Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

想定外の排水管配置、現場で生まれた設計修正力!

城南R邸

最近のブログ記事は長くて専門性が高くなりすぎだと感じていますので、最初に記事のサマリーを載せておきます(chatGPTのアドバイスです)。
・完成前CGとほぼ同じ仕上がりに。視覚だけでなく快適さまで再現。
・工事前の先行調査で、PS(パイプスペース)が専有部かどうかを確認し、修正可能と判断。
・現場で予想外の排水管経路が判明。しかし即時に最適な設計修正を提案し、トラブルを回避。

同じマンション内の2住戸リノベーションの城南R邸ですが、色々な事情があって最上階住戸Aが先に完成したとのこと、施主検査に同席させて頂きました。

お客さまのRさまご夫妻も、同行した僕らも、まずは事前に作っていた完成前予想CGとそっくりなことに驚きました。もちろん、窓から見える景色や、窓を開けた時に流れてくる風の気持ち良さはCGでは表現できていませんが、部屋の構成はまさにCG通りでした。

右奥に見ているのが新築お引き渡し時のキッチンです。Rさまが「これはこれで使いやすそうだし、わざわざ壊してリノベーションしなくても良いかな?」といった雰囲気だったので…、

焦って(笑)、担当の前田君作ってくれたCGのビフォーアフターを携帯でご夫妻にお見せしたところ、「やっぱりリノベーションした方がこのお部屋が持っているポテンシャルを十分以上に引き出せるね」と言って頂きました。
内覧時でしたが、マンションデベの担当者にお願いして、リノベ工事をお願いするリフォームキューの坂本さんや設備の槻川原さん、さらには解体業者さんにも同席して貰って非破壊の調査をさせて貰いました。

CGでは予想できなかったのが、こちらの屋上テラスの気持ちよさでした。3方向に開けていて、とにかく広い!
100平米以上の広さをどのように活用するかはじっくりと考えたいところです。

こちらはマンションモデルルームで貰っていた素材情報の再確認をしている様子です。新築リノベーションは、全てを壊さず部分的に工事をするケースが多く、その際に新築時に使われている素材を手に入れることができるかどうかで工事範囲が決まってくるのです。事前に貰っていた情報で取り寄せていたタイルやフローリングが使われているものと同じであることが確認できました。

お引き渡し後にはすぐに壊し始めることになっているので、関係者揃っての記念撮影をお願いしました。左から、僕各務、前田君、Rさまご夫妻、事前打ち合わせ時からお世話になっているマンションデベの担当者のNさま、リフォームキュー坂本さん、新築オプション工事でお世話になったデザイナーのNさんです。

お引渡しされたのが、検査後1か月後でしたが、その1週間後には、部分解体をさせて頂きました(この解体分の工事費はお支払ってもらっております)。まずはイタリア製キッチンのアルクリネアでお願いするキッチンの正確な寸法を理解することが第一優先なので、キッチンと玄関周りを解体してもらいました。
実はまだこの段階では、床フローリングとビニールクロス仕上げの壁と天井をやり直すかどうかは、全体の予算次第で決めることになっているので、解体せずに残しております。

右からアルクリネア(アドヴァン)の藤森さん、前田君、リフォームキューの大工さんです。この段階で、キッチンの最大寸法を確認したいのです。どこを基準にして、LGS(軽量鉄骨)下地をどこまで動かせるかなどを考慮して、無事寸法を決めることができました。

設備的なこともチェックして、対面型カウンターに設置するシンクからの排水もキャビネット下を調整すれば、問題なく流せることが判りました。

見積り的には大きな変更は無しで済むことも判ったので、まずはリフォームキュー経由でキッチンだけを先行発注させて頂くことができそうです。

先行解体は3か所をお願いしており、こちらは主寝室奥のウォークインクローゼットです。モルテーニのクロゼットシステムで作ることが決まっているのですが、既存の図面上の寸法だとぎりぎり、奥さまがご希望してくださっている引き出しが入らないので、壁位置を3センチほどずらすことができるかどうかを確認するために石膏ボードを剥がしてもらいました。
正面左奥のLGSの向こう側は図面上はPS(パイプスペース)と呼ばれるエリアになります。当初マンションデベの担当者にこのPSを使いたいのだがと相談した際は、PSは共用部に当るのでダメですと言われましたが、その後、PSには共用部PSと専有部PSがあり、これはどう見ても専有部PSなので、大丈夫なハズなので調べて欲しいとお願いしたところ、確かにこちらは専有部PSなので、自由にしてくださいと言ってもらえました。
結論としては、PS部分を少し狭めることで、引き出しを入れることができることも判りました!

