていない、洗面所はさらに遅いスピードでのボード張りとなっていますが、造作家具が取り付けられてから2層目のボードを張る個所もあるので、仕方がありませんね。

玄関は、このような状態から…、

二日ほどで、一気にここまでボード張りが進みました。

一番工事が進んでいるのが、奥の主寝室です。こちらは左官屋さんが入って、床のブルーシートでの養生が進んでいます。

左官職人さんは、一気に大きな面を作ってゆくのではなく、まずは出隅のコーナーに寒冷紗(カンレイシャ)テープを張って、その部分をパテでシゴいていくのです。

塗装仕上げのようにとがった出隅の角だと、漆喰が欠けてしまうので、このようにコーナーが少し丸くなった特製のコテを使っているようです。

コーナーの次は、ボードの継ぎ目で、ゆっくり丁寧に作業をしてくれています。左官をお願いしてる原田左官さんから、職人さんたちはほぼ皆同じ背丈の人を揃えているとの話を聞いていましたが、その理由がこのシーンを見て分かりました。職人さん皆が同じ背丈だと、同じ足場を使うことができるからなのです。例えば僕、各務のように一人186センチの職人が中に入ってしまうと、僕だけは違う高さの足場を用意しなければいけなくなるので、不合理なのですね。

左が寒冷紗テープ張りで、右が最初のパテ扱き(しごき)です。

全てのボードの継ぎ目のパテ処理が終わった後から、いよいよ一度目の下地左官となります。

下地左官には、カーボンコートという材料を使っています。水で溶いたカーボンコートには、よく見ると少し黒っぽい繊維質が混ざっており、その繊維がひび割れなどを防ぐ働きをしてくれるとのことでした。

リビングダイニングのカーボンコートの左官下地作りが始まったタイミングで、お客さまのMさまご夫妻が現場に来てくださいました。

原田左官さんからは、お客さまが興味があるのでしたら、左官の体験もご一緒に如何ですかとのお誘いもありましたが、以前のご自宅も漆喰仕上げになさったことがあるので、体験は結構です(笑)とのことになりました。

早めにスタートしていた奥の主寝室や書斎は下地左官もほぼ乾いている状態で見ることができました。塗りたては濃い目の灰色に見えますが、乾いてくると白地に黒い繊維が透けて見えるようなイメージになってきます。

主寝室の奥の壁には、書斎とウォークインクローゼットへの扉枠2本がありますが…、

どちらの八掛枠もとてもきれいに仕上がっていました。

主寝室のヘッドボード上のニッチ部分も下地にしておくにはもったいないくらい丁寧に仕上げられていました。
と思っていたところ、その気持ちが通じてしまったのか、一緒にご覧になっていた奥さまから、寝室については、この下地の状態を仕上げにすることはできないかとのお話しがありました!
原田左官からは、この状態で使っても問題はないが、下塗りはあくまでも下塗りで仕上げではないので、肌や服がこすれるとザラッとした部分に引っ掛かることがあったり、コテムラは完全には抑えられていないがそれでも良いのならとの話がありました。下地の上からコーティング剤を塗れば、そのようなことはなくなるが、いざやはり本漆喰で仕上げたいということになってもコーティングをしてしまうと難しくなるとの説明もあり、結局寝室は一部は漆喰まで仕上げますが、部屋の80%程度はこの下地塗りを仕上げとすることに決まりました。

こちらは下地塗りと八掛枠の取り合いです。ピクチャーレールもうまく残して下地が塗られています。

八掛枠と巾木の金属見切りとの取り合いもとてもきれいです。

多彩なコテを場所場所によって使い分けながら塗ってゆく作業は、職人さんの邪魔になることは分かっていますが、ずっと眺めていたくなるような見事な作業でした。

そんな合間を縫って、玄関のタタキの大理石が張られました!関ヶ原石材のアントリーニギャラリーでお客さまが選んでくださったアイリッシュグリーンです。

大きなスラブ一枚から切り出したものなので、きれいに模様も繋がっています。

玄関框やサイドの石巾木、石膏ボードの金属見切りとの取り合いもきちんと施工されています。

玄関の大理石張りが終わったらすぐに、玄関横のシューズイン・クローゼット(SIC)内のタイル張りも始まりました。

玄関の大理石の割と合わせたラインで、600角のマラッツィ社(イタリア)のタイルが張られていきます。

玄関の大理石は厚みもサイズも大きく重たいので、2人の職人さんで正味2日掛かったそうですが、タイルは薄くてサイズも600角と石に比べれば小さく軽いので、一人の職人さんで丸一日で終わるそうです。

ここから先は、漆喰の左官作業の合間を縫って、造作家具やキッチンの組立てにも始まってゆくので、造作家具の最終承認や工程の打ち合わせをの石坂さん、樋口さん、片岡さんと綿密にしながら進めてゆくことになります。