ここまでとても順調だったのですが、来客用トイレを大きくする為に、トレイを少し奥に移動して、その手前に独立した手洗いスペースを設ける計画を立てていた部分にこちら、設計側の想像と違う部分が見つかりました。この写真の手前部分に灰色の排水管が2本(左側の太いのが便器、右側の細いものが手洗いの排水)あります。ちょうどコンクリートの床スラブの段差内に収まっています。この段差がもっと奥まであるだろうと予想していたのが違っていたのです(新築マンションではお引き渡し前に間竣工図を見ることとができず、床下のスラブ段差位置や給排水の図面を確認することができないのです)。

新築マンションリノベーションで、トイレの床に段差を付けるのはさすがに無いだろうと、現場で前田君と坂本さんと3人で頭を絞って何とかできないかを考えてみました。

左側が元々考えていたプランで、右側が改修案の1です。床排水型の便器ではなく、背面排水型の便器を使って、便器後ろにライニングを設けて、そこから横引きする案です。これであればトイレに段差を設ける必要はないのですが、手前の手洗いからトイレに入る際に、便器横に扉がついているような形で、使いづらいそうです…。

こちらの案2は、その後、前田君が頭を絞って考えてくれた案です。手前の手洗いのレイアウトから変更して、奥のトイレも便器の位置を左右反転させる案です。これであれば使い勝手の不自由さもありません。どちらの案でも洋室のクローゼットが縮小して変形になりますが、実際上のハンガー長さはほとんど変わりがありません。
早速事情をご説明して、費用の増減なしでこちらの案にさせて貰いたいとお伝えしたところ、ご快諾下さりました。お客さまと前田君に感謝です!
最後の纏めも、chatGPTからのアドバイスですが挙げておきます。

・新築マンションリノベでは、CGや図面だけで安心せず、先行解体・調査で現場を見極めることが重要です。
・諦めがちな「PSや配管の位置」も、構造と法的区分を正確に把握すれば最大限活用でき、デザインと機能の両立が可能です。

下地&設備工事、モールディング装飾デザインが同時進行する現場

大田区S邸

解体工事が終わった大田区S邸の現場は、大工さんたちが入って床や壁の下地を作り始めてくれています。

かつてのキッチンはPS(パイプスペース)と再利用される壁下地以外は一旦全て剥がされたところに、床下地が組み始められています。

通常のマンションは下階への音が伝わりにくくするために遮音置床システムを使いますが、こちらのお部屋が下階が駐車場で、マンションの規約上も遮音仕様にする必要が無いので、コンクリートスラブに直接木下地を接着して、その上にベニヤ板を張る作りとなっています。

そこから一週間ほどで天井のLGS下地も改めて組み直されて、床下地の上には新しい排水管が接続されました。

写真、左側のゴチャゴチャした部分が、元のキッチンの床下にあったスラブ下へと貫通する排水管で、今回の新しいキッチンでは、右側の位置にシンクと食洗器が来るので、キャビネット下をグルリと通して元の排水管の位置まで持ってゆくことになっているのです。

一部、壁際は出っ張った部分は見えてきてしまうので、排水管をしっかりと木下地でカバーして貰っています。

大工さんが作業している奥では、設備屋さんのエアコンの吊り込みが始まっています。リフォームキューの現場監督の大阿久さんと、設備のプロフェッショナルの槻川原さんが細かく位置を見てくれています。

今回は全てのエアコンが天井隠蔽式となっています。

最初はすっきりと見えていた廊下の天井裏も、隠蔽式エアコンのダクトが入ってくると、かなり窮屈に感じられますね。断熱カバーされいるダクトを凹まないようにうまく天井裏に押し込みながら接続して貰っています。

こちらはダイニングの天井裏で、ダイニングテーブル上に重量のあるペンダント照明を取り付けることになっているので、その重量分の補強です。上階の配管類が通っているので、コンクリートにアンカーを打つのではなく、大工工事で逆型になったコタツテーブルのようなものを組んで貰っています。

そんな中、お客さまのSさまの奥さまに現場に来てもらったので、一緒に色々と打ち合わせをさせて頂きました。

一つはセコムのお打合せです。セコムの担当者とは事前に下打合せをしていましたが、Sさまと最終確認することで、モーションセンサーも追加することとなりました。電源が必要となる箇所もあるので、大阿久さんにも打ち合わせに参加してもらいました。

すっかり解体されてガランドウになった洗面所と浴室回りも見て頂きました。20年近く暮らしていたお部屋の天井裏や壁裏の様子をご覧になって、「こんな風になっていたのね!」とかなり驚いていらっしゃいました。

奥さまが不安に感じていらっしゃった、モールディングのサイズを確認するために、担当スタッフの竹田さんが用意しておいてくれたモールディングの型紙を壁に貼って貰っています。

玄関入って、右手に見えてくる壁の装飾のプロポーションです。

出来上がった様子をCGで作ったものがこちらです。プロポーションは良さそうだけど、天井回りが少し寂しいのではとのご意見を頂いたので、モールディングを回すことになりました。

玄関と廊下はかなりモールディングやケーシングが付くので、華やかな空間になる予定です。

リビングの折り上げ天井のモールディングも取り寄せたサンプルを取り付けてみると、少し大きめに感じたので、ワンサイズ小さいものにすることになりました。

因みにリビングの完成予想CGはこんな感じです。

こちらのCGは後日作ったものですが、壁とモールディングの色と建具と枠ケーシングと巾木の色を変えた場合どのように見えるのか、それもベージュ調にした場合とグレー調にした場合の微妙な違いをCGで作って比較してみたものです。結局リフォーム前と同じようなベージュ調のニュアンスの方が好みだとのことで、上のイメージで進めることとなりました。

排水管ルートを探る部分解体設備調査

世田谷区A邸

大型メゾネット住戸リノベの世田谷区A邸のリノベーション計画を進めていますが、マンション竣工時の設備図を見ても排水管のルートが読み取れないこと、また下階の水回りに関しては一度大きくリフォームをしていることから、壁や天井を部分的に解体して内部を見て、設備関係配管ルートを確認すること、また、天井裏の懐の深さや梁下の寸法を見ることとなりました。

こちらが既存図に、担当スタッフの竹田さんが手書きで書いた、部分解体をしたい箇所の指示図です。
部分解体のためには、現場監督さんにお願いすることもありますが、今回は開口数も多いので大工さんをお願いすることとなりました。また、設備関係のこともあるので、設備屋さんにも同席してもらうこととなりました。

早速、大工の矢野さんが天井に穴をあける作業をスタートしてくれました。今回はの片岡社長が工夫をして、ホルソーという道具を使っての穴あけ作業となっています。
ホルソーとは天井の石膏ボードにダウンライト用の丸穴をあける道具です。写真にみえる透明な集塵カップ(別名ダストカバー)を取り付けることが可能で、石膏ボードを切断した際に発生する埃が大きく散らないので、養生の手間がかなり省けることがメリットとなります。また、鋭利なカッターで丸く抜くので、内部を確認した後、蓋をして戻すときに、比較的きれいに、かつ簡単に復旧することができるです。

これまでは、カッターやマルチツールと呼ばれる電動カッターを使って正方形にボードをカットしてきましたが、養生などに掛かる時間を含めると、約3分の1の時間で穴をあけることができることが判りました。

丸穴が空いて、内部を覗ける状態の写真です。こちらでは、配管が2本通っていたので、配管の養生材を一部剥がして、菅の種類を確認いたしました。確認後は養生材を戻してテープでしっかり張っておきました。丸穴のカット面がきれいに仕上がっている分、蓋を戻すのも楽になるのです。

今回は220φの穴をあけることができるホルソーを使ってくれたので、ちょうど僕、各務の頭が差し込めるのです。さらには差し込んだ隙間から、携帯電話も入れることができるので、携帯の照明で中を確認しつつ、フラッシュを使って写真を撮影したり、動画を撮ることができました。

こちらはPSと図面に表記されていた箇所の横壁に穴をあけて下を覗き込んだ写真です。薄い灰色のトミジ管と呼ばれる耐火二層管(排水管)と濃い灰色の排水管、青い給水管とオレンジの給湯管が通っていることが判りました。

天井裏に空けた穴から覗きこんだこちらの写真では、理由は分かりませんがスパイラルダクトが途中で切断されている様子が見えました。

キッチン裏のPSの内部を覗き込みながら、竪管の位置を片岡さんが実測してくれています。

竣工時の設備図のコピーを竹田さんが用意してくれており、穴から見える管やダクトの整合性を確認していきます。穴あけ作業のスピードが速かったので、最終的には12か所に穴をあけて内部を確認することができました。

穴から覗き込んで撮影しているだけだと、後で何が何だか分からなくなってしまうので、担当スタッフの竹田さが用意してくれた設備図に書き込んでいきます。

ユニットバスの袖壁の下部に空けた穴からは…、

オーダーユニットバスの防水パンが確認でき、その下に携帯電話を差し込んで浴室からの排水ルートのおおよそを確認することもできました。

こちらの図面で排水管のルートが分からなかったか所は、そこから床スラブを貫通して、下階の天井裏を通って排水管が横引きされているようでした。

念のために、駐車場になっている下階の天井裏の点検口を開けてみたところ、床スラブを貫通して、トミジ管が配管されいていることが確認できました。

最後のこちらの写真は丸穴を二して補修した様子です。イーニッサンと呼ばれる30mm×40mmの角材とビスを使うと、穴の復旧もとても速いのです。
今回の部分解体設備調査ですが、お客さまには半日分の作業費として5万円+消費税で5.5万円をお願いいたします。